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舞方雅人の趣味の世界

あるSS書きの日々

クリミア戦争(16)

豚インフルエンザの危険度がフェーズ4に引き揚げられたとのことで、感染地域からの日本への入国が空港で四ヶ所、港で三ヶ所に限定されるとのことですね。

ゴールデンウィークを前にして、海外旅行にも影響が大きいのではないでしょうか。

さて、なんだかんだと続いております「クリミア戦争」ですが、16回目になります。
もう少しの間お付き合いくださいませ。


サルディニア・ピエモンテ王国の参戦は、ロシアにとっては驚愕の出来事でした。
この「クリミア戦争」に何の直接的利害関係を持たないはずのサルディニアが参戦してくることなど、通常では考えられないことだったからです。

ますます苦境に立つことになったロシアの皇帝として、ニコライ一世の苦悩は深まりました。
セバストポリそのものは何とか持ちこたえておりましたが、戦況は芳しくなく、打開の手立てもありませんでした。

2月に行なわれたフランス軍によるセバストポリ攻撃も、ロシア軍の抵抗により失敗に終わります。
ですが、ニコライ一世の心痛は限界に達しました。

1855年3月2日。
ロシア帝国皇帝ニコライ一世が崩御します。
一般的に死因は心痛によりインフルエンザをこじらしたためと言われますが、毒を仰いでの自殺だったという説も伝わっております。
「クリミア戦争」はついに当事国の皇帝すら死に至らしめたのでした。

ニコライ一世の崩御により、ロシア皇帝は息子のアレクサンドルが継ぐことになりました。
アレクサンドル二世として即位したアレクサンドルは、すぐに「クリミア戦争」の終結を図り、各国にその旨を打診いたします。

3月15日。
ニコライ一世の崩御から二週間足らずで各国の担当がウィーンにて会議を開きます。
議題はもちろん「クリミア戦争」の終結に向けてのものでした。
しかし、これは結局物別れに終わり、4月26日を持って閉幕します。

ウィーン会議に期待を寄せつつも、アレクサンドル二世は前線のロシア軍のてこ入れを行ないました。
総司令としての能力に疑問のあったメンシコフ公をここに来てようやく解任し、新たにゴルチャコフ公がクリミアのロシア軍の総司令官として着任します。
ゴルチャコフ公は強硬派として知られ、セバストポリを断固死守する考えでした。

一方連合軍側でもこの頃政権の交代が行なわれておりました。
戦争の激化による戦死傷者の増大や指揮官の無能力、戦費の増大による国民負担の増大、ナイチンゲールの伝えてくる戦場医療のふがいなさは、英国のアバディーン内閣への支持を失わせるには充分でした。
結局アバディーン内閣は総辞職をするしかなく、パーマストン内務大臣を中心としたパーマストン内閣が後を継ぐことになります。

パーマストン内閣はこれを機に英軍の軍政改革を行ないます。
国王直轄の歩兵と騎兵、議会直轄の砲兵や工兵、そしてこれらの装備に関する権限を持つ財務相や、植民地軍を管轄する植民地相などの入り乱れた軍政を解きほぐしてひとまとめにし、軍政を一元的に統括する陸軍大臣と陸軍省を設置したのです。
これにより、英軍は効率的な軍の運用が可能となったのでした。

ウィーン会議の最中にも、戦争は継続しておりました。
春になり増援も着々と到着していた英仏オスマン・トルコ連合軍は、その数約十七万にまで増大しておりました。

英国での内閣交代はフランスの皇帝ナポレオン三世にとっても他人事ではありません。
フランス国内でも「クリミア戦争」に対する厭戦気分は増大し、財政も逼迫し、国民の不満は鬱積していたのです。
そのためナポレオン三世は是が非でもセバストポリを攻略し、「クリミア戦争」をフランスが勝利に導いたという状況を作りたいと考えておりました。

ナポレオン三世はセバストポリのトートレーベン工兵中佐が要塞強化に当たっていることを知り、フランス工兵の重鎮ニール将軍を派遣して要塞攻略に当たらせます。
パーマストン内閣の英軍の態勢が整う前にフランス主導でセバストポリを陥落させようとの考えからでした。

