昨日はTRPG「TRAVELLER」の世界観を基にした宇宙戦争のゲーム「第五次辺境戦争」を遊んだわけですが、70年代から80年代にかけては、GDWというメーカーさんがいろいろとSFゲームを出してくれていた時期でしたねー。
家にもそのいくつかがあるわけですが、やはり一番有名なのはこちらでしょうかね。

「インペリウム」は、「第五次辺境戦争」に登場する(第三)帝国の前身となる第一帝国(ヴィラニ帝国)と、地球連邦との戦いを長期にわたってプレイするゲームです。
日本でもライセンス生産されまして、この箱絵は私の持っているHJ版ですが、のちに国際通信社からも再販されましたし、アメリカでも何度か再販されたりしているようです。

「ダークネヴュラ」は、「インペリウム」とほぼ同じシステムで、ソロマニ連邦とアスラン連合の戦いをプレイするゲームです。
こちらはイベントの要素が少なくなっているのや、対戦するマップが毎回組み合わせによって変化するのが特徴でしょうか。

こちらは「メイディ」。
このゲームはベクトル移動を用いて、宇宙船一隻レベル同士の戦闘を楽しめます。
「TRAVELLER」のレベルですと、ほぼ無制限の加減速ができちゃいますので、個人的には「RPGamer誌」に掲載された「Mayday2100」ヴァリアントが好みですね。

こちらは「ダブルスター」
「インペリウム」や「第五次辺境戦争」などが巨大星間国家同士の戦争であるのに対し、こちらは一つの星系同士の戦いのゲームです。
お互いに亜光速でじわじわと接近していく様はなかなかに面白いもの。
また、惑星がちゃんと動いていったりするのも面白いですね。
我が家にあるGDWの宇宙SFゲームをご紹介しました。
今度は何やりましょうかねー。
今日はこんなところで。
それではまた。
- 2021/01/31(日) 18:30:55|
- ウォーゲーム
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今日は土曜日ということで、ウォーゲームのソロプレイ。

今日は久しぶりにこの「第五次辺境戦争」を取り出してきまして、ソロプレイをいたしました。
ホント久しぶりやで。(*´ω`)

これの大変なところは初期配置が時間がかかるところ。
そのため、昨晩のうちに一所懸命に初期配置を行いました。
しかしまあ、ホント初期段階での帝国と外世界連合(ゾダーン・ヴァルグル・ソードワールズ)の戦力の差が激しいですよねー。

帝国暦1107年187日、突如外世界連合は帝国に対して攻撃を開始。
艦隊が次々と国境を超えます。
久しぶりのプレイということもあり、ルールを確認しながらのプレイとなりましたが、外世界連合(主にゾダーン)の艦隊は防備の薄い星系を簡単に占領。
しかし、ルージーやジュエルと言った防備の硬い星系には結構苦戦することが判明します。
意外と星系防衛艇(SDB)が厄介ですなぁ。

初期戦力が少ない帝国軍は、なるべく艦隊を温存するべく、前線から後退させてリジャイナに集結を目指します。
第212艦隊もリジャイナに向けて移動中。

第6ターン、ついに帝国軍の辺境艦隊が盤外に到着。
ここから盤内に進入して、さてこれからというところではありますが……

残念ながら今日はここで時間切れ。
午前中からプレイしておりましたが、やはりなかなか重たいゲームで、結構時間がかかりました。
この時点での外世界連合の得点は67.5点で、限定的勝利というところ。
とはいえ、本来ならここからが本格的な攻防戦というところなんでしょうねー。
今回もプレイ中のツイートをこちらにまとめてみましたので、よろしければご覧ください。
「
21年1月30日の「第五次辺境戦争」ソロプレイまとめ」
今日はこんなところで。
それではまた。
- 2021/01/30(土) 18:59:03|
- ウォーゲーム
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今日は、今年の春の選抜高校野球大会の出場校の発表がありました。
我が北海道からは北海高校が選ばれることに。
10年ぶり13回目ということのようです。
結構春からは遠ざかっていたんですねー。
一方21世紀枠の候補になっておりました知内高校は、残念ながら落選となってしまいました。
あー、北海道から二校というのは無理でしたかー。
残念。(>_<)
選抜大会は夏の甲子園のように一県一校(東京と北海道のみ二校)という前提が無いですから、21世紀枠じゃなくても一県から二校が出てくることもあったりするんですけど、北海道から二校が選ばれるってことはまずないんですよねー。
今年も北海高校のみということですので、北海高校には頑張ってほしいところです。
大会は現在のところ3月の19日からとのこと。
何とか無事に開幕できますように。
新型コロナ退散。
今日はこんなところで。
それではまた。
- 2021/01/29(金) 18:20:13|
- スポーツ
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いやぁ、戻ってきちゃいますかぁ。
日ハムファンの私としましては、今季の楽天が脅威になりそうだなぁという感じしかないですなぁ。
メジャーリーグヤンキースからFAになっていた田中将大投手が、東北楽天ゴールデンイーグルスに復帰することが決まったというニュースが入ってきました。
噂は出ていましたが、決まっちゃいましたねぇ。
おそらく一年契約で、来季はまたメジャーに戻ってもいいよということのようではありますが、今年は充分に戦力になってくれるでしょうからねぇ。
とはいえ、メジャーと日本のプロ野球では登板間隔やボールの作りなどいくつかの差がありますので、感覚を元に戻すのにやはりある程度の時間はかかるでしょうから、シーズンフルに活躍というわけにはいかないかもしれません。
もちろん田中投手はそのあたりは重々承知でしょうから、ハムとしてはなるべく調子が上がらないうちに、今年のハムは手ごわいぞと思わせておきたいですよねー。
さてさて、今季の田中投手はどうなりますか。
ハム戦ではお手柔らかにお願いします。(笑)
今日はこんなところで。
それではまた。
19時追記
田中投手は二年契約とのことですね。
今季と来季二年間は楽天で投げてくれるということのようです。
どひゃー!
- 2021/01/28(木) 18:09:08|
- スポーツ
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なんかふとスタートメニューで見かけて、起動させてしまったのが運の尽き。(笑)
本当に久しぶりに、ブラックサイクさんのアダルトゲーム「闇の声特別編」を、プレイしてしまいました。
いやぁ、何か月ぶり?
いや、何年ぶりレベルでしょうかね?

ブラックサイクさんの「闇の声」は、本当にお世話になったゲームです。
私は無印、2、3くらいしかプレイしておりませんが、好きなゲームですねぇ。
ホント久しぶりにプレイしましたので、攻略の仕方もすっかり忘れておりましたけど、まあ、誰と誰を組み合わせればどうなるかというのをだいたい覚えておりましたので、攻略サイトなど見ることなくトゥルーENDを見ることができました。

残り四日でこの状況まで持っていくことができました。
今回は亜梨栖はネコに、冬姫は女性化させ、萌にはオナニーしてもらうことに。
何も見ないでやったので、久保、剛也、喜美江は以前やった時と同じパターンに嵌まってしまったみたいでした。
とはいえ、トゥルーに持っていけたのは良かった良かった。(笑)
久しぶりにやりましたけど、やっぱりKはいいですねー。
冬姫君もいいですねー。
面白かったです。
今日はこんなところで。
それではまた。
- 2021/01/27(水) 18:43:19|
- PCゲームその他
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先日投下しました「
私が望んだベージュ色の躰」ですが、Twitterの相互フォロワーでもいらっしゃいますHowling様が、応援イラストとしてベージュに生まれ変わった姿を描いてくださいました。
作品はpixivに掲載されまして、その掲載ページがこちら。
私の望んだベージュ色の躰 応援イラスト ←クリックでpixivのページに飛べます
とても素敵なイラストで、まさにベージュそのものの特徴がよく出ていると思います。
本当にありがとうございます。
また、Howling様は先日拙作「
ナイロン獣になって」に関しましても、素敵なイラストを描いてくださっておりますので、そちらも併せて紹介させていただきます。
その作品がこちら。
ゼブラとベージュにされた母娘 ←クリックでpixivのページに飛べます
こちらもとても素敵で素晴らしい作品ですので、ぜひご覧いただければと思います。
私の想像通りと言っていいイラストです。
Howling様、素敵なイラスト本当にありがとうございました。
とてもうれしいです。
感謝感謝です。
これからもよろしくお願いいたします。
今日はこんなところで。
それではまた。
- 2021/01/26(火) 18:31:58|
- Special Thanks
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ずっと楽しんできました速水螺旋人先生のマンガ「大砲とスタンプ」
その最終巻である9巻がこのほど届きました。

