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舞方雅人の趣味の世界

あるSS書きの日々

敵に後ろを見せるなんて・・・

「倒してしまっても、かまわんのだろ?」
そう言って、戦術的撤退を図る士郎と凛のためにバーサーカーに立ち向かったアーチャー。(by Fate/stay night)
彼は強大な敵に後ろを見せることなく戦ったわけです。

ということで、今日は「アーチャー」のご紹介。
といっても、Fate/stay nightのキャラクターではなく、第二次世界大戦中の英軍対戦車自走砲のことです。

戦車の装甲が厚くなっていくにつれ、それを撃ち抜こうとする対戦車砲もまた強力なものが求められていきました。
ドイツでは有名な88ミリ高射砲が対戦車用に転用されましたが、英国では17ポンド砲が開発されます。
この17ポンド砲は、口径76ミリの対戦車砲でしたが、その威力はなかなか強力で、ドイツの88ミリ高射砲に勝るとも劣らないものでした。

紆余曲折があり、なかなか量産にいたらなかった17ポンド砲でしたが、それでも1942年中盤にはようやく量産が始まります。
しかし、どこの国も同じことなのですが、強力な砲は高速で弾丸を撃ち出す必要があるために、どうしても頑丈に作らなくてはなりません。
頑丈に作った砲は、当然ながら重くどっしりとしたものになってしまいます。
すると、そう簡単には動かせません。
17ポンド砲も、重量約三トンというとても重い大砲になってしまい、移動には牽引車を使うとしても、陣地内での方向転換すら困難なものとなってしまいました。

こんな重たい砲を押したり引いたりするのは誰だっていやなので、英軍内でもすぐにこの17ポンド砲を車両に搭載してしまおうという話が出てきます。
17ポンド砲搭載の新型戦車の話はありましたが、やはり開発には時間がかかるため、既存の車両に手っ取り早く載せて対戦車自走砲を作ろうということになるまでにはそう時間はかかりませんでした。

そこでまず選ばれたのは、クルセーダー巡航戦車でした。
しかし、クルセーダーは車体が小さく、またエンジン出力も小さいものだったため、この案は破棄されます。
代わって選ばれたのはバレンタイン歩兵戦車でした。

バレンタイン歩兵戦車も車体は大きいものではないのですが、すでに25ポンド野砲を搭載したビショップという自走榴弾砲が作られており、その大砲だけを17ポンド砲にすればいいということになったのです。

しかし、ことはそう簡単にはいきませんでした。
25ポンド野砲と17ポンド砲とでは大きさがまるで違ったのです。
そのため、そのまま大砲だけを交換するというわけには行かず、まるっきり新型の自走砲として作るしかありませんでした。

一番問題になったのは砲身の長さでした。
17ポンド砲は砲身長が4メートル以上もあり、バレンタイン戦車の砲塔部分を取り払って載せると、砲身が車体の前に出すぎてバランスが取れないのです。
しかし、だからといって車体の後ろ側に載せようとしても、そこにはエンジンがあるために載せられません。

技術陣は考えました。
そして発想の転換をしたのです。
なんと、17ポンド砲を後ろ向きに載せたのでした。

つまり、バレンタイン戦車の操縦席や砲塔のあった部分をオープントップの戦闘室として、そこに17ポンド砲を後ろ向きに搭載したのです。
すると、長大な砲身も、車体のエンジン部分の長さがあるため、それほど車体の外にはみ出るものとはならなかったのでした。

一般的な戦闘車両は、大砲の向いているのが前で、そちらに進むのが前進なのですが、こうして完成した新型自走砲は、大砲の向いているほうが後ろで、大砲のないほうに進むのが前進という奇妙なスタイルとなりました。
要は敵に後ろを見せて戦うのです。

この奇妙な自走砲は、思いのほかできがよく、英軍は正式に採用します。
そして「アーチャー」というあだ名を付けられて、実戦に投入されました。

アーチャーが実戦に登場したのは、すでに1944年も後半で、ドイツ軍は後退を続けている時期でした。
しかし、時折行なわれるティーガーやパンターを中心とした反撃は手ごわく、主力のM4系列では対処しづらいこともしばしばでした。
そんな時、強力な17ポンド砲を積んだアーチャーは、ドイツ軍戦車相手にその威力を発揮したのです。

戦闘中は操縦手が席を離れなくてはならなかったため、後ろを見せているからといって逃げ足が速いというわけにはいきませんでしたが、常に後ろ向きで敵と戦うという奇妙な対戦車自走砲でありながら、使い勝手は意外とよかったそうです。
特に17ポンド砲の威力が魅力的であったのは間違いありません。
終戦もあって650両ほどしか作られなかったそうですが、一部車両は1950年代半ばまで英軍内で使われたとのことでした。

間に合わせで作られた兵器でも、威力と信頼性の高さが長生きさせたんでしょうね。
それではまた。
  1. 2008/12/07(日) 21:24:31|
  2. 趣味
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:2
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コメント

初めてあのデザインを見たときは、作業車両と思いましたよ(笑)
車体バランスがよほど良かったんでしょうね。
何が幸いとなるのか分かりませんね。
  1. 2008/12/08(月) 01:45:34 |
  2. URL |
  3. 神代☆焔 #-
  4. [ 編集]

>>神代☆焔様
確かに作業用車両に見えなくもないですね。
17ポンド砲搭載車両はとにかく貴重でしたから、アーチャーも活躍できたんでしょうね。
  1. 2008/12/08(月) 22:00:07 |
  2. URL |
  3. 舞方雅人 #-
  4. [ 編集]

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(まいかた まさと)と読みます。
北海道に住む悪堕ち大好き親父です。
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