先週の10月10日は1010で千十(せんとお)から「(特撮・フィクション系)戦闘員の日」と提唱させていただき、SSを一本投下させていただきました。
おかげさまで多くの方に賛同していただき、10月10日からの一週間を「戦闘員の日週間」として作品等を見せてくださる方もおられ、ありがたい限りです。
今日10月17日はその「戦闘員の日週間」も最終日。
そこで短い作品ですが、トリを飾る感じでSSを一本投下します。
タイトルは「コスプレしちゃった」です。
お楽しみいただければと思います。
それではどうぞ。
コスプレしちゃった
「真紀(まき)! 風邪はもういいの?」
三日ぶりに学校に来た真紀に、私は思わず声をかける。
「おはよう、愛梨沙(ありさ)。あー……うん、まあね……」
メガネの奥の瞳が少し泳ぎ、てへっという感じで笑う真紀。
すぐに私はピンときた。
「ああー、またずる休みしたなぁ? ホントにもう……出席日数足りなくなっても知らないよ」
もう……
心配したんだからね。
LINEに既読はつかないし、電話かけても出ないし、自宅に電話をかけてもおばさんが風邪を引いたのよって繰り返すばかりだし……
今日あたり家に行こうかって思っていたくらいなんだから……
「ああ……出席日数なんてもうそんなのはどうでもいいのよ。学校なんてどうでもいいの。ふふっ」
真紀の口元に冷たい感じの笑みが浮かぶ。
「えっ?」
どうでもいい?
今どうでもいいって言ったの?
どういうこと?
「ねえ、そんなことよりも今日学校が終わったら家に来ない? 愛梨沙に見せたいものがあるの」
真紀の表情がガラッと変わる。
さっきは一瞬ものすごく冷たいような顔をしたのに……
いや、それよりもこれではっきりした。
「ははーん……それで二日も休んだんだ。今度は何やるの?」
あのアニメの魔法少女か?
それとも先月始まった作品のビキニアーマー女戦士か?
いずれにしても、この二日間は衣装づくりにいそしんでいたというわけだ。
まったくもう……
それならそうと言ってくれればいいのに……
「ふふっ、それは来てからのお楽しみ。来るでしょ?」
「もう……こっちに選択権なんてないくせに……」
私は肩をすくめるが、その実楽しみにも思っていた。
今度はどんなコスプレが見られるのか?
真紀のコスプレを見るのは私にとっても楽しみなのだ。
席に向かう真紀を見送り、私も席に着く。
なんだかうきうきしてしまう。
彼女はいったいどんな格好をしてくれるのか?
もしかしたら思いもよらないキャラということもあるかも。
結構きわどいコスも着たりするのよね。
はっきり言って真紀はオタクである。
そりゃ私もアニメは見るしマンガも読む。
でも、真紀は守備範囲が段違いに広いのだ。
深夜アニメも録画して見るし、少年マンガ少女マンガ問わずしょっちゅう読んでいる。
同人誌めいたものも描いたりするし、コミケなんかも顔を出す。
なによりコスプレが好きで、アニメや漫画のキャラのコスを器用に作っては着て見せてくれる。
コミケでコスプレを披露したりもするし、SNSに写真をアップもしていたりする。
もちろんその場合は顔出しNGにはしているが。
つまり昨日一昨日と休んだのも、コスの制作に夢中だったということなのだろう。
それだけ気合を入れているということなのかもしれない。
まったくもう……
LINEぐらい返事しなさいよね。
で、そんな真紀となんだかんだでもう一年半くらいになるのよねー。
高校に入って同じクラスになって席が隣同士になったのが去年の春か。
最初はなんだか壁を作られているかなとも感じたけど……
気が付くとおしゃべりするようになってて……
アニメや漫画の話でいろいろと聞けるのが面白くて……
ふう……
なんだか不思議ね……
いけないいけない……
授業授業……
やれやれだわぁ……
******
放課後、私は朝言ってた通り、真紀と一緒に彼女の家に向かっていた。
でも、今日の真紀はなんだかいつもと感じが違う。
いつもは真紀の方がよく話しかけてくるのに、今日は私の方が話しかけているし、返事もどこか上の空だ。
もしかして……寝不足?