こちらが表紙。
これまでこの作品は表紙に登場した人物の数が、その巻数と同じというパターンでしたので、おそらく今回はスタンプ君込みでということなんでしょう。
いやぁ、寂しいですねぇ。
終わっちゃいました。
作中の背景となっていた「戦争」も、一応の終結を見ることになるわけですが、それに伴う混乱とその後に起こった「戦闘」に、主人公マルチナたちは巻き込まれていくことに。
戦争や戦闘というものはそういうものだとは思ってはいるのですけど、もうね、ホントにあっけなく次々とキャラが死んでいくのに驚かされました。
意味のある死なんぞありゃしないし、覚悟の死なんてものすらありゃしません。
みんな普通の行動やとっさの行動をして簡単に死んでいく。
これを描いているのはさすがです。
個人的には死んでほしくなかったあのキャラが死んでしまったのは残念。
ともあれ、最終巻までしっかり楽しませていただきました。
速水螺旋人先生、長い間お疲れ様でした。
ありがとうございました。
今日はこんなところで。
それではまた。
- 2021/01/25(月) 18:20:06|
- 本&マンガなど
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とてもうれしく、またありがたいことに、このところ拙作「
クリムゾン」や、その番外編であります「
ナイロン獣になって」の、イラストや二次創作SSなどをほかの作家様方に書いていただけたりしております。
拙作を楽しんでいただいた上に、そういった作品まで作っていただけるというのは、本当に作者冥利に尽きるというもので、最高にうれしいものです。
おかげで、こうなりますと、私自身も何か「クリムゾン」の世界で一本書いてみようかなという気になりましたので、短編を一本仕上げてみました。
タイトルは「私の望んだベージュ色の躰」です。
まあ、タイトルでもろバレなんですが、自ら堕ちていく話です。
楽しんでいただけましたら幸いです。
それではどうぞ。
私の望んだベージュ色の躰
「中咲(なかさき)さん、これからみんなでカラオケ行くんだけど、一緒にどう?」
「あ、ごめんなさい。今日はこのあといろいろとあって……」
嘘だ……
用事なんて何もない……
「ん、わかった。じゃあ、また来週ね」
誘った方だって私が来るだなんて思ってもいない。
同僚だからお義理で誘っただけ。
きっと会社を出た途端に、私のことなどは忘れられる。
それでいい……
どうせ私は一人……
誰かと一緒に楽しくなんて思わない……
週末の夜。
会社を出た私は、スーパーで出来合いのお惣菜と、甘めのカクテル系のお酒を買って家路につく。
たった一つの楽しみのために……
そう……
私のたった一つの楽しみ……
「ただいまぁ……」
誰が返事をするわけでもない、一人暮らしのアパートの部屋。
たいして家具類があるわけでもない殺風景な部屋。
まるで私の心の中みたい・・・
「ふう……」
シャワーを浴びた私は、お惣菜をつまみにお酒の缶を開ける。
何か面白いものでもやっているかしら……
私はテレビを点ける。
ちょうどニュースをやっている時間。
明日はお休みだから、天気予報を聞く必要もないし、ほかに何か……
ドキン……
リモコンを持った私の手が止まる。
これって……
それは視聴者が撮影したという動画。
炎の中を動く人影。
警察が遠巻きに見守る中、その人影たちは何かをしている。
アナウンサーが犠牲者が何人とか言っているけど、全然耳に入ってこない。
ああ……
今日現れたんだわ……
ナイローンが……
ナイローンが現れたんだわ。
ドキドキする……
胸が苦しくなる……
なんて素敵……
なんて美しい……
なんて気持ちよさそう……
まるで裸で踊っているみたい。
目も鼻も口もない、全身タイツを着た女性たち。
動画ではよく見えないけど、ベージュ色の女たちが闇と炎の中で蠢いている。
ああ……
素敵……
恐ろしいはずなのに……
人類の敵なのに……
私もあんな姿になりたい……
あの日から私の中で何かが変わってしまった気がする……
そう、以前ニュースで彼女たちを見たときから、私は彼女たちの虜になってしまっていた……
ベージュ色の躰で闇の中で蠢く女たち。
物を壊し、人々を殺す恐ろしい女たち。
なのに、とても美しい。
その顔には目も鼻も口も無い。
顔がマスクに覆われているから見えないのではない。
無いのだ。
彼女たちの頭はショーウィンドウに飾られた顔のないマネキンのようにのっぺりとしている。
それでいて、両の胸はしっかりと双丘を作り、腰は見事にくびれている。
それが全身タイツのようなものに包まれ、まるで裸のようなボディラインを惜しげもなくさらしているのだ。
何より私を引き付けたのは、彼女たちが時折自分の顔や体を撫で、とても気持ちよさそうにしているところ。
それがすごく魅力的で、私も彼女たちのようになりたいと強く感じてしまったのだった。
彼女たちは暗黒帝国ナイローンだという。
いつの間にか現れたテロリスト集団。
男も女もみな全身タイツ姿という奇妙な格好で暗躍する、真面目なのか不真面目なのかわからない連中。
でも、その活動は恐ろしく、社会インフラの破壊や人物の暗殺など様々に及ぶという。
警察も防衛隊も歯が立たず、頼みの綱はAN(アン)ファイターと呼ばれる特撮番組から抜け出してきたような戦士たちだけ。
ばかげた話だけど、これが今の日本で起きていること。
日本のあちこちでナイローンが活動し、ANファイターと戦っているという話。
人々はいつナイローンの襲撃に巻き込まれるかと恐れながらも、朝になれば満員電車に乗って会社に行く。
そして前日と同じような仕事をして、疲れた体を引きずって家に帰る。
そんな日常。
ハア……
息を飲む美しさ。
ナイローンは恐ろしい組織。
でも、それが何だというのだろう……
社会が崩壊する?
大勢が死ぬ?
そんなの私にはどうでもいい。
どうせ私は独りぼっち。
会社で重宝されるような有能な人間じゃないし、彼氏だっているわけじゃない。
社会が崩壊しようが知ったことじゃない。
私はすでに次の話題に切り替わってしまったニュースを消し、缶のカクテルをのどに流し込んだ。
******
「ああ……ん……んん……ああん……」
ベッドの上で躰をこすりまわす。
私のたった一つの楽しみ。
全身タイツを着てオナニーをすること。
気持ちいい……
ナイロンのすべすべとした肌触りが気持ちいい……
全身タイツを着ることがこんなに気持ちいいことだったなんて……
あのベージュ色の女たちが、時々自分の躰を撫でる理由がよくわかる。
「は……はい……なります……仲間になりますぅ……」
私は妄想する。
今、私はナイローンのベージュ色の女たちに囲まれているところ。
みんなが私も見降ろし、私がオナニーするところを見ているのだ。
全身タイツに包まれ、気持ちよさそうにオナニーする私を。
「ああ……いい……気持ちいいです……ナイローンの仲間になれて幸せですぅ……」
全身タイツに包まれた私は、じょじょにベージュ色の女へと変わっていく。
『お前も私たちの仲間になるのよ』
『ベージュ色の女になるのよ』
周囲から声が聞こえるのだ。
私も見下ろすベージュ色の女たち。
私がその仲間になるのを喜んで迎えてくれているのだ。
ああ……
なんてうれしい……
「あ……ああん……イく……イっても……イってもいいですか?」
『イキなさい』
『イって、身も心も私たちのようになるのよ』
「なります。仲間になります。ああん……イ、イくぅぅぅぅぅ」
私は全身タイツの上から股間に指を這わせ、絶頂へと達していった。
「ハア……ハア……」
イってしまった……
気持ちいい……
これが……
これが本当のことだったら……
あのベージュ色の女性たちの仲間に本当になれたのだったら……
どんなにいいことか……
私は手でそっと顔をなぞっていく。
鼻の盛り上がりや眼窩のくぼみを感じてがっかりする。
わかってはいたけど……やっぱりナイローンのベージュ色の女にはなっていない。
彼女たちの顔はのっぺりと凹凸が無い。
眼窩のくぼみも鼻の盛り上がりもまったく無く、まるでゆで卵のようにつるんとしている。
だから、きっとナイローンの女たちは人間ではないのだろう。
私がいくら望んでも、あのベージュ色の女にはなれないのだ……
私は汗と愛液で濡れた全身タイツを脱ぐ。
この全身タイツを着たところで、彼女たちのようにはなれない。
でも、近づくことはできる。
全身を覆うことで、人間ではなくなるような気分を味わえる。
なにより、ナイロンの肌触りは気持ちがいい。
だから、私は全身タイツがとても好きになった。
私はシャワーを浴びに浴室に行く。
着ていた全身タイツを洗濯機に入れ、シャワーを浴びる。
明日は洗濯しなくちゃ……
シャワーを浴びた後は丁寧に躰を拭き、クロゼットからもう一着の全身タイツを出す。
先ほどまで着ていたのが赤。
これは青。
これを着ると、布越しに世界が青く染まるのだ。
あのナイローンのベージュ色の女たちを見たとき、私はとても衝撃を受けた。
全身タイツなんてテレビなどで見たことはあったのに、裸とも思えるような彼女たちの姿を見たら、興奮してしまったのだ。
私はすぐに全身タイツを注文した。
本当は彼女たちと同じベージュ色のが欲しかったけど、このご時世、ベージュ色の全身タイツは売っていない。
ナイローンのベージュ色の女に間違われるかもしれないし、彼女たちに成りすまして悪いことをする人間がいないとも限らないからなのだろう。
全身タイツそのものの取り扱いをやめたところも多いらしい。
仕方なく、私は赤と青の二着を買った。
全身タイツに包まれるのはとても気持ちがいい。
明日は休みだし、今日はこれを着て寝ることにする。
……
朝起きたらナイローンの一員になっていたりしないかな……
******
「ふう……」
すし詰めのバスの車内。
身動きも取れない。
仕事を終えて会社から帰るというのに、いつも乗るはずの電車が部分運休になってしまい、振り替え輸送のバスに乗るしかなくなってしまったのだ。
テロなのか事故なのかわからないが、路線の付近で何かが崩れたらしい。
おかげで一部区間が不通となり、バスに乗る羽目に……
週明けの月曜日だというのに、やれやれだわ……
周りから押されるように窓際に押し付けられる。
苦しいけれどもどうしようもない。
早くうちの近くの駅までたどり着いてほしい……
窓の外では反対方向へ向かう緊急車輌が何台も。
よくわからないけど、またナイローンが出たのかしら……
「えっ?」
私は目を疑った。
あれは?
もしかして?
たまたまバスの揺れで後ろから押され、私の視線は上に向いた。
その時、建物と建物の間の空間を何かが飛んだのだ。
あれって……
ナイローン?
「お、降ります!」
気付くと私はそう言っていた。
バスが停留所で停車すると、とにかく無理やりに人を押し分けるようにして降りていく。
やっと外へ出て新鮮な空気を吸うと、私は空を見る。
いた……
たぶん、普通は気が付かない。
人は空を見ながら歩くようにはできていない。
夜の街で暗い夜空を背景に、何かを見つけるのは偶然以外では難しい。
ビルの上の黒い人影。
私はその影に向かって走り出す。
なんでこんなことをしているんだろう?
どうして追いかけているんだろう?
見つかったら……殺されてしまうかもしれないのに……
話なんて……通じないかもしれないのに……
きれいな姿……
ビルからビルへと飛び移る黒い女の影……
とてもきれい……
裸としか思えないそのシルエット……
でも、裸なんかじゃなく、ちゃんと包まれている……
全身タイツに包まれているんだわ……
包まれたい……
彼女たちが着ている全身タイツを着てみたい……
彼女たちのように目も鼻も口も無くなりたい……
私も……
私もナイローンになりたい……
「ハア……ハア……ハア……」
ビルから飛び降りた人影が暗闇の中へと消えていく。
そこは誰もいないはずの場所。
驚いた。
ここはうちのすぐ近くにある廃工場だわ。
今のところ更地にすることもできていなくて、立ち入り禁止になっていたはず。
まさかここが?
ここがナイローンの隠れ家なの?
引き返すのなら今だ……
今なら引き返せる……
そんな言葉が思い浮かぶ。
でも……
私はそのまま進んでいく。
立ち入り禁止の張り紙も、不法侵入は罰せられますという言葉も私を止めることはない。
こんなことしていいのかという気はしないでもないけど……今を逃したらもう二度とチャンスはないかもしれないわ……
幸い、外側の塀には一か所崩れかけているところがある。
ここからならなんとか……
私はスーツ姿なのも構わずに、その崩れかけた塀を乗り越える。
足を引っかけてしまってストッキングが伝線してしまったけど、どうでもいいわ。
私は構わず奥に行く。
この廃工場……確かガス爆発があったって言ってた気がするけど……
確かにあちこち壊れているし、壁なんかも崩れているわ……
本当にここがナイローンの隠れ家なのかしら……
「!」
中へ入り込んだ私は、思わず声を出しそうになる。
床に巨大な穴が開いていたのだ。
ええ?
何これ?
地下室?
こんなところに?
どうやら天井となっていたここの床が崩れたものらしい。
下の方は瓦礫が……
『はあ……ん……』
えっ?
今……下から声がした?
私は恐る恐る穴の淵から身を乗り出してのぞき込む。
誰か……いる?
私は思わずまた声を出しそうになり、必死に両手で口を抑える。
あれは……ナイローン!
私が見下ろした先には、数体の人影がいたのだ。
暗くてよくは見えないものの、そのシルエットはまさに裸の男女が絡み合っているというもの。
よく見ると、真ん中の一人が男のようで、他の三人は女性らしい。
うっすらとそれがシマウマのような白黒の模様をした男と、ベージュ色の女たちであることがわかる。
間違いないわ……
ここはナイローンの隠れ家なんだ……
『はあん……あん……ゼブラ様ぁ……』
『ゼブラ様ぁ……私にも……』
『ああ……ゼブラ様ぁ……とても気持ちいいですわぁ……ナイローン! ナイローン!』
かすかに漏れ聞こえてくる声。
女が気持ちよさにあえいでいるような声。
シマウマ柄の男がベージュ色の女たちを撫でるたびに、女たちは声をあげていく。
怖い……
あそこにいる者たちからは邪悪な感じが漂ってきて、恐怖を感じてしまう。
でも……
でも、それ以上に、私は彼女たちがうらやましい。
私も……
私もあそこに混ざって、あんなように愛撫されたい。
いつしか私の手は股間に伸びていた。
あん……
濡れている……
感じているんだわ……
ああ……
なんて気持ち良さそうなの……
「ヒッ」
私は息を飲んだ。
シマウマ柄の男の顔がこちらを向いたのだ。
つるんとしたのっぺりとした顔で、目のくぼみも鼻の盛り上がりも何もない。
でも、確かにその目が私を見たような気がしたのだ。
私は急いで立ち上がると、その場を逃げ出す。
怖い……
怖い怖い怖い……
やはりナイローンは恐ろしい存在なのだ。
見つかったら殺されてしまうかもしれない。
私は何とか必死に逃げ出し、転がるようにして廃工場から外へと出る。
しばらく走って、通りの明るさが戻ってくるまで、私は後ろを振り返ることができなかった。
******
「ふう……」
キーボードから手を放し、パソコンから顔をあげる。
あのあとどうやって家まで帰ってきたのか、よく覚えていない。
家に帰った私は、シャワーを浴びることもなく布団に潜り込んで震えていた。
でも……
落ち着くにしたがって、私はあそこで見たことが鮮明に思い浮かぶことに気が付いていた。
『ああん……ゼブラ様ぁ……』
『とても気持ちいいですわぁ……』
ベージュ色の女たちの声が耳に残っている。
なんて気持ちよさそうだったのだろうか……
まるで布と布がすり合う音すら聞こえてくるぐらい……
あのシマウマ柄の男……ゼブラ様とか言う男に触られるのが、そんなに気持ちいいのだろうか……
触られてみたい……
私も触られてみたい……
「中咲さん?」
「あっ、は、はい?」
「書類できた?」
「あ、いえ、もう少し」
いけない……
仕事中だった。
忘れなきゃ……
もうあそこに行ってはいけないわ……
忘れなきゃ……
そう思ったはずなのに……
私は何をしているのだろう?
私はどうしてここにいるのだろう?
恐ろしいのに……
殺されるかもしれないのに……
どうして……
会社から帰ってきた私は、またこの廃工場に来ていた。
暗闇の中、そっと昨日の場所に行く。
その手前、ちょっとした影になっている部分。
私はそこに身を潜め、着ているものを脱いでいく。
上着もスカートもストッキングも……
下着もすべて脱ぎ、生まれたままの姿になる。
そしてカバンから取り出したものを広げる。
家で着ている赤い全身タイツ。
これを着込んでいくのだ。
脚を通して腰まで引き上げ、袖に手を通して背中のファスナーを上げていく。
マスク部分を頭にかぶり、後頭部のファスナーを閉めれば、私の躰は全身タイツに包まれる。
ハア……
私は思わず顔を撫でる。
全身タイツは本当に気持ちがいい。
これで……
私はそっと静かに昨日の場所へと近寄っていく。
暗いうえに視界が全身タイツで遮られているので、慎重にゆっくりと。
足元に気を付けながら進んでいく。
思った以上に全身タイツのマスクを被ってしまうと、暗すぎて何も見えないわ。
今度はマスク部分はたどり着いてからかぶるように……
そこまで考えて私はおかしくなる。
今度?
今日死ぬかもしれないのに?
見つかったらきっと殺されるというのに?
ふふっ……おかしいわ。
昨日の場所までくると、私はそっと下を覗き込む。
あれ?
今日は一人?
シマウマ柄の男……ゼブラ……様だけ?
ベージュの女たちはいないのかしら?
下にはシマウマ柄のゼブラ様とか言う男が一人だけ。
崩れた瓦礫の上に腰かけている。
いったい何をしているのだろう?
特に何かしているようには見えないけど……
休息でもしているのだろうか?
それにしても……
見れば見るほどシマウマ柄の全身タイツを着ただけの男性に見える。
たくましい躰つきが全身タイツによって強調されている感じ。
これはこれで美しいと思う。
ただ、本当に顔はのっぺりとして何の凹凸も無いところは、何かマネキンのような無機質さを感じ、それが恐怖を呼び起こすのかもしれない。
私が息を潜めて見降ろしていると、優雅に腰を揺らすような歩き方で、三人の女たちが現れる。
ベージュ色の女たちだわ。
彼女たちもニュースなどで見たとおり、全身タイツを身に着けた女性たちのよう。
こちらも顔の凹凸は一切無く、全身タイツが躰に張り付いているかのように躰にフィットしている。
どんなにオーダーメイドで全身タイツを作ったとしても、ここまで胸の形をそのまま浮き出させはしないだろう。
普通は周囲の布が引っ張って、胸を平たくさせてしまうから。
だから、やっぱり彼女たちは全身タイツを着ているかのように見えるだけなんだと思う。
『ベージュたちよ、こっちへ来るのだ』
『はい、ゼブラ様。ナイローン』
シマウマ側の男が手招きして、ベージュの女たちがそばに寄っていく。
彼女たちを足元に座らせ、その躰を撫でていくシマウマ柄の男。
『ああん……』
『はぁ……ん……ゼブラ様ぁ……』
そのたびに女たちは気持ちよさそうに声を上げる。
口などまったくないのに、声を上げるのだ。
それはもう気持ちよさそうに……
私はその場に仰向けになり、目を閉じて自らの躰を撫でていく。
「ああ……ん……」
あのシマウマ柄の男、ゼブラ様に撫でてもらっていることを夢想し、自分の躰を撫でるのだ。
「ああ……ゼブラ様……ゼブラ様ぁ……」
できるだけ小声で、気付かれないようにしながら、私はベージュの女たちになった気分を味わうのだ。
『お前もナイローンの一員になるのだ』
妄想の中でゼブラ様が私に語りかけてくる。
「なります。ナイローンの一員になります。ナイローン! ナイローン!」
私は自分の躰を抱きしめるようにして忠誠を誓う。
ああ……
これが本当のことなら……
「ふふふ……」
「ふふふふ……」
えっ?
すぐそばで声が聞こえる。
「ヒッ!」
私が目を開けると、私のそばに三人のベージュの女が立っていた。
い、いつの間に?
そんな……
「うふふふ……そんな恰好でのぞき見?」
「悪くない姿ね。さあ、立ちなさい。ゼブラ様がお呼びよ」
のっぺりとした顔には表情など存在しない。
でも、私を見下ろしているのはわかる。
私は先ほどまでの気持ちよさなど吹き飛び、ガクガクと震えながらも、立ち上がるしかなかった。
「さあ、来るのよ」
私が立ち上がると、三人のうちの一人が私を引き寄せる。
あ……
すべすべしたナイロン同士がこすれ合うような感触。
やっぱり彼女たちも全身タイツのようなものを着ているというのだろうか?
「ひぃっ!」
私がそう思ったのもつかの間、私は穴の中へと突き飛ばされる。
死ぬ……
私はそう思ったが、私の躰は落ちた先でがっちりと受け止められた。
えっ?
見ると、私のすぐ目の前にシマウマ柄の男の顔がある。
な?
突き落とされた私の躰は彼が受け止め、お姫様抱っこのような形になっていたのだ。
「あ……そ……」
な、なにを言っていいのか?
助けて?
それとも、はじめまして?
「あ、ありがとうございます」
私は受け止めてもらったことに礼を言う。
「ゼブラ様、ご命令通りにいたしました」
三人のベージュ色の女たちは、まったく問題無いように上から飛び降りてくる。
すごい……
人間なら怪我をしてしまう高さなのに……
「ふむ……赤か」
私はそっと下ろされ、立たされる。
そしてゼブラ様は私の姿を眺め、そうつぶやかれた。
「クリムゾン様のような暗い赤でも、レッドのような赤でもない。少し明るめの赤だな。女、なぜそんな恰好をしてここにいる?」
「あ……そ、その……」
私は答えに詰まってしまう。
その……皆さんを見てオナニーしたかったなんて……言えるはずが……
「ふん……ANT(アント:Anti Nyloon Team アンチナイローンチーム)のスパイではなさそうだな。その恰好で我々の目をごまかそうとするような連中とも思えん。答えろ。何をしに来た?」
腕組みをして私をにらみつけてくるゼブラ様。
私の周りにはいつの間にかベージュの女たちが囲むように立っていて、とても逃げ出せる状況じゃない。
どうしよう……
「私……その……笑わないで欲しいんですけど、皆さんを見て、すごく素敵だって思ったんです……だから……」
私はもう正直に話し始める。
ナイローンの映像を見て衝撃を受けたこと。
全身タイツを着たようなベージュの女たちがとても素敵だったこと。
自分もそんな恰好をしてみたいと思い、全身タイツを手に入れたこと。
偶然ここを見つけ、ゼブラ様とベージュの女たちがとても気持ちよさそうに躰を撫で合わせていたのが気持ちよさそうだったこと。
あまりのことに、自分も撫でてもらっている気持になりたくて、この格好で……オナニーしようとしていたことを。
「ひあっ!」
言い終えた私をゼブラ様はしばし無言で見つめていたが、いきなり私の顎に手をかけて持ち上げる。
「ベージュになりたいか?」
「えっ?」
「ベージュになりたいかと聞いているのだ。この女たちのように」
ベージュに?
なれる……の?
人間が……?
なれるの?
「な……りたい……です」
私は顎を掴まれながらも、コクンとうなずく。
ベージュに……なれるの?
「ふふ……いいだろう。コマンダーパープル様より、ベージュを増やす許可はいただいてある。おい、ベージュのナイローンスキンを持ってこい」
「かしこまりました、ゼブラ様」
ベージュの女たちの中でも一番小柄な女性が瓦礫の奥へと消えていく。
「自分からベージュになりたいとは面白い女だ。お前を俺の四番目のベージュにしてやろう」
「本当ですか? ありがとうございます」
私はお礼を言う。
本当にベージュにしてもらえるなんて……
やがて闇の中から、先ほどの小柄なベージュ色の女性が戻ってくる。
その手には折りたたまれた布のようなものが。
「ゼブラ様、どうぞ」
「ご苦労」
差し出された布を受け取り、ベージュ色の女性の頬を撫でるゼブラ様。
それだけでベージュ色の女性は最高の快楽を感じているようだ。
「これはベージュのナイローンスキンだ。裸になってこれに着替えろ」
手渡されるベージュ色の布。
「ナイローンスキン?」
「そうだ。我々ナイローンの躰を覆うナイローンスキン。これを着ることによって、お前は人間からナイローンの女戦闘員ベージュとなる」
「ナイローンの女戦闘員……ベージュ……」
私の手の中にあるベージュ色のナイローンスキン。
これを着れば……私はベージュになるの?
「ちょっと待って……これを着ればって……もしかしてこのベージュさんたちも、元は……」
元は人間だというの?
「そうだ。こいつとこいつなどは元は母と娘ですらある」
先ほどこのナイローンスキンを持ってきた小柄な女性と、もう一人妖艶な色気を持つ女性をゼブラ様は指し示す。
「ああん、ゼブラ様、それはもう過去の話でございます」
「私たちは二人ともゼブラ様にお仕えするベージュ同士です。母だの娘だのという関係など存在しません」
「ええ、私たちは仲間。ベージュ同士」
そう言って二人は抱き合ってお互いの躰を撫でていく。
それはぞくっとするほどなまめかしい。
ベージュ同士……
なんて素敵なのだろう……
私は背中のファスナーを下ろし、全身タイツを脱いでいく。
今まで私を包んでいた全身タイツを脱ぎ捨て、渡されたベージュ色のナイローンスキンを着るのだ。
ナイローンスキンは本当に今脱ぎ捨てた全身タイツとそっくりな代物。
手触りもナイロンの生地そっくり。
これを着るだけでベージュになるなんて信じられない。
私は騙されているのではという気さえする。
でも……
でも……
着たい……
着たくてたまらない。
なんて素敵。
なんてすばらしい。
これがナイローンスキン。
私を包み込んでくれるナイローンの皮膚なのね。
ハア……ン……
想像以上……
タイツ部分に足を差し入れただけで、全身を快感が走る。
気持ちいい……
気持ちいいよぉ……
私はいつも着る全身タイツと同じように、両足から穿いていく。
ハアン……
たまらない……
最高……
最高よ……
穿いただけで、腰から下にきゅッと張り付くようなフィット感。
よじれたりずり下がったりすることなどあり得ないのがよくわかる。
着ているのに着ていない。
皮膚なのに衣装。
これがナイローンスキンなのね。
袖に両手を通し、肩までスキンをあげていく。
背中部分の切れ込みがすうっと閉じて、私の躰と一つになる。
胸もその形そのままを覆うように張り付き、おへそのくぼみさえもうっすらと浮き出てくる。
マスク部分を前からかぶるような感じでかぶれば、髪の毛まで包み込んで後ろ側で閉じられる。
ファスナーも何もない。
もう脱ぐことさえできはしない。
ううん……
脱げたって脱ぎたくなんかないわ。
頭がくらくらする……
めまいが起きているような感じ……
でもふわふわして気持ちがいい……
躰がナイローンスキンに包まれ、すごく快適。
なんだか生まれ変わっていくみたい・・・
私は……
私は……
私は暗黒帝国ナイローンのベージュ。
ナイローンにこの身を捧げ、ナイローンのためなら何でもします。
ナイローン……
ナイローン……
私はナイローンのベージュですぅ……
気が付くと、私は地面に横たわっていた。
いけない……気を失っていたのかもしれない……
「ナイローン!」
私は急いで立ち上がり、ゼブラ様に右手を上げて敬礼する。
ゼブラ様は私のご主人様。
本来私たちベージュは特定のナイロン獣様に属することはないけれど、私たち四人はゼブラ様に属するベージュなのよ。
だから私のすべてはゼブラ様のもの。
「ふふ……終わったようだな。ベージュになった気分はどうだ?」
「はい。とても気持ちがいいです。ベージュであることがこんなに素晴らしいなんて思いませんでした。私はナイローンのベージュ。ナイローンとゼブラ様のためなら何でもします。ナイローン!」
ああん……
こうしてゼブラ様にご挨拶するだけでも気持ちがいい。
これでゼブラ様に触られたりしたら……
気持ちよくて何も考えられなくなりそうです……
「ふふふ……それでいい。お前はベージュ。自分の顔を触ってみるがいい」
「顔を……ですか?」
ゼブラ様のお言葉に私は戸惑う。
顔などと……私たちベージュには意味のない言葉ではないだろうか……
とはいえ、ゼブラ様のお言葉に異を挟むなんてありえるはずもない。
私は自分の頭部の正面を手で撫でまわす。
あん……
気持ちいい……
ナイローンスキン同士が触れ合って気持ちいいわ。
自分の手でさえこうなのだから、ベージュ同士で触れ合ったらもっと気持ちよさそう……
「ふふ……どうだ?」
「はい。すべすべで気持ちがいいです」
私は正直に答える。
のっぺりとした頭の表面を触るのはとても気持ちがいい。
「目や鼻はあったか?」
「ゼブラ様、私はナイローンのベージュです。目や鼻など存在するはずがありません」
下等な人間じゃあるまいし、私たちベージュにそのようなものが無いことはご存じのはずでは……
「そうだ。お前はもう人間ではない。ナイローンのベージュだ。それを忘れるな」
「ナイローン! はい、ゼブラ様!」
そういうことなのですね。
ゼブラ様は私が人間ではなくなったことを忘れるなと。
ナイローンのベージュであることを喜びに思えと。
もちろんです。
もちろんです、ゼブラ様。
「うふふふ・・・」
「うふふ・・・」
「うふふふ・・・」
それまで黙ってやり取りを見つめていた三人のベージュが私のそばにやってくる。
「私たちはベージュ。新しいベージュを歓迎するわ」
「これからはベージュ同士、ともにゼブラ様にお仕えするのよ」
「私たちはベージュ。それ以外の何者でもないわ」
それぞれが私の頬を撫で、躰を触れてくる。
ああ……
気持ちいい。
お互いのナイローンスキンがこすれ合ってとても気持ちがいい。
「ええ。私たちはベージュ。私もベージュの仲間よ」
私は、自らも彼女たちの躰に触れていく。
私たちはベージュ。
みんな一つの存在なんだわ。
******
「ハア……ン……」
全身から力が抜けてしまいそう。
ゼブラ様に頬を撫でてもらうことが、こんなに気持ちがいいことだなんて……
ナイローンスキン同士の触れ合いが、これほど素晴らしいことだったなんて……
「ふふふ……よくやったぞ」
「は、はい……ありがとうございます、ゼブラ様ぁ……」
私はゼブラ様の言葉にそう答えるのが精いっぱい。
躰が溶けてしまいそうです……
ゼブラ様のご命令で、私は他のベージュたちとともに人間たちを襲ってきた。
今の私には下等な人間を殺すのなど造作もないこと。
ANファイターのような連中さえいなければ、ゼブラ様のお手を煩わせるまでもなく、私たちだけで充分だ。
私は存分に殺戮を楽しみ、その気持ちよさを味わってきたけど、殺戮の快楽などゼブラ様に撫でていただくこの気持ちよさには比べるべくもない。
ああ……私は幸せです……ゼブラ様ぁ……
ゼブラ様のそばには、私のほかに三人のベージュたちがいる。
いずれもうっとりとして、ゼブラ様の愛撫をいただいているのだ。
私たちにとっての最高のご褒美。
全身を包む快楽に身をゆだね、ベージュであることの幸福を噛みしめる。
私はナイローンのベージュ。
ベージュ色のナイローンスキンに包まれた女たち。
全員がつるんとした目も鼻も口もないゆで卵のような頭部。
顔などという無意味なものなど存在しない。
これこそが、私が望んだ最高のベージュ色の躰なんだわ。
私はゼブラ様の愛撫を身に受けながら、ベージュに生まれ変わった幸せを存分に味わっていた。
END
いかがでしたでしょうか?
よろしければ感想コメントなどいただけますと嬉しいです。
ということで今日はこんなところで。
それではまた。
- 2021/01/24(日) 21:00:00|
- クリムゾン
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土曜日です。
ウォーゲームのソロプレイの日です。
今日もまたSquad Leaderをソロプレイです。(笑)

今回もポイント制ではありますが、いつものように防御側攻撃側でポイントに差をつけるのではなく、両軍ともまったく同じ1000ポイントで編成しました。
分隊も両軍300ポイント同士。
AFVも両軍ともに280ポイントです。
実はこの時、舞方君はミスしてます。
シチュエーションの時期を1942年ごろと考えていたんですが、パンツァーファウストを入れてしまいました。
なので、突然1944年のシチュということに。(笑)

両軍は同じように盤外から侵入という形に。
偶然ほぼ似たような戦力が遭遇したという感じです。

両軍の目的は、盤中央のこの建物を確保すること。
きっと周囲ににらみを利かせるのにいい場所なんでしょう。
ダイス目で先攻後攻を決め、ソ連軍が先攻ということに。
先攻の有利さを若干弱めるために、第一ターンの移動力は半分ということにします。

両軍の第一ターンが終了したところ。
さすがにAFVは移動力が高いので、やや先行する形に。

双方お互いに一輌ずつAFVを失うも、やはり先攻のソ連軍が中央の建物に先に到達。
T-34もカバーに付きます。

独軍としてはそのまま接近するにはやや厳しくなったので、ここで走行不能の危険を冒しつつ林ヘクスに三突を突入させます。
ソ連軍の防御射撃も走行不能のチェックも切り抜け、ソ連軍スタックに肉薄する三突。

ソ連軍は一輌しかなくなったT-34での勝負を避け、いったん後退。
それを見て独軍は三突をさらに進めて、煙幕弾でソ連軍の9-2指揮官スタックを包み込みます。
煙幕に包まれると、修整が大きくプラスされる場合があるので、ソ連軍にはつらいところ。

しかし、ソ連軍の防御射撃はドイツ軍を着実に減らしていきます。
さらにいったん後退したT-34が、快速を生かして三突の背後に回り込もうとしますが、ここは三突が車体を旋回させてT-34を射撃。
見事にこれを撃破することに成功します。

