FC2ブログ

舞方雅人の趣味の世界

あるSS書きの日々

超大型な車体で超小型な名前

ドイツがソ連に侵攻を開始した1941年6月。
ドイツ軍はKV-1というソ連の重戦車に遭遇し、その強力さに驚くこととなりました。

そして半年ほど経った1941年11月29日。
ヒトラー総統の官邸で、一つの会議がもたれます。
ソ連がさらに強力な戦車、しかも総重量が100トンにも及ぶ超重戦車を試作中との噂に基づき、その対抗策をどうするのかが議題でした。
(このソ連の100トン戦車なるものが何を指すのかはよくわかりません)

そこでヒトラーは、対抗上ドイツも100トン級の超重戦車を作成しなければならないと感じたようで、ポルシェ博士に試作を打診します。
この話は翌年3月には正式な計画となり、ポルシェ博士の設計で100トン級重戦車が試作されることになりました。

とにかく強力な戦車を求められたポルシェ博士は、この新型重戦車にもティーガーの試作車体(後に重自走砲フェルディナント=エレファントの車体に使われる)と同じ、エンジンでモーターを回して走るハイブリットタイプの走行装置を採用。
重装甲の移動トーチカ的な戦車を設計します。

1942年の6月には基本設計が完成し、この時点で主砲に150ミリ砲を搭載し、さらに副武装として105ミリ砲まで主砲の横に装備するというとてつもない戦車として設計されました。

この強武装重装甲の巨大戦車は、ヒトラー総統にも気に入られ、細部を変更して実際の試作車作成に取り掛かることを命じられます。
このころにはすでにこの巨大戦車には、「マウスヒェン(ネズミちゃんまたは子ネズミ)」という愛称が付けられており、翌1943年2月には、正式名称としてこの巨大戦車は「マウス(ネズミ)」と名付けられることになります。

マウスは、総重量が180トンを超える空前絶後の重戦車であり、その砲塔だけでも55トンもあり、ほぼティーガー一両分(約56トン)の重さがありました。
こんな重たい戦車をまともに動かせる機械的変速機は当時はもちろんあるはずもなく、やはりエンジンでモーターを回して動かすというポルシェ博士の考えしかなかったでしょう。

車体はおよそ考えられる限りの重装甲に作られ、正面は車体正面で約200ミリの傾斜装甲、砲塔は約240ミリの装甲となっていました。
側面も砲塔で200ミリ、車体で180ミリの厚さがあり、まさに動くトーチカと言ってもいいものだったでしょう。
事実、このマウスは戦車ではなく移動要塞と捉えられていたとも聞きます。
(ティーガーで砲塔正面120ミリ、車体正面100ミリ、側面80ミリ)

180トンを超える重量を分散するために、履帯(キャタピラ)は思い切り幅が広く作られ、車体幅のほとんどを占めることになります。
実際マウスの車体の履帯と履帯の間はわずかに一メートルほどしかなく、操縦士は履帯と履帯の間のその隙間に挟まるようにして操縦することになり、ドイツ軍戦車によく見られた車体機銃を撃つ無線士用のシートはありません。

主砲は計画よりも若干口径を小さくし、128ミリ砲を搭載。
副武装は75ミリ砲に変更されました。

この128ミリ砲はケーニヒスティーガーの71口径88ミリ砲よりも強力で、当時の連合軍戦車で直撃に耐えられるものは存在しません。
装甲といい武装といい、まさに究極の戦車だったのです。

しかし、これだけの車両です。
動かすのはとにかく大変でした。
状態のよい道路上でもわずか時速20キロしか出ず、でこぼこした戦場では時速10キロも出るかどうか怪しいものでした。
それでも、きちんと動くという点ではたいしたものだったのです。

マウスは1943年後半に入って、ようやく試作車の組み立てが始まりました。
しかし、そのときにはすでに機動性の悪さや運用のしづらさなどによりマウスは必要とされるものではなくなっておりました。
ヒトラー総統も興味をなくしたのか、1943年10月には計画の中止が発表されます。

ですが、政治的な絡みなのか、試作車の作成だけは続けられました。
1944年に入り、マウスは二両分の試作車がアルケット社で組み立てられます。
三号突撃法の生産で手一杯だったアルケット社は、それでもほそぼそと試作車の組み立てを行い、クンマースドルフの試験場で試験を行ないます。

そこではマウスの意外なほどの機動性のよさを見せ付ける(あくまでも予想よりもよかったというだけ)ことになるのですが、1944年末には試験も中止。
マウス計画はここに終了することになります。

1945年5月。
ベルリンに向かって進撃するソ連軍は、ベルリンから約50キロの位置にあるツォッセン市に到達。
そこで今まで見たこともない超巨大な戦車に遭遇します。
武装試験のために唯一武装を施されたマウス試作二号車でした。
ツォッセン市にはクンマースドルフ試験場があったのです。

