マジョリコの二回目です。
楽しんでいただければ幸いです。
2、
「茉莉子。オボエテイルカ? 余ハ以前オ前ヲ我ガ物トシタイト言ッタコトガアル」
茉莉子はぞっとした。
確かにX-13は機能試験のときに茉莉子に言い寄ったのだ。
そのときは夫の弘文がいたずらにプログラムを仕込んだんだろうと思っていた。
だから、軽くいなして、それで終わったと思っていたのだ。
まさか今に至るまで執着しているとは・・・
彼女は夫の袖にしがみついた。
「アノ時茉莉子ガ言ッタコトヲ余ハ忘レテイナイ」
自分はなんと言ったのだろう・・・
茉莉子は記憶を手繰り寄せるが、何を言ったのかは思い出せなかった。
「何をするつもりだ、X-13!」
「黙レ!」
志島博士を一括するX-13。
その上でゆっくりと茉莉子に視線を移す。
「茉莉子、オ前ハコウ言ッタノダ。 “残念ね。私は人間だからロボットと一緒にはなれないわ。私がロボットだったら、きっとX-13のことを好きになっていたと思うけどね。” ト」
茉莉子の顔は青ざめた。
「余ハ今日オ前ヲ迎エニ来タ。オ前ヲロボットニ改造シ。我ガモノトシテクレル」
あごをしゃくるX-13。
すぐに戦闘ロボットがわらわらと駆け寄り、志島博士と茉莉子の躰を押さえつける。
「くっ、は、離せ! 離せー!」
「いやぁっ! 離して、離してぇっ!!」
両腕をがっちりとアームで掴まれて身動きが取れなくなる二人。
そして志島博士はずるずると引きずられ、壁際に押さえつけられてしまう。
「クハハハハ・・・志島博士、余ヲ造リ出シテクレタ礼ニ、オ前ノ妻ガロボットニナルトコロヲ見セテヤロウ」
不気味に笑うX-13。
「ふ、ふざけるな!! そんなマネをさせるものか!」
必死に身をよじり、何とかアームの戒めを解こうとする志島博士。
だが、戦闘ロボットに押さえつけられた躰は動きようがない。
「あ、あなた・・・あなたぁ・・・」
同様に押さえつけられている茉莉子。
左右の戦闘ロボットが、がっちりと茉莉子の腕を固定している。
「茉莉子。茉莉子ぉ!」
二人は必死に何とかしようとするものの、どうすることもできなかった。
ぱちんと指を鳴らすX-13。
すると、するすると滑るように三台ほどの台車が自動的に入ってくる。
そしてX-13の脇に止まると、それぞれが結合して一基の自動手術台のように変化した。
「ソノ女ヲ乗セロ」
茉莉子を掴んでいる戦闘ロボットに命じるX-13。
「「キュビーッ!!」」
茉莉子の両脇にいる戦闘ロボットが、一つ目のような円形のレーダースコープを輝かせ、命令の受領音とも言うべき音声を発する。
ロボット帝国の了解の合図だ。
「いやぁっ!!」
両脇を抱えられるようにして手術台に連れて行かれる茉莉子。
必死に抵抗するが、女性の力では戦闘ロボットを振りほどくことなどできはしない。
「いやぁっ! たすけてぇっ! あなたぁ・・・」
首を振って泣き喚く茉莉子。
「茉莉子ぉっ! 畜生! 茉莉子を離せっ!」
志島博士も必死でアームを振りほどこうとするが、やはり身動きは取れなかった。
そうしているうちに、茉莉子を連れた戦闘ロボットは、茉莉子を自動手術台に載せてしまう。
そして両手両脚を固定し、身動きができないようにしてしまった。
「ククククク・・・茉莉子ヨ、ソウ怖ガルコトハナイ。改造ハスグニ終ワル。オ前ノタメニ実験ヲ繰リ返シタノダ。一時間モアレバオ前ハロボットトシテ完成スル」
そう言って茉莉子の顔を覗き込むX-13。
茉莉子は真っ青になって首を振った。
「いや、いやです。お願い。赦して。ロボットになんかなりたくない」
「ソンナコトヲ言ウノモ今ノウチダ。ロボットニナレバ思考モ変ワル」
茉莉子の頬をそっと撫でるX-13。
「いや・・・いやぁ・・・」
茉莉子はただ首を振る。
もう正常な判断もできないのだ。
「可愛イ茉莉子ヨ。生マレ変ワルガイイ」
X-13の指が、手術台のスイッチを押した。
