FC2ブログ

舞方雅人の趣味の世界

あるSS書きの日々

クリミア戦争(9)

エフパトリアに上陸した英仏オスマン・トルコの三ヶ国連合軍は、上陸当初の混乱をどうにか終息させつつ、要衝セバストポリヘ向けてクリミア半島の南下を開始し始めました。
一方ロシア側はクリミア半島に五万の兵力を持っておりましたが、連合軍に対しては若干劣勢であり、しかも防御として篭るべきセバストポリの要塞群はまだ防御体制の準備未了の状態であったため、何とか防御準備の完了までの時間を稼ぐことを第一に考えなくてはなりませんでした。

そこで、ロシア軍のこの方面の司令官たるメンシコフ公は、連合軍がセバストポリ要塞に達する前に、行軍途上にあるアルマ河という川で連合軍を迎え撃つことにします。
このロシア軍司令官メンシコフ公とはロシア使節としてオスマン・トルコとの交渉に当たり、結局は交渉を決裂させてしまったあのメンシコフ公でした。

メンシコフ公は約三万五千の軍勢を率いてアルマ河の南岸に陣取ります。
このアルマ河は、クリミア半島中央部からほぼ東西に流れており、連合軍はセバストポリに行く前に必ず渡河しなくてはならない川でした。
北側(連合軍側)はなだらかなスロープになっており、あまり身を隠せるようなところがありません。
一方南側(ロシア軍側)は急斜面になっており、川を越えるとすぐに崖があったりして、丘の間を通る街道以外は通行困難な岩山になっておりました。
つまり、この岩山に適切に布陣すれば、連合軍はきわめて渡河攻撃しづらい場所だったのです。

しかし、連合軍には利点もありました。
産業革命がすでに国内に定着していた英仏は、その成果を軍事面でも有効に利用し始めておりました。
兵士たちの持つ銃も旧式の滑腔式銃(銃身内部に銃弾を安定させるためのらせん状の溝がない)ではなく、旋条式銃(銃身内部にらせん状の溝を掘ってあり、銃弾が回転してまっすぐ遠くに飛びやすくなる)を装備しており、火力の面では従来の軍隊よりも大幅にアップしておりました。

また、英仏軍の兵士はいわゆる国民軍であり、じょじょに国のために自らが戦うと言う意識が浸透してきておりました。
一方ロシア軍の兵士は徴募された農奴を中心とした兵士たちであり、貴族階級に無理やり戦わさせられていると言う意識が強く、いやいや戦っているに過ぎませんでした。
戦意という面でも大幅に連合軍は有利だったのです。

さらにもう一つ、連合軍に有利に作用したのがメンシコフ公の事前準備でした。
メンシコフ公はアルマ河南岸の地形が険しいことをあてにして、一部には堡塁を設けたものの、海側に兵力を配置しないなど防御態勢に不備のある布陣を取っていたのです。

このように連合軍にはいくつかの利点がありましたが、弱点もまたありました。
大きかったのは、やはり英軍司令官であるラグラン卿と仏軍司令官サン=タルノー元帥とを結びつける総司令部のないことでした。
ラグラン卿もサン=タルノー元帥もお互いに相手に手の内を見せようとはせず、それでいて共同作戦を取らねばならないと言うきわめて普通ではない指揮体制だったのです。

ラグラン卿は頑固な英国紳士で、悪く言えば自信過剰で自分の考えに固執するところがあり、仏軍司令官と相談するなどありえず、作戦会議では相手の意見にうなずいて見せたりするものの、実際にはその意見を無視することなど当たり前のことでした。
一方のサン=タルノー元帥は軍事能力に乏しい上に病床にあり、まともな作戦指揮など望めないものでした。
英仏連合軍は、ロシアを敵としてただその場に一緒にいるに過ぎないと言う連合軍だったのです。

さらにバルカン半島で猛威を振るったコレラが、ここクリミア半島でも連合軍を痛めつけました。
アルマ河の戦場に到着した時点で、すでに連合軍には多くのコレラによる病兵を抱えていたのです。
このコレラなどの病気による兵士の損害は、この後も戦争を通じて両軍を痛めつけました。

そんな状況の両軍がアルマ河で顔をあわせたのは、1854年9月20日のことでした。
これは実に1815年のワーテルローの戦い以来39年ぶりの欧州列強国同士の戦闘だったのです。

連合軍はそれでも一応は共同作戦のようなものを取ろうとしました。
アルマ河に向かって右翼に位置する仏軍がまずは渡河攻撃を仕掛け、ロシア軍の注意と兵力を引き付けたのちに英軍が左翼と中央で総攻撃を仕掛けると言うものでした。
総司令部と明確な指揮系統を持たない連合軍としてはこの程度の作戦が精いっぱいだったのです。

戦いは、まずは海岸側の右翼仏軍の渡河攻撃から始まりました。

(10)へ
  1. 2009/04/11(土) 20:53:47|
  2. クリミア戦争
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:0
<<まるで戦争映画のワンシーン | ホーム | クリミア戦争(8)>>

コメント

コメントの投稿


管理者にだけ表示を許可する

トラックバック

トラックバックURLはこちら
http://masatomaikata.blog55.fc2.com/tb.php/1515-ee8e379c
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

カレンダー

12 | 2020/01 | 02
- - - 1 2 3 4
5 6 7 8 9 10 11
12 13 14 15 16 17 18
19 20 21 22 23 24 25
26 27 28 29 30 31 -

AquariumClock 2

プロフィール

舞方雅人

Author:舞方雅人
(まいかた まさと)と読みます。
北海道に住む悪堕ち大好き親父です。
このブログは、私の好きなゲームやマンガなどの趣味や洗脳・改造・悪堕ちなどの自作SSの発表の場となっております。
どうぞ楽しんでいって下さいませ。

ブログバナー


バナー画像です。 リンク用にご使用くださってもOKです。

カテゴリー

FC2カウンター

オンラインカウンター

現在の閲覧者数:

最近の記事

最近のコメント

最近のトラックバック

月別アーカイブ

リンク

このブログをリンクに追加する

天気予報


-天気予報コム- -FC2-

メールフォーム

名前:
メール:
件名:
本文:

管理人にメールなどを送りたい方はこちらからどうぞ

ブログ内検索

RSSフィード

ランキング

ランキングです。 来たついでに押してみてくださいねー。

フリーエリア

SEO対策: SEO対策:洗脳 SEO対策:改造 SEO対策:歴史 SEO対策:軍事

フリーエリア