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舞方雅人の趣味の世界

あるSS書きの日々

おそばでお仕えいたします

明日で今年も終わりですね。
今日は「グァスの嵐」を少しだけ投下します。
亀の歩みですが、お付き合いいただければと思います。


26、
「出発だ! いつまでぐずぐずしておる! ラーオン人どもにムチをくれてやれ! さっさと漕ぎ出すんだ!」
ホットワインを飲み干し、マグカップを艦長に渡して周囲に怒鳴りつけるエスキベル提督。
やれやれと肩をすくめる艦長と周囲の冷ややかな視線が集まるが、そんなことは意に介さない。
どうせこんな艦に長居はしないのだ。
下級の水兵どもにどう思われようとも知ったことではない。

ムチが床を鳴らし、ラーオン人たちの不平の声が消されていく。
立ててあったオールが横に広がり、メインマストには四角い帆が広がった。
小型ギャレー『デ・ボガスタ』の船体は、ゆっくりと島影から空中へと動いて行った。

ばたばたと帆が風を受ける音が響く。
背後からの風がぐうんと船足を速めていく。
船体の両側では、幅広のオールが規則正しく大気を掻いていく。
その様子を彼は船尾楼で眺めている。
甲板上では彼の部下たちがいつもの作業を淡々とこなしていた。
だが、その視線がちらちらと船尾楼に向けられることに、思わず彼は苦笑する。
あまり目立たぬように他の男たちと同じような服装をさせたのだが、それがかえって目立ってしまっているのだ。
白いブラウスを突き上げる豊かな胸が男どもの視線を惹かぬはずはない。
まあ、手を出せば痛い目を見るのはわかっているだろうし、女を乗せればこうなることはわかっていた。
あとは、これに早く慣れさせることだ。

「キャプテン、出港しました。行き先は?」
海賊船『バジリスク』の副長であるガスパロが彼の元に来る。
だが、彼は無言でチラリと傍らの女に目を向けただけだった。
「キャプテンはまずヒューロットに向かえと言ってます。その後サントリバルを経てアルバへとのことです。それでよろしいでしょうか、ダリエンツォ様?」
黒いズボンを穿き、白いブラウスを身につけ、腰にはカトラスを下げ、頭には赤いバンダナを巻いたクラリッサがダリエンツォに確認する。
彼女の言葉にダリエンツォは黙ってうなずいた。
「キャプテン、これはいったい?」
ガスパロが面食らう。
このところキャプテンが手懐けていた女性だというのはわかっていたが、まさか船につれてくるとは思わなかったのだ。
「今日からダリエンツォ様のおそばに仕えますクラリッサ・モルターリです。よろしくお願いします」
にこやかに一礼するクラリッサ。
思わずガスパロも頭を下げる。
「ふははは・・・そういうことだ。しばらく面倒を見てやってくれ。いっしょにいたいと言って聞かないのだ」
「は、はあ・・・」
ダリエンツォがそう言うからには何も言えない。
男ばかりの船に女が乗るなど何が起こるかわからないのだが、まあキャプテンの女と知ってて手を出す奴もいないだろう。
となれば、目で楽しむのも悪くない。
ガスパロはそう考えると、クラリッサの美貌を目の端で楽しみながら、部下たちに針路を告げる。
いくつものオールを前後に動かしていた海賊船は、大きく船体を傾かせてその針路を変えるのだった。

「まあ、なんだ。よくわからんが、これからもミューはいっしょにいるってことなんだろ? なら問題ないじゃないか」
あっさりと今までの出来事を一言のもとに受け流すゴルドアンにエミリオは苦笑する。
実際それでいいのだ。
マスターだの作られた少女だのどうでもいい。
これからもミューがいる。
それだけでいいのだ。
エミリオもそう思う。
「で、天気もよくなったし、アルバに向けて出発ってことでいいのかな?」
「ああ、小屋も一応修理してきたし、入り口には鍵もかけてきたから多分大丈夫。もっとも、誰かが見ても何をするものかはよくわからないだろうね」
エミリオたちは先ほどまで小屋の焼けた部分を修理していたのだ。
最初は機材そのものをこの『エレーア』に積むことも考えたが、場所をとりすぎるのでやめたのだった。
いずれは別の場所に移す必要があるかもしれないが、今はこのままでいいだろう。
「蒸気何とかだって? お湯で何かできるとは驚きだな」
「うん、僕もそう思うよ。でも、それがないとミューは動かなくなってしまうんだ」
「それが信じられないなぁ。何かだまされているようだ」
もちろんゴルドアンはミューを疑っているわけではない。
もしこれが大掛かりな嘘だったとしても、だまされて失うようなものはそうはない。
第一自分たちをだます理由がないと思うのだ。
まあ、不思議な少女だが、いてくれるならそれでいいとゴルドアンは考えていた。

「さて、出発するか」
ゴルドアンが船首のマストに帆を広げていく。
エミリオは錨を拾い上げて舵棒に手をかける。
フィオレンティーナとミューは強くなってきた日差しをよけ、天幕の下に場所を移す。
小柄なファヌー『エレーア』は、ミストス島を離れ、滑るように空中へと飛び出した。
行き先はアルバ島。
『エレーア』はカラスタ群島の多島海へと進んで行った。
  1. 2009/12/30(水) 21:03:07|
  2. グァスの嵐
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Author:舞方雅人
(まいかた まさと)と読みます。
北海道に住む悪堕ち大好き親父です。
このブログは、私の好きなゲームやマンガなどの趣味や洗脳・改造・悪堕ちなどの自作SSの発表の場となっております。
どうぞ楽しんでいって下さいませ。

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