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舞方雅人の趣味の世界

あるSS書きの日々

ベータの思い

すみませんでした。
本当にお待たせしてしまいすみませんでした。

気が付いたら、前回掲載からなんと一年も経ってしまっておりました。
本当に本当にすみませんでした。

「ホーリードール」の第28回目をお届けします。
お楽しみいただけましたら幸いです。

28、
「それじゃ行ってらっしゃい。私はこのあたりで時間をつぶしているから、何かあったらいつでも呼んでくれてかまわないわ」
紺のスーツ姿で雪菜を見送る美野里。
その様子は、出勤前に妹を見送っている姉の姿そのものだ。
「ありがとうアルファお姉さま。それじゃ行ってきます」
にこやかな笑顔を見せる雪菜。
だが、すぐにペロッと舌を出した。
「いけない、この姿のときは美野里お姉さんだったっけ」
「そうよぉ。誰にも聞かれなかったと思うけど、私たちが闇の女であることはまだ知られるわけにはいかないわ。まあ、人間どもの中にわかる奴がいるとも思えないけどね」
困ったものだというように苦笑する美野里。
彼女自身黒いレオタード姿のレディベータを見慣れているせいで、目の前の少女の姿に違和感を感じているのだから仕方がない。
「とにかく、光の手駒には充分注意して。奴らは闇に触れたものを容赦しないわ。徹底的に浄化してくるわよ」
「わかってる。紗希ちゃんが光の手駒だなんて信じたくなかったけど、彼女はもう憎むべき敵・・・」
そう言いながらも雪菜の言葉には力が感じられない。
「ふう・・・留理香様のご命令とは言え、光の手駒を生かして捕らえなければならないとは・・・ね」
美野里も肩をすくめてしまう。
デスルリカ様の大事な娘である荒蒔紗希。
光に捕らわれ光の手駒になっている彼女を、どうにかして確保しなくてはならないのだ。
それは容易なことではない。

「ねえ、アルファお姉さま・・・」
「えっ?」
美野里は一瞬とがめることを忘れてしまう。
それだけ彼女を見上げる雪菜の眼差しは真剣だったのだ。
「私たちではだめなんですか?」
「えっ?」
「私たちではだめなんですか? 私たちでは荒蒔紗希の代わりにはならないんですか?」
「ちょっ・・・雪・・・いえ、ベータ・・・」
真剣に問いかけてくる雪菜を、美野里はそっと物陰に連れて行く。
「アルファお姉さま・・・私たちではデスルリカ様の娘になれないんですか? 私はもう身も心も闇の女です。大いなる闇とデスルリカ様の忠実なしもべです。荒蒔紗希なんか必要ないって言ってくれないんですか?」
「ベータ・・・」
そっと雪菜を抱きしめる美野里。
レディベータのデスルリカ様への気持ちが痛いほど伝わってくる。
それは自分にとっても同じ思いがあるからだった。

「ベータ・・・」
「はい、アルファお姉さま」
ゆっくりと雪菜を放す美野里。
「あなたの気持ちはよくわかるわ。光の手駒などにされてしまった人間の娘など、私にとっても面白くない存在。でもね・・・」
美野里は自分にも言い聞かせるように言葉を区切る。
「決めるのはデスルリカ様なの。私たちはデスルリカ様の命令にただ従うのみ。それがデスルリカ様に闇の女にしていただいた私たちの使命なのよ。わかるわね」
雪菜はゆっくりとうなずいた。
「わかりました、アルファお姉さま。つまらないことを言いました。忘れてください」
美野里は黙って首を振る。
「つまらなく無いわ。私も同じ気持ちだもの。でも、これは二人だけのことにしておきましょうね」
美野里のウインクに、雪菜は思わず顔がほころんだ。

「おはよー」
「おはよー」
「おはよう、小鳥遊さん」
教室に入った雪菜をクラスメートが出迎える。
みんなにこやかな笑顔で、雪菜がどんな存在なのか気にもしていない。
以前の雪菜であれば楽しかったであろうこの世界も、今の雪菜にはわずらわしくくだらないだけの世界だ。
「おはよう。あれ? 紗希ちゃんと明日美ちゃんは?」
雪菜は二人の席が空いていることに気が付いた。
「知らなーい。来てないよ。お休みじゃない?」
「そう・・・」
クラスメートの返事にちょっと気がそがれる雪菜。
これから光の手駒と対峙しなくてはならないと考えていただけに、拍子抜けは仕方がない。
雪菜は空いた二つの席を横目に見ながら席に着いた。

結局、始業時間までに紗希も明日美も姿を見せはしなかった。
担任の縁根先生も、連絡がないことを気にしているようだった。
おそらく闇と接触したことで、手駒の動きを制限したのかもしれない。
だとすると、もう学校には来ない可能性がある。
探りを入れるべきね・・・
雪菜は教室を見渡し、手ごろな餌を探すのだった。

