昨日まで二週間もの間一本のお話にお付き合いいただき本当にありがとうございました。
今日はまた趣味の話です。
古今東西どこの軍隊でも、戦いというものを人間が行なう限りついてまわるものの一つに「食事」があります。
最近は「ミリめし」なんていって、軍用レーションを一般的に手に入れることもできたりするようですが、ああいう近代的レーションはともかく、第二次世界大戦時には携行食というものはあまり美味しいものではないものだったようです。
また、兵士個々人の士気を保つ上でも、食事を楽しむということは大きいものがあり、いつもいつも携行食料で済ませるわけには行かないという事情もありました。
できれば戦場でも温かくて美味しい食事が食べたい。
こうした兵士の欲求をかなえるため、第二次世界大戦中の各国軍では野戦炊事車を用意して、戦場近くまで進出し、そこで炊事を行なうことで温かい食事を兵士に届けるべく努力します。
この野戦炊事車の中でも、おそらく一番メジャーになってしまったのが、この独軍の野戦炊事馬車ではないでしょうか。
タミヤ模型様にて模型化されたことで、おそらく多くの人々の目に触れることになったと思います。

この独軍の野戦炊事馬車は、前車(リンバー)と後ろの調理レンジ車に分かれ、通常は二頭ないし四頭の馬で牽引します。
機械化の進んでいた独軍ではありますが、まだまだ一般の歩兵師団クラスでは馬が重要な輸送手段でありました。
前車には調理器具や食料、さらには配食用のコンテナなどが積まれ、コックと御者が座れるようになってます。
ここから馬を御するのです。
そして野戦炊事馬車のメインとなるのが後部の調理用レンジ車です。
一本の煙突を高々とそびえ立たせているため、「シチュー砲(Gulaschkanone)」という愛称で呼ばれました。
この調理用レンジ車は後ろから見た場合、右側がオーブン、中央が大きなシチュー鍋、そして左側がコーヒー鍋という構成になっていて、それぞれが独立した火室を持っていて別々に調理することができました。
燃料には石炭やコークス、練炭、薪などいろいろなものが使えるようになっており、三つの火室(オーブン、シチュー、コーヒー)それぞれから出た煙が一本の煙突からまとめて排出される形になっています。
シチュー鍋は安全弁の付いた二重構造の圧力鍋になっており、調理時間を短縮できるようになってます。
さらに、外鍋と内鍋の間には液体が入っていて、熱を均等に伝えるようになっていると同時に保温性も高めているとのことです。
コーヒー鍋のほうは下部にコック(蛇口)が付いており、鍋のふたを開けなくてもコーヒーを注ぐことができました。
写真などで見ると、朝食はコーヒーのみなんてことも多かったようです。
(温かいものがという意味。おそらくパンは付くと思います)
この野戦炊事馬車は、歩兵一個大隊に一両小型のものが配属され、屠殺中隊あたりから受け取った肉やソーセージと野菜を煮込んでシチューかスープの形で給食したようです。
大体110リットルほどのスープを作ることができた(小型炊事馬車の場合)そうで、約100人から120人ほどの食事を供給することができました。
この野戦炊事馬車の周りに集まって、温かい食事を取りながら談笑する時間が、前線の兵士たちにとってはまさに生きていることを実感させてくれる時間だったのかもしれませんね。
それではまた。
- 2008/12/29(月) 20:33:32|
- 趣味
-
| トラックバック:0
-
| コメント:6
舞方様のこんな細かい話題から、様々な小ネタが浮かぶ方も居るでしょうね。
一心不乱に料理する場所は、戦場のど真ん中。
周囲では兵士達が次々に死んで行く中、究極のシチューが完成するも、食べてくれる味方の兵士は壊滅し、本人も気力を使い果たして息絶えるような、救いようのない展開をギャグテンポで進めたら、どうなるでしょう?(笑)
- 2008/12/29(月) 21:37:30 |
- URL |
- 神代☆焔 #-
- [ 編集]
シチューってドイツ語でGulaschっていうんですか。
ハンガリー料理のグヤーシュも、同じ意味なのかな・・・
こういう炊事車による食事は、小生にはまるでBBQみたいな気分ですが、前線の兵士にとっては緊張続きの時間のなかで、わずかな贅沢だったのでしょうね。
- 2008/12/29(月) 22:16:07 |
- URL |
- うおP #-
- [ 編集]
えーまずは記事に関係ないとこで、
