130万ヒット記念SSを投下いたします。
犯罪教授案西響子シリーズの三作目です。(笑)
奇しくもこのシリーズ(笑)の第一作「ミス・スパイダー」が110万ヒット記念作品でした。
今回三作目が130万ヒット記念ということで、妙なつながりになったものだと思っております。
いわば蛇足の蛇足になる三作目ですが、多少なりとも楽しんでもらえれば幸いです。
「コックローチレディ」
『政財界の癒着にメス! 疑惑の中心人物逮捕へ! 史上最大の汚職事件に発展か?』
ネットのニュース欄に大きく映し出される見出し文字。
私は思わず笑みが浮かぶ。
これでまた巨悪の一角が暴かれるのだ。
不正をする者を赦してはおけない。
しっかりと罪を償ってもらわなきゃ・・・
私はテーブルの上のグラスを取り、一人乾杯をしてからグラスを傾ける。
自分の書いた記事が元で、こうして悪事が暴かれるのは気持ちがいいもの。
社会の暗部を鋭く切り込むフリーライター佐登倉志穂(さとくら しほ)のお手柄ってわけ。
今回の汚職事件も、私の書いた記事が警察や検察を動かしてのこと。
これでまた私の株も上がるってものね。
「まただわ・・・」
ふと、目に留めたモニターに映し出される最新のニュース。
そこにはこう書かれていた。
『宝石店に強盗! またしても犯罪教授の関与か? 急がれる犯罪教授の正体の解明』
最近ことあるごとに名前がささやかれる犯罪教授。
警察は躍起になってその正体を解明し逮捕しようとしているが、なかなか尻尾をつかめない。
いろいろな手段で犯罪の教唆を行い、自らは手を染めることなく犯罪を起こさせる卑劣な人物。
噂では黒や緑のレオタードの女を配下に使い、彼女らに殺人や強盗をさせているとも言われている。
まるで漫画かアニメだわ。
本人はおそらく知的な四十代ぐらいの学者タイプの男性ではないかといわれ、巨大掲示板では“犯罪教授板”なんてのまで作られ、いろいろなスレで活発な議論が繰り返されている。
【男?】犯罪教授の正体を語れ52スレ目【女?】
【大好き】犯罪教授に抱かれたい人集合28スレ目【イッちゃう】
犯罪教授の配下の女性の写真をうPするスレ14
【ぜひぜひ】犯罪教授に教えを請うスレ37【お教えを】
次回のターゲットはこれだ! 11個目
さまざまなスレのタイトルに思わず苦笑してしまう。
いったい何者なんだろう・・・
この情報化社会でこれほどあからさまに存在を示していながら、その実態を掴まれていないなんてことがありえるというのだろうか。
私はグラスを傾けて、琥珀色の液体を胃の中に流し込む。
決めたわ。
次のターゲットはこれ。
犯罪教授。
その正体を私の手で暴いてやるわ。
******
ふう・・・
一杯のコーヒーが頭をすっきりさせてくれる。
ポーチからタバコを取り出し、一本つける。
ニコチンとカフェイン。
この二つがないと生きていけないわぁ。
苦笑しながらそんなことを考える。
長生きできそうにないわね。
朝からネット内での情報収集。
といっても手に入る情報なんて知れたもの。
一般的に流布している以上の情報など手に入るわけがない。
巨大掲示板における自称“犯罪教授”からの書き込みなど、ほぼ百パーセントが騙りもの。
本人が書き込むことなどまず考えられない。
つまりネットで犯罪教授を追うなんてことはほぼ無理。
通常の手段ではね。
じゃあ、どうするのか。
通常じゃない手段を使う。
むふふ・・・
蛇の道は蛇ってこと。
午後、私はある喫茶店にいた。
美味しいブレンドコーヒーを飲みながら相手を待つ。
望む情報を持っていてくれるといいんだけど・・・
一服してしばらく待っていた私の前に一人の男がやってくる。
まだ若い男だが、ぼさぼさの頭に着古したジーパンとシャツという姿で決して見栄えがするものじゃない。