それならまあ、いいんだけど……
「さあ、入って」
「お邪魔しまーす」
私は真紀と一緒に玄関を入る。
真紀の家は一軒家。
真紀のお父さんが結構いいところの部長さんだそうで、頑張っているからとのこと。
うちはマンションなのでうらやましい。
「お帰りなさい」
奥のキッチンから真紀のお母さんが顔を出す。
「ただいま」
「こんにちは。お邪魔します」
私はぺこりと頭を下げる。
真紀のお母さんは専業主婦。
共働きのうちとはこのあたりも違うところ。
「愛梨沙を呼んだから、二階には来ないで」
「はい……」
真紀の言葉に無表情でコクンとうなずくおばさん。
その姿に私は何か違和感を覚えてしまう。
真紀のお母さんって、もう少し明るい人だったような……
「愛梨沙」
「あ、うん」
私は真紀に呼ばれ、そのまま後について彼女の部屋に行く。
「ね、ねえ、なんだかいつものおばさんと雰囲気が違ったような……」
階段をのぼりながら私は真紀に聞いてみる。
「そう? 別に気にしなくていいわ」
「えっ?」
気にしなくていいって……
そりゃ、私の気のせいかもしれないけど……
「入って」
「うん」
二階の真紀の部屋に私は入る。
「えっ?」
私は思わず声を上げてしまった。
いつも遊びに来ていた真紀の部屋とは全く違っていたのだ。
マンガ本とテレビとアニメの円盤があった一角は片付けられてしまっており、窓には分厚いカーテンがかけられて薄暗い。
それに、壁には今までは存在しなかった大きな頭蓋骨のタペストリーがかけられていたのだ。
「こ、これって?」
「ちょっとした模様替えよ。用意してくるから、少しここにいてもらうわ」
私が戸惑っていると、真紀はカバンを放り投げるようにして置き、すぐに部屋を出て行ってしまう。
「ちょ、ちょっとまっ……」
私が呼び止めようとしたときにはすでにドアは閉じられていた。
な、なんなの?
いつもと違う……
それにしても……
あまりにもいつもの真紀の部屋とは違いすぎる。
カーテンだって閉め切っているし、壁にはあんな不気味なドクロのタペストリーなんてかかっているし……
あんなにあったマンガ本やブルーレイだってどこにやってしまったのやら……
おかげで何か借りて読んで待つってわけにもいかないじゃない……
どうしよう……
「お待たせ」
私が真紀のベッドに腰かけ、さてどうしたものかと思っていると真紀が戻ってくる。
「えっ? えええっ?」
部屋に入ってきた真紀を見て、私は思わず声を上げた。
真紀はもうコスプレをしていたのだ。
その……首まであるハイネックの黒いレオタードを身に着け、足には網タイツを穿き、さらには室内だというのに黒いブーツまで履いている。
頭には黒いベレー帽をかぶり、メガネを外した目元には青いアイシャドウを入れ、唇も青い口紅が塗られている。
首には赤いスカーフを巻き、腰にはタペストリーについていたようなドクロ模様のバックルの付いたベルトを締めている。
なんというか……不気味な感じもするし、躰のラインがもろバレでいやらしい感じもするような格好だ。
これはいったい何のキャラ?
「ふふふふ……」
私が唖然としていると、真紀は妖しい笑みを浮かべて近寄ってくる。
「あ……真紀……?」
「うふふふ……違うわ。私は偉大なる秘密結社グォモグの女戦闘員。私のこの姿を見た者は生かしては帰さない」
「ヒッ!」
ベッドに腰かけていた私を見下ろす真紀の目が真剣そのもので、私は思わず息をのむ。
お、女……戦闘員?
「なーんてね。あはははは……どう? ちょっと怖かった?」
「えっ? ええっ?」
いきなりいつものように笑顔になる真紀。
も、もしかして今のは演技?
