何とか改造シーンまで書きたかったのですが、ちょっとそこまでいたりませんでした。
改造手術台の上の鈴美さんをお楽しみ下さいませ。
2、
「シュシューッ、怖がることはないわ。あなたは我がデライトによって選ばれた存在。人間を超える存在になれるのよ」
不気味に微笑む蜘蛛女。
その笑顔は優しく見えるものの、口元の牙や額の球形の目によって人間離れしている。
「い、いやです! 誰か、誰か来てぇ!」
鈴美は大声で叫ぶと振り返って走り出す。
そこにいる異形の者から一刻も早く遠ざかりたかった。
それが何者なのかは知らないがそばに居てはいけない者だ。
鈴美は本能的にそう感じ、走り出したのだ。
「シュシューッ、馬鹿な娘ね・・・こんな素晴らしい躰にしていただけるというのに・・・」
蜘蛛女はにやっと笑みを浮かべると、トンッという音とともにジャンプする。
そして音もなく民家の屋根に降り立つと鈴美の先回りをするべく中腰で駆け出した。
「はあっ・・・はあっ・・・」
息を切らせながら鈴美は走る。
後ろを振り返るのが怖い。
振り返ってもしそこにあの蜘蛛女がいたりしたら自分は腰を抜かしてしまうだろう。
そう思うととても怖くて振り返られなかったのだ。
だが、その必要ななかった。
鈴美の正面の白いもやの中から再び蜘蛛女が姿を現す。
「あ・・・ああ・・・」
驚きのあまり立ち尽くす鈴美。
いったいいつの間に正面に回りこんだのか・・・
「シュシューッ、驚くことはないわ。私は改造戦士ですもの。人間など足元にも及ばない動きができるのよ」
カツコツとヒールの音が闇に響く。
くすくすと薄く笑いながら蜘蛛女はゆっくりと近づいてくる。
「い、いや・・・来ないで・・・来ないでよぉ!」
鈴美は必死になって叫び、再び踵を返して走り出そうとした。
だが、シュッという音がして鈴美は脚を取られてしまう。
「キャアッ!」
思い切り前につんのめって転んでしまう鈴美。
「シュシューッ、逃がしはしないわ。一緒に来てもらうわよ」
鈴美が振り返るとそこには蜘蛛女が両手に白い糸を持ち、その糸が彼女の足に絡んでいるのが見て取れた。
蜘蛛女の糸は股間から伸ばされ、それを彼女は器用に両手で操っている。
「いやぁっ」
鈴美は必死になって足に絡みついた糸を外そうと両手を伸ばしたが、粘つく糸は外れるどころか彼女の指先まで絡め取ろうとくっついてくる。
「ああ・・・いやぁっ」
指先に絡みつく糸を解こうとしてもまったくかなわない。
「シュシューッ。無駄なことはおよしなさい。私の糸はダンプカーだって動きを止められるほど強靭なのよ」
蜘蛛女はさらに糸を繰り出して絡み付ける。
鈴美がもがけばもがくほど糸は両手足に絡まって行き、動きを固められてしまうのだ。
「だ、誰かぁ・・・助けてぇ!」
鈴美はもはや助けを呼ぶしか手がなくなっていた。
だがまだ夜の8時ごろだというのに誰も家から出てこない。
これだけ叫んでいれば誰かが顔を出しそうなものだったが、それすらないのだ。
「シュシューッ、無駄よ。この一画は眠らせてあるわ。お前の叫びは誰にも聞こえないわ」
「そ、そんな・・・」
絶望に打ちひしがれる鈴美。
「シュシューッ、さて、それじゃお休みなさい」
蜘蛛女がそう言うと、彼女の背後から数人の黒いレオタードを着た女たちが現れる。
みんな一様に真っ黒なハイネックのレオタードに網タイツ、そしてブーツを履いている。
腰には赤いサッシュを巻き、顔には異様な赤と緑色のペイントを施していた。
そのうちの一人が身動きのできなくなった鈴美に近づくとスプレーを吹き付ける。
「ぐ・・・げほっ」
思わず咳き込む鈴美。
だが、すぐに彼女の意識は闇の中に沈んでいった。
ひんやりとした空気。
真夏だというのにとても肌寒い。
いったいどうしてなのだろう・・・