「コーヒー」
男は無造作にウェイトレスにそういうと、私のほうへ向き直る。
「いきなり呼び出して“犯罪教授”がらみとはきついなぁ」
「少なくても情報屋として名を売っているんだから、ネタぐらいは持っているでしょ?」
私は彼にもタバコを勧める。
彼は一本受け取り、ひとくち吸って煙を吐く。
「そりゃあ、ちょっとはありますよ。裏世界でも名の通っている犯罪教授ですからね。でも、ブンヤさんの欲しがるようなネタじゃない」
「私は新聞記者じゃないって何度言わせるの? フリーのライターよ。記事になるならどんなネタでもいいの。できれば犯罪教授自身に会ってインタビューでもできれば最高ね」
私はぬるくなったコーヒーを流し込む。
「おいおい、あんたの目的は犯罪教授を白日の下に晒すことだろ? お勧めできないよ。殺されるぜ」
「緑のレオタードのお姉さんにかしらね」
私は鼻で笑う。
危険は承知のことよ。
これまでだって麻薬を扱う組織を敵に回したり、ヤクザ屋さんとも渡り合ったりしたものよ。
命が危険だからってやめられるものですか。
「まあ、マジな話あんまりネタはないんだよ。ただ言えるのは、近いうちに羽斗口(はとぐち)代議士が死ぬか行方不明になりますよ」
「えっ?」
私は思わず声を出す。
羽斗口代議士ったら今回の汚職事件で関わりがあると疑われている人物じゃない。
それが死ぬって?
もしかして殺される?
「犯罪教授に依頼が行ったようです。“彼”が何をたくらんでいるのか知りませんが、最近の犯罪教授は犯罪の教唆だけじゃなく依頼も受けますからね」
「つまり羽斗口代議士を張り込めば、犯罪教授の部下が出てくるってわけね」
なるほど。
殺人の実行する場面を掴めば、犯罪教授をいぶりだすことも可能か・・・
私はコーヒー代と情報量の入った封筒を置いて喫茶店を出る。
それ以上の話は聞けないだろう。
彼がどこからそれを知ったのかとか、殺害を依頼したのは誰なのかなどと聞くのは野暮なこと。
絶対に言いはしないだろう。
あとはこちらがこの情報を元に動くだけ。
さて、羽斗口代議士を張り込みますか。
******
大きな庭のある日本家屋。
さすがにいろいろと噂のある代議士の邸宅だわ。
まさか昼日中から襲われはしないとは思うけど・・・
私はヘルメットを脱いで髪を整える。
動きやすいように革のライダースーツを着てきたけど、まだこの季節はちょっと暑いわね。
さて、いつ動きがあるか・・・
それがわからないというのもつらいものね。
ま、数日張り込んでみますか。
私は適当なところにバイクを止め、もたれかかって張り込みを始める。
自動車のほうがいいんだろうけど、犯罪教授の手下はトリッキーな動きをするって言うし、バイクのほうが機動性があって動きやすいと判断したのだ。
「ふわぁ・・・」
思わずあくびが出る。
取りあえず何もなし。
日中からずっと張り込んでいたけど、一人で見張るのは大変。
そろそろ日付も変わるし、今日は何も起きないかな・・・
「えっ?」
躰をほぐすために伸びをした私の目に、邸宅の屋根にいる人影が映る。
「屋根の上に誰かいる?」
暗闇の中にうっすらとしたシルエット。
気が付くのが遅かったら見逃していたかも。
きっと犯罪教授の手下だわ。
殺人を止めなきゃ!
私はバイクを踏み台にして塀をよじ登る。
ふふん。
昔からこういうのって好きだったのよね。
取りあえず本当に殺人を犯されたんじゃたまらない。
寸前で写真を撮って追い返さなきゃ。
不法侵入で悪いけど、赦してよね。
私は中庭から邸宅に忍び寄る。
犯罪教授の手下はどこへ行ったかな?
まったく・・・
警報装置ぐらいあるんじゃないの?
私が侵入しているのに気が付かないの?