すごく真剣だった感じだったけど……
「あはは……ごめんごめん。それよりどう? 似合う?」
私の前でクルリと一回転する真紀。
その躰のラインが見事に浮き出ている。
真紀って、知っていたけどスタイルいいよね……
「う、うん……似合うけど、すごく躰のラインが出るコスだね。なんのキャラなの?」
こんなキャラ出てくる作品なんて私は知らない。
「うふふ……これ」
机の中からブルーレイのパッケージを取り出す真紀。
着ているコスがレオタードなだけに、かがんだ時にものすごくお尻が強調されることがわかる。
「仮面ライダー?」
これって日曜の朝にやっているやつだっけ?
私は見たことないけど……
「そう。これは初代でね。もうかなり昔の作品なんだけど、これの一話と三話にだけレオタードと網タイツ姿の“女戦闘員”っていうのが出てくるの。これはそれをアレンジしたコスチュームで、その女戦闘員を気に入った首領様が採用したスタイルなの」
真紀がふふんと誇らしげにする。
なるほど、そういう設定ですか。
昔の特撮にこんなキャラが出ていたんだぁ……
「うふふ……それでね、愛梨沙も着てみない? あなたの分もあるんだけど」
「へ?」
私は妙な声を上げてしまう。
わ、私も?
そのコスを着ろと?
「いやいやいやいや、無理無理無理無理。私には無理ー!」
私は思い切り首を振る。
いつだって着るのは真紀で、私はそれを鑑賞する側だったじゃない。
「うふふ……そう言うと思った。でもダメよ。言ったでしょ? ただでは帰さないって」
「えええ?」
「あなたなら絶対女戦闘員にふさわしいの。それに女戦闘員って複数いないと絵にならないでしょ? だからあなたも女戦闘員になるの!」
ずいっと顔を近づけてくる真紀。
その目は真剣そのものだ。
あう……・
でもぉ……
「ここには私とあなたしかいないから。恥ずかしくないから。着るだけでいいから」
畳みかけてくる真紀。
「うう……」
どうしよう……
困ったなぁ……
「着てどうしてもだめだったらあきらめるわ。残念だけど……」
がっかりした表情になる真紀。
ううう……
そんな顔をされると……
「い……一度だけ……なら」
どのみち着ないと納得してくれなさそうだし……
は、恥ずかしいけど……い、一度だけなら……
「よかった。あなたを殺さなくて済むわ」
ホッとしたような顔をする真紀。
「えっ?」
「あ、ううん、なんでもない。これ、あなたの分。着方はわかる?」
真紀が脇に置いてあった大きな紙袋を渡してくる。
その紙袋はその衣装が入っていたのか。
ずいぶん大きな紙袋があるとは思っていたけど……
「だ、大丈夫とは思う」
レオタードなんだから、着るぐらいはできると思う。
「そう、それじゃ私は部屋から出ているわ。いい、下着から何からすべて脱いでから着るのよ。いいわね?」
「う、うん」
なんか異様な迫力がある真紀に、私は気圧されてしまう。
着ているコスのせいだろうか?
「それじゃドアの外にいるから、着替え終わったら呼んで」
「う、うん」
私はそう返事をすると、ドアから出ていく真紀の姿を見送った。
「ふう……」
やれやれ……なんだか変なことになっちゃった。
まあ、でも、こんなことでもないと、なかなか網タイツだのレオタードだのなんて着ることないから、そういう意味ではちょっとドキドキしている自分もいる。
うー……
でも、私はそんなにスタイル良くないから、真紀みたいに似合うとは思えないよぉ。
こんなことならもっとダイエットしておくんだったぁ……
うー……
でも仕方ない。
私は覚悟を決めて紙袋から衣装を取り出していく。
黒いレオタードに網タイツ。
膝くらいまであるブーツに黒い手袋。
黒いベレー帽に赤いスカーフ。
それと腰に巻くドクロ模様のバックルの付いた太いベルト。
それらをベッドの上に広げさせてもらうと、私は意を決して制服を脱いでいく。
下着もソックスも脱いで裸になる。
うう……
本当に誰も見てないよね?