しかしドイツ軍もここまで。
最後に勝利条件の建物に突撃して白兵戦に持ち込むも、相討ちで除去されて兵力がなくなってしまいました。
ということで、ソ連軍の勝利で終了といたしました。
今回のプレイ中のツイートをTogetterにまとめてみましたので、よろしければどうぞ。
1月23日のソロプレイのまとめ明日は短編SSを一本投下したいと思います。
お楽しみに。
今日はこんなところで。
それではまた。
- 2021/01/23(土) 19:03:31|
- ウォーゲーム
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今日は、個人的には「ああ、まあねぇ」と思うようなニュースが流れましたね。
海外からの発信で「東京五輪の中止を日本政府が内々に決定した」というニュースです。
もちろん、当の政府は「そのようなことはない」と、すぐに否定しておりましたが。
まあ、正直昨今の状況を鑑みますに、中止はやむを得ないのではないかという気はしますけど、どうなりますかねぇ。
ワクチン接種が開始されたとしましても、新型コロナの感染者数が世界的に激減していくという状況には、まだならないと思いますしねぇ。
日本が感染拡大を抑えたとしましても、世界で抑えきれないと難しいでしょうしね。
ともあれ、現状ではまだ開催の方針に変わりはないとのこと。
札幌もマラソンコースとなっておりますし、気になるところではあります。
新型コロナの克服までには、まだしばし時間はかかりそうですねぇ。
どうなりますやら。
今日はこんなところで。
それではまた。
- 2021/01/22(金) 17:38:17|
- ニュース
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今朝、アメリカではジョー・バイデン新大統領の就任式が無事に行われました。
正式にバイデン政権がスタートしたということになるようですね。
いやぁ、昨年の大統領選挙からいろいろとごたついていたようですが、ともかく新大統領への引継ぎが終わったんですね。
どうあれこれで少しずつ混乱は収束に向かうのかなとも思いますが、国民の分断は当面は引きずりそうな感じですね。
ちょっとしたことで噴出してくるのではないでしょうか。
今後は新政権と日本との関係がどうなるかということになりそうですね。
トランプ氏と安倍前首相のような関係とはいきますまい。
日本としては、柔軟に対応してくことが必要になりそうですね。
今日は短いですがこんなところで。
それではまた。
- 2021/01/21(木) 18:45:09|
- ニュース
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「麒麟がくる」も間もなく終了となってしまいますが、早くも2023年の大河ドラマが発表となりましたね。
徳川家康を主人公とした、「どうする家康」という作品になるそうで、主人公の家康役には松本潤さんが抜擢されたとか。
家康ですかー。
今年の麒麟がくるのあとが渋沢栄一で、来年が「鎌倉殿の13人」で北条義時でしたっけ。
二年開けてまた戦国大河ということになりますね。
最近の歴史学説などを取り入れた新しい家康像を提示してくれるんでしょうか?
それとも、オーソドックスな家康像を見せてくるのでしょうか?
どちらにしても楽しみです。
大河ドラマは一年という長丁場ですから、いろいろと大変とは思いますが、面白い作品を見せていただけますと嬉しいですね。
NHKさんには頑張ってほしいです。
今日は短いですがこんなところで。
それではまた。
- 2021/01/20(水) 18:16:17|
- 映画&TVなど
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今月6日から読み始めた「歴史人」の12月号ですが、今日で読み終えることができました。

いやぁ、やっぱり平時のことはいろいろと勉強になりましたねぇ。
特に食事や一日の過ごし方なんかは結構知らないこともあり、楽しく読ませてもらいました。
食事は主食は雑穀飯で、塩や酢なんかも結構使われていたみたいですね。
一日の過ごし方では、やはり当時は日のある時間での活動がメインのためか、朝4時ごろにはもう起きて支度をはじめ、朝6時ごろから仕事が始まるというのが驚きでした。
そうなると、仕事の終わりも早く、午後2時ごろには終了とか。
夕方は食事や自分の時間として使い、午後8時にはもう就寝と、今の社会とは3時間から4時間ぐらい早い時間帯で暮らしていたんだなと知りました。
他にもいろいろと面白く、楽しませていただきました。
「歴史人」はたまにしか買いませんが、今回は買ってよかったです。
ということで、今日からは溜まっている「歴史群像」誌にとりかかります。
まずは2019年12月号からですね。
一年分以上溜まっているじゃん。(笑)
読まねば。
今日はこんなところで。
それではまた。
- 2021/01/19(火) 18:49:38|
- 本&マンガなど
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今年も二月にはプロ野球はキャンプインです。
現在11都府県に非常事態宣言が出ており、新型コロナウィルス「COVID19」の状況次第でどうなるかはまだわかりませんが、今のところはそのままキャンプインということにはなりそうです。
しかし、この影響で今外国人選手が日本への入国が難しい状況が続いています。
キャンプインに間に合うかどうかは厳しい選手も多く出る予想がされています。
そんな中、昨日の夜に阪神の四選手が来日したという発表が。
来日しましたのは、ジェリー・サンズ外野手、ジョン・エドワーズ投手、ジョー・ガンケル投手、ジェフリー・マルテ選手の四人です。
四人はこれから14日間の自主隔離期間を過ごしたうえで、チームに合流しキャンプインということになるようです。
ですので、キャンプ初日からとはいかないかもしれませんが、序盤から参加は可能になりそうですね。
阪神ではすでにチェン・ウェイン投手が入国しており、これで五選手は問題なくキャンプに参加ができそうですが、一方でロベルト・スアレス投手、メル・ロハス・ジュニア外野手、ラウル・アルカンタラ投手の三選手は来日のめどが立っておらず、残念ながらキャンプにいつ参加できるかはわからないようです。
今年の阪神は外国人選手八人態勢を取りますので、できれば全員早期にそろってほしいところではありますけど、一軍で出られるのは限られておりますから、ともかく五人がキャンプインできるのはありがたいですね。
残り三人が来るまでは、五人には頑張っていただきたいところです。
ともあれ、新型コロナの状況が不透明ですけど、何とか無事にプロ野球が開幕できますよう祈りたいと思います。
コロナ退散!
今日はこんなところで。
それではまた。
- 2021/01/18(月) 18:31:06|
- スポーツ
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金曜日が少し暖かくなり、土曜日にはプラスの気温になった札幌ですが、一転して今日の最高気温はマイナス3.9度。
明日からもまたしばらく寒さが続くことになりそうです。
火曜日水曜日は最低気温がマイナス10度くらいにまで下がるみたいですので、水道凍結に注意しなくてはなりませんねぇ。
このところの寒さで、水道凍結がずいぶん多くなっているらしいですからね。
ちゃんと元栓を閉めて寝ないとなりません。
うちの水道の元栓が、ホント閉めづらい位置にあるんですよねー。
毎晩閉めるのが大変という。
なので、閉めないで済む方が楽なんですけども、閉めずに寝て水道凍結したら目も当てられませんからね。
今晩もごそごそと奥に潜り込んで閉めるしかなさそうです。
_(:3 」∠)_ ウボワァ―
最低気温がマイナス4度を超えると、水道凍結が多くなるそうです。
皆様も充分ご注意を。
今日はこんなところで。
それではまた。
- 2021/01/17(日) 18:00:58|
- 日常
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今日は土曜日。
いつものごとくSquad Leaderのソロプレイをば。

今日はポイント制で部隊編成。

今回は防御側の独軍を750ポイント、攻撃側の米軍を1125ポイントで編成しました。
このぐらいあればなんとかなるかと……

米軍は集落に籠もっていると思われる独軍の排除に向かいます。
今回はロビンソン大尉の指揮の下、105ミリ砲シャーマンや武装ハーフトラックなども加わり、意気揚々と進む米軍。
ロビンソン大尉はジープに乗ってご機嫌です。

米軍は集落からの射線をかわすように丘の影から接近します。
しかし、丘の上まで上がってしまうと、独軍の射撃を受けそうなので、回り込む形です。
ロビンソン大尉は、ここでしぶしぶジープから降りることに。(笑)

米軍は部隊を二手に分け、盤下側の部隊はヒル中尉に任せます。
ロビンソン大尉はHMGを射撃位置に移動させ、撃破されるのを覚悟でハーフトラックを丘の上に。
撃破されたらされたで、残骸がいい遮蔽物になるからです。
105ミリ砲のシャーマンは、走行不能の確率が米軍戦車は6分の1であることから、林ヘクスと建物ヘクスを踏みつぶして前進です。

独軍は唯一の装甲車輌である三突をシャーマン撃破に差し向けます。
しかし、これがまあ……

機銃は故障するわ、主砲を当てても貫通できんわで、最後までシャーマンを撃破できず。
一方シャーマンの方も105ミリ榴弾砲では三突を貫通できず。
双方撃ち合うだけで終始してしまうことに。

今回はとにかく米軍がつらかったですねぇ。
士気値の低さがもろに影響して、とにかく独軍の防御射撃に耐えられないという。
特に指揮官が混乱しまくったおかげで、分隊が二重の士気チェックで除去されるのが相次ぐことに。
終いには分隊がほぼ全滅してしまい、どうしようもなくなったので終了としました。
今回は独軍がほとんど損害が無く、米軍が一方的にやられる展開になってしまいました。
米軍は火力は高いんですけど、士気が低いのがつらいんですよねー。
ということで、今回は一方的になりましたが、面白かったです。
今日はこんなところで。
それではまた。
- 2021/01/16(土) 18:29:05|
- ウォーゲーム
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昨日、街中に外出してきまして、ヨドバシカメラの札幌店などに寄ってきたんですが、その時におもちゃコーナーで「ファミコンミニ」を見かけたんですよね。
で、ふと「そういえば収録タイトルって何があったかなぁ」と思い、任天堂のホームページを見ることに。
なんと30種類ものゲームがこの小さい中に収まっているんですねぇ。
すごいですわぁ。
まあ、残念ながら私がやりたいと思うタイトルはその中にほとんどなくて、欲しいということにはならなかったんですけど、そのタイトルの中で「今まで知らなかった」というネタが。
収録タイトルの中にあの有名なゲーム「パックマン」があるのですが、そのゲーム解説にこう書いてあったのです。
「パックマンを操り、迷路のクッキーを食べつくせ。」
工エエェェ(゚Д゚)ェェエエ工?
あのパックマンが食べていたのは「クッキー」だったんですかー!
知りませんでしたー。
なんか知らんけどパックマンが食っているなって思ってましたので。
あと、「エサ」と呼ばれてもいたような。
いやぁ、「パックマン」がアーケードに登場したのが1980年。
ファミコンに移植されたのが1984年だそうですけど、40年後に初めて知った事実です。(笑)
「クッキー」を食べていたんですなぁ。
まあ、そんなことを知ったという話でした。
今日はこんなところで。
それではまた。
- 2021/01/15(金) 18:54:11|
- PCゲームその他
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新型コロナウィルスの影響で一時中断となりました昨年開始の大河ドラマ「麒麟がくる」
NHKさんの英断で、年をまたいでの全44話放送ということになり、年が明けても楽しめているわけですが、残り話数もわずかになってしまいました。
そのため、これまで録画し続けてきました「麒麟がくる」を再視聴することにしまして、現在第9話まで見なおしているところです。
まあ、半分流し見的になってしまっておりますけど、それでも見返しますと、いろいろとTV視聴時に気付かなかったこととかもありますねぇ。
とりわけ思いますのが、このあたりの明智十兵衛君や織田信長が、今現在放送しているあたりの回と比べ、けっこう若く見えるんですよねー。
実際的には役者さんはせいぜいが一年ほどしか経っていないわけですから、ホントメイクとか着るものとかの印象なんでしょうねぇ。
いやぁ、役者さんってすごいなぁって思いますわ。
また、TV視聴時には先が見えないままに見ているのに対し、録画ではすでに知っている話を見ているので、ここでこうなるというのはわかっているはずなんですけど、たった一年前なのに結構忘れていることも多いですね。
まあ、私の記憶力もかなり衰えてはいるんでしょうけど。(^_^;)ゞ
「麒麟がくる」もあと四話。
最後までしっかり楽しみたいと思っております。
どうなるのかなー。
今日はこんなところで。
それではまた。
- 2021/01/14(木) 20:00:00|
- 映画&TVなど
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数字上は二月号ですが、今年最初のタミヤニュースが到着です。

こちらが表紙。
今号は第二次大戦中のドイツ空軍、第51戦闘航空団のマークとのこと。
今号の「博物館をたずねて」は、スターリンの秘密地下壕 ブンケル・スタリナ
独ソ戦前半、ドイツ軍がモスクワ前面にまで迫ったころ、スターリンがこの地下壕に退避したのだそう。
秘密地下壕ですので、その存在が明らかになったのは70年代のことだそうで、2005年に中央軍事博物館の所有となって、現在公開がされているとのこと。
スターリンの執務室や会議室、食堂などが公開されているようですが、スターリンがこもることになっていただけあり、内部はなかなか豪華なようですね。
「第二次大戦イタリア軍装備解説」はイタリア軍スキー部隊と装備
イタリア軍のスキー部隊は第一次大戦時に発足し、戦後解体されたものの、第二次大戦ではまた再編成されたという経緯だとか。
ドイツ軍の応援として対ソ連戦に投入され、激戦を潜り抜けたみたいですね。
第49回人形改造コンテストの入賞作品の写真と、入賞者のコメントも今号で掲載です。
今回も様々な作品が集まったようで、ホント見事ですねぇ。
巻中の情景写真は第二次大戦中の休息中の米兵の情景。
背後には放置された独軍の88ミリ高射砲があり、ジープでやってきたと思われる米兵たちが、お腹を空かせた犬たちに自分たちでは食いたくないレーションをあげようとしているシーンとのこと。
白黒写真ではわかりづらいですが、犬たちがかわいいです。
他には静岡モデラーズ合同展示会の記事や、イエローサブマリン秋葉原本店の第7回1/35戦車模型コンテストの記事なども。
今号も面白かったです。
次号も楽しみですね。
今日はこんなところで。
それではまた。
- 2021/01/13(水) 18:10:55|
- タミヤニュース
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北海道でも昨晩から、アニメ「ゆるキャン△シーズン2」の放送が始まりました。
ヽ(´▽`)ノワァイ
シーズン1が昨年やっと放送されたばかりでしたので、シーズン2もまたしばらく先かなと思っていたのですが、こちらはほぼ同時に放送してくれるのでありがたいですね。
またなでしこちゃんやリンちゃんに会えますよー。
(*´ω`)
ゆるキャン△いいですねー。
ほんとタイトル通り緩い日常系アニメで、見ていてほのぼのします。
キャラがみんないいですよね。
私はアウトドアの人ではありませんので、見ていて「へぇー」と思うことも時々。
松ぼっくりが着火剤にいいというのは存じませんでした。
(コンニチワ)
シーズン2も12話ぐらいですかね?
三ヶ月ほど楽しめそうですね。
今日はこんなところで。
それではまた。
- 2021/01/12(火) 18:24:32|
- アニメ
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今日は休日ということで、Squad Leaderのソロプレイ。
好きだねぇという声が聞こえそうですが、好きです。(笑)
今日はポイント制ではなく、正式なシナリオ3をプレイすることに。

シナリオ3は、シナリオ1とシナリオ2の組み合わせ+装甲車両や地下道移動が加わるというものですので、ユニットもこんなにたくさん登場します。

こちらが初期配置。
スターリングラードの市街地に、両軍がモザイクのように入り混じってます。
ここから建物一つずつを奪い合うんですよね。

ドイツ軍は定石どおりに煙幕を展開しつつ工場に接近。
火炎放射器が威力を発揮します。
今日もまたダイスの目がかなり荒れました。
独軍の重機関銃が初弾で6ゾロを出して故障するなど、故障も相次ぎ、回復時に6ゾロを出して除去になる分隊も出てきます。

一方では今日もまたソ連軍には狂暴化した分隊がいくつか登場。
狂暴化分隊は通常の士気チェックが無効になりますので、けっこう厄介な相手なんですよね。
シナリオ1とシナリオ2では登場しない装甲車輌も、シナリオ3では登場します。
独軍には三号突撃砲が75ミリ砲タイプと105ミリ砲タイプの二種5輌、ソ連軍がT-34戦車が4輌出てきます。

あるときはT-34が三突を食い、ある時は三突がT-34を撃破です。
市街戦での装甲車輌は、近距離での撃ち合いになりますねぇ。

第4ターン終了時です。
シナリオ1で扱う盤左側ではソ連軍が、シナリオ2で扱う盤右側ではドイツ軍がそれぞれ勝利条件を達成し、お互いに余力がなく相手から建物を奪い返すことは難しい状況となったとみなし、ここで終了することに。
全体としては引き分けということになりました。

