このたび、私がいつもお世話になっております闇月様より、新作SSを投稿していただきました。
タイトルは「ディープ・パープル」
楽しい作品でございますので、ぜひ皆様もお楽しみいただければと思います。
それではどうぞ。
【ディープ・パープル】
数本の蝋燭のみが灯された部屋に、下着姿のショートカットの少女が捕らえられていた。
少女の両手首と両足首は黒いロープのようなもので縛られ、その先は彼女の両側にある太い石柱にくくりつけられている。
カツーン、カツーンと部屋に響く靴音。
どこからともなく現れ、少女へと近づいてきたのは一人の若い女性だった。
色白の肌、腰の辺りまでまっすぐ伸びた紫の髪。
両肩から先を露出させた、深紫色のマーメードラインのロングドレスが女性の美しさを引き立たせている。
「お目覚めのようね…」
「あなたは誰? どうしてこんなことをするのよ?」
少女は女性をキッと睨み叫んだ。
「うふふ…元気なお嬢ちゃんだこと」
「ちょっと、私を子ども扱いしないでよ! これでもいちおう24なんだから!」
「ちょっとからかっただけよ。貴女が何者なのかはよーくわかっているんだから…対『カラーズ』特殊部隊後方支援員、藤野(ふじの)ゆかりさん」
「え、ちょ、何を言っているの? 私はそんなんじゃ…」
女性の言葉に、ゆかりは動揺を隠せない。
「隠さなくてもいいのよ。私は『カラーズ』最高幹部の一人、ミス・パープル。貴女のことも、貴女のお姉さんのことも調査済みなんだから」
ミス・パープルと名乗った女性は妖艶な笑みを浮かべ、驚愕の表情のまま固まるゆかりを見つめていた。
*****
半年前、異空間から突然現れた謎の集団。
ブラック総帥率いる彼らは『カラーズ』と名乗り、全世界に宣戦布告し侵略の手を広げ始めた。
そんな『カラーズ』に対し、政府は水面下で特殊部隊を組織し、最新鋭の装備を投入した。
最前線で戦う戦闘要員は『ペインター』と呼ばれる3人の男女。
特殊スーツに身を包み、3人は『カラーズ』から送られてくる異形の怪人達を撃破していた。
藤野ゆかりの姉、あおいは『ペインター』唯一の女性、コードネーム「ペインター2」として日々戦っていた。
そんな姉を少しでも助けたいと思い、ゆかりは後方支援員に志願したのだ。
見た目は中学生か高校生くらいにしか見えない幼い風貌のゆかりだが、彼女は大学の情報工学科を首席で卒業し、部隊では戦略分析を担当している。
そして、ゆかりは休日にひとりで街へ出かけようとしたところを全身黒タイツの集団に襲われ、意識を取り戻した時には囚われの身となっていたのだった。
*****
「うふふ、くるくる表情を変えるところがまたかわいいわね…」
ミス・パープルはそう言うと、小声で何か呟きながら右手を高く上げた。
すると、彼女の周囲から紫色の煙が噴き出し、瞬く間に部屋全体に広がっていく。
「な、何をするの? 私を毒ガスで殺すつもり!?」
「貴女を殺すためにここに連れてきたわけじゃないわ…それに、この『紫の煙』は毒ガスじゃないから安心しなさいな」
「じゃあ、なんなのよこの煙は!?」
ゆかりはロープで縛られた両手足をじたばたと動かし、なんとかして煙から逃れようともがく。
ミス・パープルはそんなゆかりの目の前まで近づくと、グイとゆかりの顎を掴み、彼女の眼をじっと見つめた。
「おとなしくしなさい」
ミス・パープルの瞳が淡い紫色に輝き、ゆかりの瞳を射抜く。
(あ…)
アメジストの光を見たゆかりの瞳は曇り、ボーっとした表情に変わった。
「そう、それでいいのよ」
ミス・パープルはそう言うと一歩後方に下がり、右手をゆかりの方にかざす。
すると、ミス・パープルの白い肌に絡み付いていた紫の煙が、ゆかりに向かって一直線に流れていき、下着姿のゆかりの身体にまとわりついた。
(なんなの、この煙…嫌なのに…身体が言うことをきかない…)
身体を嘗め回す紫の煙に、ミス・パープルの瞳術により身体の自由を奪われ、虚ろな瞳のゆかりはもはや抵抗することができなかった。
(さて、外だけでなく、内にも流し込んだ方が『効果』が早いわね)
