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舞方雅人の趣味の世界

あるSS書きの日々

クリミア戦争(14)

「バラクラヴァの戦い」は終わりました。
英仏オスマン・トルコの連合軍も、ロシアもまたしても決定的な勝利を得ることはできませんでした。

1854年11月3日、ナイチンゲールら看護婦一行が、クリミア半島とは黒海を挟んで対岸側にあるコンスタンチノープルの東にあるスクタリという場所に到着します。
ここの小高い崖の上のオスマン・トルコ軍の兵舎が、英軍に割り当てられた野戦病院として使われておりました。
つまり、わざわざ英軍は戦場から遠く離れた黒海対岸に、傷病兵を運んでいたのです。

スクタリの野戦病院に到着したナイチンゲールら一行は、あまりの状況の悪さに愕然としたと言います。
そこには飲料水も食料も医薬品も乏しく、傷病兵のベッドやトイレも不十分で、不衛生で老朽化した場所でした。
傷病兵たちは粗末なわらの寝床を床に敷き、その上に放置されるがままになっていて、コレラや赤痢のような病気も蔓延していたのです。

このような状況に、現場の医者たちはさぞかしナイチンゲールら一行の到着を喜んだかというと、現実はまったくの正反対でした。
医者たちは彼女たち看護婦の到着を迷惑としか考えていなかったのです。
現場を知らない貴婦人がただ来ただけで何ができるものか。
本国の役人にどう取り入ったのかは知らないが、自分たちの職務に干渉するのだけはやめてほしい。
そんな思いで彼女たちを見ていたのでした。

当然病院側は彼女らには何もさせようとはしませんでした。
一室を与えただけで、何の指示も出しません。
何もしてほしくないと言う意思表示だったといわれます。

ナイチンゲールは、本国を出てくるときに自費と支援者からの援助金を持って出てきておりました。
また、シドニー・ハーバート戦時大臣は彼女の友人であり、彼女を援護するべく多大な権限を彼女に付与して、現地での活動をしやすくさせてくれておりました。
そのため彼女は、まず活動資金から自分たちの家具などをそろえ、自分たち用の食料品などもそろえました。

最初のうち、病院側との無用の衝突を避けるために、ナイチンゲールたちは自分たちの分の食料しか自炊しませんでした。
しかし、「バラクラヴァの戦い」ののち、大勢の傷病兵が担ぎ込まれるに従い、ただでさえ手が回らない野戦病院内では、傷病兵への食事さえ満足に配給できない有様となります。

見るに見かねた看護婦たちが、自分たちの資金で都合した食料を配給するようになると、病院側は認可を受けていない行為だと文句をつけました。
ですが、数日のうちに傷病兵への食糧配給は、ナイチンゲールらの手を借りなくてはどうにもならなくなりました。
病院側もしぶしぶ、ナイチンゲールに助力を求めます。
とりあえずは一歩前進というところでした。

1854年11月5日。
クリミア半島では「インケルマンの戦い」が起こります。

各方面でロシアに対抗する各国軍と対峙していなくてはならないロシア軍でしたが、それでもほそぼそとクリミア半島へ兵力を送り込んでおりました。
11月に入りメンシコフ公の手元には約一万の増援が届き、総兵力は約八万二千と連合軍を上回るものとなったのです。
メンシコフ公はここでもう一度連合軍への攻撃を行なうことに決めました。

ロシア軍は、11月5日未明、セバストポリ北東に位置する英軍陣地へと奇襲をかけました。
三軍に分かれて攻撃してきたロシア軍に、英軍は大苦戦を強いられます。
陣地を守っていたのは英軍第二師団でしたが、師団長エバンスの警告にも関わらず防備を固めようとさせなかったラグラン卿のために、まともに奇襲を食らってしまったのです。

それでも初戦の混乱から立ち直り、粘り強く陣地を固守する英軍に、ロシア軍は攻めあぐね始めました。
何度となく攻撃をかけられるものの、そのつど英軍はどうにか陣地を守り抜き、ロシア軍を跳ね返します。
転機が訪れたのは、ここでもやはり仏軍の到着でした。
わずか三百にまで撃ち減らされ、あわや壊滅かと思われた英軍第二師団の救援に、カンロベール将軍が差し向けた仏軍約六千が到着したのです。

仏軍の到着に、ロシア軍は対抗することができませんでした。
その日の午後にいたり、ついにロシア軍は戦場を後退。
英軍陣地はかろうじて陥落をまぬがれました。

わずか半日の戦いでしたが、ここでも両軍は大きな損害を出しました。
英仏連合軍は約四千二百の死傷者を出し、ロシア軍も約八千八百と言う死傷者を出しました。
苛烈な戦いは、両軍に血のいけにえを求め続けます。
そして、この連合軍の負傷した兵士たちは、またしてもスクタリの野戦病院へと送られるのでした。

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  1. 2009/04/23(木) 21:11:58|
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