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舞方雅人の趣味の世界

あるSS書きの日々

怪物くん

三種類の試作車が完成したのは1939年8月でした。
翌9月にはクビンカで試験が始まります。

試作車で一番重かったのがT-100の重量58トンでした。
SMKはそれよりはやや軽い55トン。
KVは砲塔が一つしかないおかげで、車体の長さも短くすみ47トンでした。

クビンカでの試験では、やはりT-100とSMKの二つある砲塔が相互に連携して戦闘を行なうという難しさが指摘され、さらにはT-100にいたってはソ連国内を鉄道輸送するための貨車に重量オーバーで載せられないという問題まで出てきます。
機動性もやはり問題で、単一砲塔のKVがやはりすべての面で優れていることがわかってきたのです。

ちょうどその頃、ソ連ではフィンランドとの間に領土紛争が発生しました。
いわゆる「冬戦争」が始まったのです。
フィンランド軍ががっちりと防御を固める「マンネルハイム線」に対し、この三種類の試作車を投入して、実戦テストをしようというアイディアが持ち上がりました。

マンネルハイム線に対する実戦テストは実際に行なわれ、ここでもKVはほかの二車にたいして優位さを発揮します。
なんとSMKは、ここでフィンランド軍の歩兵突撃で撃破されてしまうほどでした。
やはり多砲塔戦車は実戦ではもはや生き残るのがきびしい存在だったのです。

こうして戦場での実績という誰もが目に見える形でKVの優秀さを知った軍は、T-100及びSMKの開発を中止し、KVを正式に採用します。
ソ連軍重戦車KVシリーズの誕生でした。

そしてマンネルハイム線での戦訓から、陣地突破用の大口径榴弾砲を装備したタイプと、一般的な76ミリ砲装備タイプの二種類が作られることになり、前者をKV-2、後者をKV-1と命名し量産に入りました。

KV-1は当時としては桁外れの重戦車でした。
当時各国の戦車では20ミリから30ミリの厚さが普通だった装甲は、KV-1では車体前面と側面が75ミリ、砲塔前面では90ミリにも達する厚さでした。
これはドイツ対戦車砲の主力である37ミリPAK36では、どこからどの距離で撃っても撃ち抜けないほどの厚さです。
また、三号戦車の42口径50ミリ砲や、四号戦車の24口径75ミリ砲でもよほど当たり所が悪くなければ撃ちぬけません。
まさに装甲の塊でした。

また、主砲も当時としては桁外れでした。
37ミリや45ミリの主砲を搭載した戦車が一般的な中で、KV-1は39口径76ミリ砲を備え、のちにはもっと長砲身の76ミリ砲を搭載します。
当時のドイツ戦車でこの76ミリ砲の直撃に耐える装甲を持つものはありませんでした。

こうして強力な火砲と厚い装甲に囲まれたKV-1はまさに無敵の重戦車でした。
しかし、この重戦車も大きな弱点を持っておりました。
それは脆弱な駆動系でした。

47トンという大重量は、確かにT-100やSMKに比べれば軽いものでした。
機動性という面でもこれら二車に比べれば良好だったのでしょう。
しかし、この重量はトランスミッションやクラッチなどの駆動系に多大な負荷をかけ、非常に多くの故障を発生させる原因となっておりました。

エンジンそのものは高出力のディーゼルエンジンで問題はなかったものの、その動力を伝えるクラッチやトランスミッションが重量に耐えられなかったのです。
結局クラッチやトランスミッションには故障が多発し、また、上手く作動したとしても、その切り替えなどには多大な労力を必要として、「ギアチェンジにはハンマーが必要であった」という話まででるほどの作動の難しさでした。

また、人員の配置や外部視察の問題などもあり、その戦闘力をカタログどおりに発揮するのは難しい戦車でした。
これはKV-1だけの問題ではなく、これの解消にはT-34/85あたりの登場まで待たなくてはなりません。

バルバロッサ作戦でソ連に侵攻したドイツ軍は、そこでT-34/76と並び、このKV-1に出会うことになりました。
この厚い装甲と強力な主砲を持つKV-1はまさにドイツ軍にとっては化け物以外の何者でもありませんでした。

しかし、故障の多さや戦闘のしづらさなどで、多くのKV-1が失われました。
戦闘での損失よりも故障での損失のほうが多かったとも言われます。
結局ソ連軍の主力は使い勝手のいいT-34/76とその発展型のT-34/85になりました。

ですが、故障なく戦場を暴れまわることさえできれば、ドイツ軍がKV-1を撃破することはきわめて困難でした。
ついには高射砲兵に頼んで、あの88ミリ高射砲を持ってくるしかなかったのです。

KV-1はその後さらなる装甲の増強などに努めたあと、SU-152自走砲のベースとなり、IS重戦車シリーズへとその系譜を引き継がれていきます。
おそらくソ連を代表する重戦車として、今後も長く語り継がれることでしょう。

それではまた。
  1. 2009/11/25(水) 21:35:46|
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