再びゆかりの目の前に立ったミス・パープルは無抵抗のゆかりの唇に、自分の唇を重ねる。
舌で口をこじ開け、ゆかりの舌と自分の舌を絡ませ、唾液と一緒に『何か』をゆかりの喉の奥へ送り込んだ。
「ぁ…はぁ、はぁ…はぅん」
ゆかりの口から艶やかな喘ぎ声が漏れてくると、ゆかりの身体にまとわりついていた紫の煙が露出した肌に染み込んでいく。
(な、なんなのこれぇ…気持ちいい、気持ちいいよぉ)
ゆかりの心と身体は絶え間なく与えられる快感にされるがままになっていた。
それから数分後。
「ケムリ…紫のケムリぃ、気持ちいいよぉ…吸いたい…もっとちょうだぁい…」
最初は嫌悪していた紫の煙が自分に更なる快楽を与えてくれることに気づいたゆかりは、身体をくねらせて紫の煙を求める。
「うふふ…お望みとあらばいくらでもあげるわ。そのかわり…」
ミス・パープルがゆかりの耳元で優しく、そして妖しく囁く。
ミス・パープルの囁きに、ゆかりはニッコリ微笑んだ。
「はぁい、わかりましたぁ…ゆかりを好きなようにしちゃってくださぁい。ミス・パープルさまぁ」
ゆかりがそう言うと、ミス・パープルから今までのものよりさらに濃厚な紫の煙が発せられる。
煙は恍惚の表情を浮かべたゆかりの両耳の穴に入り込み、彼女の中に消えていく。
(あぁ…アタマの中にもキモチイイのがきたぁ…さいこぉ…)
「も、もうだめぇ…あぁぁぁぁぁぁぁ!」
快楽の絶頂に上り詰めたゆかりは叫び声をあげ、糸の切れた操り人形のように崩れ落ちる。
そして、ゆかりの身体から濃い紫色の煙が噴き出すと、気絶した彼女の全身を包みこんでいった。
(そろそろかしら…)
紫のロングドレスを纏った『魔女』、ミス・パープルは目の前に作られた深紫色の繭を見つめ、両腕を広げる。
「さぁ、目覚めなさい」
すると、繭にピシリとひびが入り、やがて真っ二つに割れると、中から小柄な女性が姿を現す。
肩まで伸びた薄紫の髪、色白の肌に、髪の色と同じ薄紫のショートドレスを纏っている。
女性は幼さの残る顔に似合わぬ妖艶な笑みを浮かべ、ミス・パープルの前までくるとその場に跪き、頭をたれた。
「今の気分はいかがかしら、ゆかり?」
「全身に快感が広がっていて、最高の気分です。ミス・パープル様」
ミス・パープルに『ゆかり』と呼ばれた女性は嬉しそうに彼女を見つめた。
「今の貴女は『藤野ゆかり』ではなく、『パープル・シャドウ』…私の『影』、私の『分身』」
「…私は『パープル・シャドウ』…ミス・パープル様の『影』…」
ゆかり―パープル・シャドウはミス・パープルの言葉を復唱し、自分自身に言い聞かせる。
「私に『様』はいらないわよ。貴女は私なのだから…」
「失礼しました、ミス・パープル」
「それと、貴女は『カラーズ』のシモベだけど、私の命令だけに従いなさい。私の命令が『カラーズ』からの命令よ、わかったわね?」
「はい、わかりました。私はミス・パープルの命令を『カラーズ』からの命令とし、その命令のみに従います」
パープル・シャドウはミス・パープルの言葉を疑うこともしなかった。
今の彼女にとってはミス・パープルが絶対の存在とされていたからだ。
「じゃあ、最初の命令よ、パープル・シャドウ。『藤野ゆかり』の姿に戻って、今までどおりの生活を続けなさい。そして、私に『ペインター』の情報を流すのよ」
パープル・シャドウはミス・パープルの命令に笑顔で答えると、目を閉じて小声で何か呟く。
すると、パープル・シャドウの身体は薄紫色の風に包まれ、一瞬のうちに藤野ゆかりの姿に変身した。
「では、行って参ります…早く元の姿に戻って、貴女とともに世界を支配したいですわ」
『ゆかり』はそう言うと、ミス・パープルと甘い口付けを交わし、部屋から姿を消した。
「うふふ…素敵な『人形』が手に入ったわ。ザコ戦闘員とヘボ怪人を生み出すことしか脳がないドクトル・グレイより、私のほうが優れているということを総帥に見せてさしあげますわ」
ミス・パープルはそう言うと、ヒールの音を高く鳴らし、部屋から姿を消したのだった。
いかがでしたでしょう?
