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舞方雅人の趣味の世界

あるSS書きの日々

撃ったほうもビックリ

太平洋戦争序盤において、真珠湾奇襲によりアメリカの戦艦群を、マレー沖海戦でイギリスの戦艦群を撃破した日本軍は、いよいよインドネシア(当時はオランダ領だったので蘭印と呼ばれてました)への侵攻を開始します。

とはいえ、日本本土とは海で隔たっているインドネシアであるため、侵攻には陸軍兵力を輸送船で輸送しなくてはなりません。
当然何の防御力もない輸送船は、敵艦隊に狙われたらひとたまりもありません。
そこで当たり前のように日本海軍の水上兵力が護衛に付くことになりました。

インドネシアの中心であるジャワ島には、今村(いまむら)中将率いる第十六軍の主力たる第二師団が上陸することになり、将兵は輸送船五十六隻に分乗して出港します。
護衛には原(はら)少将の率いる第五水雷戦隊が付くことになり、栗田(くりた)少将率いる重巡艦隊である第七戦隊がさらに支援部隊として配備されました。

一方の連合軍は、インドネシアやフィリピン周辺の艦艇を結集。
ABDA艦隊として、一丸となって日本軍を迎え撃ちます。
ABDAとは、アメリカ、イギリス(ブリティッシュ)、オランダ(ダッチ)、オーストラリア四ヶ国の頭文字を取ったもので、四ヶ国の巡洋艦を中核とした有力な艦隊でした。

しかし、このABDA艦隊も「スラバヤ沖海戦」で日本軍と壮絶な撃ち合いの末に敗退。
残存艦艇はジャワ島のバタビアに後退します。
日本軍は陸軍部隊の上陸のためにジャワ島に接近しました。

バタビアに撤収したABDA艦隊は、すでにアメリカの重巡「ヒューストン」とオーストラリアの軽巡「パース」だけと言ってもいい状況になっておりました。
オランダとイギリスの巡洋艦はいずれも沈められたり損傷していて使い物にならなかったのです。
圧倒的な日本軍を前にして、二隻の巡洋艦をどうするのか。
司令官の決断は脱出でした。

昭和17年(1942年)2月28日。
ヒューストンとパースはバタビアを出港。
オランダ駆逐艦が一隻護衛に付くはずでしたが、準備が間に合わず同行できませんでした。
二隻の巡洋艦の目的は脱出であり、バタビアから同じジャワ島でも南に位置するチラチャップという場所へ移動する予定でした。

そのころ、日本軍はジャワ島に第二師団を上陸させるべくバタビアに近いバンタム湾とメラク湾に集結しておりました。
日本軍は二隻の巡洋艦の出撃を察知しておりましたが、まさか単なる脱出を目的としているとは知らずに、船団を攻撃してくると思って迎撃体勢を整えておりました。

日が変わって3月1日0時過ぎ、ヒューストンとパースはバンタム湾に差し掛かります。
ここで日本軍の輸送船団が上陸準備を進めていることを知った二隻は、おそらく輸送船団を撃破しようとしたのでしょう。
バンタム湾に向かって進路を変えました。

日本軍も前衛の駆逐艦「吹雪」がこの二隻を発見。
すぐに第五水雷戦隊の旗艦「名取」に連絡します。
旗艦名取に坐乗していた原少将は、指揮下の駆逐艦に集結を命じ、二隻の敵巡洋艦に向かいました。
原少将は敵をできるだけ輸送艦隊から引き離そうとしたのです。

ヒューストンとパースは輸送船団に向けて砲撃を開始。
一方原少将率いる第五水雷戦隊の駆逐艦部隊も攻撃を開始します。
双方の砲撃と日本軍の雷撃が交錯し、日本側は駆逐艦「白雪」が被弾したものの、ヒューストンとパースにそれぞれ魚雷が命中します。

午前1時過ぎ、日本軍には栗田少将率いる第七戦隊が到着。
重巡「最上」と「三隅」が砲撃を開始します。
さらに魚雷を撃ち込んで敵撃沈を目指しました。

重巡までが参加した状態ではヒューストンとパースに勝ち目はありません。
砲撃と魚雷によって損傷を受けた二隻の巡洋艦は、相次いで沈没します。
「バタビア沖海戦」はほぼ日本軍の完勝で終わりました。

ところがここで予期せぬことが起こりました。
沖合いでの日本艦隊と連合軍艦隊の戦闘をハラハラしながら眺めていた、陸軍兵士の乗る輸送船隊に突然火柱が上がったのです。
火柱は次々と上がり、軍司令官今村中将の乗っていた輸送船「龍城丸」が大破。
今村司令官は海に脱出を余儀なくされました。
さらに輸送船「佐倉丸」が沈没、「蓬莱丸」「龍野丸」が大破し、第二号掃海艇が沈没するという大損害が発生します。
今村司令官は約三時間近くも海面を漂い、ようやく救出されました。

