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舞方雅人の趣味の世界

あるSS書きの日々

襲撃開始

走る、走る、走る。
白い大地を列車が走る。
飛ぶ、飛ぶ、飛ぶ。
吹雪の中をATが飛ぶ。
軍用列車の砲塔が火を噴き、ATの銃が放たれる。
雪原の中で行なわれるのは乾いた命の奪い合い。
黒いオイルと赤い血が真っ白なキャンバスに振りまかれる。
次回「襲撃開始」

アイスブルーも白く染まるか・・・

と言うわけでボトムズです。

5、
「まさかこの機体に乗ることになるとはね・・・」
私はファッティーのコクピットに入り込む。
乗りなれたスコープドッグを参考に作られているせいか、それほどの違和感は感じない。
装甲そのものはこちらの方が厚そうで、動きさえ劣らなければヘビータイプに匹敵するようだわ。
私は操縦桿を握り締め、ハッチを閉じてバイザーにコードをつなぐ。
このあたりまで互換性があると、この機体がバララント製というのを疑っちゃうわね。
私はカメラの動作を確認するために左右に振ってみる。
カメラターレットは一つしか無いが、レンズを切り替えることでスコープドッグと同様に赤外線や望遠を切り替えられる。
考えようによっては使いやすいかもしれない。
私はカタパルトランチャーの試射をする。
空のコンテナが簡単に撃ち抜かれる。
反動も少なく取り回しやすい。
結構いい機体だわ。
さすがにスコープドッグを徹底的に分析して作り上げた機体だわね。
『やれやれ・・・このデブに乗ることになるとはな』
ラートルのボヤキが聞こえてくる。
『慣熟訓練も無しですからね』
そう言いながらも、ユジンの動きは軽快だ。
このファッティーを乗りこなしていると言っていい。
『いつまで遊んでいるつもりだ? 出発するぞ』
ターロス大尉のファッティーが合図をする。
私たちは雪上型キャリアに乗り込み、目的地へ向かって出発した。

ガウディム大陸は白の世界。
かろうじて居住可能な軌道を巡るベンエジヴァンは凍った惑星。
夏でも雪は降り積もる。
そのガウディム大陸に広がるヴィスロン平原。
そこには一本の鉄道が走っていた。
氷海に面したゴモの街から、内陸のブグ・ナの街までの動脈だ。
そこを走る軍用列車が今回の標的。
積荷はゲリラへ密輸される武器という。
怪しいものだが、そんなことはどうでもいい。
生き残って金をもらう。
それが傭兵としての私の仕事なのよ。

吹雪の中、雪上型キャリアーは走る。
カメラターレットに付く雪が視界をさえぎる。
いやだなぁ。
ヒーティングがされているとはいえ、水滴になった雪がカメラの映像を歪めてしまうのよね。
一瞬の判断が重要な戦闘では命取りになりかねないわ。
私はそんなことを思いながら、キャリアの上でファッティーを片膝を付いて立たせていた。
『もうすぐ目的地だ。準備はいいか?』
『こちらはOKだ』
『僕も大丈夫』
『いつでもいいぜ』
『準備完了しています』
ターロス大尉の声に皆が反応する。
「私もOKよ」
手袋の中にじわっと汗が滲んでくる。
緊張している?
違う・・・
私は興奮しているんだ。
血と硝煙が描くあの地獄絵図が私を待っている。
生と死の紙一重の差が私を駆り立てる。
さあ、始まりよ。

朝だというのにどんよりした雲のせいで薄暗い。
さらには吹雪が追い討ちをかけてくる。
キャリアーの履帯も雪に潜って難渋しているようだわ。
見えた!
鉄道の線路だわ。
コンクリートでできたモノレール型の軌条。
鉄の線路に比べて雪に埋もれる可能性は低い。
私たちのキャリアーは線路に向かってひた走る。