マウス二号車は、ここでソ連軍と戦って破壊されたとも、単に自爆しただけとも言われますが、車体を大きく破壊されてしまいます。
ですが、クンマースドルフに残った一号車の車体が取り寄せられ、一号車の車体と二号車の砲塔を合体。
こうしてマウスは、今もロシアのクビンカ戦車博物館に実物が保管されているのです。

ケーニヒスティーガーも超える究極の戦車として、仮想戦記などでは活躍の場を与えられている超重戦車マウス。
きっと、ヒトラーもそういった仮想戦記を夢見たのでしょうね。

それではまた。
  1. 2008/11/18(火) 20:21:51|
  2. 趣味
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:6
<<久しぶりに悪堕ち | ホーム | 速度だけなら誰にも負けない>>

コメント

世紀の大戦車にネズミと言う名前をつけたり、と思えばリモコン駆動のミニタンクにゴリアテ(ゴライアス=巨人)とつけたり、ナチスドイツのネーミングセンスは実に複雑怪奇ですよね。
  1. 2008/11/18(火) 21:59:50 |
  2. URL |
  3. いなづまこと #-
  4. [ 編集]

タイガーのバリエーションは、本当に豊富ですね。
試作段階から強力な戦車を目指していたことが良く分かります。
  1. 2008/11/19(水) 00:06:15 |
  2. URL |
  3. 神代☆焔 #-
  4. [ 編集]

128㎜といやあ・・・w
その昔ツクダの「パンサー」をやってて
まさに1ターンめでボードの端から端へ砲撃したら
相手の戦車(機種忘れましたw)を一撃で命中!撃破してしまい相手が何も出来ず唖然としてた憶えがw
自分ではヤクトタイガーだった記憶があるのですが
相手の友達は「いや、マウスだったよ」と言い張るのですが・・・(苦笑
  1. 2008/11/19(水) 09:34:58 |
  2. URL |
  3. KEBO #-
  4. [ 編集]

>>いなづまこと様
型式もそうですね。
三号や四号あたりはA型から順番ですが、パンターは最初の量産型がD型、次がA型で、最後がG。
ティーガーもⅠ型はEでケーニヒスはB型ですもんね。
対戦国を混乱させるのが目的だったとか。

>>神代☆焔様
マウスはポルシェ博士が絡んでますけど、ティーガー一族ではないですね。
でも、確かにティーガーには五種のバリエーションがありますね。

>>KEBO様
あららー、それは対戦された方が不運でしたねー。
ツクダの「パンサー」にはマウスは入っていたのかな?
ヤークトティーガーの主砲はマウスと同じ128ミリ砲なので、当たればどちらでも同じですね。(笑)
  1. 2008/11/19(水) 19:45:53 |
  2. URL |
  3. 舞方雅人 #-
  4. [ 編集]

蛇足ですが
「パンサー」にはマウスもE-100も入ってましたね。
なんかソ連の聞いたことないのも入ってたような憶えが
(なんだか忘れました^^;当時知識不足だっただけかも)

あれ、実家探したら出てくると思うんですがどこ行ったのかなぁ・・・て感じですわ(苦笑
  1. 2008/11/20(木) 08:42:23 |
  2. URL |
  3. KEBO #-
  4. [ 編集]

>>KEBO様
E-100もですか。
さすがにマニアックなゲームですねー。
デザイナーのこだわりなんでしょうね。
  1. 2008/11/20(木) 20:55:31 |
  2. URL |
  3. 舞方雅人 #-
  4. [ 編集]

コメントの投稿


管理者にだけ表示を許可する

トラックバック

トラックバックURLはこちら
http://masatomaikata.blog55.fc2.com/tb.php/1118-cf536811
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

カレンダー

03 | 2020/04 | 05
- - - 1 2 3 4
5 6 7 8 9 10 11
12 13 14 15 16 17 18
19 20 21 22 23 24 25
26 27 28 29 30 - -

AquariumClock 2

プロフィール

舞方雅人

Author:舞方雅人
(まいかた まさと)と読みます。
北海道に住む悪堕ち大好き親父です。
このブログは、私の好きなゲームやマンガなどの趣味や洗脳・改造・悪堕ちなどの自作SSの発表の場となっております。
どうぞ楽しんでいって下さいませ。

ブログバナー


バナー画像です。 リンク用にご使用くださってもOKです。

カテゴリー

FC2カウンター

オンラインカウンター

現在の閲覧者数:

最近の記事

最近のコメント

最近のトラックバック

月別アーカイブ

リンク

このブログをリンクに追加する

天気予報


-天気予報コム- -FC2-

メールフォーム

名前:
メール:
件名:
本文:

管理人にメールなどを送りたい方はこちらからどうぞ

ブログ内検索

RSSフィード

ランキング

ランキングです。 来たついでに押してみてくださいねー。

フリーエリア

SEO対策: SEO対策:洗脳 SEO対策:改造 SEO対策:歴史 SEO対策:軍事

フリーエリア