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舞方雅人の趣味の世界

あるSS書きの日々

七日目(9)

「七日目」の九回目です。
五日目前編になります。
ちょっと流れが微妙かも・・・

それではどうぞ。


9、
五日目。
さて、今日もまたわが帝国のために働いてもらうとしようか。
自分たちが機械帝国の一員であるという自覚をさらに深く植えつけてやろう

「さて、今日で五日目。残りは今日を入れてあと三日だ。まったく・・・これほど苦しめられることになるとは思わなかったぞ。お前らの内に潜む人間と言う奴にはほとほと手を焼く。このままでは時間切れでお前たちを解放しなくてはならなくなるではないか」
くすっとメカレディたちに忍び笑いが漏れる
俺が困った表情をするのが楽しいのだろう。
ただ、俺の目の前にはいつもと違う光景が広がっていた。
メカレディが三人しかいないのだ。
A1、A3、A4の三人だけ。
A2はここにはいない。
昨日の作戦でダメージを受けたA2は、修理を終えたあと休ませていたのだ。
そろそろ呼んでやるか。

「今日もまたお前たちには任務を与える。だがその前に会わせたい者がある。入ってこい」
俺は部屋の入り口に待機させていたA2を呼ぶ。
「はい、ゴラーム様」
控え室に入ってきたA2に、三人のメカレディたちが顔をほころばせる。
「A2」
「A2」
「A2、よかった・・・」
口々にA2のナンバーを呼び駆け寄るメカレディたち。
「よかった・・・完全に修理できたのね?」
「以前と変わらないわ・・・ん? A2、あなた胸が少し大きくなったんじゃない?」
A4が鋭い指摘を浴びせかける。
「ありがとうみんな。あはは、わかっちゃった? せっかくだからゴラーム様にお願いして胸を少し大きくしてもらったの」
ちょっと恥ずかしげなA2。
「やっぱり。私のセンサーはごまかせないわよ」
「わかるに決まっているでしょ」
「う、その手があったか。どうしようかなぁ・・・私も少し」
A1が自分の胸をゆさゆさと持ち上げる。
肌に密着する黒いレオタードが形のよい胸を浮き立たせていた。
「A1は今のままで充分よ。こんなに感度がいいんですもん」
「ひゃぁっ!」
いきなり背後から両胸をつかまれるA1。
A4がいたずらっぽく笑いながら、A1の胸をもんでいる。
おいおい・・・
「A4、ゴラーム様があきれているわよ」
「あ、失礼いたしましたゴラーム様。A2を救ってくれてありがとうございました」
「私からもお礼を言います。ありがとうございました」
A4に続いてA1も頭を下げる。
素直に俺に頭を下げられるようになってきたか。
「A2は大事な戦力だからな。失うわけには行かないだろう」
素直に頭を下げられると、俺はちょっと面映い。
「うふふ・・・ゴラーム様照れているんですか?」
A3が口元に手を当てて笑っている。
困った奴らだ。
いきなり俺に対して積極的になったじゃないか。
A2を助けてくれと懇願したことが、ずいぶんと俺との距離を縮めたということか?
「そんなことはない。いいか、任務を与えるぞ」
「「ギーッ!」」
メカレディたちはすぐさまいっせいに整列し、俺に対して敬礼した。

「今日はお前たちに都内の自由行動をさせてやる」
「「えっ?」」
一様に驚きの表情を見せるメカレディたち。
「好きなところに行っていいぞ。家族や友人に会ってくるのもいいだろう。好きに過ごすがいい」
「ど、どういうことですか?」
「目的がわかりません。どうして急に?」
戸惑っているようだな。
彼女らはみんなで顔を見合わせている。
「お前たちに求められるのは隠密性だ。機械帝国のメカレディでありながら、人間のごとく振る舞い周りの人間を欺いていく。そのための練習だ」
「練習?」
「練習・・・」
複雑な胸中を表すかのように表情が困惑を浮かべている。
「ただし。夜20時までにこの地底城に戻るのだ。それを過ぎた瞬間に俺はお前らの躰を強制支配する。そして手当たり次第に暴れてもらうぞ。コントロール波をシャットしようとしても無駄だ。お前らの中にある補助脳に命令を刷り込んでおいたからな。コントロール波がなくてもお前たちの躰は勝手に周囲を破壊することになるだろう。それがいやなら20時までにもどれ。いいな」
そう、メカレディの体内には頭脳強化として補助脳が埋め込まれている。
この補助脳がメカレディの躰をある程度コントロールできるため、俺はメカレディの躰を支配できるのだ。
「それともう一つ。今日は各自に命令を与える」
俺はそう言って一人ずつメカレディを呼び寄せた。