私はまず網タイツに足を通していく。
網タイツなんて穿くの初めて。
なんだかドキドキしてしまう。
両足を通して腰まで上げ、偏りを直して落ち着かせる。
うわぁ……
網タイツってこんな感じなんだぁ……
なんだか自分の脚じゃないみたい。
うはは……
次はレオタードかな?
背中のファスナーを下ろして、パンツを穿くような感じで足を通す。
腰から胸へと引き上げ、袖に腕を通していく。
両袖に腕を通して背中のファスナーを……
背中のファスナーを……
ファスナーを……
うぐぐぐ……
か、躰がぁ……
ぐすっ……
と、とりあえずファスナーは後回しにして、手袋を嵌め、ブーツを……
えっ?
室内でブーツ履いていいの?
えーと……
「真紀?」
私はドアの外に声をかける。
「なに? 着終わった?」
ドアの外から声が聞こえる。
「えーと、まだなんだけど、背中のファスナーが一人じゃ閉じられなくて……それと、ブーツを室内で履いちゃっていいのかなとか……」
「…………入ってもいい?」
「う、うん。いいよ」
ガチャリとドアが開いて真紀が入ってくる。
なんだか表情が厳しい?
「後ろ向いて」
「あ、はい」
私は真紀に背中を向ける。
ジーッという音がして、背中のファスナーが引き上げられる。
それと同時にレオタードが首まで密着して私の躰を包み込む。
うん……結構気持ちがいいかも。
「ここまで着たなら、私はもう部屋から出なくてもいいわよね?」
「あ、うん。ありがとう」
私は振り向いて礼を言う。
うう……
レオタード姿で向き合うのって、なんか恥ずかしい……
「ブーツは履いて構わないわ。というか履いて」
「あ、はい」
私はベッドに腰かけさせてもらってブーツを履く。
「うん。いい感じ。愛梨沙も似合っているわよ」
「そ、そう?」
履き終わって立ち上がった私を見つめる真紀。
うう……やっぱり恥ずかしい。
なんか顔から火が出そうだわ。
「もう一回後ろ向いて」
「えっ?」
「いいから」
「あ、うん」
私は再び真紀に背を向ける。
ええ?
もしかして私のお尻を見られるの?
違った。
真紀は私の腰にあのドクロ模様のバックルの付いたベルトを締めてくれたのだ。
ややズシッとする重みのあるベルトが、私の腰を締め付ける。
なんか身も引き締まる感じ。
さらに真紀は私の首に赤いスカーフを巻き付ける。
なんかどんどん私と真紀がお揃いになっていく。
ちょうど私の正面にはあのドクロのタペストリーがかかっており、なんだか私たちのことを見ているみたい。
「はい、こっちを向いて」
私はもう真紀の言うがままに彼女の方へと向き直る。
なんだかこうしていると気持ちいいな。
真紀とおそろいなんてうれしいかも。
向き直った私の頭に、真紀がベレー帽を乗せてくれる。
そしてパレットを取り出して、私の目元にアイシャドウを、唇にも青のルージュを乗せてくれる。
うふふ……
気持ちいい……
「これでいいわ。ふふふ……これであなたも女戦闘員よ」
真紀の言葉に私はドキドキしてしまう。
私は女戦闘員。
私は女戦闘員なんだわ。
「さあ、見て。偉大なる首領様も私たちをご覧になられているわ」
「えっ?」
真紀が指し示すのはあのドクロのタペストリー。
そのドクロの目が赤く輝いている。
さっきは赤くなんてなかったはずなのに……
ああ……
そうか……
あのドクロを通して偉大なる首領様が私を見てくださっているんだわ……
私はなんだかちょっと恥ずかしくなる。
私はちゃんと首領様の好みのスタイルをしているだろうか?
女戦闘員として恥ずかしくない恰好をしているだろうか?
