えーと、ちょっと改造ものを書きたくなったので、書き始めてしまいました。(笑)
「母娘改造」で登場した暗黒結社デライトが再び登場します。
そしてあのチャン・ザ・マジシャンも・・・
しばしお付き合い下さいませ。m(__)m
1、
「はあ・・・もうやめやめ。今日はこれでお終い。」
夜も遅くなった体育館に女性の声が響く。
フープやボールなどの手具を持って演技をしていた生徒たちが声の主を見た。
腕組みをしながら生徒たちの演技を見つめていた女性は首を振ってため息をつく。
「ふう・・・どうも呼吸が合わないわね。これ以上は集中力も続かないわ。今日はもうやめましょう」
鮮やかな赤と白のレオタードにそのみずみずしい肉体を包み込んだ女性はそう言って生徒たちを見渡した。
「はい、先生。お疲れ様でした」
「お疲れ様でした」
同じく赤と白のレオタードに身を包んだ少女たちがいっせいに頭を下げる。
そして神妙な顔つきで更衣室の方へ向かっていった。
「ふう・・・」
その後ろ姿を目で追いながら、この新体操部顧問でコーチの百原鈴美(ももはら すずみ)は再びため息をついた。
素質は悪くない。
みんな身体能力には恵まれた娘たちばかりだ。
でも微妙に呼吸が合わないから演技がばらばらになってしまう。
手具の動きに始まり、手足の一挙手一投足まで違和感を生じてしまう。
個人では賞を取れるのに、団体では賞を取ることができないのだ。
鈴美は首を振った。
まだ若いが国体の出場経験もあり、その指導力にも期待が持たれているが今のままではその期待にこたえることはできないだろう。
まだ現役時代と同じようなプロポーションを維持している鈴美はその美しい肢体を隠すことなくレオタードにて晒している。
その美しさにこの鷺ノ宮学園(さぎのみやがくえん)の男性教師は釘付けになっているとのもっぱらの評判だった。
生徒たちがいなくなった体育館は広くがらんとしていた。
鈴美はまだ真夏にもかかわらず薄ら寒さを感じて両手で躰を抱きしめる。
生徒たちの呼吸が合わない原因はわかっていた。
二人の最上級生・・・
香嶋瑠美(かしま るみ)と板鞍美沙(いたくら みさ)。
この二人の不仲がその他の生徒たちをも巻き込んでしまっているのだ。
地区大会個人の部ではいつもこの二人が上位を争っている。
リボンの演技で香嶋が優勝すれば、ボールでは板鞍が優勝をさらっていくという具合なのだ。
いつしか二人はライバルとなり、お互いを意識するあまり派閥的なものが生じてしまった。
ある後輩を香嶋が面倒を見れば、別の後輩は板鞍が面倒を見る。
そのうち後輩たちもいずれかの派閥に加わらざるを得ない。
だからと言って団体に二チームも出すなんてことはできないし、する必要もない。
しかし、ギクシャクした派閥間は容易には解消されないのだ。
鈴美にとっては頭がいたいことだった。
「ふう・・・」
何度目かになるため息を付きながら校門をくぐる鈴美。
外は夏の遅い夕暮れもとっくに過ぎて真っ暗になっている。
レオタードからシンプルなブラウスとスカートに着替えているものの、そのしなやかな美しい躰は見る者の注目を寄せ付けずにはいられない。
だが、鈴美はいつも帰りは一人きりだ。
幾人かの男性教師が何度か誘いの声をかけたものの、そのたびに鈴美は断っているため、最近では声をかけてくる者もいなくなってしまっている。
もっとも、鈴美はそれで構いはしなかった。
生徒たちの指導に生活の中心を置いている今、男性とお付き合いする暇は無い。
まだ二十六歳の彼女だから男性と恋の一つもしたいという思いはあるものの、今はその思いは封印していた。
「それにしても・・・」
思わず言葉が口を付いて出てしまう。
もう少し仲良くしてもらえないものだろうか。
ライバルだというのはわかるが、事あるごとに張り合うようなまねをし始めてしまっているのはよくない。
取り巻きを集め相手を蹴落とすことで優位に立とうとしているのだ。
あの二人ならばそんなことをしなくても自然と後輩たちだって慕ってくるだろうに・・・
「でも、今のままではだめだわ」
鈴美はこの状況をどうしたら打破できるかずっと悩んでいるのだった。
「クククク・・・いかがですか、ドクターリン? 彼女が次の素体ですよ」
男がスクリーンに映し出される鈴美の姿をステッキで指し示す。
その姿はこの冷ややかな気配からは想像もつかないような奇妙なものだった。
すらりとした長身の男だが、赤と緑の取り合わせたピエロのような格好をしている。
顔にも白いメークをして、鼻の頭や目元などに赤いポイントが入っていた。
靴も先が上を向いていて丸い玉が付いている。
およそこの場にはふさわしくなく、サーカス小屋にいるほうがよほどしっくり来るのは間違いない。
「素敵ですわね、チャン・ザ・マジシャン。彼女ならば素晴らしい改造戦士になれるでしょう」