実時間では5時間ほどのソロプレイでしたが、ゲーム中ではわずか10分ほどの時間しか経ってません。
それでいながらこれだけの数のユニットが除去される激しい市街戦でした。
これだけ失って結果は引き分け。
戦争なんてするもんじゃありませんなぁ。( ˘ω˘)
今日はこんなところで。
それではまた。
- 2021/01/11(月) 18:32:27|
- ウォーゲーム
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昨日に引き続きまして、マーチン・シン様に送らせていただきましたSSが、リンク先が消えてしまいましたので、ブログの方で公開したいと思います。
タイトルは「私は蛮獣人アリクイ」です。
すでにお読みの方が大半とは思いますが、またお楽しみいただけましたら幸いです。
私は蛮獣人アリクイ
「早く! 教授と“秘宝”を安全な場所に!」
背後で同僚たちが護衛対象である教授を部屋から連れ出すのを見て、彼女は多少安堵するとともに、襲撃してきた相手に改めて向き直る。
黒革の手袋をはめた両手をグッと握りしめ、いつでも格闘に入れるように準備する。
動きを阻害しないよう男性同僚たちと同じ黒いスーツ姿だが、その柔らかなラインは逆に彼女を女性らしくみせていた。
襲撃してきたのは三人。
護衛対象が狙われている可能性は高いという情報は得ていたものの、まさかこんな変な連中が襲ってくるとは予想外だった。
中央の一人はつばの広い帽子を目深にかぶり、裾の長いコートの襟を立てて顔を隠すようにしているが、その躰つきはがっしりと肩幅が広く、いかにも筋肉で覆われているという雰囲気だ。
それよりも奇妙なのはそのコートの男の左右に立つ男たちだ。
まるで何かテレビの特撮番組からでも出てきたかのような、黒い全身タイツに覆面をかぶった男たち。
覆面にはヘビか何かが牙をむきだしたような模様が付いており、その模様の目がそのままかぶった男の目の位置と合うようになっているようだ。
どういう理由か、赤く輝く目がまるでそのヘビの目であるかのように見えて不気味この上ない。
いったいこいつらは何者なのか?
「グゲゲゲ・・・女、邪魔をするな。そこをどけ」
太く重々しい声がコートの男から発せられる。
腹に響いてくる声で、気弱な者ならその声を聞いただけでも恐れおののいてしまうかもしれない。
しかし、彼女にはそうはいかない。
「残念ね。黙ってここを通すほど私はおとなしくはないわよ」
挑発するかのようにニヤッと笑みを浮かべてみせる。
これで彼女に向かってきてくれた方が、護衛対象が逃げる時間を稼げるというものなのだ。
「グゲゲゲ・・・愚かな女だ」
クイッと顎をしゃくって左右の男たちに指示を送るコートの男。
「ジャーッ!」
「ジャーッ!」
奇妙な声を上げて左右の黒ずくめの男たちが彼女の両脇を通り過ぎようとする。
「なっ、行かせるか!」
彼女は自分を無視して護衛対象を追いかけようとする二人を、素早く躰をずらして迎撃する。
すれ違おうとする相手に強烈な蹴りをたたき込み、もう一人には顔面に拳を入れる。
幸い追いかけることを重点にしていたのか、相手が武器を手にしていないのは救いだ。
どうせ正体がバレないようにどこぞで手に入れたコスプレ衣装を着込んだのだろうが、覆面なんかしていると視界が狭くなりかねないわよ。
床に倒れた男たちを目の隅で確認し、視線はコートの男から外さない。
「グフフフ・・・やるではないか。ジャラジャラ兵の動きに追従できるとは大したもの。俺が相手してやろう」
コートの男から低い笑い声が響く。
ただの相手ではない。
おそらくかなりの強敵だわ。
桐川美愛(きりかわ みあ)はそう思う。
警備会社で重要人物等の護衛任務を主としてこなしてきた彼女には、相手の力量を瞬時に推し量ることには慣れていた。
この男とはきつい戦いになる。
美愛はそう感じ、その前に二人を倒していて正解だと思った。
「そんな・・・」
だが、美愛の思いはすぐに外れる。
気を失わせたはずの男たちが、すぐに起き上がってしまったのだ。
大の男でもしばらくは起き上がれないような一撃を与えたはずにもかかわらずである。
しかもまずいことに、倒した二人の位置がやや後ろになってしまい、ちょうど男たちの作る三角形の中心に美愛が位置するような感じになってしまう。
倒された男たちも、先に美愛を片付けようというのか、どこからか取り出した剣のようなものを手にしていた。
まずい・・・
この位置では集中攻撃を受けてしまう。
攻撃をかわしていくことは可能だろうが、そうなれば防戦一方に追い込まれてしまうことは間違いない。
何とかしなくては・・・
しかし、美愛は意外な言葉を耳にした。
「グフフフ・・・ジャラジャラ兵がそう簡単に人間に倒されるはずがなかろう。だが、まあいい。こいつらには“シュガンの瞳”を追わせるとしよう。行け!」
「ジャーッ!」
「ジャーッ!」
コートの男の命に従い、くるりと向きを変えてすぐに駆けだしていくジャラジャラ兵たち。
美愛を無視して、目標を追うことを優先させたのだ。
その動きは美愛に受けたダメージなど、まったく負っていないかのようである。
「ま、待ちなさい!」
部屋を出ていくジャラジャラ兵を止めようとする美愛。
だが、その前にコートの男が声をかける。
「どうした? お前の相手は俺だぞ」
「くっ!」
美愛は歯噛みする。
まさかあの一撃を受けてすぐさま立ち上がれる相手がいるとは思わなかった。
だが、今彼らを追おうと背中を見せれば、確実にコートの男の一撃を食らってしまう。
そのためにも追うわけにはいかない。
何とかみんなに逃げ切ってもらうことを祈るしかない。
「グゲゲゲゲ・・・」
「えっ?」
美愛の前でコートの男がゆっくりと帽子とコートを脱いでいく。
「そんな・・・」
美愛は驚いた。
コートの下から出てきたのは人間の躰などではなかったのだ。
まるでアメリカンフットボールのプロテクターがそのまま肉体になったかのようなシルエット。
しかも、その表面は灰色っぽいうろこに覆われ、胸や腹部も骨のような形の外皮で覆われている。
顔はおよそ人間とは似ても似つかず、鋭いギザギザの歯がむき出しになった口や鋭い目、尖った耳が動物のような顔立ちを作っている。
両手両足はがっしりと頑丈そうで、特に両手は鋭い爪のような指が突き出たハンマーのように巨大で力強そうだった。
「ば・・けもの・・・」
美愛の受けた第一印象はまさにそれだった。
こいつは人間ではない。
何か違う別の生き物だ。
どうしてこんなものがここにいるというのか?
私は夢でも見ているのだろうか?
「グフフフフ・・・俺はヤーバン一族の蛮獣人アルマジロだ。まあ、お前らから見れば化け物呼ばわりしたくもなるというものか」
ギザギザの歯をむき出した口で笑う蛮獣人アルマジロ。
その名の通り、彼はアルマジロの力を身に付けた蛮獣人であり、硬さには自信がある。
力だって目の前の人間の女など物の数ではないだろう。
だが、こうして立ち向かってくるというのは面白い。
「ヤーバン一族・・・」
その一族のことは耳にしたことはある。
今回護衛するのは“シュガンの瞳”と呼ばれる秘宝という。
その秘宝はさらなる秘宝につながるものとして、立花(たちばな)教授が分析を進めていたものだ。
だが、それを狙う連中がいるとのことで、今回美愛のいる警備会社に護衛が依頼されていた。
その連中とやらがこんな特撮番組から抜け出てきたような奴らだったなんて・・・
しかし、美愛は依頼主からヤーバン一族という名を聞いたわけではなかった。
あくまで依頼主からは、“シュガンの瞳”を狙う連中がいるということだけ。
おそらくは依頼主もヤーバン一族とやらのことは知らなかったのかもしれない。
美愛がその一族の名前を知ったのは、別の人物の口からだったのだ。
カオルはあの時・・・ヤーバン一族と言っていた・・・
友人の姿が脳裏に浮かぶ。
総合格闘技で名を馳せた美愛は、一時期国内大会ではかなりの上位を誇っていた。
そんな時、同じように剣道で名を知らしめていたのが蜂谷カオル(はちや かおる)であり、二人はほどなく知り合って友情を深めたのだ。
その後お互いに進む道は離れてしまい、美愛はこうして格闘技を人のために生かせる警備という道に進み、カオルは人を導く教職へと進んでいった。
お互いのそれぞれの仕事で忙しくなかなか会うチャンスもなかったが、先日偶然街中で会うことができ、少しだけ話をすることができたのだ。
だが、久しぶりにあったカオルは人が変わったように冷たい笑みを浮かべていた。
親しげに話しかけた美愛に対し、まるっきりそっけない態度で終始したうえで彼女はこう言った。
「私はヤーバン一族なの。気安く話しかけないでくれる?」
そう言って立ち去る彼女に美愛は唖然としたのだった。
カオルは・・・まさか・・・こいつらの?
そんな疑問が頭をよぎる。
「どうした? かかってこないのか?」
蛮獣人アルマジロの野太い声にハッと我に返る美愛。
いけない。
こんな時にあの事を思い出してしまうなんて。
とにかく今はこの場を切り抜けなくては。
倒す必要はないのだ。
護衛対象が無事に脱出できればそれでいい。
そのための時間を稼ぐ。
できれば五分。
追っていかれた連中のことは気がかりだが、そっちはほかの連中が何とかしてくれるだろう。
何も護衛は彼女一人ではないのだから。
美愛はスッと腰から伸縮式の警戒棒を取り出す。
相手は化け物だ。
こちらも相応の武器がないとダメだろう。
まずは脚を・・・
「はあっ!」
気合を口にして蛮獣人アルマジロの懐に飛び込み、警戒棒を振るう美愛。
その一撃がその太ももに命中する。
普通であれば相当のダメージが行くはずの一撃だ。
「がはぁっ!」
美愛は何が起こったのか一瞬わからなかった。
背中をしたたかに壁に打ち付けたことで、ようやく自分が相手に殴り飛ばされたのだということに気付く。
なんてこと・・・
あいつはあの一撃をものともしなかったというの?
ほう・・・
蛮獣人アルマジロは意外に思う。
確かに今の女の一撃は結構重たいものだった。
太ももを狙ってくるとはただ者ではない。
しかし、しょせんは人間の一撃。
金属の棒を持っているとはいえ、蛮獣人の躰にそうダメージが及ぶものではない。
ましてや外皮の硬さでは並みの蛮獣人とは違うのだ。
彼の外皮を傷つけることができるものなどそうありはしない。
彼はアルマジロの蛮獣人なのだから。
だが、それでもなおこの女の一撃は重く、彼を感心させたうえに、彼の一撃を食らってもまだ意識を失いはしなかったのだ。
この人間の女は・・・悪くない・・・
彼はそう思った。
「くっ」
よろめきつつも壁から離れ、再び態勢を整える美愛。
どこか弱点はないのか?
あの化け物にどこか弱点は・・・
怖い・・・
確かに怖い・・・
相手は人間じゃない・・・
そのことを美愛は感じ取っている。
まるで着ぐるみを着ているかのように見える相手だが、あの姿は本当の獣人なのだ。
こんなものがこの世にいたなんて・・・
でも・・・
「負けるかぁっ!」
姿勢を低くして滑り込むように相手の脚を狙いに行く。
振り下ろされる巨大なハンマーのような拳を間一髪で避け、警戒棒の柄の方で相手の膝頭を打ち付ける。
普段ならばやらない攻撃だが、この際遠慮はしていられない。
「グオッ?」
思わず躰をよろめかせる蛮獣人アルマジロ。
美愛は躰を回転させ、続けざまの一撃を見舞う。
渾身の蹴りがアルマジロの巨体に打ち込まれた。
はずだった。
「な・・・」
美愛の脚は蛮獣人アルマジロの腕によって止められていた。
「グゲゲゲ・・・やるではないか。気に入ったぞ」
「ガハッ!」
そのまま脚をすくい上げられるように跳ね飛ばされ、床に落ちたところにハンマーのような拳が打ち下ろされる。
美愛の口から血反吐が飛び散り、目の前が赤くなる。
同僚と連絡を取るイヤホンもどこかに飛んでしまっていた。
遠くなりそうな意識を必死で持ちこたえる美愛を、襟首をつかんで持ち上げる蛮獣人アルマジロ。
「気に入ったぞ。俺にここまで正面切って戦う人間がいたとはな。女、名はなんという?」
「グ・・・ふ・・・だ、誰が・・・お前などに・・・」
血の混じったつばを吐きかける美愛。
だが、躰は大きなダメージを受けてしまったようで、意識をつなぎとめるのが精いっぱいだ。
「ジャーッ! 蛮獣人アルマジロ様、申し訳ありません。“シュガンの瞳”と立花教授に逃げられてしまいました」
「何?」
足音が響き、教授を追っていったはずの二体のジャラジャラ兵が部屋に戻ってくる。
どうやら護衛対象はうまく逃げ出せたようだ。
「よか・・・た・・・」
ホッと安堵する美愛。
最低限の任務は果たせたらしい。
これでこいつに殺されて・・・も・・・
「ふん」
気を失ったらしいボディガードの女を脇に抱え込む蛮獣人アルマジロ。
「引き上げるぞ。ソヤ様にご報告せねばならん。だが、こいつは気に入った。ソヤ様に頼んで俺の物にさせてもらうとしよう。グフフフフ」
今回は“シュガンの瞳”を手に入れることには失敗した。
だが、そのようなものはいつでも奪うことができるだろう。
それよりも・・・
アルマジロは脇に抱えた女を見る。
この女、人間などにしておくには惜しい。
俺の女に・・・
グフフフフ・・・
******
闇・・・
漆黒の闇・・・
上も下も右も左もわからなくなるような闇・・・
美愛がいるのはそんな闇の中だった。
「こ・・・こは?」
もしかして自分は死んでしまったのだろうか?
ここは死後の世界なのではないだろうか?
そんなことをふと思う。
だが、躰のあちこちが痛むことが、まだ死んだわけではなさそうだと感じさせてくれる。
であれば、ここはいったい?
私はどこにいるのだろう?
「ふふふふふ・・・」
笑い声が聞こえる。
艶のある女性の声。
冷たさを感じる声だ。
どこから聞こえてくるのだろうと美愛が思った時、闇の中から女性の姿が現れる。
「!」
美愛は息をのむ。
美しい女性。
だが、同時に恐ろしさと、異質さを感じさせる女性だ。
黒いレオタードのような衣装を身につけ、脚には目の細かい網タイツのようなものを穿いている。
片方の太ももにはリングを嵌めており、膝から下は黒いブーツが覆っている。
両手は二の腕まである黒い長手袋を着けていて、背丈ほどもあるような杖を右手に持っていた。
灰色の髪に覆われた頭部には角のようなものが左右に生え、額には第三の目ともいう感じの赤い宝石の付いたサークレットが飾っている。
彼女の目もサークレットの宝石同様に赤く輝き、口元には笑みを浮かべて美愛を見下ろすように立っていた。
「ふふふふふ・・・どうやらお前はアルマジロに気に入られたらしいねぇ」
妖艶な美女がそう言って笑う。
「アルマジロ? 気に?」
美愛の脳裏に気を失う前の光景がよみがえる。
確かあの怪物は蛮獣人アルマジロと言っていたはず。
あの怪物が私を気に入った?
どういうことなの?
「アルマジロは、お前を蛮獣人にしてパートナーにしてほしいと言っているよ。お前に惚れたそうな」
くすくすと笑っている美女。
「なっ?」
彼女は何を言っているの?
私をあの化け物のパートナーに?
「ふっ!」
ふざけるなと言って起き上がろうとした美愛だったが、起き上がるべき地面がないことに気が付く。
寝かされていたように思えたのも、単に彼女との位置関係からそう見えただけらしい。
つまり美愛の躰は闇の中で浮いており、起きるも立ち上がるもできる状態ではないのだ。
「ソ、ソヤ様、べ、別に惚れたというわけでは・・・」
闇の中にもう一体の姿が現れる。
蛮獣人アルマジロと言っていたあの化け物だ。
彼もまた頭を斜め下にしたような奇妙な位置関係で闇の中に浮かんでいる。
「オホホホホ・・・よいではないか。この女が欲しいのであろう? わざわざ蛮獣人にしてまで」
口元に手の甲をあてて笑う大魔女・ソヤ。
まさか蛮獣人が人間の女を欲しいと言ってくるなど思いもしなかったことだが、この女なら蛮獣人となれば充分に役に立ってくれそうだ。
それに、蛮獣人同士のつがいというのも悪くはない。
「ふざけないで! 誰があんたのものになど!」
美愛が思い切り首を振る。
冗談じゃない。
彼女にだって想う人はいるのだ。
まだ打ち明けてこそいないものの、いつかはと機会をうかがっているところなのだ。
こんな化け物の慰み者になどされてたまるものか。
「オホホホホ・・・勇ましいわね。蛮獣人になる素養は充分にあるわ。心配いらないわよ。蛮獣人になる時、ちゃんと心もアルマジロのことを好きになるように作り変えてあげるから」
すうっと美愛に近づき、その手で美愛の頬を撫でるソヤ。
「本当ですか、ソヤ様? ありがとうございます」
ソヤの言葉に思わずアルマジロは頭を下げる。
この女が我が物になるのだ。
こんなうれしいことはない。
「やめて! 絶対にお前たちの思い通りになどなるものか!」
ソヤの手を弾き飛ばす美愛。
何をするつもりかわからないし、ここからどうやって抜け出せばいいのかもわからないが、とにかく何とかしなくては。
でも、どうやって・・・
どうしたらいいの?
「オホホホホ・・・その気持ち、脱皮が終わっても同じセリフを言えたなら大したもの」
ソヤが杖を美愛に向ける。
「偉大なる魔人ジャーラー様よ、この女を素とし、新たなる蛮獣人を生み出させたまえ!」
その声に応えるかのように、闇の中に唸り声が響く。
すると、闇の中から黒い布のようなものが美愛の躰に巻き付き始めた。
「えっ? 何これ?」
美愛は手足に絡まってくる黒い包帯とも黒い反物ともいうようなものを振りほどこうとする。
だが、もがけばもがくほどに黒い布は巻き付いてくるのだ。
「い、いやっ! いやっ!」
じたばたともがく美愛に、黒い布はどんどんどんどん巻き付いていく。
手に、脚に、胸に、頭に、どんどん巻き付いてくるのだ。
えっ?
美愛は驚く。
服を着ていたはずなのに、下着を身に着けていたはずなのに、靴を履いていたはずなのに、それらがすべて消え去り、黒い布がじかに肌を覆っていくのだ。
それはすべすべしてまるでナイロンのような肌触り。
強くもなく弱くもなく適度な締め付けで彼女の躰を覆ってくる。
嘘・・・そんな・・・気持ちいい・・・
躰に巻き付いてくる布が密着し、彼女の躰を包み込んでいく。
ひんやりとした、それでいて温かい感触。
すべてを包み込んでくれる安心感。
自分の皮膚が置き換わっていく。
この黒い布が美愛の躰を作り替えていくのだ。
い・・・や・・・
だんだんと美愛の動きが止まってくる。
闇の中に大の字になり、全身が包まれていくのを受け入れていく。
黒い布はまるで美愛の躰を全身タイツのように包んでいく。
何重にも巻き付いたことでやや厚みのあったものが、薄皮一枚のように彼女の躰に貼り付いていく。
手の指も、胸のふくらみも、おへそのくぼみも、股間の性器さえもぴったりと貼り付いた布に浮き出てくる。
まるで美愛の皮膚が黒い布に置き換わったかのようだ。
髪も目も鼻も口も布に覆われ、ただその凹凸だけが浮き出ている。
そこにいるのは美愛の形をした黒い人形のようだった。
気持ちいい・・・
美愛の抵抗はすでに失われていた。
肌を包み込む布の気持ちよさ。
まるで母親の胎内にいるかのような安心感。
彼女は作り変えられる。
美愛はそのことを喜ばしくさえ感じていた。
やがて、美愛の躰にさらなる変化が起き始める。
両肩の肩幅が広がって、筋肉の塊のようながっしりした肩になっていく。
両腕ももともと筋肉質だった腕がより太く強靭になっていく。
五本の指も太く長くなっていき、硬く鋭い爪のように変化する。
太もももがっちりと太くなり、足は頑丈な靴のような形に変わっていく。
胴体も腹部を硬い皮が覆い、さらにその上から骨のような硬いパーツが形成される。
肩、両腕、ひざ下は動物のような茶色の毛が覆い、彼女を獣人へと変えていく。
それらの変化が起こるたびに、美愛はとてつもない快感を感じていた。
気持ちいい・・・
力がどんどんみなぎってくる。
躰がどんどん変わっていく。
気持ちいい・・・
生まれ変わることがこんなに気持ちいいことだったなんて・・・
人間じゃなくなることがこんなに素晴らしいことだったなんて・・・
ああ・・・
ジャーラー様・・・
偉大なるジャーラー様・・・
あああああ・・・
なんてすばらしいのかしら・・・
私は脱皮する。
人という皮を捨て、蛮獣人としての皮に置き換わる。
ジャーラー様にお仕えする蛮獣人。
私は蛮獣人になるんだわ・・・
ああ・・・
気持ちいい・・・
変化は顔にも及んでいく。
彼女の両耳は尖った獣のようになり、緑色の両目が開かれる。
鼻の部分は大きく細長い口吻となり、それとは別に覆われていた口が再び作られる。
首元も白い獣の毛が覆い、頭頂からの白い二筋のラインも鼻で一筋となって口吻の先端へとのびていく。
美愛の躰は獣の強さと人間の女性らしいラインとが一つになった美しい蛮獣人へと変わっていった。
「ふふふ・・・」
変化を終えた美愛の腰に、ソヤがベルトを巻き付ける。
バックルにヤーバン一族の紋章の付いたベルトだ。
これこそヤーバン一族の一員である証である。
美愛は今、ヤーバン一族の一員となったのだ。
ギンと緑色の目が光る。
「クイィィィィィィィ!」
両手をやや持ち上げ、胸を張るようにして思い切り鳴き声を上げる。
脱皮の終わった後の歓喜の声。
新たなる蛮獣人が誕生した産声だ。
「おお・・・」
思わず目を見張る蛮獣人アルマジロ。
先ほどまでは人間だったあの女が、今では美しさと力強さを見せつける蛮獣人に生まれ変わったのだ。
なんと素晴らしい。
この蛮獣人のメスが自分のパートナーになってくれるのだろうか・・・
「オホホホホ・・・ジャーラー様はお前を新たな蛮獣人として生まれ変わらせたもうた。さあ、お前が何者かジャーラー様にお見せなさい」
新たな蛮獣人の誕生に高笑いをするソヤ。
これはなかなか強そうな蛮獣人ではないか。
「クイィィィィ! アタシは蛮獣人アリクイですわ。偉大なる魔人ジャーラー様、大魔女・ソヤ様、アタシをこのような素晴らしい躰に脱皮させていただき、ありがとうございます。クイィィィィ!」
闇の奥のジャーラーとその前に立つソヤに一礼する蛮獣人アリクイ。
その口元に笑みが浮かぶ。
「オホホホホ・・・それでいい。今日からお前はヤーバン一族の蛮獣人。我が一族のために働きなさい。オホホホホ・・・」
「はい、ソヤ様。アタシはヤーバン一族の蛮獣人アリクイ。どうぞ何なりとご命令を。クイィィィィ!」
美愛の心は完全に歪んでしまっていた。
彼女はもはや桐川美愛などと言う人間ではない。
ヤーバン一族の蛮獣人アリクイへと生まれ変わったのだ。
「うふふふふ・・・お前には蛮獣人アルマジロとともに、“シュガンの瞳”を奪ってくることを命じる。いいな」
「クイィィィィ! お任せくださいませソヤ様。必ずやアタシが蛮獣人アルマジロとともに“シュガンの瞳”を奪ってまいります」
四つの鋭い爪を持つ両手を見せつけるようにかざし一礼する蛮獣人アリクイ。
この爪で邪魔するものは切り裂くのだ。
今からそれが楽しみでならない。
「オホホホホ・・・頼んだわよ。ほら、さっきから後ろでパートナーの挨拶を待ち焦がれているやつがいるわ。行って挨拶でもしてきたら?」
杖でアリクイの背後を指し示すソヤ。
振り向くと、そこにはじっと立ったまま彼女の方を見つめている蛮獣人アルマジロの姿があった。
「クイィィィィ! はい、ソヤ様。ふふふ・・・」
アリクイは細長い舌でぺろりと唇を舐める。
そして、ゆっくりとその身をアルマジロの元へと運んでいった。
ゆっくりとやってくる蛮獣人アリクイの姿。
見れば見るほど美しい。
人間だった時には感じなかったが、これほど美しい蛮獣人になるとは思いもしなかった。
なんだかドキドキしてしまう蛮獣人アルマジロ。
自分から望み、お願いしたことではあったが、本当に彼女は俺のパートナーになってくれるのか?
多少の不安がアルマジロを襲う。
だが、彼の前にやってきた蛮獣人アリクイは、にっこりと笑顔を見せた。
「初めまして。アタシはヤーバン一族の蛮獣人アリクイ。あなたのおかげでアタシはこのように蛮獣人として脱皮することができましたわ。お礼を言います」
スッと右手を差し出すアリクイ。
「お、おう・・・よろしくな。俺は蛮獣人アルマジロだ」
やや戸惑いながらも右手を出すアルマジロ。
二人の蛮獣人はがっちりと握手のように爪同士を絡ませる。
爪同士がカシッと小さく音を立てた。
アリクイもドキドキしていた。
見れば見るほどたくましい。
がっしりした躰はまるで鎧に覆われているかのよう。
鋭い爪は自分のものと同様で親しみを感じてしまう。
太い腕は彼女の躰すら軽々と支えてくれそう。
どうして彼のことを化け物などと言ってしまったのか。
人間だったからなのだ。
人間だったから蛮獣人アルマジロの魅力に気が付かなかったのだ。
でも今は違う。
今はアタシも蛮獣人。
彼と同じ蛮獣人同士なのだ。
パートナーになれるなんてすごくうれしい。
「これからは俺と一緒にジャーラー様やソヤ様のために働いてくれるか?」
アルマジロが不安そうに尋ねる。
何を言っているのだろう?
そんなこと当然のことじゃない。
アリクイがほほ笑む。
「ええ、もちろん。蛮獣人同士ですもの。それよりも・・・」
アリクイはそっと彼に躰を預け、その顔に手を這わせる。
「堅苦しい挨拶はもういいわ。蛮獣人同士、もっと親睦を深めあいましょ」
「そうだな・・・ふふふ・・・そうしよう」
アルマジロは、かわいいアリクイを抱え上げた。
******
「ガフッ!」
屈強そうな男性が壁にたたきつけられる。
そのままずるずると床に崩れ落ち、動かなくなる。
おそらくもう生きてはいないだろう。
なんていう力だ・・・
「さ、佐々木(ささき)君・・・」
「立花教授、ここは私が食い止めます。早く逃げて!」
黒いスーツに伸縮式の警戒棒を持った男が、背後の白衣の男性を逃がそうとする。
その手には大事そうに箱が抱えられており、その中に“シュガンの瞳”が入っていることは間違いない。
「わ、わかった・・・」
箱を抱えて逃げ出していく白衣の男。
その後ろ姿を見ながら、蛮獣人アリクイはくすっと小さく笑う。
無駄なことを・・・
前回そうやって逃げることができたからと言って、今回も逃げられるとは限らないのに。
アタシが一人で来ているとでも思っているのかしら。
それに・・・
目の前で必死に立ちはだかる男を見る。
バカな男だ。
アタシが桐川美愛という以前の名前で連絡を取り、立花教授と“シュガンの瞳”の行方を聞いたら、あっさりと教えてくれたわ。
桐川君、無事でよかった・・・ですって?
アタシが桐川美愛のままでいると思っている愚か者だわ。
「くそっ! 化け物め!」
「クイィィィィ! 失礼な男ね。アタシは化け物なんかじゃないわ。ヤーバン一族の蛮獣人アリクイよ」
お前たちこそひ弱な人間のくせに・・・
アリクイはそう思う。
事実、彼女に立ち向かってきたガードマン二人は、彼女の爪の一撃であっさりと死んでしまったではないか。
物足りないにもほどがある。
「桐川君の名をかたったのはお前だな。彼女はどうした? まさか・・・」
「ふふふふ・・・桐川美愛などもういないわ。アタシは蛮獣人アリクイとして脱皮したのよ。クイィィィィィ!」
高らかに鳴き声を上げる蛮獣人アリクイ。
そう・・・アタシは蛮獣人アリクイ。
人間なんかじゃないわ。
「くっそぉ!」
伸縮式の警戒棒を振るってくる男。
アリクイはそれを正面から左手の爪で受け止め、右手の爪をたたき込む。
「グハッ!」
彼女の爪は深々と男の腹をえぐり、血を噴出させる。
他愛ないわ・・・
どうっと床に倒れる男。
それをアリクイは踏みつける。
腹立たしいことこの上ない。
以前の自分は確かに人間だったことがある。
その時にこんな男のことを憧れに感じていたなんて・・・
アタシは愚かで馬鹿でどうしようもなかった・・・
人間だったなんて・・・
人間だったなんて・・・
人間だったなんて・・・
思いだしたくもないわっ!
ぐしゃりと男の顔が踏みつぶされる。
それを見て、アリクイはほんの少しだけ気が晴れた。
******
「クイィィィィ!」
ひとしきり高らかに鳴き声を上げる蛮獣人アリクイ。
ここはビルの屋上。
下を見ても、どうやら外に逃げ出していく人間はいない。
部屋から逃げた立花教授と“シュガンの瞳”も、待ち伏せている蛮獣人アルマジロが確保したということだ。
「うふふ・・・」
当然だわとアリクイは思う。
人間たちがアタシたち蛮獣人から逃れられるはずがない。
まして、蛮獣人アルマジロが待ち伏せているのだ。
突破できるはずなどないではないか。
“シュガンの瞳”をソヤ様に持ち帰れば、きっと喜んでいただけるだろう。
