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舞方雅人の趣味の世界

あるSS書きの日々

クリミア戦争(8)

ロシア軍のバルカン半島からの撤収により、あわよくば漁夫の利をもってバルカン半島内の影響力を増そうと画策したオーストリアのもくろみは費えました。
これによりオーストリアはただロシアの反感を買っただけでしたが、オスマン・トルコとしてはロシア軍の撤収により、バルカン半島よりロシア軍を追い出すというこの戦争の目的は達せられました。

ベシカ湾から北上していた英仏連合軍は、アドリアノープルを経てさらに北上しておりましたが、ロシア軍が撤退したことで、こちらは別働隊の上陸したヴァルナへと向かい、ここで合流します。
この行軍は慣れない風土と非衛生な環境からコレラが蔓延し、ヴァルナに到着したときには一戦も交えないまま約二千もの兵士が倒れるというありさまで、英仏としては何も得るもののない行軍に終わります。
さらにガンに侵されていたフランス軍総司令官サン=タルノー元帥もコレラに倒れ、病床から指揮を取るという状況でした。

本来なら、ここでオスマン・トルコの戦争目的が達せられたために「クリミア戦争」は終わってしかるべきものでした。
ロシアの南下が防げた以上、英仏としても目的は達せられていたはずなのだからです。
しかし、古来戦争は始めるのはたやすく、終わらせるのは容易ではありません。
出兵したにもかかわらず、ただコレラで兵士を失う行軍をしただけでしたなどとは、英国のアバディーン内閣もフランスのナポレオン三世も国民に対して言えるはずがなかったのです。
目に見える戦果を得るまで戦争をやめるわけにはいきませんでした。

ガンとコレラに侵され、余命いくばくもない病床のフランス軍総司令官サン=タルノー元帥は、目に見える戦果をクリミア半島の要塞軍港セバストポリに求めました。
セバストポリは、クリミア半島の南部に位置する軍港で、ロシア海軍の黒海における根拠地でした。
このセバストポリを英仏軍が占領することで、ロシアに対する目に見える勝利を手に入れ、黒海からロシアの海軍勢力を排除して戦争終結に導くという構想だったと思われます。

英仏本国から遠いことで戦力も限られている英仏連合軍としては、クリミア半島という限定された戦場での勝利しか望みえず、この作戦しか取りようがなかったのかもしれません。
ですが、バルカン半島と違ってクリミア半島はすでにロシアの領土であり、今度はロシア側が侵入してきた敵を追い払うという立場に立つ国土防衛戦となります。
国土防衛戦となればそう簡単にはロシアも引くことはできません。
戦争は激しいものとなるに違いありませんでしたが、英仏もオスマン・トルコもこのサン=タルノー元帥の作戦を了承し、戦争の舞台はバルカン半島からクリミア半島へと移ることになりました。

クリミア半島及びその半島に位置するセバストポリは、ロシアにとってはとても重要な場所でした。
ここを制することで黒海全体を制していたと言っても過言ではないのです。
ところが、陸軍兵力はわずか五万程度しか置いてありませんでした。
ロシアは地続きのバルト海沿岸方面や現在のポーランド方面、そして撤収するはめにはなりましたがバルカン半島方面に陸上兵力を展開しており、まさか直接クリミア半島に戦火が及ぶなどとは考えていなかったのです。

1854年9月1日。
ヴァルナから英仏及びオスマン・トルコ連合軍がクリミア半島へ向けて出港しました。
輸送船約六百隻に分乗し、護衛の軍艦は百五十隻という大艦隊でした。
ヴァルナに残されたのは、コレラに倒れた兵士たちの数多くの屍だけでした。

この世界最強の英国海軍を主力とする軍艦群に対し、黒海のロシア艦隊はかき集めても六十隻ほどでしかなく、制海権は完全に連合軍のものでした。
そのため、ロシア海軍は上陸妨害を行うこともできず、連合軍はカラミタ湾エフパトリアに上陸します。

この時エフパトリアに上陸した兵力は、フランス軍が約三万二千、英軍が約二万六千、オスマン・トルコ軍が約七千という陣容でした。
三軍の連合軍である上に上陸直後ということもあって、エフパトリア上陸は大混乱に陥りますが、幸いにしてロシア軍の攻撃はなく、連合軍は態勢を立て直すことができました。

こうして連合軍約六万五千はセバストポリへ向けて南下を開始します。
いよいよクリミア半島での戦いが始まろうとしておりました。

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  1. 2009/04/10(金) 21:08:00|
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