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舞方雅人の趣味の世界

あるSS書きの日々

地下室のシスター(1)

今日は早めの更新です。

今日から四日連続で一本SSを投下させていただきます。
昨年のような二週間連続とはいきませんが、年末の楽しみとしてお読みいただけるとうれしいです。

タイトルは「地下室のシスター」
それではどうぞ。


1、
「ふう・・・ようやく着いたね」
「ええ、ここが私たちの新しい家になるわけね」
私は隣でいっしょに建物を見上げているシスターアネットにそう言った。

私たちの前には古びた小さな修道院が建っている。
小さいと言ってもそれは都などの大きな修道院を知っているからのこと。
このような辺境の一修道院では、こんなものかもしれない。

「とりあえず村の者たちに言って、入り口を封鎖していた板だけははがしておいたよ。中のほうは埃だらけだけど、そっちも掃除させようか?」
修道院の敷地の入り口に止まっている馬車からおじさんが声をかけてくる。
ザウフ村からこの修道院まで乗せてきてもらったのだ。
見ると私たちが修道院を見上げている間に、荷物を馬車から降ろしてくれている。

「あ、大丈夫です。後は私たちがやりますから」
「ええ、おじさんもどうもありがとうございました」
私とシスターアネットはすぐに馬車のところに戻って荷物を受け取った。
とりあえずまだ日は高いのだし、寝る場所さえ確保できればあとは何とでもなるわ。

「そうかい? それにしても若い娘さんだけ二人よこすとは、修道院ってのは人手不足なのかねぇ?」
トランクを降ろしてくれたおじさんがそう言ったので、思わず私はシスターアネットと顔を見合わせた。
「そんなこと無いんですよ、おじさん」
「私たちはまだ修行中の身ですから、この放置された修道院を再び使えるようにして、皆様のお役に立つようにするのが修行なんです」
そう、私たちはまだ女神様に仕えるには未熟な修行中の身。
シスターアネットと二人でこの修道院を綺麗にしなくては。

「でも、まあ、これで病気や怪我の時にはお世話になることができるな。ありがたいことだ」
おじさんはそう言って修道院のてっぺんに飾られているホーリーシンボルを仰ぎ見る。
女神様の代理物とも言うべきホーリーシンボルは、修道院の象徴でもある。
この修道院がなぜ今まで放置されてきたのかわからないけど、少しでもこのあたりの人々に女神様のすばらしさを広めていけるといいな。
私はそう思い、荷物を持って修道院の入り口に向かった。

                     ******

「ゴホッ・・・ひどい埃・・・」
扉を開けて修道院の中に入ったシスターアネットが思わず咳き込む。
口に布を当てていても咳き込んでしまうほどの埃の群れ。
いったいいつから掃除されていないのかしら・・・

おじさんと別れたあと、私たちは早速修道院の掃除に取り掛かった。
とはいえ、一日で全部ができるはずも無い。
まずは礼拝堂と私たちが暮らすことになる住居部分。
ここを重点に行なって、それからおいおい全体を綺麗にしていくつもり。

女神オリアナ様の像が設えてある祭壇を、まずは丁寧に埃を払って清めていく。
こんなになるまで放って置かれたなんて信じられない。
一度災害があったとかで近くの村が放棄され、それで修道院も閉じられたらしいけど。
いったい何があったのだろう・・・
「ねえ、シスターアネット、ここってどうしてこんなに放置されていたのかしら」
私は隣で祭壇の埃を払っているシスターアネットに訊いてみた。
「ん? 知らないよー」
あまりにもあっさりした返事に私は苦笑する。
彼女はいつもこう。
さばさばしたものにこだわらない性格で、とても気持ちがいい。
だからこそ私には欠かせない友人なのだ。

「はふー・・・つかれたぁ・・・」
尼僧服が汚れるのもかまわずにどっかりと腰を下ろすシスターアネット。
茶色の髪がウィンプルの下で汗に濡れている。
無理もない。
もう日暮れ。
礼拝堂を適当に切り上げ、自分たちの部屋の掃除を終えた時点で、今日はこれまでと決めていた。
それがようやくひと段落着いたのだ。