お褒めの言葉もいただけるかもしれない。
そうしたら、アルマジロと一緒に祝杯を上げよう。
二人で今晩もまた・・・
うふふふふ・・・
思わず昨晩のことを思い出すアリクイ。
それだけで躰は熱くなり、股間がじんわりと濡れてくる。
アルマジロの太いペニスが欲しくなる。
昨晩二人は激しく交わったのだった。
蛮獣人同士の交尾。
それはとてつもない快楽。
純粋に楽しむためだけの交尾ができるのだ。
人間では味わえなかった快楽に、二人は酔いしれたのだった。
「誰?」
背後に気配を感じて振り返る。
立っていたのは一人の人間の女性。
その姿には見覚えがある。
「カオル・・・」
かつて友人だった女性、蜂谷カオルだ。
どうして彼女がこのようなところにいるのか?
スッと両手の爪をかざす蛮獣人アリクイ。
見られたからには生かしておくわけにはいかない。
ヤーバン一族のことはできるだけ秘密にしておかなくてはならないのだ。
今はまだ人間どもに知られるわけには・・・
残念だけど、運がなかったわね・・・
シュッと鋭く爪を繰り出す。
蛮獣人となった今は、以前の美愛とは比べ物にならない素早さと強さがある。
人間など一撃で・・・
「えっ?」
だが、アリクイの一撃はかわされていた。
まるで一瞬で立っている場所を変えたかのよう。
しかも、その姿は消えている。
どこ?
「クキキキキ・・・」
甲高い笑い声が頭上から響く。
上?
アリクイが見上げると、夜空に舞っている一体の蛮獣人の姿があった。
「蛮獣人・・・」
「クキキキキ・・・擬態くらい見抜いてほしいわね、同じヤーバン一族の蛮獣人同士なんだから」
ふわりと屋上に着地するその姿は、先ほどまでの蜂谷カオルとは全く違う。
右手にレイピアのような長い針を輝かせ、黒と黄色を主体とした外骨格が躰を覆っている。
背中には薄い翅が広がり、頭部にはゴーグルのような複眼と額から左右に伸びる触角が付いていた。
「クキキキキ・・・言ったでしょ、私はヤーバン一族なのって。私は蛮獣人スズメバチ」
ほほ笑みながら自己紹介する蜂の姿の蛮獣人。
「クイィィィィ! なぁんだ、そういうことだったのね。悪かったわ。アタシは擬態なんてできるって思わなかったから」
仲間だと判って戦闘態勢を解くアリクイ。
あそこまで完璧に人間に擬態できる蛮獣人がいるとは思っていなかったのだ。
せいぜいコートや帽子で人間ぽくふるまうものとばかり。
「無理もないわね。私やガメレオンのような蛮獣人の方が特殊だし。私はソヤ様に特殊タイプとして作られたの」
くすっと笑うスズメバチ。
彼女の言うとおり、大半の蛮獣人は人間に擬態することなどほとんどないのだ。
スズメバチやガメレオンの方が珍しいのである。
「でも、うれしいわ。あなたが蛮獣人に選ばれたと知って挨拶に来たのよ。これからは蛮獣人同士よろしくね」
「ありがとう。アタシは蛮獣人アリクイ。こちらこそよろしく」
二体のメスの蛮獣人たちが針と爪を合わせて音を鳴らす。
見るものが見れば美しい二体の蛮獣人たちだ。
「下では無事に“シュガンの瞳”を確保したみたいよ。あなたのパートナーなんでしょ、彼?」
「ええ。アタシにはもったいないくらいのパートナーだわ」
スズメバチの言葉にうなずくアリクイ。
「まあ、ご馳走様。早速任務成功でよかったわね」
「ありがとう。あなたの方は何を?」
「私は城北アカデミーで非常勤講師として潜入行動しているわ。働きバチもすでに何人か・・・クフフフ」
意味ありげに笑うスズメバチ。
「城北アカデミー?」
高名な学校だ。
「ええ・・・あそこの優秀な頭脳を持つ女たちを働きバチとして支配し、いずれ全国に広めていくというわけ。でも、気がかりが一つ」
「気がかり?」
スズメバチのような蛮獣人に気がかりとは?
「ええ・・・あそこにはガイア・フォースの関係者がいるらしいわ」
「ガイア・フォース!」
ガイア・フォースと言えばヤーバン一族に敵対し、魔人ジャーラー様の復活を阻止しようとたくらむ連中だ。
名前を聞くだけで怒りがこみあげてくる。
「ねえ、スズメバチ。ガイア・フォースが邪魔するようならアタシたちが排除するわ。だからすぐに言ってね」
ぐっと両手に力を籠めるアリクイ。
アタシとアルマジロのコンビならどんな相手にも負けるはずはない。
ガイア・フォースだろうとヤーバン一族の邪魔するものは排除するのみだ。
「ええ、その時はお願いするわね。頼りにしているわ、アリクイ」
「任せて頂戴。クイィィィィ!」
アリクイは高らかに鳴き、スズメバチとともに夜の闇へと消えていった。
END
いかがでしたでしょうか。
今日はこれにて。
それではまた。
- 2021/01/10(日) 21:00:00|
- 怪人化・機械化系SS
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YouTubeで「機動戦士ガンダム MS IGLOO」を無料配信していたのですが、今週で「黙示録0079」の第三話まで見終わり、一期二期の六話分見ることができました。
特に「黙示録0079」の方の第二話第三話は続きものと言ってよく、ア・バオア・クーの最終決戦を背景に、戦時急増兵器のオッゴに乗る少年兵と、彼らを指揮するカスペン大佐の話は見せ場でしたよねー。
「MS IGLOO」は一貫して「機動戦士ガンダム」本編には登場しないジオンの陰に隠れた兵器にまつわる話ですけど、渋い話がいいんですよね。
連邦側の描かれ方がちょっとというところはありますけど、まあそのあたりは笑って済ませましょう。(笑)
「筆箱のような船」と揶揄された「ヨーツンヘイム」のプロホノウ艦長が個人的には好きですかねー。
いいキャラなんですよねー。
来週から「重力戦線」やってくれるのかな?
やってくれるといいなぁ。
今日はこのあとまた再掲となりますが、SSを一本投下いたします。
それではまた。
- 2021/01/10(日) 18:15:09|
- アニメ
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マーチン・シン様の作品の二次創作と言いますか、イラストに感化されて文章を書いてみましたという作品でして、一時マーチン・シン様のpixivページに掲載していただきました作品です。
諸事情で掲載ページが消えてしまいましたので、許可をいただきまして、当ブログの方で掲載させていただくことになりました。
すでにご覧になられた方も多いとは思いますけど、あらためてお楽しみいただけましたら幸いです。
それではどうぞ。
選ばれてしまった母と娘
だんだんと日差しが強くなってくる季節。
ただ、暑さはまだそれほどでもない。
放課後、日が沈むまでの長い時間を木陰で読書をして過ごすにはいい季節だ。
蓮生愛華(はすお あいか)は公園のベンチに腰掛け、好きな歴史小説を読んでいる。
もう何度も繰り返し読んでいる歴史なのに、作者が違うと表現も違い、新しい世界のように思えてくるのが面白い。
かつてお隣の大陸で繰り広げられたという三国の群雄史。
多彩な登場人物がそれぞれの思いをかけて相争う。
愛華が一番好きなのは時代が三国に収束する前の戦乱の時代。
のちの三国でトップに立つ群雄たちがのし上がってくるあたりだ。
このあたりは何度読んでも面白い。
だから、愛華はついつい後半よりも前半を多く読むことが多かった。
雷に驚いて箸を落す。
だがそれは小心者と見せかけることで、相手に大したことのない人物と思わせるのが目的の偽装。
虚々実々の駆け引きなのだ。
こういうところが面白い。
だから、愛華はこの物語が好きだった。
「お待たせー」
公園に駆けてくる一人の女子高生。
城北アカデミーの制服を身に着け、軽やかな動きでやってくる。
にこやかな笑顔が日差しとも相まってまぶしいくらい。
やや明るい茶色の髪を両脇でお団子にした彼女は、ちぎれんばかりに手を振ってくる。
伸びやかな躰はまるでネコ科の動物を思わせるようなしなやかさだ。
この躍動感こそが彼女の魅力であり、虎島美子(こじま みこ)の本質なのだろう。
愛華は思わず自分も小さく手を振り、読んでいた本を閉じた。
「遅くなってごめーーん。待った?」
愛華の前にたどり着き、ハアハアと息を切らせている美子。
どうやらかなり急いできたらしい。
「ううん、これ読んでいたし、そんなに急がなくてもよかったのよ」
愛華は立ち上がって読んでいた本を見せ、笑顔を浮かべる。
だが、こうして美子が急いで来てくれたということは素直にうれしい。
「や、ずいぶんと待たせちゃったかなって思ってさ」
美子も笑顔を浮かべる。
やはり運動を得意としているからなのだろうか、息はもうほとんど整ったようだ。
運動が苦手な愛華にとってはうらやましい限りである。
「ハルちゃん先生?」
「うん。研究会の方は特にやることはなくて済んだんだけど・・・ね」
美子が苦笑する。
ハルちゃん先生というのは、美子が所属する考古学研究会の顧問である北原はるかのことだ。
気さくで優しい教師である彼女のことを、生徒たちは親しみを込めてハルちゃん先生と呼んでいる。
だが、ハルちゃん先生は美子にとってはもう一つ別の顔を持っていた。
それは、ガイア・フォースの支援者としての顔である。
ガイア・フォースとは、ガイア(地球)の力を借りて戦う三人の少女たちのことであり、そのうちの一人が虎島美子本人だったのだ。
彼女はガイアの力を秘めたガイア・キーによってガイア・タイガーへとチェンジし、魔人ジャーラーの復活をたくらむヤーバン一族と、日夜人知れず戦っているのだった。
そしてそのガイア・フォースの活動を知り、情報面等で支援してくれているのが、ハルちゃん先生こと北原はるかだったのだ。
とはいえ、美子本人はガイア・フォースのガイア・タイガーと言えども城北アカデミーの生徒であり、北原はるかも城北アカデミーの教師である。
当然ガイア・フォースに絡まない部分での関わりというものもあるわけで・・・
先ほどまで美子はハルちゃん先生に勉強の様子を尋ねられていたのだ。
「うー・・・次の試験が不安だよー」
美子が思わず頭を抱える。
そうなのだ。
運動が得意な美子だが、勉強の方はそれほど得意ではない。
もちろん城北アカデミーに通っているのだから、頭は悪くはない。
ただ、どうしても躰を動かすほうが優先されてしまうのだ。
そんな美子を見て愛華がポンと背中をたたく。
「ほらほら、そんな顔は美子には似合わないよ。クレープでも食べに行きましょ」
途端に美子の顔が晴れやかになる。
生来の食いしん坊である美子は、食べることには目がないのだ。
「行く! クレープ食べる!」
すでに目を輝かせてクレープのことしか頭になくなっているかのよう。
このくるくると表情が変わるところも、ネコ科ぽくて愛華は好きだった。
「行きましょ。それと日曜日は空いてる?」
カバンを持ち歩き出す二人。
「日曜? 空いてると思うよ」
「じゃあ、うちに来ない? 一緒に勉強しましょ」
「ホント? やったぁ!」
思わずガッツポーズを作る美子。
彼女と違って愛華はどちらかというと勉強を得意としている。
メガネをかけ、キリッとした表情の中にも人懐こさを見せる愛華は、美子にとっては大事な大事な親友だ。
もちろんガイア・フォースのほかの二人は別格だが、城北アカデミーに転校してきて右も左もわからなかった美子に、いろいろと声をかけてくれたのが愛華だった。
それ以来二人はとても仲の良い友人として付き合ってきたのだった。
「うちのママもきっと喜ぶよ。最近美子ちゃん来ないけどどうしたのって言ってたから」
「ホント? あんまり押しかけたりしたら悪いと思っていたから・・・」
「そんなことないよ。うちはいつでも大歓迎」
愛華が眼鏡の奥の人懐こい目で美子を見る。
そのきれいな目が美子は大好きだった。
******
闇・・・
深い闇・・・
いずこともしれぬ闇の中、一人の女性がいた。
黒を基調とした躰にぴったりとした衣装を着た彼女は、まさに妖艶という言葉がふさわしいような美しさを持っていたが、今はその顔に苦虫をかみしめたようなきつい表情が浮かんでいた。
その目には怒りが満ち、先端にヘビをかたどった杖を握る手も硬く握りしめられている。
彼女こそ、ヤーバン一族の事実上のトップともいうべき存在。
大魔女・ソヤと呼ばれる存在だった。
敗北。
この二文字が彼女に怒りをもたらしている。
偉大なる魔人ジャーラー。
彼を復活させ、ヤーバン一族の再びの繁栄をもたらすこと。
これこそが大魔女・ソヤの願いである。
そのためには希望の鍵と呼ばれるものを手に入れなくてはならない。
ヤーバン一族の力をもってすれば、容易いことと思われたが、事態はそう簡単にはいかなかった。
かつて魔人ジャーラーを封じ込めた忌々しい存在、ガイア・フォースが再び立ちはだかってきたのだ。
地球の力を借りて戦う三人の人間たち。
その容姿からおそらくは少女と思われるその三人、ガイア・イーグル、ガイア・オルカ、ガイア・タイガーによって、ヤーバン一族の行動はことごとく阻止されてしまっていたのだ。
人間など簡単に蹴散らしてしまうジャラジャラ兵や、さらにその上の力を持つ蛮獣人という戦力を繰り出しても、ガイア・フォースによって倒されてしまう。
何とか彼女たちを倒さなくてはならない。
ソヤはそのことに怒っていたのだった。
だが、そのためには戦力がいる。
失われてしまった戦力の立て直しが必要なのだ。
特に先日の戦いで失われた女ジャラジャラ兵の損失は痛かった。
なんとしても最優先で補充を行う必要があるだろう。
ジャラジャラ兵とは、ヤーバン一族の戦闘ユニットである。
黒い全身タイツのようなジャラジャラスーツに身を包み、ヘビが牙をむきだした顔を模したような模様の付いたマスクで頭部を覆っている。
手足はブーツと手袋で覆い、腰には紋章入りのバックルの付いたベルトを締めている。
胸の部分はグレーのプロテクターで覆われており、少々のダメージなど意にも介さない。
まさに理想の兵士とも言うべき存在であり、複数で連携の取れた行動をとるのが特徴だった。
一方女性型のジャラジャラ兵は、姿こそ男性型ジャラジャラ兵とほぼ同じものの、躰のラインは女性のようにしなやかで美しく、また全身を覆うジャラジャラスーツの色も小豆色をしている。
力は男性型に劣るものの、その主目的は隠密行動や諜報活動、大魔女・ソヤの行う儀式の補佐などであり、直接戦闘をするものではない。
プロテクターの肩ベルトの部分も男性型が右肩にかかっているのに対し、左肩と逆になっていた。
ジャラジャラ兵は主に古代人の亡骸を大魔女・ソヤが魔人ジャーラーの力を借りてよみがえらせたものである。
しかし、人間を素材に作ることもできないわけではなく、その場合は若干の個性を持たせることも可能だった。
特に隠密や諜報活動を行う女ジャラジャラ兵は、個々の判断力が必要な局面が多く、むしろ人間を素材として作った方が都合がいい。
事実、今大魔女・ソヤが重宝している女ジャラジャラ兵は、かつてはカイシャというものに属するOLと呼ばれる平凡な人間の女性だったのだ。
だが、適性をソヤによって見いだされた彼女は、女ジャラジャラ兵に作り変えられ、ソヤにとって非常に使い勝手のいい女ジャラジャラ兵へと生まれ変わっていた。
彼女のような女ジャラジャラ兵があと数体は欲しい。
ソヤはまずそこから手を付けることにした。
手にした杖に魔力を込めるソヤ。
杖の先端のヘビの頭部の目が光り、周囲に淡い光を放ち始める。
その光に向かって何やら呪文を唱えるソヤ。
すると、その光の中に町の光景が浮かび上がる。
町の光景はしばらくあちらこちらへと視点が切り替わっていったが、やがて道行く一人の女性がアップになる。
成熟した大人の女性で、落ち着いた雰囲気を持っている。
住宅街を歩いているところを見ると、どこかで用でも済ませてきたのかもしれない。
やさしそうな顔立ちではあるものの、どこか芯の強さのようなものも感じられる。
なるほど。
この女なら素質がありそうだ。
まずはこの女を女ジャラジャラ兵に作り変えてやろう。
ソヤの口元に笑みが浮かぶ。
その女は一軒の家にたどり着くと、玄関を開けて中に入っていく。
表札には、蓮生と表示されていた。
「エリナ」
「ヤー!」
大魔女・ソヤの呼びかけに即座に返事が返ってくる。
ソヤが振り向くと、小豆色のジャラジャラスーツに身を包んだ女ジャラジャラ兵がかしこまってひざまずいていた。
「出かけるわ。ヤーバンエキスを用意しなさい」
「ヤー!」
一礼してすぐに闇の中に姿を消す女ジャラジャラ兵。
すぐに再び現れると、その手には小瓶が握られていた。
「ふふふ・・・お前の仲間を作ってあげる。楽しみにしてなさい」
「ヤー!」
ソヤはその小瓶を受け取ると、笑みを浮かべてそう口にする。
お前のように使い勝手のいい女ジャラジャラ兵ができるといいわね・・・
「ふふ・・・うふふ・・・おほほほほほ・・・」
手の甲を口元にあてながら高笑いをするソヤ。
カツコツとヒールの音を響かせながら、やがてその姿は闇の中へと消えていった。
******
「ふう・・・」
用事を終えて家に帰ってきた蓮生美乃里(はすお みのり)は、上着を脱ぐとエプロンを身に着ける。
早ければもうすぐ娘の愛華が学校から帰ってくるはず。
夕食の仕込み等してしまわなくてはいけないだろう。
そう考え、室内着に着替えるよりもエプロンで仕込みまではやってしまおうと考えたのだ。
キッチンに戻る途中、リビングの棚に立てかけてある家族写真が目に入る。
昨年、愛華が城北アカデミーに入学した記念に家族で写したものだ。
真新しいアカデミーの制服を身に着けて誇らしげにしている愛華の表情が明るい。
思えばあの子ももう高校生。
早いものだわと美乃里は思う。
若くして愛華を産んだために夫ともども苦労もしたが、おかげでこうして並んで写真を撮っても、まるで姉妹かのようにも見えるほどに美乃里の姿は若々しい。
夫に似たのであろう物静かなところのある愛華は、本が大好きで、ともすれば本を友達としてしまうようなところがある。
そのため学校では友人ができないのではないかと心配したものの、幸い転校してきた子とすごく仲良くなったらしい。
家でも、先日美子がとか、今日の美子はなどとその子のことをしょっちゅう話題に上らせる。
家に連れてきたときもとても楽しそうにしていたものだった。
その子、虎島美子という名の子だったが、愛華とはまるで正反対と言っていい娘で、愛華の静に対して美子の動、知に対して勇といった感じだったものの、それがかえっていい方向に作用して馬が合っているようで、美乃里もいい友人ができたものとうれしく思っていた。
もしかしたら今日は二人でどこかに寄ってくるかもしれないか・・・
そう美乃里は思う。
もちろん仲のいい二人がどこかに寄って楽しんでくるのは大賛成だし、それならそれでいい。
どっちにしても下ごしらえだけしておけば、あとはどうとでもなるだろう。
美乃里はそう思い、キッチンに入った。
「ヒッ!」
思わず息をのむ美乃里。
誰もいないはずのキッチンに、一人の女性が立っていたのだ。
灰色の長い髪を背中に垂らし、頭の両側からは角が生えている。
額にはまるで目のような赤く輝く石の付いたサークレットを嵌め、負けず劣らず赤い目が美乃里を見つめている。
口元にはやや冷たい笑みが浮かび、先の尖った耳にはイヤリングが揺れていた。
黒を基調にした水着のような衣装には、まるであばら骨のようなものが左右の腰のあたりを飾っており、お腹のあたりには蛇腹のような部分が付いている。
すらりと伸びた脚は目の細かいメッシュのようなタイツに覆われ、ヒールの高いブーツがふくらはぎのあたりから下を包んでいた。
両腕は二の腕まで衣装と同じ黒い長手袋が嵌められ、右手には女性の身長よりもやや短い長さの杖が握られている。
まさに妖艶という言葉を絵にしたような妖しい女性がそこにいたのだった。
「あ、あなたはいったい・・・?」
動物的な本能ともいうべきものが美乃里に危険を知らせてくる。
一刻も早く逃げ出さなくてはならないはずなのだが、美乃里の躰は動けなかった。
女性のあの赤い目を見た瞬間、美乃里はまるでヘビに睨まれたカエルのように動けなくなってしまっていたのだ。
「うふふふふ・・・我が名はソヤ。ヤーバン一族の長である魔人ジャーラー様にお仕えする大魔女・ソヤ」
にっこりと微笑むソヤ。
その笑みがさらに美乃里の背筋を凍らせる。
「大魔女・・・ソヤ・・・」
ガクガクと震えるひざ。
かろうじて絞り出す言葉。
逃げなくては・・・
悲鳴を上げて助けを求めねば・・・
そう思うものの、躰は全くいうことを聞こうとしない。
たすけ・・・て・・・あなた・・・雄介(ゆうすけ)・・・さん・・・
心の中で夫の名を呼ぶ美乃里。
いつだって彼は駆けつけてくれた。
美乃里や愛華が困っているときにはいつも助けてくれた。
心から愛する夫、雄介。
お願い・・・
助けて・・・
「うふふふふ・・・そう怖がることはないわ。お前は脱皮するのだ。我が忠実なるしもべとして」
ずいと美乃里のそばに近寄るソヤ。
「脱・・・皮?」
「そう。その人間とやらの皮を脱ぎ捨て、ヤーバン一族のジャラジャラ兵としての皮を着る」
ぺろりと舌なめずりをするソヤ。
その舌がまるでヘビのように先が二つに割れていることに美乃里はさらなる恐怖を受ける。
「うふふふ・・・さあ、このヤーバンエキスをお飲み」
右手の杖を離し、手の中に小瓶を生じさせるソヤ。
驚いたことに手から離された杖はそのまま宙に浮いていた。
「くっ」
小瓶の中身が何であるかはわからないものの、とにかく何かを飲まされまいと固く口を閉じる美乃里。
だが、予想に反してソヤはその小瓶の中身を自らの口に含んでしまう。
そして、動けずにいる美乃里の顎を持ちあげると、その口を美乃里の唇と重ね合わせた。
「ん・・・んんん・・・」
必死に抵抗する美乃里。
しかし、ソヤの舌が強引に美乃里の唇を割り開き、中の液体を流し込んでくる。
あ・・・
甘い・・・
美乃里がその液体の味を感じたとき、彼女の意に反して、液体は喉の奥へと滑り落ちていくのだった。
躰がカアッと熱くなる。
胸が苦しくて息ができない。
目の前が赤くなり、まるで焼けた鉄を喉から流し込まれでもしたかのようだ。
全身が熱を持ち、躰をめぐる液体が細胞の一つ一つを何か別のモノに変えていく。
「あ・・・ぐ・・・」
唇を離された美乃里がかすかにうめき声を上げた。
心が冷えていく。
熱を持つ躰とは裏腹に、心はどんどん冷えていく。
冷たく、暗く、闇の中へと沈んでいく。
愛、優しさ、母性、慈しみ、希望、そういったものがすべて闇に塗りつぶされ、代わりに忠誠、服従、冷酷、嗜虐、そういったものが美乃里の中に作られていく。
人間であったことは過去のこととして追いやられ、代わりにヤーバン一族となったことの喜び、誇り、そして優越感が満ちてくる。
「ああ・・・あ・・・」
自分が違うものへと変わっていく恐怖。
だが、それも徐々に消えていく。
むしろ変わることの喜びがだんだんと増してくる。
その美乃里の目にも喜びが浮かび、瞳には小さい緑色の点が浮かび上がっていた。
「服を脱ぎなさい」
ヤーバンエキスが浸透してきたことを見て取ったソヤが、そう命令する。
「・・・・・・ヤー・・・」
美乃里は小さくそう答えると、着ているものを脱いでいく。
エプロン、ブラウス、スカート、ストッキング・・・
ショーツに手をかけたとき、一瞬ためらいを見せた美乃里だったが、やがてそのままショーツを下ろしていく。
最後にブラジャーを外し、美乃里はまっさらな姿でソヤの前に立つのだった。
「これを着るのよ」
ソヤが手をかざすと、小豆色の折りたたまれた布のようなものが現れる。
美乃里はそれを無言で受け取り、広げていく。
それは首から下をすっぽりと覆う小豆色の全身タイツ。
ジャラジャラ兵のジャラジャラスーツだった。
背中側に切れ込みがあるその全身タイツに、美乃里は無言で脚を差し入れる。
「あ・・・」
かすかに漏れる小さな声。
つま先が滑り込んだだけで、美乃里の躰にはまるで電気が走るように快感が走ったのだ。
なんてすべすべで気持ちいいの・・・
美乃里の心臓がどきどきする。
こんな素敵なものに包まれるなんて・・・
こんな素敵なものが私を包んでくれるなんて・・・
何かに憑かれたようにタイツをたくし上げていく美乃里。
それにつれて小豆色のタイツが美乃里の脚を染めていく。
まるで吸い付くかのようにフィットするタイツ。
その気持ちよさに美乃里の息は荒くなる。
ハア・・・ハア・・・ハア・・・
包まれれば包まれるほど気持ちよくなっていく。
太ももあたりまでたくし上げた後で、今度はもう片方の足を差し入れる。
ハア・・・ハア・・・ハア・・・
なんて気持ちよさ。
なんて快感。
そう・・・
これは快感。
これは快楽。
今まで味わったことのない強烈な快楽だ。
小豆色に包まれた自分の脚。
つま先は一つになり、足の指など消え去ってしまったかのよう。
美乃里はさらにタイツをたくし上げていく。
太ももから腰へ。
腰からお腹へ。
お腹から胸へと上げていく。
タイツが胸まで来たら、今度は袖に手を通す。
右腕を入れ、袖を手繰って指先まで通していく。
つま先と違ってこちらは手袋状になっており、五本の指がそれぞれ包まれるようになっている。
すぐに指の一本一本がタイツと密着し、貼り付いたように一体となる。
左腕も同様にタイツが覆い、小豆色へと染まっていく。
両腕が肩まで覆われ、胸元の部分を引き上げると、美乃里の躰は首までぴったりとジャラジャラスーツに覆われた。
「あ・・・」
背中の切れ目が閉じていく。
ファスナーなどがあるわけではない。
何もしないのに、ただ閉じるのだ。
閉じた後には何も残らず、切れ目があったことすらわからない。
それを美乃里は背中で感じ取っていた。
いや、全身がそれこそこのジャラジャラスーツに包まれたことで、むしろ鋭敏な感覚となっていたのだ。
美乃里は理解する。
これは脱皮なのだ。
確かに動作的には着込んだように見える。
だが、これはヒトという皮を捨て、ヤーバン一族のジャラジャラ兵という新たな皮に脱ぎ変わったのだということを。
もうこのジャラジャラスーツが脱げることはない。
それはそうだろう。
自分の皮膚を脱いだりする者はいない。
これは新たな自分の皮膚なのだ。
その証拠に、乳首はピンと浮き出ており、おへそのくぼみもはっきりとわかる。
股間の性器すら、うっすらと浮き出ているようではないか。
だが、ヘビが硬いうろこに躰が守られているように、彼女もこのジャラジャラスーツに守られる。
熱にも冷気にも耐えるし、衝撃にも強いだろう。
まさに強靭な皮が守ってくれるのだ。
「はあ・・・」
美乃里は悩まし気に熱い吐息を吐く。
気持ちよくてたまらない。
ヒトであることなど、もはやどうでもいい。
このジャラジャラスーツに包まれた自分はもうヒトなどではないのだ。
それがたまらなく気持ちいい。
美乃里の指はジャラジャラスーツに包まれた躰を愛しげになぞっていた。
ひとしきり自分の躰を愛撫した後、美乃里の手は置かれていたブーツに伸びる。
さらに自分の躰を強化するのだ。
ジャラジャラ兵としてヤーバン一族のために働くのだ。
そのために・・・
美乃里はブーツに足を入れる。
黒革でできたようなハイヒールのブーツは美乃里の足をすっぽりと覆い、内側に開いた切れ目が閉じていく。
このブーツはジャラジャラ兵の足をさらに保護し強化するもの。
彼女の蹴りを格段に強くし、ジャンプ力などもアップする。
美乃里はもう片方の足にもブーツを履く。
スーツとブーツが密着し、美乃里の脚はすねから下がブーツの黒に覆われる。
次は手袋。
こちらもブーツと同じで彼女の手を保護し強化するもの。
ひじまでの長さの長手袋になっており、美乃里はそれらを嵌めていく。
指先まで通して手になじませると、手袋はすぐにスーツと一体化して、美乃里の手そのものとなる。
両手が黒く染まったのを見て、美乃里は口元に笑みを浮かべた。
そしてプロテクター。
胸はやはりジャラジャラ兵としてもカバーすべきところなのだ。
そのため、男女ともにジャラジャラ兵は胸の部分をプロテクターで覆っている。
肩ベルトの位置が左右で違う以外は同じと言っていい。
美乃里はそのプロテクターを胸に当てて止める。
すぐにプロテクター自体が美乃里の躰に順応し、引き締めるように一体化することで彼女の豊かな胸を覆っていった。
美乃里が最後に手にしたのはマスク。
頭部をすっぽりと覆うフルマスクであり、顔の部分にはヘビが牙をむきだしたような顔を模した模様が浮かんでいる。
ヒトが見れば異形で恐怖を覚えるようなその模様も、今の美乃里にとっては素敵で誇らしく、かぶりたくなる模様だ。