甲高い金属音を上げ、手術台の周りからいくつものアームがせり上がる。
「きゃぁー!!」
悲鳴を上げる茉莉子の口にカバーがかけられ、麻酔ガスが流される。
透明なカバーが手術台を覆い、内部を殺菌剤が除菌する。
くたっと意識を失った茉莉子に、いくつものアームが突き立てられ、それぞれ作業を開始した。
「茉莉子ぉーっ!」
志島博士が悲鳴にも似た叫び声を上げる。
彼の目の前で、愛する妻は衣服を剥ぎ取られ、生まれたままの姿にされていく。
そして何本ものアームの先端がレーザーメスとなり、その滑らかで美しい皮膚を切り裂いていった。
「やめろーっ! やめてくれーっ!!」
夫の叫びは意識を失った妻には届かず、彼はただ妻の躰に機械が埋め込まれていくのを見ているしかなかった。
茉莉子の躰はみるみる機械化されていった。
皮膚には液体金属が注入され、骨は軽量金属の骨格に取り替えられる。
内蔵は取り去られ、動力炉や各種制御装置が埋め込まれる。
形よい胸は形状を保持したままレーザーの発射機に改造され、母乳を生成する器官から攻撃兵器へと変化する。
体表面の毛髪は全て剃り取られ、黒光りする薄くて強靭なメタルスキンが張り付けられる。
食事の必要も発声の必要もなくなった口はカバーで覆われ、目はカメラアイに、鼻はにおいを感じるセンサーへと置き換わる。
やがて、茉莉子は全身を黒光りするメタルスキンに覆われた、女性型アンドロイドとも言うべきものに変化した。
「起動セヨ」
全ての作業が終了し、透明なカバーが取り払われた手術台に向かって、X-13が命令する。
「ピッ・・・起動命令ヲ受領。起動シマス」
カバーに覆われてしまった口元から、機械音声が流れてくる。
それは茉莉子の声によく似ていた。
目を開けて、ゆっくりと起き上がる茉莉子。
その足はブーツを履いたような形に変わり、指はなく、かかとがハイヒールのようになっている。
滑らかな曲線を描く脚部は、黒いメタルスキンが全体を覆い、足首やひざの部分が蛇腹状に稼動するようになっていた。
下腹部から腰にかけてもメタルスキンがつややかに黒光りし、つるんとした股間には女性器は存在すらうかがうことができなかった。
胸はメタルスキンに覆われた二つのふくらみが乳房を形作っているものの、先端にはカバーがかけられ、レーザーの発射口を隠している。
肩から両腕にかけてもメタルスキンが覆い、指先までつややかに輝いていた。
そして、首から頭部にかけてもすっぽりとメタルスキンが覆っており、わずかに目元だけが人間の面影を残すように肌が露出している。
無論、その肌も金属質に変化しているのはいうまでもない。
いわば茉莉子は、金属でできた全身タイツをまとったような姿だった。
そのラインは女性の美しさを保持しており、異質の美しさをかもし出していた。
「ああ・・・茉莉子・・・」
変化してしまった妻に言葉を失う志島博士。
だが、本当の絶望はこれからだった。
「起動チェック終了。各部異常ナシ。えっ? こ、ここは? 私はいったい?」
突然戸惑ったようにきょろきょろと辺りを見回す茉莉子。
何がどうなったのか、わかっていないようだ。
「ククククク・・・マダ脳ガ人間ノ自我ヲ保持シテイルノダ。ダガ、人間ノ脳ハ順応ガ早イ。スグニロボットトシテプログラムニ従ウヨウニナル」
X-13が不気味に笑う。
「えっ? ええっ? こ、これは・・・」
自分の躰を見て愕然とする茉莉子。
「い、いやぁっ!! こんなのはいやあっ!! 戻して! 元に戻してぇっ!!」
頭を抱えて喚き叫ぶ茉莉子。
機械にされてしまったなど受け入れることができるはずないのだ。
「喚クナ。余ノ元ヘ来テ完成ヲ報告セヨ」
X-13のその言葉に、茉莉子の叫びがぴたっと止まる。
「キュビーッ! カシコマリマシタ、サー・ティーン様」
スッと歩き出し、X-13の元へ行く。
「キュビーッ! 報告シマス。私ハ帝国製試作型生体脳メスロボットXW-8。ロボット帝国バンザイ。サー・ティーン様ニ栄光アレ」