1855年4月9日。
英仏オスマン・トルコ連合軍によるセバストポリ総攻撃が行なわれます。
双方合わせて九百門に及ぶ大砲が火を吹き、壮絶な撃ち合いが繰り広げられました。

連合軍は、砲撃により要塞の防御陣の一角を崩して、そこから歩兵が突入するという作戦でしたが、トートレーベン中佐の指揮の下で老若男女の市民が必死で補修する城壁は崩すことができず、かえって突入を図る歩兵の損害ばかりが増えるという第一回目と同じ状況の繰り返しでした。

結局総攻撃は22日まで行なわれましたが、セバストポリを陥落せしめることは叶わず、双方合わせて一万人ほどの死傷者を出すだけに終わりました。

ちなみに、ロシアの文豪トルストイはこの時セバストポリ要塞内で若き砲兵少尉として軍務についており、自身の経験やセバストポリ要塞内の様子などを短編小説に書いております。
この小説は皇帝アレクサンドル二世の目にも止まり、直ちにフランス語訳を作るように命じたほか、作者であるトルストイを危険地域外に移すように命じたといわれます。

5月にも小規模ではあるものの激戦が幾度かありましたが、セバストポリは頑強に持ちこたえました。
この膠着状況に業を煮やしたナポレオン三世は、フランス軍の司令官をカンロベール将軍からエマブール・ジャン・ジャック・ペリシエ将軍に交代させます。
とはいえ、状況がそう簡単に変わるものではありませんでした。

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  1. 2009/04/28(火) 21:18:28|
  2. クリミア戦争
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:3
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コメント

豚インフルエンザ、専門家の話では然程毒性が強いわけでもないのですが、初期症状が風邪に似ているために、病院に行かない人が多くてあそこまで広がったとか、諸説様々にありますが、死んだ人達は相当体が弱っていたんでしょうね。
 
それにしても、長いです。
かなり書き込まれてますので、それが原因だろうと推察します。
ここまで来たんですから、最後まで拘って下さい(笑)
  1. 2009/04/28(火) 22:13:09 |
  2. URL |
  3. 神代☆焔 #-
  4. [ 編集]

また、的外れになるかもしれないけれど……w
農林水産省がメキシコ産の豚肉は加熱してあるから大丈夫
それを輸入して更に加熱するからもっと大丈夫
なーんて言ってるけれど、国民が安心できるデータ的なものは何も無し

真面目な人も居るわけだから、疑う心は良くないけれど
どうせ、情報や実態を知ってて金持ってる連中は食わないんでしょ?

利益って人間一個の命より大事なもの?
人間って一定の利益を生むか生まないかで命の重さが違うの?
などとシケたことを言ってみたり

非加熱生製剤でエイズ感染とか拉致問題とか
毒冷食とか毒米とか基準値超えた悪性素材の使用とか
国家全体の被害としては甚大でなくとも
確かなテロの恐怖と不安が大衆を覆っている現状だと
自国の言うことすら疑わしくなる昨今

なんだか、人死にの少ない戦国時代のような世の中ですわね
社会不満が溜まって革命とか戦争とか起こりませんように……

クリミア戦争の記事、頑張りすぎずに頑張って、纏めてくださいね~
ノシ
  1. 2009/04/29(水) 00:49:33 |
  2. URL |
  3. ジャック #-
  4. [ 編集]

>>神代☆焔様
メキシコでだけ死者が出ているというのがよくわからないといわれてますよね。
「クリミア戦争」に関しましては、もう少しお付き合いくださいませ。

>>ジャック様
風評被害と冷静な対応を求めたいということなのでしょうし、豚肉そのものは問題ないとは思いますけど、利益が絡んでくると人命が軽視されるのはやめてほしいですよね。
革命や戦争は私もいやですー。
  1. 2009/04/29(水) 21:03:12 |
  2. URL |
  3. 舞方雅人 #-
  4. [ 編集]

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