これをかぶれば・・・
美乃里はドキドキする。
すでに恐怖などはどこにもない。
新たな生が始まるのだ。
自分は生まれ変わりジャラジャラ兵となるのだ。
それは素晴らしいことだった。
マスクを持つ美乃里。
その様子を大魔女・ソヤが見つめている。
美乃里の動きが止まっているのは、うまくいっていないからでもためらっているからでもない。
楽しんでいるのだ。
美乃里はジャラジャラ兵に生まれ変わるのを楽しんでいる。
なぜなら、美乃里の瞳はすでに焦げ茶色ではなく深い緑色へと染まっており、ジャラジャラ兵と同じになっていたし、その唇を舐める舌も、かすかに先が二つに割れ、ヤーバン一族と同じになっていたからだ。
あとは・・・
ふふっと小さくソヤは笑った。
やがて美乃里の手がマスクを頭にかぶせていく。
「はあああ・・・」
大きく声を出す美乃里。
マスクに包まれる快楽に酔いしれているのだ。
髪の毛を中に閉じ込むようにしてすっぽりとかぶっていく。
美乃里の頭が小豆色に覆われていく。
首元までマスクをかぶり、目の位置を合わせていく。
ジャラジャラ兵のマスクは、そのヘビの顔をした模様の目の位置が、ちょうど合わさるようになっているのだ。
マスクの目の奥に、美乃里の目が現れる。
深い緑色に染まった瞳。
それがまるでマスクのヘビの目となったかのように、目全体が緑色へと広がった。
それと同時に襟元に広がったマスクの首元が、喉に貼り付くように密着し全身タイツと一つになる。
すべての露出部分がなくなり、美乃里の躰は完全にジャラジャラスーツに覆われた。
全身を小豆色のスーツに包んだ美乃里のところに近づくソヤ。
彼女はそっと美乃里の背後に回り込む。
そしてその手にベルトを作り出すと、それを美乃里の腰へと回しながら、彼女の耳元でささやいた。
「これでお前は、完全なジャラジャラ兵となるのだ」
その言葉にゾクゾクするほどの感激を覚える美乃里。
完全なジャラジャラ兵。
そう・・・
私はジャラジャラ兵になるのよ。
腰にベルトが嵌められる。
無地だったバックルにヤーバン一族の紋章がすうっと浮かび上がってくる。
美乃里は下腹部にズシッとした重さを感じ、同時に強烈な力強さが湧いてくる。
ヤーバン一族の力。
魔人ジャーラー様によってもたらさせる大いなる力。
ジャラジャラ兵としての力だった。
「ジャ・・・ジャラッ・・・」
マスクの口元から小さく声がする。
マスクをかぶった後、ずっと両手で愛撫するように頬を撫でていた美乃里。
その口から声が漏れるのだ。
「ジャラ・・・ジャラ・・・ジャラジャラッ! ジャラジャラッ!」
だんだんと力強く繰り返されていく。
それはジャラジャラ兵の鳴き声。
まるでガラガラヘビが尻尾を鳴らして威嚇するような声。
新たなジャラジャラ兵の誕生の産声だった。
「ジャラジャラッ! ジャラジャラッ!」
ジャラジャラと声を上げながらソヤに振り向くジャラジャラ兵。
「うふふふ・・・さあ、お前が何者か言ってごらん」
「ヤーッ! 私はヤーバン一族の一員、ジャラジャラ兵ミノリ! 魔人ジャーラー様と大魔女・ソヤ様の忠実なしもべです。ジャラジャラッ!」
右手を上げて忠誠を誓うジャラジャラ兵ミノリ。
もはや彼女は人間ではない。
ヤーバン一族の新たなジャラジャラ兵へと生まれ変わったのだった。
「オホホホホ! それでいいのよ。これからは我のために働きなさい。いいわね」
「ヤーッ! 私はジャラジャラ兵ミノリ。ソヤ様のためなら何でもします。何なりとご命令を。ジャラジャラッ!」
高笑いしつつ、その返事に満足するソヤ。
新たな使い勝手のいい駒を手に入れたことに喜びを覚える。
ほかにももう一二体ほど手に入れたいところだ。
「まあ、それは次にでも・・・」
そう思って、ミノリを連れて立ち去ろうと思ったソヤは、ふと立てかけてある家族写真に気が付いた。
あれは・・・
このジャラジャラ兵の娘か?
なるほど・・・
うふふふふ・・・
写真に写る愛華の姿に、ソヤはミノリと同じものを感じ取る。
「ミノリ」
「ヤーッ!」
名を呼ばれ、すぐにソヤのそばに行くジャラジャラ兵ミノリ。
ジャラジャラスーツが見事なまでに彼女の美しいボディラインを描き出す。
「この娘はお前の娘かい?」
「ヤーッ! ソヤ様、その娘は私が以前ヒトだった時には確かにその通りですが、今の私はジャラジャラ兵です。その娘とは何の関係もありません」
まったくためらいもなく答えるミノリ。
彼女にとっては写真に写っている夫も娘もただの関係ないヒトなのだ。
「ふふ・・・ミノリ、以前のヒトの姿に擬態しなさい。この娘もジャラジャラ兵にするわ。手伝いなさい」
「ヤーッ! かしこまりました、ソヤ様」
ミノリはソヤに手を上げて敬礼すると、両手を顔の前でクロスする。
次の瞬間、ミノリの姿は以前の蓮生美乃里の姿へと変化した。
ジャラジャラスーツが外見を擬態したのである。
ただ、その瞳は以前の茶色ではなく深い緑色をしており、唇もピンク色ではなく小豆色だ。
そこからちらりと覗く舌も、先がかすかに割れている。
ジャラジャラ兵として人間に擬態するにも限界があるのだった。
ほぼ以前の清楚な人妻の姿に擬態したジャラジャラ兵ミノリに、以前と同じようにふるまうよう命じるソヤ。
これでいい。
あとはこの写真の娘が帰ってくるのを待つだけ。
これで使い勝手のいい女ジャラジャラ兵が二人手に入るというものだ。
「オホホホホホ・・・」
ソヤは嬉しそうに笑っていた。
******
今日もまた楽しい時間だった。
美味しいクレープに楽しいおしゃべり。
愛華自身はあまりしゃべる方ではないものの、美子がいろいろと面白い話題には事欠かない。
今日も美子が8、愛華が2くらいの割合でしゃべっていただろうか。
だからと言ってお互いに不満なわけではない。
美子は思い切りしゃべることができるし、愛華はそれを楽しく聞いていられる。
それでいて、時々愛華が意見を付け加えたりすると、美子は感心したようにそうだねぇ、ホントだねぇとうなずいてくれるのだ。
考古学研究会にも鯱原南美(しゃちはら なみ)という天才少女がいるという話なのだが、どうも彼女のいうことは美子にとっては難しく感じるらしく、愛華に聞いた方がよくわかるらしい。
きっとひいき目もあるのだろうけど、愛華はそう言ってもらえてうれしかった。
日曜日に美子を呼んだことをママにも言わなくちゃ。
きっと喜んでくれるはず。
ママも美子のことを好いていてくれているみたいだから。
日曜日が楽しみ。
学校でほぼ毎日会っているというのに、休日にも会うというのは何か特別なようにも感じる。
勉強もしなくてはならないだろうけど、多分ほとんどの時間は他愛もないおしゃべりになるだろう。
それがまた楽しいのだ。
「ただいまぁ」
玄関を開けて家に入る愛華。
日が長くなってきたとはいえ、そろそろ家の中はかなり暗い。
「あれ?」
いつもならリビングの光が廊下に漏れてきているものなのだが、今日はリビングも暗いようだ。
ママ、出かけているのかな?
愛華はそう思いながら靴を脱ぎ、カバンを手にリビングまで進んでドアを開ける。
「えっ?」
一瞬愛華はギョッとする。
リビングのテーブルのところに誰かが座っていたのだ。
慌ててドアの横の照明のスイッチを入れる。
「ママ・・・」
ホッとする愛華。
部屋が明るくなると、テーブルに着いていたのは母親だったことがわかったのだ。
「お帰りなさい・・・ジャラ・・・」
無表情で愛華に言葉をかけたミノリが、急に口をつぐむ。
「もう、ママったらびっくりさせないでよ。誰かと思ったじゃない」
愛華は安堵すると同時に、驚かされたことにちょっとだけ文句を言う。
「あら、どうして?」
席を立つミノリ。
「だって暗い中に座っているんだもの。どうして明かりを点けなかったの?」
「えっ? そうね・・・暗かったの気が付かなかったわ」
ジャラジャラ兵は暗闇でも目が見える。
そのためミノリには暗かったという意識がなかったのだ。
「えっ?」
母の言葉に愛華は驚く。
あんなに暗かったのに気が付かなかったというの?
それに・・・何かいつものママと雰囲気が違うような・・・
「それよりも、先ほどからソヤ様がお待ちかねよ」
スッと愛華の背後に回り、その肩に手を置くミノリ。
「えっ? 誰?」
愛華は母の方を振り返って聞き返す。
ソヤなんて名は聞いたこともない。
「大魔女・ソヤ様。今日からお前の支配者となられるお方よ」
グッと肩をつかまれ、押し出されるように歩かされる愛華。
「痛っ・・・マ、ママ? なに?」
訳も分からず無理やりリビングの中央に押し出される愛華。
いったい何がどうなっているの?
「オホホホホ・・・娘が来たようね」
キッチンから姿を現す一人の女性。
それはまさに妖艶な美女と言ってよい姿だったが、躰のラインを強調するかのような黒を基調とした衣装を身につけ、頭部の両側には角のようなものが伸びており、手にした杖も先端がヘビのような形をしたまがまがしいものだ。
「あ、あなたは?」
愛華は驚く。
どうしてこんな人が家にいるの?
どうしてママはこんな人を家に入れたの?
「オホホホホ・・・我はソヤ。魔人ジャーラー様にお仕えするヤーバン一族の大魔女」
「ヤーバン・・・一族?」
その一族のことを耳にしたことはあった。
美子がふとした時に言っていたような記憶がある。
考古学研究会に関する事柄だと思い、気にも留めはしなかったのだが。
「そう。お前も今日からヤーバン一族のジャラジャラ兵になるのよ。ジャラジャラッ!」
耳元で声がする。
「えっ?」
振り向く愛華の目に、ヘビが牙を突き立てるような模様の付いた小豆色のマスクに緑色の目がらんらんと輝いている顔が映る。
「ヒッ!」
息をのむ愛華。
肩をつかんでいたのは母親だと思っていたのに、いつの間にか小豆色の躰にぴったりしたスーツを着た女性に変化していたのだ。
「オホホホホ・・・ご覧、お前の母親はもうすでに立派なジャラジャラ兵へと生まれ変わったわ」
口元に手を当てて高笑いをするソヤ。
「嘘・・・ママ・・・なの?」
この小豆色のスーツを着ているのがママだっていうの?
愛華は愕然とする。
「ジャラジャラッ! 違うわ。私はもうお前の母親などではないの。私はヤーバン一族のジャラジャラ兵ミノリ。さあ、お前もジャラジャラ兵におなりっ!」
肩を押さえていた手を、素早く愛華の胴と首に回すジャラジャラ兵ミノリ。
「あうっ」
その力はものすごく強く、愛華は身動きができなくなってしまう。
「オホホホホ・・・無駄よ。ジャラジャラ兵の力は人間などとは比べ物にならないわ。抜け出せはしない」
ソヤの言うとおりだ。
愛華の力ではとても抜け出すことなどできないだろう。
「ママ、やめてぇ! 放してぇ!」
必死に逃れようともがく愛華。
だが、ジャラジャラ兵ミノリの拘束はびくともしない。
「おだまり! お前はジャラジャラ兵に選ばれたのよ。光栄に思いなさい。ジャラジャラッ!」
まるでガラガラヘビの威嚇音のようにジャラジャラと鳴くジャラジャラ兵ミノリ。
「いやぁっ! そんなのはいやぁっ! 助けて! 助けてぇ! ママァ! パパァ! 美子ぉぉぉぉぉぉぉぉ!」
かすかな望みを託して親友の名を叫ぶ愛華。
だが、応えるものはいなかった。
「うぶっ!」
羽交い絞めにされた愛華の口をソヤの口が覆う。
その口が無理やりこじ開けられ、甘い液体が流れ込む。
ああ・・・
いやぁ・・・
喉の奥を滑り落ちていく液体。
その甘さが愛華を変えていく。
自分が何か別のモノへと変わっていく感覚。
ごめんね・・・美子・・・
私・・・もう・・・
あな・・・た・・・と・・・
愛華の目から涙が一筋流れ落ちた。
******
手の中にあるのは小豆色のマスク。
その表面には、ヘビの顔を模したような模様が浮かんでいる。
ああ・・・
なんて素敵なのだろう。
ヘビはヤーバン一族の象徴。
素晴らしい生き物。
今、愛華はそのヘビの一族の一員となる。
こんなうれしいことはない。
全身を包む小豆色のジャラジャラスーツはもう愛華の皮膚。
気持ちよくてたまらない。
こんなにジャラジャラ兵になることが素晴らしいことだなんて思わなかった。
どうしてさっきまであんなに嫌がっていたのかわからない。
最高の気分だわ。
愛華の目はもう深い緑色に染まっている。
もうメガネになど頼る必要はない。
すべてのものがはっきりと見える。
舌の先もかすかに二つに割れている。
その舌でぺろりと唇を舐める愛華。
その頬がほんのりと赤く染まり、息がやや荒くなっている。
ドキドキが止まらない。
このマスクをかぶれば私はジャラジャラ兵になる。
偉大なるヤーバン一族の一員になれる。
魔人ジャーラー様や大魔女ソヤ様のお役に立てるようになる。
ああ・・・
私は今、ジャラジャラ兵になるんだわ。
マスクをかぶる愛華。
そのヘビの目と愛華の目が重なり合う。
「あああああ」
思わず歓喜の声が出る。
全身を貫く電流のような快感。
ヒトであることを捨て去る喜び。
まさに脱皮。
愛華は生まれ変わるのだ。
「ジャラ・・・」
両手でマスクに包まれた顔を撫でまわす愛華の口から声が漏れる。
「ジャラ・・・ジャラジャラ・・・」
それは産声。
「ジャラジャラッ・・・ジャラジャラッ・・・」
新たな生を受けた喜びの声。
「ジャラジャラッ! ジャラジャラッ!」
力強く繰り返され、声を発するのが当たり前になっていく。
「ジャラジャラッ! ジャラジャラッ! あああ・・・気持ちいいぃぃぃぃぃ!」
全身で官能の快楽を味わう愛華。
その様子にソヤは笑みを浮かべていた。
「オホホホホ・・・どうやら終わったようね。さあ、お前が何者か言ってごらん?」
「ヤーッ! 私はヤーバン一族のジャラジャラ兵アイカ。魔人ジャーラー様と大魔女・ソヤ様の忠実なるしもべです。ジャラジャラッ!」
スッと右手を上げてソヤに敬礼するアイカ。
もはや彼女はヒトではない。
ヤーバン一族のジャラジャラ兵に生まれ変わったのだ。
「それでいいわ。今日からお前もミノリとともに我のために働きなさい」
手を伸ばしてそっとアイカの頬を撫でるソヤ。
「ジャジャァァァァァァ・・・」
それだけでアイカは奇妙な声を上げてしまい、へなへなと腰が抜けてしまうほどの気持ちよさを感じてしまう。
「あらあら・・・ジャラジャラスーツが気持ちよすぎちゃったかしら」
「ヤ・・・ヤー、気持ちいいですぅ・・・」
躰をかき抱くようにして両手で全身を愛撫するアイカ。
床にぺたんと座ってうっとりとしている。
「ジャラジャラッ! おめでとうジャラジャラ兵アイカ。これであなたも私の仲間ね」
床にしゃがみ込み、アイカの頬を撫でるジャラジャラ兵ミノリ。
その手にアイカのジャラジャラスーツの感触が伝わってきて気持ちがいい。
「ありがとう、ジャラジャラ兵ミノリ。私たちはジャラジャラ兵の仲間同士。仲良くしましょうね」
頬を撫でるミノリの手に自分の手を重ねるアイカ。
アイカもミノリのジャラジャラスーツの気持ちよさが伝わってくる。
触れあっただけでこれほど気持ちがいいのであれば、抱き合ったりしたらどうなるのだろう。
もっともっと仲間同士で触れ合いたいと二人は思う。
彼女たちはもう母と娘ではなく、ジャラジャラ兵という同じ仲間同士だった。
「お前たち、じゃれあうのは戻ってからにしなさい」
「ヤ、ヤーッ!」
「ヤーッ!」
ソヤの言葉に立ち上がる二人のジャラジャラ兵。
元は母と娘なだけに、ミノリの方が背が高いものの、それ以外はほとんど同じと言っていい。
ともにヘビが牙をむきだしたような顔の模様のマスクから緑色の目を光らせ、すらりとしたしなやかで美しいラインを惜しげもなくさらしている。
素質から見て充分使い物になるだろう新たなジャラジャラ兵が二体も手に入ったことに、ソヤも満足感を感じていた。
「オホホホホ・・・これでここにもう用はないわ。引き上げるわよ」
「ジャーッ! お待ちください、ソヤ様」
新たなジャラジャラ兵二人を従えて引き上げようとするソヤを、ジャラジャラ兵アイカが引き留める。
「何か?」
気分良く引き上げようとしたところを引き留められ、やや気分を害するソヤ。
その口元の笑みが消える。
「ジャーッ! 申し訳ありません。一つ提案がございます」
片膝をついて頭を下げるジャラジャラ兵アイカ。
「提案? 面白い。言ってみよ」
ソヤの不機嫌がいっぺんに吹き飛んでいく。
これなのだ。
ただ作っただけのジャラジャラ兵は提案などしない。
この二体はヒトというものを器として作ったもの。
だから思考というものを持っている。
ヒトを器にジャラジャラ兵を作るのは、こういうことを求めているからなのだ。
「ヤーッ! ジャラジャラ兵となった今、ヒトのいう友情などと言うものは全く感じておりませんが、私がヒトだった時に友人という存在だった女がいます」
許可を得て話し始めるアイカ。
もちろん友人というのは美子のことだ。
「名前は虎島美子。彼女は拳法の使い手であり、物事の観察力が豊かで隠密行動にはふさわしいと思います。彼女をジャラジャラ兵に脱皮させれば、ソヤ様のご期待に沿える働きをするかと」
アイカは何のためらいもなく美子をソヤに差し出す。
美子であればソヤ様の役に立つだろう。
そのことだけがアイカにとっては重要なのだ。
「ソヤ様、その少女なら私からも推薦いたします。彼女であれば有能なジャラジャラ兵になるかと」
ジャラジャラ兵ミノリも口添えをする。
数度遊びに来ている少女のことは彼女も気に入っていたし、彼女であれば仲間にしても問題ないと思うのだ。
「ほう・・・そのような女が・・・」
ソヤは杖の先をジャラジャラ兵アイカに向ける。
アイカから美子の記憶を読み取るのだ。
もちろんすべてを読み取れるわけではないが、ジャラジャラ兵にふさわしい素体かどうかぐらいのデータは読み取れる。
「フフフ・・・面白い。この女ならジャラジャラ兵にふさわしかろう。すぐに呼び出すがいい」
ソヤの口元にまた笑みが浮かぶ。
今日はなんといい日だろうか。
ジャラジャラ兵にふさわしい器が三つも手に入るとは。
「ヤーッ! ですがお言葉なれど今呼び出すのは得策ではないかと」
「どういうことか?」
ソヤはますますこのジャラジャラ兵を気に入る。
このジャラジャラ兵は状況というものを確実に認識している。
目的を達成するためにどう行動すればいいかを考えている。
そのためにはソヤの命令通りにあえて行動しないということすらできるのだ。
それがソヤのためであるから。
「彼女とは二時間ほど前に別れたばかりです。今呼び出せば、何かあったかと思われ、変な警戒をされてしまうかもしれません」
「ほう・・・」
「彼女とは日曜日にここで会う手はずになっております。その時まで待った方が確実かと思います」
アイカは恐れながらも意見を述べる。
ソヤの忠実なしもべとして、ソヤのためになると思うからこそだ。
「ソヤ様、私もジャラジャラ兵アイカの考えに賛成です。日曜日に来るということであれば、ここで待ち構えるほうがよろしいかと」
すかさずアイカの意見を支持するミノリ。
娘を思う母ではなく、仲間同士のつながりなのだ。
ソヤは考える。
この二人の意見はもっともだし、そうするほうが良いというのは彼女もすぐに理解した。
であれば、いったん二人を連れてここを立ち去るか、それとも二人をここに残すかを決めねばならない。
ソヤはちらっと写真を見る。
ジャラジャラ兵になる前のミノリとアイカ、それに男が一人写っている家族写真だ。
男の方はどうでもいい。
男性型のジャラジャラ兵はそれこそコマ。
命令に従って戦ってくれればそれでいい。
女性型のように様々な自立行動を求められることはない。
だから器にこだわる必要もない。
この男をジャラジャラ兵にするつもりはないのだ。
二人を連れてここを立ち去るのは簡単だ。
だが、そうなるとこの男は二人を探すだろう。
もしかしたら、その美子という娘に二人の行方を尋ねるかもしれない。
それではやはり警戒させてしまうだろう。
かといって二人を擬態させてこの場に残すというのも考え物だ。
もちろん二人にはその能力はあるだろう。
だが、この男はあまりにも近い存在すぎる。
何がきっかけで二人がヒトではなくジャラジャラ兵となったことに気が付かないとも限らない。
やはり危険だ。
ならば・・・
ふふふふ・・・
ソヤは二つに割れた長い舌で唇を舐めた。
******
「ただいまー。ああ・・・疲れた・・・」
日もとっぷりと暮れ、時計が21時を差すころに、この家の主である蓮生雄介(はすお ゆうすけ)が帰宅する。
今のご時世、なかなか定時で帰るというわけにはいかず、だいたいがこのくらいの帰宅時間だ。
とはいえ、家に帰れば妻の手料理が待っているし、お酒も楽しめる。
まあ、そう悪い話でもあるまいと雄介は思う。
「帰ったよ」
今晩の夕食は何かなと思いながらリビングに入る雄介。
だが、いつもなら聞くことができるお帰りなさいの声はなく、テーブルの上もまっさらで何もない。
妻と娘の二人はテーブルに着いて座っているが、無言のままで顔を上げようともしない。
なんだ?
なんだ、いったい?
雄介は不思議に思う。
二人はいったいどうしたというんだ?
「美乃里・・・愛華?」
雄介は二人に声をかける。
「うふふ・・・」
「ふふふ・・・」
その声に反応したかのように二人がスッと立ち上がる。
「うふふふ・・・一応お帰りなさい、かしら」
「ふふふ・・・そうだね」
いつもと様子の違う二人に雄介は戸惑う。
いったいどうしたというのだ、二人とも。
それに、様子だけではなく何かが違う。
「美乃里・・・愛華・・・その目はいったい?」
いつもと違う深い緑色をした目に気が付く雄介。
それに愛華はいつもしているメガネをかけていない。
「あーあ・・・気が付いちゃったのね」
「ちょうどいいよ。私、いつまでもこんなヒトの姿に擬態しているのなんて嫌だもの」
「私もそうだわ。早く本当の姿に戻りたい」
くすくすと笑いながら意味の分からない言葉をつぶやいている妻と娘。
雄介は思わず後ずさる。
「お前たちはいったい・・・」
「ジャーッ!」
「ジャーッ!」
突然、声を上げながら両手を顔の前でクロスする二人。
次の瞬間、二人の姿が変化し、小豆色のジャラジャラスーツに包まれたジャラジャラ兵の姿になる。
「わ、わっ!」
驚く雄介。
いきなり妻と娘が、ヘビが牙をむきだしたような顔の模様の付いたマスクと小豆色の全身タイツで躰を覆ったような姿に変わってしまったのだ。
いったいこれはどういうことなのか?
困惑する雄介の前で、二人は向かい合ってお互いの顔を撫でまわす。
「ジャラジャラッ! ハア・・・やっぱりこの姿がいいわぁ」
「ジャラジャラッ! ええ、これこそ私たちの本当の姿。ミノリの顔、とても気持ちいい」
「アイカの顔もいいわぁ。ずっとこうして撫でまわしたくなっちゃう」
お互いの顔をうっとりと撫でまわす二人。
「二人とも・・・いったい?」
「ジャラジャラッ! うふふふ・・・私たちはヤーバン一族のジャラジャラ兵」
「私たちは脱皮して生まれ変わったの。私はジャラジャラ兵アイカ」
「私はジャラジャラ兵ミノリよ。ジャラジャラッ!」
唖然とする雄介に二人は自分たちが何者かを名乗っていく。
それは二人にとってとても誇らしいことだった。
「グハッ!」
突然床にたたきつけられる雄介。
いきなり躰が宙に舞ったかと思うと、床にしたたかに叩きつけられたのだ。
あまりの衝撃に息も一瞬止まるほど。
「グ・・・グウ・・・」
あおむけに横たわる彼を、二人のジャラジャラ兵と、彼を背後から投げ飛ばしたと思われる異形の存在が見下ろしている。
頭の両側にギョロッとした大きな丸い目を回転させ、肩には大きなとげが突き出ている。
がっしりとした躰は緑色や赤い色が覆っており、がっしりとした足には黒いブーツが履かれていた。
「ば・・・ばけも・・・グハッ」
強烈な蹴りが雄介の脇腹に炸裂する。
「ジャラジャラッ! 失礼な男ね。ガメレオン様は化け物などではないわ」
ジャラジャラ兵ミノリが雄介を蹴り飛ばしたのだ。
「ジャラジャラッ! この方は蛮獣人ガメレオン様。お前などとは比べ物にならない素敵なお方なのよ」
ジャラジャラ兵アイカのマスクの緑色の目が見下したように雄介に向けられる。
「グゲゲゲゲ。今日からは俺がこの家の主となってやる」
不気味な笑い声をあげる蛮獣人ガメレオン。
その目は絶えず周囲をきょろきょろと見回している。
「な・・・に?」
「うふふふ・・・そういうこと。お前はもう用済みなの」
「今日からはガメレオン様がお前の代わりをしてくださるわ」
愕然とする雄介にくすくすと二人のジャラジャラ兵の笑いが向けられる。
「そう言うことだ。グゲゲゲゲ」
蛮獣人ガメレオンが笑いながら両手を顔の前で交差させる。
みるみるその躰がスマートになっていき、人間の躰へと変化する。
顔も床で倒れている雄介の顔そのものとなり、にやりと笑みを浮かべていた。
「そ・・・んな・・・」
化け物がもう一人の自分になってしまったことに恐怖する雄介。
それに合わせるように二人のジャラジャラ兵も両手を顔の前で交差させ、顔だけを人間の顔に擬態する。
そして、ゆっくりと雄介に擬態したガメレオンの左右に行くと、彼にそっと身を寄せ、本物の雄介に笑みを見せた。
「うふふふ・・・どう? これなら誰も気付かないでしょ?」
「これからは私たちが仲良し家族を演じるから、安心してね」
くすくすと笑いながら偽の雄介に躰を預けるミノリとアイカ。
「グゲゲゲ・・・かわいい“妻”と“娘”ができて、俺もうれしいぜ」
「ああん、かわいいだなんてうれしいですわ、“あなた”」
「これからはガメレオン様が私の“パパ”ですわ」
両手を二人の肩に回し、優しく抱きしめる偽の雄介。
それをうっとりとして受け入れる二人の女たち。
まさにあの家族写真のような光景がそこにあった。
「愛華・・・美乃里・・・」
奪われてしまった幸せに雄介の目から涙がこぼれる。
「うるさいわねぇ。もうお前には用はないわ」
「目障りだからさっさと死んでくれる?」
胸のプロテクターからナイフを取り出す二人のジャラジャラ兵。
首から下は小豆色のスーツに包まれているのに、顔だけが以前の愛華と美乃里のままであることが、余計に雄介を絶望させる。
「愛華・・・美乃里・・・」
絶望と叩きつけられたダメージとで動けなくなっている雄介に二人が迫る。
「うふふふ・・・さよなら、用のなくなったあなた」
「さよなら、もういらなくなったパパ」
二人のナイフが雄介に突き刺さる。
「グハッ」
絶命し、シュウシュウと音を立てて煙のように消えさっていく雄介の死体。
あとには血痕すら残らない。
「グゲゲゲ・・・これでいい。今日からここはヤーバン一族の拠点の一つとなるのだ」
偽の雄介が室内を見回してニヤッとする。
なかなかにいい家だ。
ここを我が物にできるというのはありがたい。
「ソヤ様のためにも、ここを拠点にできれば様々な情報収集ができますわ」
顔をマスク姿に戻すジャラジャラ兵ミノリ。
人間の顔などよりも、こっちの方が本当の自分の顔なのだ。
「あとは日曜日に虎島美子をここに呼んで・・・うふふ」
ジャラジャラ兵アイカも顔をマスクに戻してくすくすと笑う。
美子がジャラジャラ兵の仲間になるのが今から楽しみなのだ。
そのために、アイカはスマホを使ってメッセージを送る。
「うふふふふ・・・美子、あなたもきっとジャラジャラ兵になれたことを喜んでくれるに違いないわ」
アイカは心からそう思った。
******
「あー、気持ちよかったぁ」
バスタオルで髪を拭きながらバスルームから出てくる美子。
あとは、スマホでネットサーフィンでもしながら、寝るまでの時間をゆったりと過ごすだけ。
「ん?」
スマホにメッセージが着信している。
愛華からだ。
何かあったかな?
そう思ってメッセージを確認すると、明日から土曜日まで急な用事が入って学校に行けなくなったという。
でも、日曜日には家にいるので、忘れずに来てねということだった。
会えないというのは残念だったが、用事ということであれば仕方がない。
むしろ日曜日が楽しみだ。
どうかヤーバン一族が土曜の夜や日曜日に活動したりしませんように。
美子はそう思いながら返事を打つ。
「必ず行くからよろしくね」
そうメッセージを送り、美子は日曜日に思いを馳せるのだった。
END
いかがでしたでしょうか?
コメント等いただけますと嬉しいです。
明日、もう一作の方も再掲載いたしますね。
ではでは。
- 2021/01/09(土) 21:00:00|
- 女幹部・戦闘員化系SS
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今日は土曜日ですので、やっぱりウォゲムのソロプレイをば。