「お疲れ様、今お茶淹れるわね」
私も疲れていたけど、なんだかシスターアネットのいかにもへたばりましたという顔を見ていたら、お茶ぐらい淹れてあげようという気になってしまう。
「ありがとー。うれしいよぉ、シスターメイリア」
「はいはい」
お茶ぐらいで眼をキラキラと輝かせて私に祈りを捧げるシスターアネットをあとに、私はトランクからお茶の道具を出してキッチンで湯を沸かす。
幸い、裏の井戸は生きているようで、美味しい水が味わえた。

「あら?」
台所の脇に南京錠がかけられた扉がある。
今日はばたばたしていて、まだ修道院の中をしっかり確認していなかったから、こんなところに扉があるとは知らなかった。
多分事務室の机にあった鍵束の中のどれかで開くと思うから、あとで落ち着いた頃に調べてみよう。
私はそう思って、沸いたお湯でお茶を淹れ、シスターアネットの元へと戻って行った。

お茶を飲みながら台所の脇の扉のことを話したところ、またしてもキランと眼を輝かせるシスターアネットに私は苦笑する。
彼女のこういう子供っぽいところが私はなんだか好きなのだ。
放置された修道院の中でさらに鍵のかかった部屋があるとなれば、見に行かないわけにはいかないのがシスターアネットという人の性。
お茶もそこそこに彼女は事務室に飛び込んで行き、鍵束を持ってきた。

「いい、開けるよ?」
鍵束と言っても五本ほどしか付いてないので、南京錠の鍵はすぐに見つかった。
南京錠と掛け金をはずし、ドアノブをグッと握ってシスターアネットは私にそう言う。
「どうぞ」
私もなんだか妙に緊張する。
開けてはいけないものを開けてしまうようなそんな気持ち。
どうせ何があるというわけでも無いとは思うけどね。

ぎぎっと言う音を立てて扉が開く。
しばらく放置されていたせいで開き渋っているのだ。
あとで油を差しておかないとならないかも。

「えっ?」
「あら・・・」
私とシスターアネットが同時に声を出す。
扉を開けた先には小部屋ではなく下に下りる階段があったのだ。
まるで闇の中に吸い込まれていきそうな感じで階段の先は暗くなっている。
このまま下りていくことはできなさそうだわ。

「ちょっと待って」
私は部屋を照らしていた燭台を取り、火が消えないように覆いをつける。
これで簡易カンテラとなり、少々の風なら大丈夫だろう。
「はい」
私は燭台をシスターアネットに手渡した。
どうせ下まで見に行かないことには彼女の気持ちは収まらないでしょうしね。

シスターアネットは私から燭台を受け取ると、ゆっくりと階段を下りはじめる。
石造りのしっかりした階段で、地下室があるのは間違いない。
多分台所の隣にあるのだから、食料か何かの保存庫だと思うけど・・・

階段は途中で折り返していて、ちょうど台所の真下に下りるようになっていた。
突き当りには木で作られた頑丈な扉があり、そこには鍵は付いていない。
シスターアネットが扉を開けて中を照らすと、そこは箍(たが)と木の板にばらされた樽や、もの入れに使われたであろう木箱などが置かれていて、まさに何かを収めておく貯蔵庫のような部屋だったことがわかった。

「なんだ・・・食料庫か」
シスターアネットがちょっと残念そうに肩を落とす。
「うふふ・・・何があると思ったの?」
「こう、なんかさ、放置された修道院の鍵のかかった地下室なんだもん。何か隠された秘密みたいなのがありそうかなって思ったのよ」
「うふふ・・・それは何かの物語の読みすぎよ」
がっかりした表情のシスターアネットに私はそう言った。
「そうだよねー。実際に何かあるわけなんか無いもんね。さ、上に戻ろう。そろそろ夕食の準備しなくちゃ」
そう言って部屋を出たシスターアネットの足が止まる。
「どうしたの?」
「えっ? いや、何かちょっと変だなって思ったの」
「変? 何が?」
私はシスターアネットの視線の先をうかがった。