もっと躰を鍛えておけば……
より女戦闘員のコスチュームが似合ったかもしれないのに……
でも、なんだかとても気持ちがいい。
あのドクロの目を見つめていると頭がふわっとなって躰がポカポカしてくるの。
まるで首領様の腕に包まれているみたい。
「キキーッ!」
思わず声を上げたくなってしまうわ。
これは服従の声。
この声を発することで、私たちは女戦闘員である喜びと、首領様に服従する幸せを感じるのね。
なんて素敵。
「キキーッ! キキーッ!」
ああ……気持ちいい……
「うふふ……どう? 女戦闘員になった気分は?」
私は真紀に笑顔を向ける。
「ええ、とっても気持ちがいいわ。コスプレってこんなにいい気持ちになれるものだったのね」
「コスプレ? ああ……それで刷り込まれちゃったんだ。まあいいわ。たいした問題じゃないでしょうし」
一瞬怪訝そうな顔をする真紀。
あれ?
コスプレ……でいいんだよね?
私はこの衣装を着て女戦闘員になったんだもん。
真紀が机の中から何かを取り出す。
黒いボトル?
いったい何だろう?
私が不思議に思っていると、真紀はボトルの中身を口にする。
飲み物だったのかな?
「んふ……」
えっ?
真紀が私の方に来て、私の頭を掴んで引き寄せる。
えっえっえっ?
そのまま真紀の口が私の口に重ねられる。
ええええ?
キス?
キスしちゃった?
とろりと甘い液体が私の口の中に流し込まれてくる。
これって……さっきのボトルの中身?
真紀ったら……
私は流し込まれた液を飲み込んでいく。
すべてを飲み込んだ後も、私たちは唇を重ね合わせたまま。
お互いの躰を抱きしめていく。
「ぷわ……ふふふ……」
唇を離して微笑む真紀。
「これって?」
「肉体の強化薬よ。これを飲むことで肉体が強化されるの。私たちは女戦闘員なんだから強くなくてはいけないわ」
ああ……真紀の言うとおりだ。
私たちは女戦闘員なんだから、強くなくては。
首領様に歯向かうものは私たちが始末するのよね。
「後で躰が少し熱くなってくると思うけど心配ないわ。明日には男三人ぐらいなら平気で相手にできるくらいの力になれる」
「すごい……」
男三人を相手にしても平気だなんて。
うふふ……
力を試すのが楽しみになっちゃう。
「さあ、あらためて首領様に忠誠を誓いましょう。私に従って」
「キキーッ!」
私は服従の声で返事をする。
「その調子よ。それじゃ始めるわね」
私は真紀と並んでタペストリーに向き直る。
「キキーッ! 私は偉大なる秘密結社グォモグに仕える女戦闘員」
「キキーッ! 私は偉大なる秘密結社グォモグに仕える女戦闘員」
右手を斜めに上げ、一言一句真紀の言うとおりに繰り返す私。
「身も心も首領様に捧げ、グォモグに忠誠を誓います。キキーッ!」
「身も心も首領様に捧げ、グォモグに忠誠を誓います。キキーッ!」
ああ……なんだかドキドキする。
コスプレとはいえ、こうして首領様に忠誠を誓うと身が震えるような喜びだわ。
「それでいいわ。私は女戦闘員073号。よろしくね」
「真紀?」
「それは擬態時の名前よ。あなたも今日からは秘密結社グォモグの女戦闘員076号。いいわね?」
なるほど。
このコスを着ているときはナンバーで呼び合うのね。
わかったわ。
「当面は私とコンビで動くことになると思う。校内で数人の女にあたりはつけてあるから、そのうちメンバーを増やすことができると思うわ」
「キキーッ! 了解です073号」
私も073号のおかげでこうしてコスプレの楽しみを知ることができたわ。
きっと他の娘たちも喜んでくれるに違いないわね。
「これ、私がこの二日間でレクチャーを受けたことをメモしてあるから、帰ったら読んで。もっとも、基本的な事項は頭の中に刷り込まれているから問題ないと思う」
私は073号が差し出してきたメモを受け取る。
あとでじっくり読まなくては。
「それじゃ、あんまり遅くなると親がうるさいと思うからひとまずこれで帰っていいわ。道具類はまとめておいたからカバンに入れて持っていくように。催眠波装置も入れておいたから、両親に使って疑念を持たれないようにして置くこと」
