今日は予告も何もなしでしたが、短編SSを一本投下します。
タイトルは「ママがゲーム機になっちゃった……」です。
私、あおばさんの「ゲーム機お姉ちゃん」のイラストとか、MTさんの「ゲームマザー」というSS作品とか、すごく好きなんですよね。
人間がゲーム機にされて、ただゲームのために使用されてしまうというのがツボなんですかねー。
ということで、MTさんの「ゲームマザー」に似たような作品になってしまいましたが、お楽しみいただけましたら幸いです。
それではどうぞ。
ママがゲーム機になっちゃった……
「はあ……」
思わずため息をついてしまう拓広(たくひろ)。
学校の帰り道をトボトボと歩いている。
早く帰ってゲームをして遊びたいのはやまやまなのだが、ゲームをしているとママがうるさいのだ。
まだゲームを始めてそんなに時間が経たないうちから、勉強しろ宿題しろゲームばかりするなと文句ばかり言う。
別に勉強や宿題をしないわけじゃなく、拓広自身はゲームばかりしているつもりはないのだが、どうもママにはゲームしかしていないように見えるらしい。
友達との話題のためにも自分自身の楽しみのためにも、ゲームで遊ぶことは拓広にとっては大事なことなのだが、毎日毎日耳元でうるさく言われ続けるとゲームで遊ぶのもつらくなるというもの。
それゆえに、遊びたいけど帰りたくないという矛盾した気持ちになってしまうのだった。
「ママがうるさく言わなければいいのになぁ……」
拓広はそうつぶやく。
もしママがうるさく言わないのなら、ちゃんと宿題や勉強だってやるし、お手伝いだってするのになとも思うのだ。
「はあ……」
またしてもため息をつく拓広。
小学生の彼にとっては切実な悩みなのだ。
「そうだ。神様にお願いしてみよう」
ふと拓広は、帰り道の途中にある祠のことを思い出す。
小さな祠でちょっとした雑木林の中にあるのだが、神様がいるから粗末にしてはいけないよといつも言われている場所だ。
実際近所の人がいつも掃除をしているのか、いつ行ってもきれいになっているのだが、なんとなく雰囲気が厳粛な感じがして、拓広はめったに行くことは無い。
でも、もしかしたら神様がママにもう少しゲームを許してやるように言ってくれるかもしれないのだ。
拓広はそう思い、祠に通じる道に入っていった。
祠の前までやってくると、拓広はなんだか空気がひんやりとしているような感じがした。
周囲には誰もいなく、ちょっと離れた通りの音さえもここには聞こえてこないような感じがする。
祠の扉は開いており、中にはよくわからない像なのか石なのかが置かれていた。
拓広はちょっと戸惑ったものの、とりあえず祈ってみようと思い、柏手を打ってお祈りする。
「ママがゲームするなって言わないようにしてください。むしろもっとゲームしろって言うくらいがいいです」
拓広は目をつぶって一礼する。
すると、何かが耳元を通り過ぎたような気がして、拓広は思わず目を開けた。
だが、そこは特に何も変わった様子はなく、ただひんやりとした風が通り抜けるだけだった。
******
「はあ……」
掃除機をかけながらため息をつく亜樹美(あきみ)。
テレビの前に置かれた灰色のゲーム機がどうにも目障りに感じてしまう。
物理的に掃除機かけの邪魔になるということではない。
存在自体が目障りなのだ。
小学生の息子は学校から帰ってくると、いつもゲームで遊んでいる。
最初は少しぐらいいいかとは思ったものの、夕食後まで遊んでいるのだ。
本人は勉強も宿題もしているというけど、机に向かっている時間なんてわずかなもの。
だからついついゲームをやっていると文句を言いたくなる。
「ゲーム機なんて無ければいいのに……」
思わずそうつぶやく亜樹美。
この件については夫の紀之(のりゆき)もあてにはならない。
むしろゲームくらいはいいんじゃないかと息子を甘やかすのだ。
時々一緒になって遊んですらいるし……
ゲームなどどこが面白いのだろうか……
面白くないとは言わないけど……
その時室内に風が吹く。
「えっ?」
窓は閉まっているのにどうして風が?
