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舞方雅人の趣味の世界

あるSS書きの日々

戦艦ビスマルクを撃沈せよ (4)

ビスマルクの砲撃によって巡洋戦艦フッドを失ったことは、英国にとっては大きな衝撃でした。
完成以来軍艦美の極致と言われ、英国民に親しまれてきた巨艦を失ったことは、英国海軍に復讐心を抱かせるには充分でした。
英国海軍軍令部は、投入できるすべての戦力を振り向けるべく直ちに手配を行います。
船団護衛という重要な任務についていた戦艦「ロドニー」が、この命令により駆逐艦を引き連れてビスマルクに向かいました。

そのころビスマルク艦上では、リュッチェンス提督が決断を迫られておりました。
積み損ねてしまった燃料200トン。
せっかく入港したのに燃料補給を行なわなかったノルウェーのベルゲンまでに消費した燃料が約1000トン。
そして、今また砲撃戦で使用不能になってしまった燃料が約1000トン。
残燃料は3000トンを切っていたといい、通商破壊活動を行なうにはもはや燃料不足は明白でした。

リュッチェンス提督はついに任務中止を決断。
ビスマルクを入港させて修理することに決定します。
無傷に近いプリンツ・オイゲンに関しては、このまま任務を続行させるため、ここで別れることとなりました。

問題はどこに入港するかでした。
ノルウェーのベルゲンやトロンヘイムは近いのですが、まさに英国海軍が待ち構えている危険性が非常に高いものでした。
一方遠回りになりますが、フランスの港へ向かえば英国海軍の監視の目をすり抜けられる可能性もあり、リュッチェンス提督はそちらを選びます。
ビスマルクはフランスのブレストかサン・ナゼールを目指すことになりました。

損傷を受けていたとは言え、ビスマルクはまだ28ノットの速度を出すことができました。
油の尾を引いていてもこの速度を維持できれば、英国の艦隊を振り切ることも可能かと思われました。

英国本国艦隊のトーヴィー提督は、何とかビスマルクの速度を低下させなければならないと考えます。
そこで航空機による魚雷攻撃で損傷を与え、速度を落とさせようとしました。

早朝の砲撃戦の興奮も冷めやらぬ5月24日22時。
本国艦隊の空母ヴィクトリアスから、複葉の旧式機ではあるものの信頼性の高い「ソードフィッシュ」雷撃機が9機飛び立ちます。
この攻撃隊はウォーカー隊の誘導でビスマルクにたどり着き、果敢な攻撃で魚雷一本を命中させることに成功しました。
しかし、この魚雷はビスマルクにさほどの損傷を与えることはできず、出港前にリュッチェンス提督が豪語したことを証明しただけでした。

日付が変わった1941年5月25日深夜。
それまで付かず離れずレーダーでビスマルクを追尾してきたウォーカー隊の重巡サフォークが、レーダーからビスマルクを見失います。
英国艦隊を振り切るためのビスマルクの数度の針路変更が功を奏したのでした。

サフォークが接触を失ったことで英国側は焦りました。
このままではビスマルクを取り逃がしてしまいます。
しかし、ビスマルク側はこの幸運を自ら手放してしまいました。
ドイツ海軍本部に宛てて通信を送ってしまったのです。

ビスマルクの通信は英国側にも傍受され、ビスマルクの位置が知られてしまいました。
ところがまだ幸運は完全には逃げてませんでした。
英国海軍軍令部はビスマルクがフランスに向かうものと判断しましたが、肝心の追尾するトーヴィー提督の艦隊がビスマルクの位置を誤って判断してしまったのです。

トーヴィー提督の艦隊が空しい追尾を行っている間にもビスマルクはフランスに近づいておりました。
あとほんの少しの幸運があればフランスにたどり着ける状態でした。

5月25日はそうして終わり、5月26日の朝を迎えます。
ビスマルクはフランスまで400マイルあまりの位置にあり、もう少しでUボートの活動圏内でした。

10時30分、哨戒機のカタリナ飛行艇がフランスのビスケー湾に向かって航行中のビスマルクを再度発見します。
発見の報告自体は喜ぶべきものであったものの、英国海軍は逆に深刻な状況であることに暗澹たる思いを募らせました。
現状ではどうあがいても、本国艦隊もH部隊もビスマルクを捕捉できる位置にはいなかったのです。

このままではフランスに逃げ込まれてしまう。
せめてビスマルクの速度が低下すれば・・・
英国海軍は一縷の望みを駆逐艦と航空機に託しました。

この時、ジブラルタルより出発していたサマーヴィル提督指揮下のH部隊は、ビスマルクよりおよそ100マイルの位置に到着しておりました。
100マイルであればソードフィッシュ雷撃機で攻撃ができる。
そう考えたサマーヴィル提督は、指揮下の空母「アークロイヤル」にソードフィッシュ雷撃機の出撃を命じます。
14時40分、魚雷を抱いたソードフィッシュは、複葉機という旧式な姿でのろのろとではありましたが、ビスマルク攻撃の熱い思いを載せて飛び立って行きました。

ところがこの熱い思いは空回りをしてしまいます。
アークロイヤルを飛び立った15機のソードフィッシュは、こともあろうに味方である軽巡洋艦「シェフィールド」をビスマルクと誤認して攻撃してしまったのです。

しかし、何が幸いするかわかりません。
この攻撃で投下された魚雷は、すべてシェフィールドに当たる前に自爆してしまい、シェフィールドは傷つくことをまぬがれました。
信管の感度がよすぎて、波に当たっただけで爆発してしまったのです。
帰投したソードフィッシュ隊はそのことを知り、魚雷の信管を交換して第二次出撃に望むことができました。

空母アークロイヤルの艦上で、ソードフィッシュ隊が万全を期して第二次攻撃の準備をしていたちょうどそのとき、この巨艦を潜望鏡に収めたUボートがおりました。
ビスマルクと兄弟艦の約束を交わしたU-556でした。
艦長のヴォールファルト大尉は、あれこそ英国の空母アークロイヤルだと認識しており、魚雷を撃つ絶好のチャンスであることも理解しておりました。
しかし、基地に帰投中であったU-556には魚雷が一本も残っておりませんでした。
商船六隻撃沈という輝かしい戦果を挙げていたU-556は、手持ち魚雷をすべて使い果たしてしまっていたのです。
運命の皮肉でした。
U-556はビスマルクを救うチャンスを逸したのです。

19時10分、アークロイヤルから再びソードフィッシュ15機が飛び立ちます。
今度はシェフィールドの誘導もあってビスマルクに到達。
約30分に渡ってビスマルクを攻撃しました。

熾烈な対空砲火がソードフィッシュ隊を襲い、魚雷投下をあきらめざるを得なくなる機も出る中で、二本の魚雷がビスマルクに命中します。
一本は左舷中央部に命中、多量の浸水が起こりましたが、まだビスマルクにとっては大きな損害ではありませんでした。
しかし、二本目は後部推進器付近に命中。
ビスマルクの三本のスクリューのうち中央の一本が捻じ曲がり艦底を傷つけます。
さらに悪いことに、これによって舵が効かなくなってしまい、取り舵(左舵)を切ったまま動かなくなってしまったのです。

この損傷は致命的でした。
ビスマルクは速度も出せなくなり、左へ左へとただ回転するしかできなくなったのです。
フランスへ逃げ込むことがほぼ絶望となりました。

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  1. 2008/09/23(火) 20:34:48|
  2. ビスマルクを撃沈せよ
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(まいかた まさと)と読みます。
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