「キキーッ! 了解しました」
なるほど。
073号の母親が言いなりになっていたのは催眠波装置のためだったのね。
うふふ……面白そう。
私の母も私の言いなりにしてやるわ。
うふふふふ……
******
『予定通り獲物はそっちへ向かったわ。追い詰めて!』
耳に嵌めたイヤホンから073号の声が聞こえてくる。
うふふふ、バカなやつ。
私たち女戦闘員から逃げられるとでも思っているのかしら。
私は隣にいる082号に合図をすると、屋根から通りに向かって飛び降りる。
女戦闘員のコスプレをした私たちには、このくらいの高さなど何の問題もない。
ほんと、コスプレって最高。
逃げてきた男の前に立ちはだかる私と082号。
「キキーッ! 私たちから逃げられるとでも?」
「な、なんだお前たちは? 何者なんだ?」
大事そうにカバンを抱える背広姿の男。
残念ね。
お前なんかには用はないわ。
私たちが用があるのはカバンの中身。
「キキーッ! 私たちは秘密結社グォモグの女戦闘員」
082号が誇らしげに口にする。
擬態時には私のクラスメートでおとなしい娘だけど、私と073号が女戦闘員のコスプレに誘ったら、すっかりはまってしまったみたい。
今ではしっかり私たちのチームに溶け込んでくれているわ。
「お、女戦闘員?」
「キキーッ! そうよ。私たちは女戦闘員。お前の持っているそのカバンに入っている資料をいただくわ。おとなしく渡すことね」
そう、このコスは私たちが女戦闘員であることの証。
このコスを着ているときには、私は女戦闘員。
首領様とグォモグのためならなんでもするの。
さっさとカバンを渡しなさい。
「こ、これは会社の重要な……」
男は私たちに背を向け、必死にカバンを抱えて逃げようとする。
バカな男。
私たちから逃げられるはずがないのに。
私は082号に目配せすると、すぐにジャンプして相手を飛び越えその正面に飛び降りる。
うふふ……
このコスプレはこんなことだって簡単なの。
なんたって私は女戦闘員なんだもの。
「うわっ」
私は男の脚を払って男を地面にたたきつける。
すぐに082号も駆けつけ、二人で男を取り押さえる。
うふふ……
人間の力で私たちを振り払えるものですか。
「ふふふ……取り押さえたようね」
073号も駆けつけてくる。
「ええ、ご覧のとおりよ。キキーッ!」
私が押さえつけている間に、082号がカバンを取り上げて073号に引き渡す。
「この資料で間違いないみたい。よくやったわ、二人とも」
チームリーダーである073号の言葉はなんだかうれしい。
女戦闘員のコスプレをしていることで、少しは首領様のお役に立てたかしら。
「カ、カバンを返せ」
私の下でもがいている男。
うるさい男だわ。
少しはおとなしくしていたらどうかしら。
「076号、そいつはもう用済みよ。始末していいわ」
「キキーッ!」
073号の許可が出たので、私は男の首に手を回す。
そしてちょっと力を入れると、すぐに男の首がへし折れた。
簡単簡単。
人間なんて殺すのは簡単なものよね。
「うふふ……これでいいわ。さあ、人が来ないうちに引き上げましょう。二人とも気を付けるのよ。また明日学校でね」
「キキーッ! また明日ね」
「キキーッ! 楽しかったぁ」
私たちはそれぞれ敬礼をしあってその場を後にする。
早く家に帰らなくちゃ。
コスプレしているところを誰かに見られたらヤバいもんね。
それにしても……
ああん……
女戦闘員のコスプレって最高だわぁ……
うふふふふ……
END
いかがでしたでしょうか?
よろしければコメントなどいただけますと嬉しいです。
また来年の「戦闘員の日」に何か投下できればと思います。
今日はこんなところで。
それではまた。
- 2021/10/17(日) 19:00:00|
- 女幹部・戦闘員化系SS
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