闇月様、ありがとうございました。
またよろしくお願いいたします。
- 2009/06/05(金) 21:32:13|
- 投稿作品
-
| トラックバック:0
-
| コメント:9
おひさしぶりです。
闇月さまのお話にコメを描かせていただくのは、はじめてだと思います。
ミス・パープルの肉声が、じかに鼓膜を揺るがせたような錯覚に陥りました。
若干エコーがかかっていたのは、わたしも洗脳されかけたから?^^;
さらさらと読みやすい文章と、濃厚な中身。
ぬるりとした心地よいひと刻を、ありがとうございました。
deadbeetさまの冷静な観察力にも、思わずニヤリ。
読者の方々の質の高さも、敬服いたしております。
- 2009/06/06(土) 06:34:08 |
- URL |
- 柏木 #D3iKJCD6
- [ 編集]
このたびは『ディープ・パープル』を読んでいただきありがとうございました。
もうSSは書くことはないだろうと思っていましたが、妄想がそれを許してくれませんでした(苦笑)
「今まで書いた作品と異なるものを…」を目指してこの作品を書いてみましたが、いかがでしたでしょうか?
コメント、たくさんいただきありがとうございます。
>metchy様
お久しぶりです。
『紫の煙』は催淫性と中毒性と洗脳効果と改造効果を併せ持つ、ミス・パープルの魔術といったところでしょうか。
今回の作品ではシチュ中心の短編にしたかったので、両組織のことや登場人物の説明は最低限のことしか書きませんでした。
>神代☆焔様
お久しぶりです。
余計なことを深く考えないでみたらこんな作品が書けちゃいました(苦笑)
>アクノス所長様
はじめまして。
今回の作品では「エロい」というコメントがいちばん嬉しいです。
パープル・シャドウはミス・パープルの『人形』というのが正確なところですので、使えるのは瞳術くらいでしょうか…
>ジャック様
お久しぶりです。
続編希望は大変嬉しいのですが、これ以上はちょっと無理なんです。
すみません…m(_ _)m
>deadbeet様
お久しぶりです。
「パープル・ヘイズ」が何かわからなかったのでググってみましたら…納得です。
ミス・パープルはドクトル・グレイと仲が悪いんです。だから自分にのみプラスになる手駒がほしかったんでしょうね。
>柏木様
はじめまして。
柏木様もミス・パープルに洗脳されかけましたか…作者としては嬉しいことです。(ニヤリ)
>Mizuha様
はじめまして。
「目で身体の自由を奪う」はよく使う手なんですが、あとの2つは初めて使ったシチュかもしれません。
気に入っていただき光栄です。
Mizuha様のブログも表・裏両方拝見させていただいております。
表の小説は現在連載されている部分が私にとってはモロ好みでして、毎回楽しませていただいておりますよ。
>舞方雅人様
こちらこそ作品を掲載していただきありがとうございました。
ココロ…じゃなかった(笑)、心より御礼申し上げます。
- 2009/06/06(土) 23:28:27 |
- URL |
- 闇月 #04hOWrHY
- [ 編集]