どうやら警報装置は全部潰されているみたい。
嘘でしょ。
どうやったのよ、いったい。
私が母屋の窓を開けても警報一つならないのだ。
警備システムは潰されていると思って間違いない。
私は代議士の部屋と思われるところ・・・なんてわかるわけないから片っ端からドアを開けて行く。
う~、われながら無茶しているなぁ。
でも代議士殺されたらたまらないもんね。
「そこまでよ!」
私はすぐさまデジカメのシャッターを切る。
ストロボが暗い部屋にまばゆい光を放ち、一瞬目がくらむ。
ドアを開けたそこには、今まさに鋭いナイフを振り下ろそうとしていた女の姿があったのだ。
「くっ! 見られた?」
マスクに覆われた顔を隠すように手をかざし、すぐに部屋を飛び出して行く女。
驚いたことに黒のレオタードにマスクをかぶった、まさに噂どおりの姿をしていたのだ。
私は取りあえず代議士が殺されていないことを確認すると、逃げ出した女を追う。
このまま跡をつければ、何らかの犯罪教授の手がかりがつかめるに違いない。
逃がすもんですか。
「うそ・・・」
黒いレオタードの女は、なんと腰の辺りから伸ばしたワイヤーを樹に絡め、まるでターザンみたいに次の樹へと飛び移って行く。
これは確かにトリッキーだわ。
私は裏口から外へ出ると、急いでヘルメットをかぶりバイクを走らせる。
やっぱりバイクにして正解だったわ。
車じゃ見失っちゃうもんね。
夜空にくっきりと映るシルエット。
うふふ・・・あれじゃ丸見えだわ。
いくら黒いレオタードだって、背景に星空があれば溶け込めないわよ。
私はワイヤーを操って樹から樹へ、ビルからビルへと飛び移る曲芸のような動きを追う。
どうやら郊外へ向かっているようだけど、逃がすもんですか。
「確かこの辺に来たはずだけど・・・」
私は雑木林のはずれにバイクを止め、ヘルメットをかぶったまま林に向かう。
何かあったときのためにもヘルメットがあったほうがいいわよね。
それにしても彼女は何なの?
人間とは思えないわ。
まるでマンガに出てきたスパイダーマン
あ、女性だからスパイダーウーマンか・・・
さて、どこへ行ったかしらね・・・
雑木林を進んで行くと、一軒の廃屋にたどり着いた。
こんな時間にこんなところへ来ると不気味さもいっそう増すというもの。
思わず私はつばを飲み込んだ。
「怖くない怖くない。一番怖いのは人間よ」
私はそういいながら廃屋に近づいていく。
窓ガラスは割れ、中は真っ暗。
林の中だから星明りも届かないみたいね。
でも、きっとあの蜘蛛女さんはここに来たはず。
顔ぐらい拝んでおかないと・・・
と思った瞬間、私は首筋にチクッとしたものを感じ、意識が闇に飲み込まれた。
******
「う・・・あ・・・」
ゆっくりと意識が戻ってくる。
やれやれ、どうやら捕まっちゃったかな。
どうやら跡をつけていたのを知っていたみたいね。
私は取りあえず自分の身に怪我がないか確認する。
どこにも痛みはないし、ライダースーツもそのまま。
どうやら躰には危害は加えられてないみたい。
私はゆっくりと周りを見る。
どこかの地下みたいな殺風景な部屋。
明かりが私の周囲を照らしているおかげで周りが闇に沈んでいる。
ふう・・・
誰もいないみたいね。
でも、私はどうやら椅子か何かに縛り付けられているみたい。
両脚と両腕が固定されて動かせない。
立ち上がることも無理みたいね。
やれやれだわ・・・
まあ、でもこれはチャンスよね。
うまく行けば犯罪教授とご対面。
どんな男なのか興味がないといえば嘘になる。
まずは相手の出方待ちね。
私はゆっくりと目を閉じる。
感覚を研ぎ澄まして周囲の気配を探る・・・つもりだったけど、まだ麻酔が覚めていないせいか眠くなっちゃうわ。
誰か来るなら早く来てよ。
カチャリと鍵の開く音がする。
誰か来たみたいだわ。
私は耳をそばだて、物音に集中する。
近づいてくる足音。
その数は複数。
ハイヒールでも履いているかのような硬質な音。
どうやら部下の女も一緒のようね。
部屋に入ってきたのは三人だった。
私はその取り合わせの奇妙さに思わず口を開けてしまう。
白の蜘蛛の模様の入った黒いレオタードとマスクの女と、白いカマキリの模様の入った暗緑色のレオタードとマスクの女。
この二人は噂に聞く犯罪教授のしもべたちだろう。
しかし、その二人に挟まれて立っている少女。
しかも着ているのは有名私立女子高のセーラー服という少女はいったい何者なの?