そう思ったところで鈴美は目が覚めた。
「!」
慌てて身を起こそうとした鈴美は、一瞬にして息が詰まった。
「こ、これは?」
鈴美の首も両手も両足もがっちり固定されているのだ。
かろうじて動かせる首を回すと、鈴美の両手首はベルトで土台と拘束されていたのだった。
そしてその土台の上に鈴美は寝かされていることに気がつく。
背中がひんやりとしているのはそのせいだった。
だが、それだけではない。
驚いたことに鈴美は裸だったのだ。
「う、嘘でしょ・・・」
鈴美はブラウスはおろかブラジャーすらはずされていることに驚いた。
しかも下半身もむき出しになっているのは間違いない。
「そ、そんな・・・」
鈴美は何とか首を動かして周りを確認した。
そこは薄暗く、壁際にはいくつかのスイッチ類やメーターが明滅していた。
人影はなく、天井からは小さな明かりだけが鈴美を照らしていて、まるで薄暗いスポットライトを浴びているようだった。
私はいったいどうなるのだろう・・・
心細さが鈴美を捕らえて離さない。
声を上げて助けを呼びたかったが、裸では呼ぶのにもためらいを感じてしまう。
これからいったいどうなるのかしら・・・
鈴美の目には自然と涙が浮かび上がっていた。
「クククク・・・目が覚めたようですね」
声が響き、室内が明るくなる。
鈴美は自分が円形の台に載せられていることがわかった。
天井の一部が鏡のようになっているのだ。
鈴美は顔をそむけるようにして声のほうを向いた。
そこには赤と緑の衣装を着たピエロが立っていた。
白いメイクに鼻の頭や頬などに赤いワンポイントがあしらわれている。
テレビや映画などで見かけるピエロがそこに立っていたのだ。
「あ・・・あなたは?」
「これは失礼。自己紹介が遅れましたね。私はチャン・ザ・マジシャン。暗黒結社デライトの極東方面担当幹部というところです」
チャン・ザ・マジシャンは恭しく一礼し、その不気味な顔に笑みを浮かべる。
「チャン・ザ・マジシャン・・・?」
私はいったいなんでこんなところにいるのだろう・・・
この男はいったい何者なんだろう・・・
鈴美は何がなんだかわからなかった。
「クククク・・・その通りですよお嬢さん。我が名はチャン・ザ・マジシャン。以後お見知りおきを。クククク・・・」
「わ・・・私をどうするつもり?」
身動きできない鈴美は唇を震わせている。
「おやおや、震えていますね。心配は要りません。あなたは生まれ変わるのです。我が暗黒結社デライトの一員としてね」
チャン・ザ・マジシャンはにこやかに鈴美のそばへやってくる。
「そう、あなたはこれより改造手術を受けるのです。そして我が組織の改造戦士として生まれ変わるのですよ。クククク・・・」
そう言ってチャン・ザ・マジシャンは鈴美の額の髪を梳いていく。
鈴美はその行為にぞっとしたものを感じたが、どうすることもできなかった。
「いや・・・いやよ・・・お願い・・・家へ帰して・・・」
弱々しく懇願する鈴美。
だが、チャン・ザ・マジシャンはまったく構わずにこう言った。
「始めてください。ドクターリン」
「ええ、早速」
そう言って入ってきたのは白衣を纏った女性だった。
小柄な女性だが金髪と青い瞳はそれなりに整っている。
柔らかなラインを描く脚は網タイツに覆われており、黒いブーツが引き締めていた。
メガネの奥の眼差しは知的なものを感じさせるが、彼女を捕らえているのはただ改造への欲望だけだった。
「うふふふ・・・初めまして素体さん。私は暗黒結社デライトの生物化学担当のドクターリン。あなたの改造を担当するわ」
ドクターリンはメガネをすっと直し、にこやかに微笑みかける。
「あなたは運がいいのよ。我々デライトに選ばれたのですもの。もう人間などという脆弱な生物ではなくなるのよ」
人間じゃなくなる?