今日は久しぶりにSquad Leader単体ではなく、Cross of Ironを加えて独ソ戦初期のイメージで戦力を選びました。

今回はソ連軍を防御側にして1000ポイントほどで。
独軍は1.5倍の1500ポイントほどで編成しました。

今回はソ連軍のT-26戦車が結構活躍。
独軍の三号E型や四号D型を結構食ってくれました。
旧式戦車ですけど、45ミリ砲は侮れない。

今日は時間的な関係もあって、途中でやめてしまいましたけど、やっぱりCross of Ironが入るとルールの確認等で時間食いますねー。
ASLだともっと時間食いそうだなー。
でも、楽しかったです。
今日はのちほど過去作の再掲という形になりますけど、一本SSを投下します。
リンク先が消えてしまったので見られなくなってしまった作品をブログに載せる形になります。
よろしければご覧ください。
それではまた。
- 2021/01/09(土) 18:59:24|
- ウォーゲーム
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今日は天気が荒れるかなと思っていたのですが、私のいる地域では朝には収まっておりましたので、助かりました。
おかげで今日は病院への定期通院のついでとはなりましたが、新年の初詣を済ませることができました。

今年も、いつもお世話になっております新琴似神社さんへ参拝。
さすがに8日で平日昼間ともなりますと、私のほかには数人いらっしゃるのみでした。
明日からの三連休だと、もう少し人がくるのかもしれませんね。
今年は新型コロナ感染対策なのでしょうか、いつものあのガラガラと鳴らす鈴がありませんでした。
大勢で触ることになりますから、今年は避けたのでしょうね。
ですので、きわめて静かにお参りしてまいりました。