「響子様、お言いつけのとおりおびき出して捕獲いたしました」
「羽斗口の方は先ほど始末を終えました」
うなずく少女に一礼して後ろに下がるレオタード姿の女たち。
まさか・・・
いや、そんなまさか・・・
確かに犯罪教授の正体は不明だけど、まさか・・・
「おはよう佐登倉さん。一本吸う?」
セーラー服の少女がポケットからタバコを差し出してくる。
よくあるメンソール系ではなく、外国産のタバコだわ。
そういえばしばらく吸ってなかったからタバコがもらえるのは素直にうれしい。
私がうなずくと、少女は火をつけたタバコを一本くわえさせてくれた。
「もう少ししたら学校へ行かなきゃならないから、あんまり時間はかけられないの。でもまあ、30分ぐらいはあるから大丈夫」
何が大丈夫なのか知らないけれど、高校生のくせにタバコ吸っちゃダメよお嬢ちゃん。
もっとも私も吸ってたか・・・
「私のことは調べたのかしら? だったらフリーライターってこともご存知よね?」
両手が使えない状態でタバコ吸うのは大変だわぁ。
「ええ、今回羽斗口代議士を襲うことを情報屋から聞いたこともね」
あのやろう・・・
こっちにも情報売ったのか・・・
「だったら話が早いわ。犯罪教授に独占インタビューさせてもらえないかしらね。もしかして犯罪教授はあなたのお父様なのかしら」
私はタバコをくわえたままで笑みを浮かべる。
これでも笑顔にはちょっとばかり自信があるんだけどな・・・
いやらしいおっさん相手ならだけど・・・
「うふふふ・・・」
笑いながら私の口からタバコを取って灰皿に押し付ける少女。
「あとでゆっくり吸わせてあげる」
「それはどうも。一緒にコーヒーももらえるとありがたいわ」
私は苦笑する。
こんなときに何を言っているんだか。
「それでインタビューって何を訊きたいの?」
「それはご本人に会ったときに言うわ」
なぜこんなことするのかとかも訊いてみたいけど、どんな人物なのかが一番よね。
「本人が目の前にいるのに」
あー・・・
やっぱりなんだ・・・
まさかとは思ったけどこの娘が犯罪教授ってわけ?
もちろん真の黒幕は他にいるんでしょうけどね。
「そう、あなたが犯罪教授ってわけ・・・どこの誰に使われているのかわからないけど、さっさとやめたほうがいいよ、こんなこと」
「ふふ・・・やっぱりあなたも私の背後に誰かいると思うのね。悲しいなぁ。私がもっと大人だったらそんなふうには思わないのかな」
ふと寂しそうな表情を浮かべる少女。
どういうこと?
「まあ、いいわ。とやかく言うよりも手っ取り早い方法があるし。ねえ、佐登倉さん、あなた私の手伝いをする気ない?」
「手伝い? どういうこと?」
「情報収集力の長けた女怪人が一人欲しいのよ。あなたなら適任だわ。運動能力も高いしね」
情報収集力に長けた女怪人?
なによそれ?