そこは食料庫の扉と階段との間にある狭い空間。
その脇の壁にシスターアネットは目を向けていた。
「いや、なんとなくなんだけど、もう一つ扉があってもいいような気がしてさ・・・」
「もう一つの扉?」
言われてみれば、階段を下りたところに空間があり、脇にも少し行けるようになっている。
食料庫の扉とは別に、その先にも扉があってもおかしくは無いかも。

「まあ、なんかそんな気がしただけ。石でしっかり組まれているからそんなわけないよね」
「そうね・・・そうだと思うわ」
そう言って階段を上がっていくシスターアネットのあとを私もついていく。
なんだか妙にそこに扉が無いことが気になりながら・・・

                      ******

それから数日。
私とシスターアネットは午前中は修道院の清掃に充て、午後からは交代でザウフ村に出かけ、村人たちとの交流に時間を費やした。
なにせしばらく修道院がなかった村だもの。
村人たちには女神様のすばらしさを早くわかっていただかねば。
私たちはそう思って日々お勤めに勤しんでいた。

「おはようございます女神様。今日も一日皆が無事に過ごせますように・・・」
私は朝のお祈りを女神様に捧げる。
今日もまた忙しい一日が待っている。
ノルさんのお宅はもうすぐお孫さんが生まれるし、チャガさんの家は娘さんが風邪をひいて寝込んでいた。
今日は何か薬草を煎じて持っていってあげよう・・・
私がそんなことを考えているときだった・・・

突然の振動。
遅れて礼拝堂に入ってきたシスターアネットが、思わず床に座り込む。
「地、地震だわ」
私もあまりの揺れに躰が振り回されてしまう。
ゴーッという恐ろしいような音が鳴り、修道院全体が揺さぶられる。
祭壇の上の燭台は倒れ、蝋燭の火が消える。
近くの布に燃え移らなかったのは幸いだけど、私もシスターアネットもただただどうすることもできずに床に這い蹲るだけだった。
ぐらぐらと揺れる修道院。
みしみしとあちこちがきしんでいる。
今にも修道院全体が崩れそうな気がして、私は生きた心地がしない。
女神様、どうか私たちをお守りください。
私は床に伏せながら、目をつぶって女神様に祈るしかできなかった。

やがて揺れが収まってくる。
がたがたと床を踊っていた燭台も動かなくなり、躰も振り回されなくなってくる。
「お、終わった・・・?」
私はゆっくり目を開ける。
まだ躰が揺れている感じがする。
地鳴りは消え、ぱらぱらと落ちてきていた天井の埃も落ちてこなくなった。
「だ、大丈夫? シスターメイリア」
自分も尼僧服姿で四つんばいになっているのに、私のことを心配してくれるシスターアネット。
なんだかうれしい。
「私は大丈夫。シスターアネットは?」
私はようやく立ち上がって尼僧服の埃を払う。
黒に近い紺色の尼僧服が白くなっちゃっているわ。
ひざががくがくして立っているのがやっとだけど、とりあえずは無事みたい。
「あ、あたしも大丈夫。でも、まだ立てないよ」
ぺたんと尻餅をついたような格好で座り込むシスターアネット。
彼女の尼僧服も頭からかぶっているウィンプルも真っ白だわ。

私はシスターアネットの手を取って立たせてあげる。
すると彼女の温かい手を握ったら、不意に恐怖が蘇り、私はぼろぼろと涙が止まらなくなってしまった。
「シスターメイリア?」
最初は驚いた表情のシスターアネットだったが、すぐに彼女は私を抱きしめてくれた。
「大丈夫。もう大丈夫だから。泣かないで」
「うん・・・うん・・・わかってる。大丈夫だから。ただ涙が止まらなくて・・・」
「わかるよ。怖かったもんね。大きな地震だったね」
まるで赤子をあやすように抱いて頭を撫でてくれたシスターアネット。
私は彼女の心遣いに感謝した。