鈴美はドクターリンの言葉が信じられなかった。
だが、彼女を捕らえたあの蜘蛛女は特撮の着ぐるみなどではなかった。
まさしく女と蜘蛛が融合した生物だったのだ。
「や、やめて・・・お願いやめて・・・」
首を振り訴える鈴美。
しかしドクターリンはすでにいくつかの機械装置をセットし始めていた。
そして幾人かの白いレオタードの女たちが壁際の装置を操作し始め、室内にはブーンという機械の作動音がかすかに響き始めていた。
「クククク・・・ドクターリン、彼女はどんな改造戦士にするつもりです?」
「うふふ・・・この素体は元は体操選手だったのですよね」
ドクターリンの目がおびえる鈴美を見下ろしている。
「体操ではなく新体操ですよ。ドクターリン」
「くすっ、失礼、そうでしたわね。そこでその躰のしなやかさを生かしてゴキブリと融合させますわ」
そう言ってドクターリンはボトルに入った巨大なゴキブリを手元に取り寄せる。
それは黒と茶色が混じったつやつやした翅を持つ気味悪い生物であり、鈴美にとっては見るのもいやな生き物だった。
「クククク・・・ゴキブリですか。それはさぞかし素敵な改造戦士になるでしょうね」
不気味に微笑むチャン・ザ・マジシャン
しかし鈴美にとっては死刑宣告の方がまだましにさえ思える。
「い、いやぁっ! ゴキブリなんていやぁっ!」
鈴美は声を限りに叫び、必死になって拘束から逃れようともがくが、彼女を押さえ込んでいるベルトはびくともするものではなかった。
「お、お願い。何でも言うことを聞くから・・・ゴ、ゴキブリはいやぁ!」
「うふふ・・・そう嫌うものではないわ。この滑らかなラインはあなたの女性らしさを存分に引き出してくれるわよ。おほほほ・・・」
ドクターリンはいつものように手の甲を口元に当てて高笑いをする。
醜い生物と美しい女性を組み合わせることで生まれる新たなる美しさ。
それこそがドクターリンにとっての美というものであった。
今日はここまでです。
ゴキブリモチーフは2chでSM様が使われていて重なってしまうのですが、個人的にドクターリンのように醜いものと美しい女性の融合に萌える方なので、あえてゴキブリにしちゃいました。
嫌いな方には申し訳ありませんです。m(__)m
それではまた。
空風鈴ハイパー さんの投稿:
こんばんは!久々にお邪魔します・・・、ハぁハぁ・・・、最近ちょっと忙しかったもので・・・。
目だけは通してたんですが、もっと充電期間置くのかと思ったらもう次の作品ですね。
しかもあの「母子改造」の続編とは・・・むふふ。
しかもゴキブリと合体とは・・・、あの繁殖力で大増殖するとか(笑)。
弱点は「フ*キラー」?(笑)すいません。
でも北海道には「ごきちゃん」はいないんですよね。いいなあ。
1度あれが「顔めがけて飛んできたこと」がありましたけどあれほど衝撃受けた事はなかったですね。
きっと彼女も飛ぶんでしょうね・・・、怖い!
あと思いこみなんですが私的にイメージとして「チャンさん」は
「アルセーヌ・ルパンとタキ*ード仮面を足して2で割った」
だったんですが、違ったんですね。
ピエロだったんですね。なんか「悪の組織の道化師」って、すごくギャップがあって
いいですね。「混沌」な感じがして。
長々とすいません、今後も続きを楽しみにしてます。それでは。
10 月 11 日
沙弥香 さんの投稿:
すごいですねぇ・・・。
もうここまで展開するとは!
こういう展開が読者を掴んで離さないんですね。
今回の蜘蛛女さんのように、変身シーンだけでなく
その後の活躍が描かれると、キャラが歩き出しますよね!
それにしても次はゴキブリですか!
たしかにSM氏とかぶりますね!
SM氏のグロンと舞方氏のデライト。
どちらの改造技術が上なんでしょうか?
どういう怪人に生まれ変わるか、本当に楽しみですわ!
10 月 12 日
舞方雅人 さんの投稿:
>空風鈴ハイパー様
お久し振りです。
いるんですよー。
北海道にもゴキちゃんが。
地下街とかにはいるらしいです。
動物園の熱帯館にもいましたー。
最初見たときは何なのかわかりませんでしたけどね。(笑)
>沙弥香様
SM様とはお話したことがないので良くわかりませんが、
グロンとデライトであればグロンの方が上かもしれませんね。
鈴美さんがゴキちゃんと融合してどう変わっていくのか、私自身が楽しみですね。
10 月 12 日
- 2005/10/11(火) 22:28:28|
- デライトもの
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