「どういうつもりか知らないけれど、私が犯罪に加担すると思うのなら大間違いよ。私はフリーのライターとして世の中の暗部をさらけ出してやるのが仕事なんだから」
「ふうーん。犯罪同然のこともやって記事を書いているくせに?」
「そりゃ、ネタを手に入れるためには犯罪すれすれのことだってやることはあるわ。でもそれは悪事を暴くためよ! 楽しんでやっているわけじゃないわ!」
私は自らを犯罪教授とアピールする少女をにらみつける。
冗談じゃないわ。
一緒にしないで。
「ねえ、佐登倉さん。あなた彼女たちをどう思う?」
少女が背後の闇に控える女たちを指し示す。
どうって・・・
「どうって言われても、恥ずかしい格好した犯罪を犯す女たちとしか・・・」
「でしょうね。でも、彼女たちも元はあなたと同じ犯罪を嫌う普通の女だったのよ」
「そりゃあ、いろいろと理由はあるんだろうけど・・・」
「違うの」
えっ?
違う?
私は少女のくりくりした瞳に眼をやった。
「私がそう仕向けたの。犯罪が好きな女怪人に洗脳してやったのよ」
いたずらっぽく笑う少女。
洗脳って?
いったいこの娘はなんなの?
「薬でも催眠術でもないわ。思考を改変してやったの。私に忠実な犯罪者になるようにね」
「思考を改変?」
「そう。すぐにわかるわ。あなたの思考もこれから変えてあげるから」
少女の笑みがまるで悪魔の笑みに見えてくる。
やばい。
この少女はやばいよ。
どこか狂ってしまっているんだわ。
私は何とか縛られた躰を自由にしようともがいてみる。
でも、固く縛られた手足はとてもほどけそうにない。
「心配はいらないわよ。すぐ終わるから」
少女が私の額に向かって手をかざす。
「やだやだ! やめて、やめてぇ!」
私は必死に響子様にお願いする。
「うふふ・・・もう終わったわよ」
笑顔を見せる響子様。
その笑顔はまるで天使のよう。
「本当ですか?」
響子様が手をかざしたのはほんの数秒。
思考を変えるって言っていたけど、私の思考が変わったというのだろうか・・・
「マンティスウーマン、彼女の縄を切ってあげて。ミス・スパイダー、彼女の装備を出してあげて」
「「はい、響子様」」
響子様の指示に従ってすぐに私の縄は切られ、私の足元にトランクが一個置かれる。
「響子様、これは?」
私は縛られていた手をさすって血行を取り戻しながら、響子様に尋ねてみた。
「あなたの装備よ。コックローチレディ」
響子様は笑顔で私のことをそうお呼び下さった。
******
「クスッ」
思わず笑いがこみ上げる。
真上にいるというのに、警備員は気が付きもしないのだ。
人間は足元や前後は見ても、天井はまず見上げない。
天井に張り付いている私に気が付かないのだ。
やがて警備員が行ってしまい、私は再び天井を這って行く。
長い触覚型のセンサーがふるふると震え、この先の警報装置を感知する。
無駄なこと。
響子様の装置があれば、警報装置などすべて無効化できるのよ。
私は背中に広がる翅を広げ、センサーを一つずつ無効化する。
すべてのセンサーが死んだところで私は床に降り立った。
うふふふ・・・
このコックローチレディに侵入できないところなどないのよ。
どんな情報だって盗み出してみせるわ。
私はすばやく床をすべるように這い、机の下にもぐりこむ。
ふう・・・
こういう狭いところって落ち着くわぁ・・・
なんたって私はコックローチレディなんですもの。
茶色のレオタードには可愛いゴキブリの模様が胸のところに染め抜かれ、背中にはセンサーを無効化したり情報処理をするための装置が平べったい翅のような形で背負われている。
この装置を使って私は情報を手に入れるのよ。
私は触角の先のコネクターをコンピュータにつなぎ、右手に仕込まれたキーボードを操作する。
複眼状のバイザーにコンピュータのデータが映し出され、私はそれを奪い取って行く。
これでいいわ。
この企業のすべてのデータは私のもの。
そして私のものは響子様のもの。
愛する犯罪教授の響子様のため、私はこの身を捧げるわ。
私は女怪人コックローチレディなの。
END
以上です。
よければ拍手・コメントなどいただければと思います。
それではまた。
- 2008/09/30(火) 21:10:14|
- 犯罪教授響子様
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