吹雪の中を光が切り裂いた。
列車のヘッドライトだ。
定刻通りというわけね・・・
『ようし、始めるぞ!』
『『おう!』』
私はファッティーをキャリアーから飛び降りさせる。
深雪が足を取り、思わずバランスを崩しそうになるが、私はファッティーを走らせた。
ローラーダッシュできればいいのに・・・
ATの機動性はやはりローラーダッシュにあるのだけど、この雪ではグライディングホイールが上手く動作してくれない。
仕方なく私はファッティーを走らせるのだ。
ずぼっずぼっと泥濘を走るような感覚が伝わってくる。
列車はまっすぐに線路をこちらに向かって走ってくる。
軍用列車というだけあって、先頭には装甲され砲塔に対AT砲を積んでいる貨車が増結されている。
私たちはそれに向かって走っていくのだ。

『アイスブルー! 線路を飛び越えて列車の右側面に付け!』
同じようにズボズボと雪に足を取られながら走っているターロス大尉の声が飛び込んでくる。
なるほど、挟み込む体勢というわけね。
私は指を立てて了解の合図を送り、進路をずらして行く。
列車の速度とこちらの速度、ぎりぎりと言うあたりね。
『ユジンも回れ! アイスブルーを援護するんだ』
『了解!行きますよ』
ユジンのファッティーがいきなりジャンプする。
そのまま線路を跨ぎ超え、列車の右側に回りこむつもりだ。
はあん・・・
敵の目を引き付けてくれるのか。
やるじゃない。
『ラートルも行け!』
『言われなくても!』
続いてラートルのファッティーが宙を飛ぶ。
『こいつ、結構飛ぶじゃねえか』
白く塗られたファッティーは吹雪に霞むように飛んで行く。
私は装甲貨車の砲塔がそちらを向くのを確認し、雪原を駆け抜けた。

むき出しのコンクリートのモノレール型軌道。
全速力を出して向かってくる列車と競争するかのように、私は線路を跨ぎ超える。
耳を劈くような轟音が発せられ、砲塔の対AT砲が火を噴いた。
列車は六両編成。
先頭と最後尾は装甲貨車。
二両目は気動車。
三両目と五両目が貨車。
四両目が客車という編成だ。
客車にはおそらく護衛の兵士たちが、そして装甲貨車にはATが積んであるはず。
私ならそうするわ。
『そりゃあ』
素早く位置についたラートルとユジンのファッティーがカタパルトランチャーを撃ち始める。
まずは足止め。
私も少し遅れるものの、雪原に片膝をついて射撃姿勢を整える。
軍用列車は何とか襲撃を切り抜けるべく、全速力でこの場を走りぬけようとする。
走り抜けられてしまえば襲撃は失敗。
この雪ではローラーダッシュで追いすがるなんてできはしない。
なんとしても気動車を潰さなければならないのだ。
今しも目の前を走りぬけようとする軍用列車に向かって私はトリガーを引いていた。

カタパルトランチャーの弾着が装甲貨車から気動車に移る。
装甲貨車と違い、気動車は装甲がされていない。
こんな襲撃は想定していなかったのだろう。
カタパルトランチャーの弾は難なく気動車の側壁を貫通し、炎を吹き上げる。
急激に速度が落ち、軍用列車の命運は決まった。
『気をつけろ、ATがでてくるぞ!』
ラートルのだみ声が聞こえてくる。
言われなくても・・・
私は走り過ぎた列車の最後尾に狙いをつける。
前方の装甲貨車はどうやら左側のチームを狙っているようだ。
こっちには最後尾の装甲貨車が砲塔を向けてくる。
「動いて! 狙われるわ」
私はそう叫んでファッティーを走らせた。
  1. 2006/12/09(土) 19:53:20|
  2. ボトムズSS
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Author:舞方雅人
(まいかた まさと)と読みます。
北海道に住む悪堕ち大好き親父です。
このブログは、私の好きなゲームやマンガなどの趣味や洗脳・改造・悪堕ちなどの自作SSの発表の場となっております。
どうぞ楽しんでいって下さいませ。

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