「ん・・・」
身じろぎするホーリードールサキ。
青いミニスカート型のコスチュームを身に着け、青いブーツと手袋を嵌めて空中に横たわっている。
その頭部には青くうっすらと光を放つヘルメットが目元まで隠すように覆い、ホーリードールサキを完成へと導いていく。

白い空間には他には何もなく、ただ、少し離れた一段高くなったところに椅子がしつらえられてあり、そこに白いゆったりとしたドレスをまとった女性が座っていた。
女性は物憂げな表情で浮かんでいるホーリードールサキを見つめ、その口元に笑みを浮かべている。
そして、誰に聞かせるでもなくこうつぶやくのだった。
「ようやく完成。これでこの世界は光のもの・・・」

「はい・・・電話では風邪をひいたのでお休みさせるとのことでした・・・」
うつろな表情で雪菜に答える縁根百合子。
そろそろ中年と言ってもいい年齢だが、メガネをかけた顔は知的美人と言ってもよく、生徒の人気も高かった。
「まあ、そんなところよね。いいわ。どうせカモフラージュしているでしょうし、光の拠点となっているでしょうから行ってみても無駄でしょうし・・・」
パチンと指を鳴らして百合子を解放する雪菜。
浅葉家に電話をさせてみたのだが、マニュアルのような回答しか得られなかったというわけだ。
「えっ? あら? 小鳥遊さん? 私はいったい?」
突然のことにきょろきょろとしてしまう百合子。
今まで雪菜の支配下に置かれていたことなどわかっていない。

「餌はやっぱり暴れさせるのが一番よね」
冷たく笑みを浮かべる雪菜。
「えっ? 暴れる?」
「ねえ、先生」
目の前の少女がささやくように語り掛けてくる。
いつも教室で見ている小鳥遊雪菜の雰囲気とはとても似つかわしくない妖艶な笑みが浮かんでいる。
百合子は背筋がぞっとした。
この娘は何か違う。
本能が恐怖と危険を伝えてくる。
思わずあとずさる百合子だったが、すぐに壁に阻まれる。
「えっ? ここは?」
「体育用具室よ。結界を張ったから誰も入ってこられないわ」
笑みを浮かべながら近づいてくる雪菜に、百合子は思わず悲鳴を上げる。
「うふふ・・・いいわよ、その恐怖の表情。でもすぐに気持ちよくなるわ。ビーストに生まれ変わればね」
「いやぁっ!! こないで、こないでぇ!! 誰かぁ!!」
脇をすり抜けるようにして入り口へ向かう百合子。
雪菜はそれを邪魔する様子もなかったが、扉がかたく閉ざされていることを知って百合子は絶望した。
「開けてぇ!! 誰かぁ!! ここから出してぇ!!」
「無駄だって言ったでしょ。先生の声は誰にも聞こえないわ。うふふふ・・・先生の闇はどんなものかしらね」
雪菜の周囲に闇が湧き起こる。
そして闇が雪菜の躰を覆いつくし、やがて闇は晴れていく。
そこにはつややかな漆黒のレオタードを身にまとい、黒い長手袋と同じく黒いニーハイブーツを履き、肩口までの髪を漆黒のカチューシャで留めた少女が立っていた。
そして、ぬめるような漆黒に塗られた唇を、真っ赤な舌がペロッと舐めまわす。
「あ、あ、あなたはいったい・・・」
入り口を背にして恐怖におびえながら少女を見つめる百合子。
「うふふふ・・・私はレディベータ。大いなる闇にお仕えする闇の女。さあ、あなたの闇を広げてあげる」
百合子の頭を両手で掴み、グッと引き寄せるレディベータ。
そのまま百合子の唇に自らの唇を重ねていった。
  1. 2009/07/08(水) 21:54:45|
  2. ホーリードール
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:2
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コメント

超久々のホーリードール。前回から1年たってしまっていたんですね。1年前の続きを完成させるのはかなり苦労したんじゃないですか?

雪菜が紗希に対して違った感情(嫉妬?)を抱くようになりましたね。これが爆発したらベータは暴走しそうですね。そうなると、デスルリカ様との関係に溝が生まれそうで、面白い展開になるような気がします。

続きが楽しみです。また1年後に(爆)
  1. 2009/07/08(水) 22:41:26 |
  2. URL |
  3. metchy #zuCundjc
  4. [ 編集]

>>metchy様
書き出すのに苦労しましたー。
なんせ以前のことを忘れているので。(笑)
まあ、それは冗談ですが、読み直してから書き始めたのは事実です。
でも、ベータがわりとスッと自己主張してくれたので助かりました。
おかげで紗希との関係がよくないものになりそうでちょっと困惑。
いい結末に向かって欲しいものですねー。
  1. 2009/07/09(木) 21:10:38 |
  2. URL |
  3. 舞方雅人 #-
  4. [ 編集]

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(まいかた まさと)と読みます。
北海道に住む悪堕ち大好き親父です。
このブログは、私の好きなゲームやマンガなどの趣味や洗脳・改造・悪堕ちなどの自作SSの発表の場となっております。
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