亜樹美が不思議に思っていると、風はゲーム機を持ち上げる。
「えええっ?」
思わず声をあげてしまう亜樹美。
強風がゲーム機を吹き飛ばしたのではない。
ほんのちょっとしたそよ風程度のものが、重いゲーム機を宙に浮かせたのだ。
「ど、どういう?」
亜樹美は不思議に思ってゲーム機に手を伸ばす。
その瞬間ゲーム機からまばゆい光が発せられ、亜樹美の目をくらませる。
そしてそのままゲーム機は亜樹美の躰にすうっと入りこんでしまい、亜樹美はその場に倒れ込んだ。
******
「ブゥオーーーン」
亜樹美のスピーカーから起動音が鳴る。
「う、うーん……」
ゆっくりと上半身を起こす亜樹美。
だが、その姿は先ほどとは似ても似つかないものに変化していた。
亜樹美の首から上はまるで薄型テレビのような四角い液晶モニターになっており、左右にスピーカーが付いている。
躰は女性のような美しく滑らかなボディラインを見せているが、全身がグレーのプラスチックになっている。
両胸のふくらみには乳首の代わりに右には十字型のキーが、左には四つのボタンが付いていた。
またおへそのところには縦にスリットができており、ゲーム用のディスクを入れられるようになっている。
両手と両足もグレーのプラスチックでできていて、関節部分は球形のジョイントになっており、足はハイヒールを履いたような形状になっていた。
それはまさに女性とゲーム機が融合したような姿だった。
「わ、私はいったい……」
薄型モニターになった頭を振る亜樹美。
その画面にはゲーム機の起動画面が映っている。
「そうだわ、掃除……私は掃除の最中……」
だが、亜樹美の中で掃除はどうでもよくなってくる。
「ああん……そうよ……ゲーム……ゲームがしたいわ。早く誰かが私でゲームをしてくれないかしら」
亜樹美の中で今まで感じたことの無かった欲求が生まれてくるのだ。
「そうだわ。もうすぐ拓広が帰ってくるはず。ああん……拓広ぉ……早く私でゲームしてぇ」
息子の帰りが待ち遠しく感じる亜樹美。
彼女はワクワクしながら息子の帰宅を待つのだった。
******
「ただいまぁ……」
願掛けを済ませた拓広が帰ってくる。
そしてリビングに入ってきたところで、彼は目を丸くした。
「お帰りなさい拓広ぉ。さあ、ゲームをしましょ」
そう言って正座をしている灰色の女性のような存在。
いや、そもそも人だとは思えない。
なぜならその者の首から上は薄型テレビのような四角い液晶モニターであり、どう考えても人間の頭が入るような着ぐるみマスクとは思えないし、躰だって灰色のプラスチックでできたマネキンみたいなのだ。
胸もむき出しで、片方には十字キーがあり、もう片方にはボタンが四つ付いている。
腰の括れや全体のフォルムは確かに女性っぽかったけど、なんと言うか機械人間といった感じだ。
「わわわわわ、だ、誰? 誰なの?」
拓広は思わず手にしたカバンを落としてしまう。
「ええ? なにを言ってるの? ママに決まっているでしょう? さあ、ゲームよ。ゲームをしましょう」
そう言って亜樹美は正座から足を伸ばして座り直す。
彼女の太ももの上は座れるようになっているのだ。
「マ、ママ? ウ、ウソでしょ?」
唖然とする拓広。
いったい何がどうなっているのだろう?
このゲーム機ともロボットともつかないものがママだって?
「ウソなんかじゃないわよ。あ、もしかして私の躰が変わったからわからなかった?」
四角いモニター画面がちょっとうつむく。
どうやら自分の躰を見ているらしい。
「ほ、本当にママなの? どうしてそんな……」
拓広の声は震えている。
この機械人間がママだとはとても思えない。
「そうよぉ。確かに今朝までの私とはちょっと違うものね。でもどう? ママの新しい姿は?」
亜樹美は立ち上がってクルリと回り、自分の躰を見せつける。
「わぁ……」
思わずドキッとする拓広。
グレーのプラスチックの人形のようだとはいえ、背中やお尻は大人の裸の女性のラインそのままなのだ。
まるで女性のヌードを見せられたような気がしてしまう。
「マ、ママ……」
「うふふ……どう? 私ねぇ、拓広の好きなゲーム機になったのよぉ。素敵でしょう? さあ、ゲームしましょ」
再び床に座って足を投げ出す亜樹美。
そして自分の太ももをポンポンと叩く。
「さあ、ここに座って。ママが使い方を教えてあげる」
「え? う、うん……」
まるでキツネにつままれたような気分でどうにも理解しがたいが、ともかく拓広はゲーム機となった亜樹美の太ももに座るのだった。
「ほらよく見て。ママの顔はモニターになっているの。ここにゲーム画面が映し出されるわ」
「う、うん」
亜樹美は自分の機能を解説しはじめる。
「今はまだ起動画面だけど、いろいろなゲームを映し出すことができるわよ」
「ママ……ちゃんと見えるの?」
「えっ? どうして? ちゃんと拓広の顔が見えているわよ」
亜樹美には拓広の質問の意味がよくわからない。
「だって……目がないから……」
言われてみればその通りだと思う亜樹美。