遅ればせながら140万ヒットおめでとうございます。
いまさら昨日の記事にコメントするのもなんなのでこちらに。
2週間に渡る記念SSも楽しませていただきました。
舞方作品には珍しい純正ツンデレキャラ登場(笑)もありつつ、長期更新でのじっくりとした思考改変の過程なんかも楽しませていただきました。
メレールはなかなか良いキャラだと私も諸氏に激しく同意であります(笑)。
強がってるけど主人公にはかなり惚れこんじゃてるツンデレっぷりが○(笑)、
その一方で敵に対しては冷酷なまさにネズミをいたぶる猫キャラって感じがして。
色々悪堕ちの定義や好みってあると思いますけど、なんだか今回のSSは、
「最終的な主人公のポジションが私的なってみたいキャラの理想像」
って感じでとても感情移入できました、
なんというか私の嗜好とベストマッチと(笑)、
「まるで私の理想を具現化したような」と某ソロモンの悪夢のような感慨を(笑)。
絶対的な帝王の元、理想的なパートナーと強力で忠実な部下達と共に(勿論みんな可愛い女性限定で!)…という。
なんだか自分のいつも抱いてる妄想を具現化していただいたような、そんな感想を抱いた読後でありました。
ちなみに私的妄想では、悪の帝王も折笠愛ボイスのクールビューティー悪女帝だったりするんですが(笑)。
とにかく改めて、おめでとうございます、
長編執筆お疲れ様でした!
そしていつもながらの、いいものをありがとうございましたっ!と。
- 2008/12/29(月) 23:44:43 |
- URL |
- 空風鈴ハイパー #-
- [ 編集]
軍隊が炊飯車を持っているのは知ってましたが、結構古くからあるんですね。
普通の食事は士気あがるよね~
携帯食やジャンクフードもおいしいけど、何日も続くと食事が作業になっていくからw
従軍した調理師って戦闘になっても非戦闘員として保護されたのだろうか?
- 2008/12/30(火) 04:10:51 |
- URL |
- 静寂 #8U7KPG92
- [ 編集]
この模型「ぷはプラモのプ」(だったかしら)の
塗装HowTo素材になってるから知ってますわw
そんな凄い秘密設定があったんですのね
たくさん食べて、たくさんうんちするんだ
それが生きてるってことなんだよ、てなことを
漫画「銃夢」のおまけ項目で
イドが言ってた気がするw
うぅん、食事と排泄は無駄な行為なんでしょうけれど
生き物としては生きる意欲の一つだから大事なんでしょうねー……
静寂サマ、映画「地獄の黙示録」のシェフは××なことになってましたけど……
てあの人、軍人のする粗暴な料理が嫌でシェフを辞めた人でしたわね(汗)
しかもベトナム戦争だからちょっと参考にはならないかしら?
さて、それはさておき舞方様
リンク完了致しましたです
改めまして相互リンクをお願い致したく思います
URLはこちらを
http://jackkirisaki.blog97.fc2.com/
それではまた~
- 2008/12/30(火) 18:03:05 |
- URL |
- ジャック #-
- [ 編集]
>>神代☆焔様
なんか雄山と山岡が出てきそうな話ですね。(笑)
命を賭して作ったシチューなのに、「やれやれ、こんなシチューをありがたがっているようじゃ・・・」とか。(笑)
>>うおP様
あー、どうなんでしょうね。
ドイツのスープはこってりしているものが多く、シチューだかスープだかわからないものが多いとは聞いておりますが、言葉はさっぱりですー。
屋外でのBBQもいいですね。
>>空風鈴ハイパー様
ありがとうございました。
楽しんでいただけたようで何よりです。
今回ゴラームに関しては、私も同じようなこと考えておりました。
自分が機械帝国に拾われたらやってみたい作戦だなーと思っちゃいます。(笑)
女帝陛下でもよかったなー。
>>静寂様
調理師も軍人なんで(というか軍人の一部が調理任務に回されている)、拳銃や小銃は持ち歩いていたようです。
今日の記事にも書きましたが、結構彼らも銃を取らなくてはならない場面も多かったようですよ。
>>ジャック様
改めまして復活おめでとうございます。
食事と排泄は無駄ではないと思いますよ。
生物の基本ですからね。
ゴラームも嗜好の一部としてオイルジュース飲んでましたしね。(笑)
リンクに関してはこちらも張らせていただきました。
これからもよろしくです。
- 2008/12/30(火) 19:27:44 |
- URL |
- 舞方雅人 #-
- [ 編集]