「もう、大丈夫。ありがとうシスターアネット」
私はそう言ってゆっくりと放してもらう。
「ううん、あたしも怖かったもん。気にしなくていいよ。でも、シスターメイリアの泣き顔は可愛かったね」
私は一瞬にして顔から火が出るような気がした。
「ななななな、なんてことを」
私は思わず顔を覆ってしまう。
は、恥ずかしいよぉ。
「あはは、冗談、冗談だよ」
そう言ってひらひらと手を振るシスターアネット。
明るく笑う彼女に私も苦笑する。
彼女の明るさはいつも私を助けてくれているんだなぁと思う。

「ところで、村の人たちは大丈夫だったかな」
不意に表情を引き締めるシスターアネット。
こういうときの彼女はとても凛々しい。
「大きな地震でしたから気がかりですわね」
私も村の様子が気にかかる。
修道院は幸い大きな被害はなかった様子。
礼拝堂も壁にひびなど入ってはいない。
天井から埃が落ちてきたぐらいだけど、これは掃除をすればすむこと。
それよりも村人たちが怪我などしていないといいけど・・・

「村の様子を見に行ってきたほうがいいよね」
「ええ、私が見に行ってきます」
私はすぐに村へ向かうべく支度しようとする。
「ああ、いいからいいから。シスターメイリアはここにいて。村へはあたしが行ってくるから」
出かけようとする私を制して、シスターアネットが支度を始める。
「あ、それなら私も一緒に・・・」
「ううん、シスターメイリアにはここにいて欲しいの。入れ替わりに怪我をした村人たちが来ちゃうかもしれないし、ここを空にするわけにはいかないでしょ?」
「それはそうだけど・・・」
「それにもっと重要なことがあるの」
「もっと重要なこと?」
私はシスターアネットが言う重要なことが気になった。

「ここの後片付けを押し付けたいの」
シスターアネットがにっこりと微笑む。
私は一瞬あっけに取られ、思わず吹き出してしまった。
確かに修道院の後片付けをしなくちゃならない。
せっかく綺麗にしたばかりだというのに、また埃が巻き散らかってしまったのだ。
きっと掃除があまり好きではないシスターアネットはうんざりしちゃったのだろう。
「わかったわ、シスターアネット。気をつけて行ってきてね」
「うん。シスターメイリアも片付けるときに壊れ物とかには気をつけて」
そう言ってシスターアネットは傷薬などの入ったカバンを持って出て行った。

「ふう・・・さて、お片付けしますか」
シスターアネットを見送った私は、散らかってしまった礼拝堂に向き直る。
立てられていた燭台や飾られていた花などが散乱してしまっている。
「やれやれ。でも建物が無事でよかったわ。女神様、ありがとうございます」
私は祭壇に向かってひざまずき、両手を組んで目をつぶりお祈りをした。
  1. 2009/12/22(火) 20:21:08|
  2. 地下室のシスター
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:3
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コメント

シスターネタですか~。
狙いとしてはどちらかが先に堕ちてからの連鎖堕ちを期待したいですね。
勘の鋭い? メイリアか、それともアネットか? いろいろと妄想がかき立てられます。

シスターネタといえば、ドラクエ6のシスターアンナのSSを思い出しますよ。あれも傑作でしたから。

明日も期待しています。
  1. 2009/12/22(火) 21:17:10 |
  2. URL |
  3. metchy #zuCundjc
  4. [ 編集]

>>metchy様
やはり連鎖堕ちははずせないでしょうか。
徐々に堕ちていくと思いますのでお楽しみに。

「シスターアンナ」をお褒めいただきありがとうございました。
すごくうれしいです。
  1. 2009/12/23(水) 20:42:59 |
  2. URL |
  3. 舞方雅人 #-
  4. [ 編集]

管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます
  1. 2009/12/23(水) 21:52:46 |
  2. |
  3. #
  4. [ 編集]

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(まいかた まさと)と読みます。
北海道に住む悪堕ち大好き親父です。
このブログは、私の好きなゲームやマンガなどの趣味や洗脳・改造・悪堕ちなどの自作SSの発表の場となっております。
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