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舞方雅人の趣味の世界

あるSS書きの日々

クリミア戦争(12)

セバストポリ要塞に対する最初の攻撃は、わずか四時間で中止の憂き目を見ることとなりました。
英仏オスマン・トルコの連合軍は、あらためて要塞攻略を一から練り直す必要に迫られます。
結局、力押しではなく正攻法での攻撃をするしかないとの結論に達し、以後要塞攻略は塹壕のような坑道を地面に掘りながら接近すると言う時間のかかる攻撃法を取ることになりました。

連合軍が攻撃の手を一時的に緩め、正攻法へと転換していると言う状況は、要塞から主力を引き連れて脱出し、バクシサレーへと後退したメンシコフ公にもわかっておりました。
彼は今こそが連合軍を叩く好機と考えます。
折りから皇帝より約一万の増援を得ることができていた彼は、すぐさま出撃を命じました。
目標はバラクラヴァ。

カミーシュ港から補給を得ている仏軍とは違い、バラクラヴァ港から補給を得ている英軍は、その前線までの補給線を一本の道路に託しておりました。
補給線の東側、つまりロシア軍と面することになる側には、一応の陣地を築いて防備を図っておりましたが、兵力のほとんどをセバストポリ攻略に振り向けるため、その防御陣地にはわずかな兵力しか配備しておりませんでした。

メンシコフ公はここに目をつけたのです。
補給線を寸断すれば、前線の兵力は食料も弾薬も届かずに撤収するしかありません。
そうなればセバストポリの包囲は崩れ、連合軍の作戦が大幅に狂うことになるのです。

メンシコフ公は、約二万五千の兵力をリプランジ将軍に預け、バラクラヴァへ向かわせます。
この時、バラクラヴァから前線へと延びる補給路沿いには、キャンベル将軍指揮下の第93ハイランド連隊とバラクラヴァの港そのものを守る海兵部隊、それと丘の上を守る騎兵部隊、そしてオスマン・トルコ軍歩兵が千百ほど布陣しているだけでした。

1854年10月25日。
英軍にとってのちのちまで語り継がれることになる「バラクラヴァの戦い」が発生します。
戦いはまず、補給路を守るためにいくつか築かれていた砲台(堡塁)に対するロシア軍の攻撃から始まりました。

ロシア軍が攻撃をかけた一帯には、渓谷の中を通る土手道(コーズウェイ)と呼ばれる通り(補給路とは別)を挟んで、北にノースバレー、南にはサウスバレーとカンロベールの丘があり、このカンロベールの丘から土手道に沿って東から西へ堡塁が連なっておりました。

早朝五時、ロシア軍はまず一番東の堡塁からドニエプル連隊に支援されたウクライナとアゾフの両連隊が襲い掛かりました。
堡塁守備についていた英軍砲兵とオスマン・トルコ兵は必死の防戦に努めましたが、やはり衆寡敵せず最初の堡塁はロシア軍の前に陥落します。
さらに第二第三の堡塁も陥落し、第四の堡塁までもが午前七時までにロシア軍に奪われました。

その間、第93ハイランド連隊をはじめとする連合軍は、兵力が少ないために堡塁救出に向かうこともできず、味方の苦戦と堡塁の陥落をただ歯噛みしながら眺めているしかありませんでした。
一方戦場の西側にある高地には、英軍総司令官のラグラン卿が仏軍のボスケ将軍とともに陣取り、司令部を設置しておりましたが、そこからもロシア軍の攻撃で各堡塁が陥落するのは見ることができました。
ラグラン卿はこの事態に、急遽第一師団と第四師団を包囲部隊から引き抜いて差し向けることにしましたが、両師団とも要塞へ接近するための坑道掘りに従事していたため疲労が激しく、すぐには救援に向かうことができない状況でした。

第四までの堡塁を陥落させたロシア軍は、頃やよしと見てリュジョフ将軍麾下の騎兵部隊三千を、第93ハイランド連隊の陣地へと突撃させます。
第93ハイランド連隊の兵力はわずか五百五十ほど。
ロシア軍騎兵の突撃の前には抵抗むなしく蹴散らされてしまうと思われました。

しかし、キャンベル将軍指揮する第93ハイランド連隊の兵士たちは、対騎兵用の方陣を組むことも無く横に広がる横隊を組んで銃を構えます。
薄く横に広がった隊形は、騎兵突撃に対するには不向きの隊形ではありましたが、彼らは臆することなく接近してくる馬上のロシア兵に狙いを定めました。
次の瞬間、約130メートルの距離でいっせいに射撃が開始され、ロシア軍騎兵は折り重なるようにして次々と撃ち倒されて行きます。
ロシア軍騎兵は、彼らを回りこもうと側面に向かいますが、第93ハイランド連隊の兵士たちは横隊の姿勢のままぐるっと回転し、さらに射撃を浴びせました。

この数度の射撃により、ロシア軍騎兵は混乱。
第93ハイランド連隊はかろうじて防御ラインに踏みとどまります。
この彼らの活躍は、着ている軍服の色から「Thin Red Line(シン・レッド・ライン):緋色の薄い戦線」と呼ばれ、英軍戦史に長く語り継がれることとなりました。
(のちに、太平洋戦争の映画にこの言葉が題名として使われることになります)

ロシア軍騎兵の混乱に、英軍司令官のラグラン卿が、今度は英軍騎兵に出撃を命じます。
ルカン卿の重騎兵連隊は、病気の兵の続出でわずか六百ほどにまで減少しておりましたが、それでも勇敢にロシア軍騎兵に立ち向かいます。
さらにカーディガン卿率いる軽騎兵連隊には土手道への進出が命じられ、七百ほどの軽騎兵を率いて出撃しました。

混乱したとはいえ、ロシア軍騎兵はまだ多くの兵力を持っておりました。
それに対してルカン卿の重騎兵はわずか六百に過ぎません。
ですが、英軍重騎兵はロシア軍騎兵に勇猛果敢に突撃し、そのあまりの攻撃振りにロシア軍騎兵は退却を余儀なくされてしまいます。

この時、土手道に進出していたカーディガン卿の英軍軽騎兵連隊が追撃していれば、この後の悲劇はまぬがれえたかもしれません。
ですが、カーディガン卿は土手道確保という任務を忠実に実行しようとするあまり、退却するロシア軍騎兵をただ黙ってみているだけでした。

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  1. 2009/04/19(日) 20:55:00|
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