1940年6月、ドイツ軍の電撃戦の前に、フランスは崩壊。
ついに降伏へと追い込まれました。
このフランスの降伏により、ドイツは戦車を始めとする多くの軍用車両を捕獲することができました。
その捕獲軍用車両の一つが、ロレーヌ社の開発した軍用牽引車でした。
ロレーヌ社は鉄道車両のメーカーでしたが、軍用車両にも進出し、フランス軍の要望に応じて開発したのが37Lと呼ばれる牽引車で、野砲の牽引用だけではなく、燃料車や弾薬車を牽引するような汎用牽引車として開発された車両でした。
また37L自体も、後部に貨物スペースを持っており、装甲も施されているので、第一次世界大戦のような塹壕戦であれば、塹壕の間を回って歩兵に弾薬を届けるという役目を果たすことも可能でした。
1941年にソ連へと侵攻したドイツ軍は、そこで思わぬ強敵T-34やKV-1に出会います。
このT-34やKV-1には、当時のドイツの主力対戦車砲であった37ミリ対戦車砲や、主力戦車の三号戦車の50ミリ主砲ではなかなか撃ち抜くことができず、88ミリ高射砲のお世話になることもままありました。
そんななか、対戦車砲として75ミリ対戦車砲PAK40が完成します。
75ミリ対戦車砲PAK40は、威力としては充分で、大戦中盤から後半にかけてのドイツの主力対戦車砲となりますが、その重量が弱点でした。
威力のある対戦車砲は、頑丈に作らなくてはならず、どうしても重量がかさみます。
PAK40も一トンを超える重量があり、砲兵の人力では布陣や移動が非常に困難な重量でした。
そのため、自走砲として運用しようという考えが自然と起こることになりました。
75ミリ対戦車砲PAK40は何種類かの自走砲になるのですが、そのうちの一種にこのロレーヌの牽引車37Lに搭載したものが作られました。
ロレーヌ牽引車37Lは、エンジンが車体中央に位置しており、後部にある荷物室がそのまま主砲の操作場所として使えるため、車体そのものにはそんなに改造が必要ないため、自走砲にしやすかったのです。
車体が小型のため、75ミリ砲を囲む装甲版がずいぶん車体をはみ出すような形で取り付けられましたが、移動するには問題なく、量産に移されます。
正式名称は、75ミリ対戦車砲PAK40/1搭載ロレーヌ牽引車というものでしたが、非公式にはマルダーⅠという愛称がつけられました。
マルダーとは動物のテン(貂)のことだそうです。
マルダーⅠは、同じ75ミリ対戦車砲PAK40を搭載したマルダーⅡやマルダーⅢと同様に、その威力のある主砲でタンクキラーとして活躍しました。
しかし、防御力は弱いため、敵に発見されると破壊されてしまうことが多かったようです。
マルダーⅠは170両あまりが製造され、フランス駐留のドイツ軍の一翼を担って、連合軍のノルマンディー上陸以後の戦いに投入されました。
ロレーヌ牽引車を改造した自走砲としては、一番多く作られたものだったそうです。
それではまた。
- 2009/05/20(水) 21:10:21|
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昔のジオラマには、誰もがタイガーIとマーダーを並べてましたね。
味のあるデザインでしたから、冬季ロシア仕様のカラーリングが好きでした。
- 2009/05/20(水) 21:34:50 |
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>>神代☆焔様
ああ、それはもしかしてマルダーⅡではないですかね?
マルダーはⅠ、Ⅱ、Ⅲとあるので、間違いやすいかも知れません。
冬季ロシア仕様のカラーリングは私も好きです。
- 2009/05/21(木) 19:47:38 |
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- 舞方雅人 #-
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田宮模型の1/72モデルですから、そうですね。
今、PSのゾイド2をやってまして、マルダーと書くとマップ攻撃をして来る帝国軍のイヤなカタツムリを思い浮かべてしまうので、敢えて、マーダーと書きました(笑)
- 2009/05/22(金) 01:14:31 |
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- 神代☆焔 #-
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>>神代☆焔様
おお、ゾイド2にはそんなものがでてくるのですか。
まあ、ドイツ語の発音など、正確に書けるわけもないですからね。
マルダーでもマーダーでもいいと思います。
資料によってもまちまちですしね。
- 2009/05/22(金) 21:19:23 |
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- 舞方雅人 #-
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