「ゴラーム、あんたの言ったとおりに“人間ラジコン作戦”のときにヘルブールの作った人間操作機を数人の男女に取り付けてきたわ。それとこいつだけは絶対って言われた奴にも取り付けた。でも、こんなのでどうするの? 確かこの作戦は受信機を破壊されてあっという間にだめになったんじゃなかったっけ?」
司令室に入った俺をメレールが出迎える。
夕べのうちに頼んでおいたことを、朝早くからきっちりとやってくれたのはさすが実行部隊長。
俺はうれしかった。
「今回はちょっとしたことに使うからいいんだ。それに状況によっては使わないかもしれないしな」
「ふーん・・・でもいつになったらコマンダーたちをやっつけるのさ。もう飽きてきたよ」
尻尾が小刻みに揺れ始めるメレール。
まずい。
今回は遠くから人間操作機を打ち込み、生かしたまま返せって指示したから、気が立っているのか?
適当に暴れさせてやらないとなぁ・・・
「もう少し待て。そのうち暴れさせてやるから」
「むーっ! 絶対だよ!」
そう言ってしぶしぶ引き下がるメレール。
よかった・・・
まだ限界には達してなかったようだな。
俺はホッとして、メカレディたちのモニターに取り掛かった。

今回の目的は確かに隠密行動の練習も一つだが、より大きくは人間との違いを感じてもらい、機械であることの優越感を養うことにある。
人間であることよりも、機械であることのほうがすばらしいとより感じさせてやるのだ。
そうすれば人間に戻ることにためらいを持つようになるだろう。
そのために俺はあえてメカレディたちに自由行動を取らせたのだ。
スパイメカからの映像がいくつものモニターに映し出されている。
いつもの黒いレオタードやフェイスカバーではなく、用意された普通の服を着て出かけるメカレディたち。
一応簡単な任務を与えたために出かけないわけには行かないのだ。
そうじゃなければ出かけないという可能性もある。
やはり変わってしまった自分を友人や家族に知られたくないと言う思いから、友人や家族には会いに行かない可能性が高い。
だとしたら出かけることさえしないかもしれないからな。
さて、ラジコン人間を使うことになるかどうか・・・

俺は四人がばらばらに行動すると思っていたのだが、どうやらそうではないらしい。
今のところ一緒に行動しているようだ。
やはり自分が異質な存在になってしまったことをわかっていて、単独行動をためらってしまうのかもしれないな。
それぞれに与えた単独任務も全員で一つずつこなしていくつもりのようだ。
まあ、それでもかまわないか。

『それで? ゴラーム様はなんて?』
公園のベンチで四人が相談している。
手には炭酸飲料やお茶を持っているようだ。
『それがね。私には好きなものを万引きして来いって』
『『万引き?』』
A2の言葉に他のメカレディがあきれたような声を上げる。
『うん、万引き。なに考えているんだろうね。万引きなんて誰でもやっているのにね』
『誰でもかどうかは別にして、万引きして来いってのは妙な命令ね』
A1が苦笑する。
A2の学校ではみんなやっていたことなのか?
『まあ、万引きぐらいならいいんじゃない? 誰かを殺して来いって言われたわけじゃなし』
『そういうA3は何を命令されたの?』
『えっ? うーん・・・それがね』
A3の表情が曇る。
『会社の社長室に忍び込んで社長を眠り薬で眠らせて来いって』
『社長って、勤めている会社の?』
『具体的には言われなかったからどこでもいいとは思うんだけど、忍び込むなら知っている会社のほうがいいわよね』
A3の言葉に他のメカレディたちはうなずいている。
『侵入工作の練習ってことね。しかも知人たちのいる中で』
『そうだと思うわ。でも、うまくできるかしら』
『大丈夫よ。あなたならきっとうまくやれるわ。私たちもバックアップするから』
『あう~』
A1がA3を励ます中、いきなりおかしな声を上げるA2。
『ど、どうしたのA2?』
『何かあった?』
みんなの視線がA2に集中する。
『う~。ついつい成分分析しちゃったよぉ・・・こんな成分のものを今まで美味しいって飲んでいたんだね。オイルジュースのほうがましだよぉ』
『あ、その気持ちわかるわぁ。私もさっきからお茶が飲めないって言うかこんなもの飲むのいやだなって思っちゃって』
『何で、人間ってこんなもの飲むのよぉ』
『うんうん、そうよねぇ。こんなものわざわざ飲んでバカみたい』
四人の笑い声が公園の明るい空に響いていた。