今年もおみくじは引いてきました。
ブログを見返したら、昨年は大吉だったようですけど、今年は小吉でした。
でもまあ、書いてある内容は悪くないようですし、何事もほどほどでいいのかもしれませんね。(笑)
今年が良い年でありますように。
今日はこんなところで。
それではまた。
- 2021/01/08(金) 17:48:50|
- 日常
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昨日、鈴木銀一郎氏がお亡くなりになったという報が入ってまいりました。
おそらく鈴木銀一郎氏と言っても、ご存じない方も多いとは思うのですが、私が学生のころから楽しんでおりますシミュレーション・ウォーゲームの世界では、ゲームデザイナーとしても、プレイヤー「ひげの大佐」としても知られていらっしゃったお方でした。

当時エポック社で出版されました「バルジ大作戦」や「日本機動部隊」をふくめ、いくつものウォーゲームや、「モンスターメーカー」に代表されるカードゲームのデザインを行い、また、ご自身も「パンツァーグルッペグデーリアン」というゲームを大変愛好され、数多くのプレイを行うプレイヤーでもいらっしゃいました。
私自身は一面識もございませんが、タクテクス誌やシミュレーター誌などで氏のことは存じておりましたので、ウォーゲームの偉大なる先輩と思い、お慕いしておりました。
当時でも私よりはるかに年上のお方でしたので、近年ではご高齢となられたであろうとは存じておりましたが、このたび86歳でお亡くなりということを知り、あらためて父とほぼ同年代だったのだなと再確認いたしました。
日本のシミュレーション・ウォーゲーム界にとりましては、まさに大きな功績を果たしてこられた方と思います。
とても残念です。
ご冥福をお祈りいたします。
今日はこれにて。
それではまた。
- 2021/01/07(木) 18:17:09|
- ウォーゲーム
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「応仁の乱」を読み終わりましたので、やっとこっちに取り掛かれますー。

「歴史人」の12月号です。
12月号なので、11月には手に入れていたんですけど、なかなか読む順番が回ってきませんでした。
特集は「戦国武将の戦時と平時」
面白そうじゃないですかー。
(*´ω`)

特にこの「平時」の生活には興味がありますねー。
当時の武将はどんな暮らしをしていたのか、読むのが楽しみです。
やっと読めますわぁ。
ヽ(´▽`)ノ
ということで、今日はこんなところで。
それではまた。
- 2021/01/06(水) 18:41:54|
- 本&マンガなど
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先日から読んでおりました「応仁の乱」ですが、今日読み終えることができました。
ヽ(´▽`)ノオワッター

いやぁ、昨年からの大河ドラマ「麒麟がくる」や、ゆうきまさみ先生のマンガ「新九郎、奔る!」で、足利幕府の末期というのがちょっと気になってきておりましたので、この本を手に入れたわけですが、おかげさまで「応仁の乱」について、大まかなれど知識を得ることができました。
( ˘ω˘)人 アリガタヤー
それにしましても、戦国期の大名家同士の戦いのイメージとは、結構違う感じですな。
また、まだまだ寺社が結構力を持っていた感じですね。
それが乱以後は寺社も武士の力頼みになっていったということでしょうか。
ともあれ、今まで知らなかったことを知ることができるのはいいですよね。
これだから、本を読むのはやめられません。
(*´ω`)
今日はこんなところで。
それではまた。
- 2021/01/05(火) 18:36:32|
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新年SSはいかがでしたでしょうか?
次作に向けてまた頑張りますねー。
お楽しみに。
今日は残念なニュースが。
昔からテレビで時代劇を見ていらっしゃった方は、お名前にはピンと来なくてもそのお顔はきっと見たことがあるであろう名斬られ役、と言えばお分かりになられると思うのですが、俳優の福本清三さんがお亡くなりになられたとのこと。
77歳とのことですので、今の世ではまだお若いのにという気がします。
福本清三さんは、それこそ「五万回斬られた男」というほどに、時代劇では斬られ役として様々な作品に登場なされた方でした。
セリフもほとんどなく、それこそその他大勢の中の一人として、主人公に斬られていくのが見せ場という福本さん。
時代劇ファンの方は、「あ、またこの人が斬られている」と思いながらテレビを見ていらっしゃったのではないでしょうか。
近年になりますと、その「斬られ役人生」も知られ、そこそこ知名度も上がったりしたことで、ちょっとしたセリフや役柄も得られるようになりましたが、それも斬られ役を極めたが故のことだったでしょうか。
出世されましたねと、温かい気持ちになったものでした。
最近はめっきり時代劇も減ってしまい、こういう斬られ役人生という役者さんはもう出てこないかもしれません。
本当に長い間お疲れ様でした。
ご冥福をお祈りいたします。
今日はこんなところで。
それではまた。
- 2021/01/04(月) 18:46:48|
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なんか今日は年明け早々に掃除やったり洗濯したりと、いつもの日曜日にやる家事をやっておりましたので、ごく普通のいつもの日曜日という感じでお正月感がほとんどなくなってしまいましたねー。
とはいえ、今日は新年SS第二弾を投下したいと思います。
タイトルは「泥人間のつぶやき」です。
なんかいつもとは違う趣の作品になったような気もしますが、お楽しみいただけましたら幸いです。
それではどうぞ。
泥人間のつぶやき
私は泥人間です。
正確には何と呼ばれるのかわかりませんが、私たち親子はそう呼んでいます。
泥人間というのは、肉体がどろどろの泥のような粘りのある液状で、自分の意志によって人間の姿に擬態することができる生き物のことです。
でも、私は元からそういう生き物だったわけではありません。
私は以前は普通の人間でした。
でも、ご主人様によって泥人間に作り替えられてしまったのです。
ご主人様がどのような存在なのか、私は知りません。
お姿も見たことがありません。
どうして私を泥人間にされたのかもわかりません。
ただ、私の中に強いご主人様への服従心みたいなものがあることだけはわかります。
ご主人様の命令なら、私は何でもしてしまうでしょう。
私が泥人間に生まれ変わったのは、今から三週間ほど前のことでした。
その日、私は両親と一緒に田舎のおばあちゃんの家から家に帰る途中でした。
おばあちゃんの家ではいっぱい美味しいものを食べさせてもらい、高校生にもなったのに、こっそりお小遣いまでもらって、楽しかったです。
もちろん後でお母さんにはちゃんと言いました。
そんな楽しかったおばあちゃんの家から帰る途中、私たちの乗っていた車は、突然真っ白な霧に包まれてしまいました。
お父さんは慌てて急ブレーキをかけ車を止めました。
幸い事故を起こすようなことはなく、車は無事に止まりましたが、窓ガラスの外は真っ白で何も見えません。
霧にしてはいくらなんでも濃すぎます。
まるでミルクの中にでもいるかのようでした。
「まいったな、何も見えんぞ」
お父さんはそう言って窓を開け、外を見ようと身を乗り出しました。
すると、白い霧が車内に入り込み、お父さんの姿を見えなくしてしまいました。
続いて助手席にいたお母さんも。
後ろの座席にいた私のところへも霧は流れ込んできて、私はそれがなんだかとてもねっとりした感触だったことを覚えています。
やがて私の躰はどろどろと溶けだしていきました。
私は驚きましたが、不思議と恐怖はありませんでした。
なんというか……ああ、私は今作り変えられているんだ……そんな気持ちでした。
どろどろに溶けていく私の躰。
爪も歯も骨も硬いところも柔らかいところもすべてどろどろに溶け、私の躰は服から抜け落ちて、車の床に溜まってしまいました。
目も鼻も口も無くなってしまったのに、なぜか私は見ることも聞くこともできました。
その時は気付きませんでしたが、今ではその状態でしゃべることだってできます。
やがて私の中にある思いが生まれてきました。
私は作り変えられたのだ。
今の私は人間ではなく、泥人間なのだ。
ご主人様によって作り変えられ、その命令を待つ身なのだと。
でも、私は違うと思いました。
私は人間です。
泥人間なんかじゃありません。
ご主人様の命令には従いますけど、私は人間です……と。
やがて白い霧は消えました。
ずいぶん時間が経っていたようで、なぜか車は人気のない山道に止まっていました。
私はどろどろになった躰を動かし、人間へと擬態していきました。
擬態は簡単でした。
そうなりたいと思えば良かったのです。
どろどろの躰を服の中に潜り込ませ、そのまま人間の姿に擬態するだけでした。
それだけで私は、車に乗っていた時の姿に戻ることができました。
前の席では、お父さんもお母さんも姿を現しました。
二人とも擬態を終えたのです。
きっと私と同じようにして、元の姿に戻ったのでしょう。
「行こうか」
「ええ」
お父さんとお母さんがそう言いました。
私はその言葉を聞いて、何かが変わってしまったような気がしました。
家に帰ってきたのは、もう夜の九時ごろでした。
お父さんもお母さんも何事もなかったように家に入りましたが、部屋に入ると、いきなり躰をどろどろと液体のように変化させてしまいました。
『ふふふ……やっと本当の姿になれるな』
『ええ、ホントね。こっちの姿の方がいい気持ちだわ』
どろどろに液状化したお父さんとお母さんは、空気を振るわせて声を出しているのです。
いつもとは違う声ですけど、ちゃんと聞き取れました。
『奈菜美(ななみ)もそんな擬態は解いていいんだぞ』
『ええ、そうよ。ここには私たちしかいないわ』
どろどろのアメーバのようになったお父さんとお母さんがそう言ってきます。
でも、私はどうしてもその姿に戻る気にはなれませんでした。
だって、私は泥人間じゃありません。
私は人間です。
そう思ったんです。
「私はもう少しこの姿でいるわ」
私はそう言いました。
『あら、物好きねぇ』
『まあまあ、それもいいさ。いきなりご主人様に作り変えられて、まだ戸惑いがあるんだろう。それに、もしいきなり誰かが来たとしても、奈菜美に出てもらえばいいさ』
私が擬態を解くつもりがないと知ると、お母さんは笑い、お父さんはそう言いました。
私はそんなことよりも、夕食をどうするかの方が気になっていました。
なんだかお腹が空いていましたし、午前中におばあちゃんの家を出てから、何も食べてなかったんです。
『そうだなぁ……どこか食べに行こうか』
『それがいいわ。どこにしましょう……』
私が食事はどうするのか聞くと、お父さんとお母さんはそう言いました。
「ええ? 食べに行くの?」
私はちょっと面倒に感じてしまいました。
それならば、途中でどこかによればよかったじゃないかと思ったんです。
また出かけるなんて……
『ねえ、あの家はどう? 先日引っ越してきたって言うあの家』
『ん? 角の一軒家かい?』
『ええ。あの連中ならまだ近所づきあいも少ないでしょうし……』
えっ?
私はお父さんとお母さんは何を言っているのかと思いました。
近所に引っ越してきた人たちがどうしたというのでしょうか?
『そうだなぁ……でも、あそこは夫婦二人じゃなかったかい? 奈菜美の食べる分が無いよ』
『ああ……そうだったわねぇ』
「ちょ、ちょっと待って! お父さんもお母さんも何を言っているの?」
私は思い切ってそう聞きました。
二人がなんだかとても恐ろしいことを話しているような気がしたのです。
『何って、食べたいんじゃないのか?』
「食べたいけど……お父さんもお母さんも何を食べようとしているの?」
私は恐る恐る尋ねます。
なぜなら、私はその答えを半分知っていたからです。
『何って……人間でしょ?』
『ほかに何を食う気なんだい?』
アメーバのような躰をうねうねとさせながらお父さんとお母さんはそう言うのを、私はショックを受けつつも、やっぱりという思いで聞きました。
「いやっ! そんなのいやっ!」
私は思わず叫んでいました。
だってそうでしょ?
人間を食べるなんてありえない!
そんなの……
そんなの……
『どうしたの、奈菜美?』
『いやって、食べたくないのかい?』
お父さんとお母さんは心配そうに躰をグネグネさせていました。
私はうなずき、人間は食べたくないと答えました。
『変な子ねぇ。お母さんなんか早く食べたくてわくわくしているのに』
『お父さんもだぞ。みんなで一緒に食べに行こう?』
私は首を振りました。
人間を食べるなんてどうしてもいやです。
『そうか……奈菜美はまだ子供だから、以前の気持ちがまだ残っているのかもしれないな』
『そうなのかしら? 奈菜美、少しだけでも食べてみない? 私たち泥人間は人間を食べるのが当たり前なのよ』
私はもう一度首を振りました。
『そうか。それならそれで仕方がない。俺たちだけで行こう』
『そうね。それじゃ奈菜美にはお留守番をお願いしようかしら。ねえ、それならやっぱりあそこに行きましょ? 食べるなら若い人間の方がいいと思わない?』
お父さんもお母さんも、もう私のことなどどうでもよくなったかのようでした。
それよりも、早く人間を食べたくて仕方がないようでした。
「お父さん、お母さん!」
私は二人に行くのはやめてと言いましたけど、二人とも再び脱ぎ捨てた服の中に入り込むと、人間の姿になって、そのまま出かけてしまいました。
私は仕方なく、冷蔵庫にあったソーセージやチーズなどを取り出して、擬態を解いてそれらを取り込んでいきました。
泥人間の食事は、食べたいものに覆いかぶさるようにして包み込み、それから溶かして食べるのです。
今頃お父さんとお母さんは、そうやって人間を食べているのだと思いましたが、私にはできそうもありませんでした。
******
翌朝目が覚めると、擬態をしてパジャマを着て寝ていたはずなのに、いつの間にかすっかり擬態が解けてどろどろのアメーバ状に戻ってしまっていました。
「おはよう、起きた?」
擬態しなおして下に降りていくと、見知らぬ若い女性がいました。
「えっ?」
私が戸惑っていると、その女性はくすくすと笑いだしてしまいます。
「うふふふ……お母さんよ、お母さん。どう? 結構イケてない?」
「えっ? えええ?」
私が驚いていると、お母さんはその姿でポーズを取っています。
「ど、どうしたの?」
「うふふ……擬態に決まっているでしょ。どう? この姿なら人間の男が寄ってくると思わない?」
確かに今のお母さんの姿は、若くて美人です。
擬態で違う人の姿になるなんて思いもしませんでした。
「お母さんばかりじゃないぞ」
私が振り向くと、そこには若くてかっこいい男性が。
「お父さんなの?」
「ああ、これで女性を引き込もうと思ってな」
私に対してもウィンクをしてくるお父さん。
「うふふ……素敵よお父さん」
「いやいや、この姿なら康秀(やすひで)と名前で呼んで欲しいなぁ」
「まあ、それなら私も麻弥子(まやこ)と呼んでちょうだい」
「麻弥子」
「康秀さん」
私が唖然とする中で、お父さんとお母さんは互いの名前を呼び合って抱き合ってます。
今までのお父さんとお母さんとは全く思えません。
「で、今日は奈菜美はどうするんだ?」
「えっ? 学校に行こうと思っているけど」
「学校? どうして?」
若い女性の姿のお母さんがあきれたようにそう言います。
「だって、今日は月曜日だし」
「学校なんて行く必要はないんじゃないか? 俺たちは泥人間なんだ。人間のようなことをする必要はないんだぞ」
「そうよ。私たちみたいにこれから一緒に人間狩りに行きましょ? 夕べ食べたけど、人間ってとってもおいしいわよ」
私は首を振りました。
聞きたくなかった……
やっぱりお父さんもお母さんも人間を食べてしまったんだ。
本当に二人とも泥人間になってしまったんだわ……
私はお父さんお母さんを振り切るようにして学校へ行きました。
二人はそれぞれまた人間を食べに行ったとあとで聞きました。
人間を食べるということに、お父さんもお母さんももうなんとも思っていないようでした。
それどころか、むしろ楽しんでいたんだと思います。
お父さんは会社に行くのをやめ、お母さんと人間を食べたときのことを楽しそうに話します。
お母さんもいろいろな姿に擬態して男の人を引き寄せるのが楽しいようでした。
私は学校ではできるだけ以前と同じように暮らそうと思いました。
だってそうでしょう?
私は人間です。
躰がどろどろになるような生き物に作り変えられてしまいましたけど、私は人間なんです。
だから、人間を食べるのは違うと思ったんです。
友人ともいつもと同じように過ごしました。
家に帰ればお父さんとお母さんがどろどろのアメーバのような姿で楽しそうにしています。
昼間はそうして家で過ごし、夜になれば美男美女の姿に擬態して人間を食べに出かけるのです。
お父さんもお母さんももうそれが当たり前のようでした。
生活に必要なお金は、食べた人の財布を奪ってくるみたいでした。
ほかにもスマホや貴金属なども奪ってきたことがあるみたいです。
私がやめるように言っても、こんな面白い食事をどうしてやめなければならないんだという始末でした。
それに、泥人間が人間を食べた後に残るのは、その人が身に着けていたものだけです。
死体が残らないうえに、いつも違う人間の姿に擬態しているのですから、警察にだってわからないでしょう。
二人はそう言って笑ってました。
私はお母さんからお金をもらい、生肉とかお刺身とかを買ってきて食べてました。
やっぱり、火を通したものよりも、生の肉類の方が美味しいんです。
私は、必死に自分は人間だと心の中で言い続けながら、生肉を食べてました。
その日、私は友人の野乃香(ののか)と一緒に、校舎裏の用具倉庫に授業で使った道具を置きに行っていました。
野乃香とは、私の名前が奈菜美だったこともあり、何となく語感が似ているねということで仲良くなりました。
私たちは他愛のないおしゃべりをしながら用具倉庫に向かっていましたけど、途中、野乃香が何かに躓いて転んでしまったんです。
持っていた道具類とともに派手に転んでしまった野乃香を、私は立たせてあげようと手を差し伸べました。
幸い野乃香に怪我をした様子はなく、野乃香も苦笑いをしながら、差しだした私の手を握りました。
その時、私は知ってしまったんです。
人間の味を……
私はその日まで誰か他の人間と触れ合うようなことがありませんでした。
もし誰かと触れ合っていたら……
きっと野乃香には手を差し伸べなかったかもしれません……
ううん……
逆にもっと早かったかも……
私が引き起こしてくれないので、野乃香は不思議に思ったようでした。
「奈菜美?」
彼女は私をそう呼んだことに、私は気付きましたが、ほとんど耳に入ってきませんでした。
彼女の手が……あまりにも美味しくて……
私は周囲を確認しました。
ここは人気のない校舎裏。
今なら私たち以外ここにはいない。
そのことが私に行動をさせてしまいました。
誰かがいてくれていれば……
「ひっ!」
小さく悲鳴を上げる野乃香。
私は彼女が大声を上げられないように、すぐさま頭から覆いかぶさりました。
彼女が私の下でもがくのがわかりました。
楽しい……
逃げようともがく人間を覆い尽くしていくのが、こんなに楽しいことだとは知りませんでした。
私は擬態を解き、野乃香を覆い尽くします。
どろどろの私の躰は、簡単に野乃香の躰を包み込みました。
私の中で、野乃香はもがきながら溶けていきます。
それを私は食べるのです。
美味しい……
なんて美味しいんでしょう……
人間がこんなに美味しいなんて知りませんでした。
でも、この瞬間私は知ったのです。
人間こそが私の食べ物だと。
私は知ったのです。
野乃香がいなくなったことは、学校で騒ぎになりました。
でも、私は用具倉庫で別れた後は知らないと言い続けました。
見つかったのは野乃香の制服だけ。
躰は私が食べてしまっただなんて誰も思いません。
結局野乃香は用意していた別の服に着替えて姿をくらましたのだろうということになりました。
私は人間を食べたこと、それがとても美味しかったことをお父さんとお母さんに話しました。
二人はとっても喜んでくれて、これで奈菜美も完全な泥人間になれたねと言ってくれました。
私も、自分が泥人間として完成したという自覚が生まれ、これまでの自分がとても馬鹿らしく感じました。
私は人間なんかじゃありません。
私は泥人間なのです。
******
「うふふふ……今では私も、こうやって擬態して、人間狩りを楽しんでいるんですよ」
家では本当の泥人間の姿でリラックスして、外に出る時には擬態するんです。
生肉なんてもう食べることも無くなりました。
お父さんやお母さんと同じように、以前の自分とは違う姿に擬態して、こうやって獲物を誘うんです。
バカな人間が、のこのことやってくるんですよね。
そう言った連中を襲って食べて、所持金なんかを奪っちゃいます。
ホント、楽しいんですよ。
ご主人様がいつ命令をくださるのかはわかりませんけど、もしかしたら、こうやって人間を食べることこそがご主人様の望みなのかなという気もします。
だって、この星って人間が多すぎると思いません?
少し食べて減らすべきだと思うんですよ。
「今まで私の話を聞いてくれてありがとうございました。いかがでした? そんなに面白い話でもなかったとは思いますけど」
「えっ? どうしてそんな話をって? いやですね、あなたから聞いてきたんですよ? どこに住んでるのとか普段何しているのとか」
「顔が青ざめてますけど、大丈夫ですか? うふふ……もしかして逃げようとか考えてます?」
「いやですねぇ。逃がすはずないじゃないですか。こうしてがっちり手をつないでますし、今晩の食事はあなたなんですから」
「それじゃ、いただきまーす」
END
いかがでしたでしょうか?
よろしければコメント等いただけますと嬉しいです。
よろしくお願いします。
明日はもう4日で月曜日。
早いですねー。
それではまた。
- 2021/01/03(日) 21:00:00|
- 異形・魔物化系SS
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