この大損害を与えたのは、なんと第七戦隊が発射した魚雷でした。
相当の距離があったため、まさか味方輸送船団にまで到達するとは思わなかったのだそうです。
しかし、日本の魚雷の航走距離は長大であり、輸送船団に到達してしまったんですね。

海軍側はこの事実を知ると、すぐに陸軍側に陳謝しました。
今村軍司令官もこれを了承。
敵の魚雷艇が大胆にも接近してきて攻撃したことにしようということで、陸海軍ともにこのことを秘匿したのです。

その後上陸は順調に行なわれ、ジャワ島は日本軍の制圧下となりました。
今村司令官は公明正大な占領政策を行い、戦後その占領政治を賞賛されたということです。

日本軍の魚雷はいろいろな逸話がありますね。
それではまた。
  1. 2009/01/28(水) 20:56:00|
  2. 趣味
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:5
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コメント

でも、やっちゃいけない魚雷も作ってしまうんですよね。
日本は。
人の命を乗せる魚雷なんて、二度と作られないことを祈ります。
  1. 2009/01/28(水) 21:23:09 |
  2. URL |
  3. 神代☆焔 #-
  4. [ 編集]

なんという高性能魚雷・・・
そんな遠くまで届くとは流石日本製、ということでしょうか
しかし三時間もプカプカ海面を浮かんでいた
司令官はどんな気持ちだったのか・・・w
  1. 2009/01/28(水) 22:05:38 |
  2. URL |
  3. KANZUKAN #-
  4. [ 編集]

ああ、このときの今村さんがインドネシアで軍政を敷いた人だったのですね

植民地を解放するという名目で乗り込んでいったインドネシアと
(そして実際、多くの元日本兵が戦後も現地に残留して約束が空手形でなかったことを証明しようとしたわけですが)
自分で植民地や租借地を作りに行ってしまった中韓とでは
現地の人からの日本への評価がまるで違うのは仕方のないところですが……

はぁ……
同じ日本人が孫文を支援してたし
明治政府も最初は明治維新に倣った韓国の近代化を支援しようとしてた筈なのに
どこで何を間違ったのか……
  1. 2009/01/28(水) 22:13:24 |
  2. URL |
  3. 芹沢軍鶏 #JalddpaA
  4. [ 編集]

ただ、その魚雷もスラバヤ沖海戦では信管が過敏すぎて波に当って爆発したりしてましたけどね…

今村中将は参謀本部が厳しい軍政をしろといったのを無視して善政を敷いたために現地の対日感情は良好だったのですが、そのためにラバウルへ左遷されてしまいましたな。
今村中将が去った後、現地の対日感情は悪化したと言われてます。よっぽど慕われていたのでしょうね。
  1. 2009/01/29(木) 00:23:13 |
  2. URL |
  3. いなづまこと #-
  4. [ 編集]

>>神代☆焔様
人間魚雷「回天」ですね。
兵器そのもののよしあしもありますが、それを超えて特攻兵器は作成してほしくないものですね。

>>KANZUKAN様
日本の魚雷の長射程は当時の常識を遥かに超えていましたからね。
それにしても今村司令官はつらかったでしょうねぇ。

>>芹沢軍鶏様
本音と建前のギャップに苦しんだ日本人もかなりいたそうですね。
満州国建国のときも、五族協和の理想郷を本気で目指した方も少なくなかったのに、結局は植民地支配だと気付いて苦しまれた方も多かったそうですからね。
日本のゆがみはどこからだったのでしょうか・・・

>>いなづまこと様
一撃必殺を考えるあまり信管を鋭敏にしすぎたんだそうですね。
また、駆逐艦相手だということで深度も浅くしたのがまずかったそうで、波に当たっただけで自爆しちゃったんですよね。

もっとも、これは日本軍ばかりではなく、米軍潜水艦の魚雷も初期にはかなり自爆したそうで、潜水艦艦長の愚痴も残されているそうです。
似たようなことやっているんですねぇ。
  1. 2009/01/29(木) 21:04:07 |
  2. URL |
  3. 舞方雅人 #-
  4. [ 編集]

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(まいかた まさと)と読みます。
北海道に住む悪堕ち大好き親父です。
このブログは、私の好きなゲームやマンガなどの趣味や洗脳・改造・悪堕ちなどの自作SSの発表の場となっております。
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