                         ******

「頭にくるわ、あの男。A4には悪いけど殺してやろうかと思った」
「ひどいよ。A4がかわいそうだよ」
憤慨しているA1と泣きそうな顔のA2。
その脇で複雑な表情を浮かべているA3と呆けてしまったようなA4。
どうやらあの男は思った以上の効果を与えてくれたようだな。
夜になって戻ってきたメカレディたちを、俺は控え室で出迎えてやる。
「戻ったようだな。ご苦労、報告しろ」
当然のごとく何があったかは把握しているが、俺はわざとに聞いてやる。
メカレディたちもよく考えれば俺がモニターしていることはわかるはずだが、やはり様子を尋ねられるのは悪いものではないだろう。
「ゴラーム様、聞いて下さい」
「ゴラーム様、どうして私たちがあのような暴言に耐えなくてはならないのですか?」
「ゴラーム様、私たちが機械だと何がいけないんですか?」
A4を除く三人が口々にまくし立ててくる。
「落ち着けお前たち。くだらん人間のように感情をあらわにするな」
俺はまず彼女たちを落ち着けさせる。
彼女たちはメカレディなのだ。
くだらん人間たちのように感情に流されるのでは困る。
「失礼しました、ゴラーム様。私から説明いたします」
自らを落ち着けるように一呼吸置き、A1が報告を始める。

報告は俺がモニターしていたことを確認するだけに過ぎなかった。
A2は五ヶ所もの店で万引きを働き、お菓子から本、はてはCDやゲームソフトも盗んでいた。
最初は恐る恐るだったものだが、そのうち徐々に大胆になり、しまいにはずいぶんと楽しんでいるようだった。
まあ、メカレディとしての能力を持ってすれば、万引きなどたやすいことだろうからな。
楽しくなるのも当たり前か。

A3は勤めていた会社に出向き、上司にここ数日の欠勤のことをわびていたようだった。
だが、明らかにメカレディとなった今の自分よりもはるかに能力の劣る上司に嫌悪感を持ったようであり、この上司の下でなど働く気にはなれないと感じたのであろう。
早々に会社を辞める旨を伝え、唖然とする上司を尻目に悠々とその場をあとにしたのだ。
そして身を隠すようにして社長室に入り込むと、ためらいもせずに用意した麻酔薬で社長を眠らせ、会社を出てきたのだった。
その口元には笑みが浮かんでいたのを俺は見逃してはいない。

A1にはピースコマンダーの末端施設の写真を取らせてやった。
もちろんそれでもフェイスカバーをしていない状況では顔バレの危険性が充分あるのだが、末端施設の人員がコマンダーピンクの顔を知っているという可能性も少ないだろう。
A1は複雑な思いだったかもしれないが、かえってこちらに知られてもいい箇所のみを撮ろうとし、メカレディの能力を発揮していることに気がついていない。
いや、もうそれだけメカレディとしての躰になじんでいるのだ。
こちらももう一息と言うところだろう。

そしてA4。
彼女に与えた命令は単純なもの。
夫には会わなくてもいいから、夕方からいつもどおりに近所のスーパーで買い物をし、近所の主婦仲間と時間をすごすことと言うものだ。
これが問題なくできれば、メカレディの擬態能力はほぼ問題がないだろう。
A4はこの命令を忠実にこなしていたが、スーパーでの買い物はイライラのしっぱなしだったようだ。
補助脳などの力もあって瞬時に買った金額を計算できるA4が、だらだらとレジに並ぶのは苦痛以外の何者でもない。
その証拠に彼女は買い物籠をレジに乗せたとたんに合計金額を言ってのけ、その場を通り過ぎようとしてしまったのだ。
まあ、そうは行かないから結局レジ打ちに付き合う羽目になったようだが、いつも綺麗なA4が口をへの字に曲げて不満そうにしていたのが面白い。

その後、近所の主婦たちと談笑をしていたA4。
ただ、それは俺の命令だから仕方なくやっているようで、心底楽しんでいるものではないのが精神波モニターからは見て取れた。
表面上はとても楽しそうにしている姿は人間には演技とはとても思えないだろう。
俺は時間を見計らい、そろそろと言うあたりで仕掛けたのだった。