確かに彼女の顔は全面が液晶モニターになっており、目もカメラもない。
だが、どういうわけか問題なく見えるのだ。
「そう言えばそうよね。不思議ね。でもちゃんと見えるから大丈夫よ」
「そうなんだ」
拓広もなんだかわからないが、そう言われれば納得するしかない。
それよりも、目の前にある二つのおっぱいが気になってしまうのだ。
「うふふ……気になる?」
拓広の目がちらちらと自分の胸を見ることに気付く亜樹美。
「え? う……うん……」
拓広は赤くなってしまう。
「恥ずかしがることは無いわ。ママのおっぱいはコントローラーなの。ほら見て、右側は十字キーになってて上下左右をこれで操作するの。左側には四つのボタンが付いているから、これでいろいろと決定できるのよ。ほら、持ってみて」
亜樹美は拓広の手を取って自分の胸を持たせる。
「あぁぁん……気持ちいい。ママのおっぱいでガンガン私を操作してねぇ」
思わず声をあげてしまう亜樹美。
コントローラーを操作させることがこんなに気持ちがいいなんて……
「あん……」
だが残念なことに拓広はすぐに手を引っ込めてしまう。
なんとも恥ずかしい気持ちやおっぱいを触るのがいけないような気持ちが、どうしても出てしまうのだ。
「うふふ……心配しなくていいのよ。このおっぱいはコントローラーだから、いつでもどんどん触って操作していいの」
亜樹美はそう言って微笑んで見せようとするが、残念なことに彼女の顔は液晶モニターに起動画面が映っているだけだ。
「う……うん……」
そう言われても、拓広はどうしてもおっぱいを触るのは恥ずかしく感じる。
その様子はゲーム機になった亜樹美にはちょっと残念だ。
「大丈夫よ拓広。すぐに慣れるわ。それでね、ここにはゲームディスクを入れられるようになっているの。好きなゲームのディスクを入れてね」
亜樹美はとりあえず自分の機能の説明を続け、おへそのところに縦に入ったスリットを指で示す。
「あ、もちろんネットにつないでくれれば、ゲームのダウンロードも可能よ。内部ストレージは充分な容量があるから、たくさんダウンロードしてくれてかまわないわ」
「そ、そうなんだ……」
拓広はそうとしか言いようがない。
これが本当に起こっていることなのだろうか?
ボクは何か悪い夢でも見ているのではないだろうか?
「あとこのスリットの下側には男性向けアダルトゲーム対応のオナホールがちゃんとあるの。おちんちんを入れると気持ちいいわよ」
亜樹美は指をずらして股間の性器を指し示す。
「えっ? えっ? えええっ?」
思わず飛び退るようにして立ち上がる拓広。
いきなり女性のオマンコを見せられてはそうなろうというものだ。
「あん……拓広にはまだ早かったわね。そうだわ、パパなら大丈夫ね。パパにたっぷりアダルトゲームを楽しんでもらいましょ。拓広はもう少し大人になってからね」
性器部分にセットされたオナホールを指で広げて見せながら亜樹美は楽しそうに話す。
ゲーム機になってしまった彼女には、もう機能を使ってもらうことだけが喜びなのだ。
「マ、マ、ママ……・お、お願いだから元に戻って。ママがゲーム機なんていやだよ」
目を逸らしながら拓広がやっとの思いで言う。
いったいどうしてこんなことに……
あ……
もしかしてボクが神様にお願いしたからなの?
そんなぁ……
「ええ? イヤよ。私はゲーム機よ。ゲーム機以外の何者でもないわ」
不満そうな声をあげる亜樹美。
彼女は今の自分に満足していたのだ。
人間に戻りたいなどとは全く思わない。
「そんなことよりゲームしましょ。ゲームゲームぅ。ママでたっぷりゲームしてぇ」
誘うように手で拓広を呼ぶ亜樹美。
もうゲームをしてほしくてたまらない。
「そんなぁ……ご、ご飯とか……晩ご飯とかどうするの?」
拓広は焦ってしまう。
ママが家事をしなくなったらどうしようと思ってしまうのだ。
「ええ? そんなのいいじゃない。私は電気があればいいの。まあ、どうしてもって言うのならやってもいいけど……そんなことより早くゲームしましょう。ゲームぅ」
亜樹美にとってはもう家事などどうでもいいのだ。
先ほどまで使っていた掃除機も放り出されたままである。
「そんなぁ……困ったなぁ……」
頭を抱える拓広。
確かにもっとゲームをしろと言われるぐらいがいいとはお願いしたけど、それはこんなはずじゃなかったのだ。
「ねえ、ゲームしましょう? 拓広ぉ、早くぅ」
甘えるような声で拓広を呼ぶ亜樹美。
ゲーム機になった彼女は、とにかくゲームをしてほしくてたまらない。
「そんなぁ……神様ぁ、ママをもとに戻してぇ!」
拓広の願いはむなしく、ゲーム機になったママは拓広にゲームをしようと呼び続けるのだった。
END
いかがでしたでしょうか?
よろしければ感想コメントなどいただけますと嬉しいです。
今日はこんなところで。
それではまた。
- 2023/04/16(日) 19:00:00|
- 異形・魔物化系SS
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