右手をスッと上げ、X-13に敬礼する茉莉子。
その姿は直立不動でためらいもない。
「えっ? あ・・・私は、何を・・・」
だが、その表情が一瞬で変わる。
愕然とした眼差しで、X-13を見上げる茉莉子。
自分が言ったことが信じられなかった。
「フッ・・・」
優しそうな笑顔を見せ、そっと抱き寄せるように茉莉子を引き寄せるX-13。
そして言い聞かせるように耳元でささやく。
「ソレデイイノダ。何モ考エルコトハナイ。オ前ハロボット。余ガフサワシイ名前ヲツケテヤロウ」
「なま・・・え?」
それが何を意味するのかを知り、恐怖する茉莉子。
名前すら奪われてしまうのだ。
「あ・・・いや・・・いやです」
弱弱しく抵抗の言葉を口にする茉莉子。
だが、与えられたプログラムが、皇帝から名前をもらえることを喜びと感じるように仕向けてくる。
茉莉子は沸きあがってくる喜びに、何とか抗おうとしていたのだった。
「オ前ハメスロボット。人間ドモニ恐怖ヲ与エル魔女トナルガイイ。コレカラハ“マジョリコ”トシテ余ニ仕エルノダ」
耳元でささやかれた言葉が、まるで焼きごてで押したかのように脳裏に刻まれる。
「キュビーッ! 登録イタシマシタ。私ハ帝国製試作型生体脳メスロボットXW-8マジョリコ。サー・ティーン様ニ永遠ニオ仕エスルコトヲ誓イマス」
自分の意思とは関係なくスピーカーから声が出る。
カバーに覆われた口は動くことさえしていない。
「ああ・・・いや・・・違う・・・私は・・・私の名前は・・・ピッ、メモリーニ不整合ガ発生シマシタ」
茉莉子の脳が、必死に与えられた名前を拒絶する。
「登録名ヲ上書きシ、メモリーヲ整合サセヨ」
非情に命じるX-13。
「いや、いやぁっ! ピッ、登録名ヲ上書キシマシタ。メモリート整合シマシタ。ああ・・・そんな・・・私は・・・私の名前は・・・マジョリコ。XW-8マジョリコデス」
茉莉子の脳裏から、一瞬にして名前が消されてしまう。
もはや彼女は自分の名をマジョリコとしか考えることができなくなっていた。
「ソレデイイ。マジョリコヨ、オ前ノ能力ヲ確認シテヤロウ。エロスモードヲ起動セヨ」
「キュビーッ! カシコマリマシタ、サー・ティーン様。エロスモードヲ起動シマス。アア・・・ン・・・ハア・・・」
いきなり腰をくねらせるマジョリコ。
うっとりとした眼差しでX-13を見上げ、切なそうな吐息を漏らす。
「クククク・・・イイ娘ダ。サア、シャブルガイイ」
「ハイ、サー・ティーン様」
マジョリコはX-13の元にかがみこむと、軍服のズボンのファスナーを開き、中から巨大な一物を取り出した。
「アア・・・素敵ナペニスロッドデス。オシャブリサセテイタダキマス」
シュコッという音がして、マジョリコの口元のカバーが開けられる。
するとそこには、自動車のガソリン給油口のような円形の穴が開いていた。
マジョリコはうっとりと、おもむろにその穴にX-13のペニスロッドを差し込んでいく。
「や、やめろ! やめるんだ茉莉子!」
極力人間に模して作ったことが、今志島博士を絶望の淵に追いやっていた。
X-13のペニスロッドを咥えこみ、頭を前後に振っていくマジョリコ。
うっとりと目を閉じて、快感に酔いしれているようにさえ見える。
「アア・・・ハアン・・・美味シイ・・・美味シイデス、サー・ティーン様。サー・ティーン様ノパルスガ私ノ躰ヲ駆ケ巡ッテマス」
咥えこんだままスピーカーより声を出すマジョリコ。
人間には不可能なことを、彼女はもはや何の問題もなくやっていた。
「ククククク・・・イイゾ。オ前ノ口ハ最高ダ」
両手でマジョリコの頭を抱え込むようにして、さらに奥まで差し込んでいくX-13。
その様子に、もはや志島博士は目をそむけるしかできなかった。
- 2009/05/29(金) 21:28:42|
- マジョリコ
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