ぴくりとも動かないラジコン人間たち。
死んだかもしれないが、そんなことはどうでもよかった。
思わず出してしまった手。
それが目の前でへたり込んでいる男に与えた衝撃は大きいものがあるだろう。
もちろん、そんな状況を男に見られてしまったA4にも大きな衝撃のはずだった。

俺は帰宅途中の男をラジコン人間を使って襲わせた。
まだ人通りが多い時間帯だったが、かまいはしない。
タイミング的な問題もあるし、どうせ警察あたりにはメカレディには手が出せない。
メレールが選んでくれたラジコン人間は、こちらの送信機で自分の意思とはまったく無関係に動かされる。
俺は近くに配置しておいた二人を使い、ナイフで男を脅させた。
それも主婦たちと談笑していたA4が見える位置でだ。
案の定A4は駆け出した。
当然だ。
男たちに絡まれたのはA4の夫だからだ。
人間だった彼女ならとてもそんなことはできなかっただろう。
警察に任せて、夫の身を気遣うしかできなかったに違いない。
だが、彼女はメカレディだ。
とっさに能力差を判断し、夫を助けられると思ったのだ。

俺はここでA4の中にある夫への愛情を断ち切るつもりだった。
A4はメカレディであり、機械帝国に忠誠を捧げてもらわなくてはならない。
人間に愛情を持っているなどあってはならないのだ。

A4は唖然とする夫の前で、わずか二撃でラジコン人間二人を打ち倒す。
しかも相手の武器が自分に影響を与えることはないとの判断から、打撃を重視して防御を無視した結果、A4は相手のナイフにわき腹を切り裂かれていた。
無論ボディにダメージなどでるはずもない。
単に着ていた服が切り裂かれていたに過ぎない。
だが、それこそが俺の望んだ結果だった。

ナイフを持った男二人を打ち倒し、へたり込んでしまった夫にA4は手を差し伸べた。
だが、その手に男の手が重ねられることはなかった。
うつろに見開かれたその目は、正面のA4を見据えているものの焦点はあっていない。
そして、その口からはあまりにも辛らつな言葉がつむがれる。
「ば・・・化け物・・・く、来るな」
A4は立ち尽くしていた。
そしてパトカーのサイレンが聞こえたとき、初めて何があったか気が付いたように逃げ出したのだった。
あの男にも人間操作機が付けられており、俺の指示で言葉を発したなど気が付くはずもなく。
  1. 2008/12/23(火) 20:21:01|
  2. 七日目
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:3
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コメント

彼女たちの心もだいぶ傾いてきましたね。

やっぱり機械の体になってしまうと、人間の世界では暮らして行けないですね。
それを体験させることで(ちょっと細工はしてますが)、彼女たちに人間の愚かさを感じてほしかったということでしょうか。
  1. 2008/12/23(火) 21:47:34 |
  2. URL |
  3. metchy #zuCundjc
  4. [ 編集]

今回の作戦、心理の裏を突いた、中々エグい作戦ですね。
作戦はゴラームが考えているとのことですが、作品として作成したのは舞方様ですから、伊達にベッドの下に悪の組織の衣装を隠しているわけではない(笑)と感じてしまいました。
ココロちゃんが見つけたのが、メレールの背中だったりすると、別の意味で怖かったりしますが……(笑)
  1. 2008/12/23(火) 22:34:29 |
  2. URL |
  3. 神代☆焔 #-
  4. [ 編集]

>>metchy様
機械であるがゆえに優れているということを自覚させ、人間を下等と感じるように仕向けるんですー。
じわじわと彼女たちが変わってきていると感じていただけているでしょうか?

>>神代☆焔様
私のベッドの下にメレールが隠れていたら・・・
たぶん次の更新はなくなっているかもしれませんね。(笑)

だって、可愛いからつい襲ってしまい・・・
「ぶっ殺ーーーす!!」
  1. 2008/12/24(水) 19:32:46 |
  2. URL |
  3. 舞方雅人 #-
  4. [ 編集]

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Author:舞方雅人
(まいかた まさと)と読みます。
北海道に住む悪堕ち大好き親父です。
このブログは、私の好きなゲームやマンガなどの趣味や洗脳・改造・悪堕ちなどの自作SSの発表の場となっております。
どうぞ楽しんでいって下さいませ。

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