声を掛けられた人物がスクリーンのそばへやってくる。
白衣を身につけた小柄な女性で、金髪と青い瞳を持ちメガネをかけていた。
その白衣のすそからはすらりとした脚が伸びており、メッシュのタイツと黒いブーツを履いている。
彼女の目はスクリーンに映っている鈴美に注がれ、メガネの奥の瞳は欲望に満ちていた。
「クククク・・・間もなく我がアジトへご招待いたします。ドクターもお支度を」
恭しく演技がかった仕草で一礼する不気味なピエロ。
彼こそが暗黒結社デライトの極東担当幹部、チャン・ザ・マジシャンであった。
「ええ、お任せ下さいチャン・ザ・マジシャン。素敵な改造戦士が生まれることでしょうね。おほほほほほ・・・・」
手の甲を口元に当てて高笑いする白衣の女性。
暗黒結社デライトの生物化学担当のドクターリンだ。
彼女によって作り出される改造戦士こそ、世界の裏側で要人暗殺や拠点襲撃などのテロリズムの実行者となるのである。
そして今、その悪魔の微笑みはスクリーンに映っている鈴美に向けられていた。
バス停でバスを降り、自宅へ向かって歩く鈴美。
途中コンビニへ寄って週刊誌をチェックし、お弁当を買って行く。
「ふう・・・やれやれ、こんな食生活じゃ太っちゃうわね」
苦笑いしながらビニール袋を提げ夜道を歩いていく。
鈴美の自宅は郊外にあるため、夜間は人通りが少なくなる。
街灯は点いているものの、人気のない道はやはり寂しい。
「あーあ・・・この時間はさすがに不気味よね・・・」
何となく闇に何かが隠れていそうな気がして足取りが早くなる。
何が隠れているものでも無いと思っていたが、その思いは今日に限って裏切られた。
「霧?」
歩みを進める鈴美の周囲に白いもやが立ち込めてくる。
それはじょじょに濃くなり、鈴美の周りは白く濁り何も見えなくなってしまう。
「な、何なの?」
鈴美は足を止める。
周りは真っ白となり何も見えない。
ただの霧とは思えなかった。
「シュシューッ。こんばんは」
白い闇の中から声がする。
やさしそうな女性の声。
「だ、誰?」
鈴美は思わず身を堅くする。
カツコツと路面を踏むヒールの音がする。
白く煙る中、ゆっくりと人影が現れる。
「!」
鈴美は息を呑んだ。
柔らかな女性のラインはまぎれもないが、両肩から上に振り上げられているもう一対の腕・・・
「あ・・・あなたは・・・」
鈴美はコンビニの袋を思わず取り落としていた。
「シュシューッ・・・うふふ・・・私は暗黒結社デライトの改造戦士蜘蛛女。百原鈴美。あなたを迎えに来たわ」
黄色と黒に彩られた毛が全身を覆っている。
口元には牙、額には球形の目。
それはまさに蜘蛛と人間の女性が融合した姿に間違いない。
「蜘蛛・・・女・・・」
鈴美は逃げることさえ忘れたように立ち尽くした。
沙弥香 さんの投稿:
きましたねー!
いきなり「母娘改造」の続編(?)ですか!
鈴美さんがどんな怪人に改造されるのか、
今後の展開が楽しみです!o(^-^)o
ところで、時間軸としてはいつごろになるのでしょうか?
それはこれからわかるのかな?
ドクターリンって初登場でしたよね?
暗黒結社デライトって中国系?
矢継ぎ早に不躾な質問でごめんなさい。
頑張ってくださいね!
10 月 11 日
姫宮 翼 さんの投稿:
続編ですね~。
わたしも、あの先生がどのように改造されるのか楽しみです。
確か、デライトの改造方法は他の生物を特殊な液体で溶かしてそれを注入するんでしたっけ?
次の投下も楽しみにしています~。
それでは、また。
10 月 11 日
妄想狐 さんの投稿:
これから鈴美先生はどうなってしまうんでしょう?
勿論さらわれて改造されるんでしょうけど・・・
どのような生物と融合改造されてしまうのか今から楽しみです。
普段嫌われるような生物(サソリや蛇)の方が女性と融合すると
淫靡に見えてくるのが不思議ですね。
10 月 11 日
舞方雅人 さんの投稿:
いつもいつも皆様暖かいコメントありがとうございます。m(__)m
>沙弥香様
時間軸としては「母娘改造」の後ですね。
しっかり蜘蛛女さんがデライトの一員です。
あとリンとかチャンとかいますけど、暗黒結社デライトは無国籍ですよー。
それとチラッとしか出てないですがドクターリンは「母娘改造」にもでております。
>姫宮 翼様
鈴美先生はいずれ素敵な改造人間にしてあげるつもりです。
モチーフに関しては・・・いかがでしたでしょうか。ww
>妄想狐様
私もその考えには賛成なんですよ。
醜いものと美しい女性が融合して新たな美を作り上げる。
それを目指して今回のモチーフも決めました。
10 月 11 日
- 2005/10/10(月) 23:01:10|
- デライトもの
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