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舞方雅人の趣味の世界

あるSS書きの日々

軽率に隣の美人未亡人をロボット化 (前)

今月7月は、当ブログにとりましては「周年記念日」のあります月となりますわけですが、今年ももうすぐその日がやってきますです。
ですので、その前祝い的に今日明日で一本SSを投下させていただこうと思います。

タイトルは、「軽率に隣の美人未亡人をロボット化」です。
私のツイッターの相互フォロワーさんでありますけー様が、頭に刺すことで簡単に人間をロボット化できるアンテナというアイテムを使い、深く考えることもなく「軽率に」人間をロボットにしちゃうというSSを発表していらっしゃったので、思わずそのアイディアに乗っからせていただきました。

設定等はけー様の作品とは微妙に異なる部分もありますが、機械化ものSSとして楽しんでいただければと思います。

それではどうぞ。


軽率に隣の美人未亡人をロボット化

「はあ・・・」
俺は思わずため息をつく。
スポーツ新聞の一面を飾る芸能人の入籍ニュース。
美男美女の結婚ということで、TVでも連日のように放送されている。
あーあ・・・
いいなぁ・・・
俺もこのぐらいイケメンだったらなぁ・・・
こんな美人の嫁さん欲しいよなぁ・・・
独り身のまま、もうこんなおっさんになってしまうなんてなぁ・・・

「どうした原嶋(はらしま)? 相変わらずコンビニ弁当か?」
隣の席にやってくる山田(やまだ)。
同じ部署で気のいいやつだ。
わりと気が合うので仲良くやっている。
「悪かったな。どうせお前だってそうだろ・・・」
うに、と続けようとした俺の前に、カラフルな布で包まれたお弁当らしきものがどんと置かれる。
嘘だろ?
お弁当だとぉ?
俺と同じく独身のはずの山田が?

「お、おい、山田・・・」
「ははっ・・・まあな、俺も弁当を作ってもらえるようになったというわけでな」
ちょっと照れ笑いをしている山田。
おいおい、どういうことだよ?
彼女でもできたというのか?
いいなぁ・・・

「でな、今日仕事が終わったらうちに寄らないか? いいもの見せてやるよ」
「いいもの?」
彼女のことだろうか?
でも“いいもの”って言っているしなぁ・・・
新しいゲームでも買ったか?
「ま、まあ、いいけど」
どうせ帰っても飯食って寝るだけだし、どうやって彼女を作ったのかも聞きたいしな。
どうせ山田の方も、“いいもの”にかこつけて、彼女のことを自慢したいに決まっているんだろうし。
「よし、決まりだ。あ、誰にも言うなよ。ナイショだぞ」
「あ、ああ、わかった」
ナイショに?
まあ、それぐらいは別にいいが・・・
それにしても美味しそうな弁当だなぁ・・・
色どりも鮮やかだし・・・
いいなぁ・・・

                   ******

「ふひひ・・・驚くなよ」
うきうきした足取りで階段を上がっていく山田。
重たい躰も今日は軽そうだ。
なんともまあ、浮かれちゃって。
そんなにその“いいもの”とやらを見せたいのかね?
どうせそっちよりお弁当を作ってくれた彼女の自慢をしたいだけなんだろう?

古びたアパートの一室。
まあ俺の家もこんなもの。
お互いに安月給の身の上じゃ、こんなところぐらいが関の山だ。
「ただいまー」
玄関の鍵を開けて入っていく山田。
ただいまーねぇ。
誰が待っているわけでもなかろうに・・・
「お帰りなさいませ、旦那さま」
はいぃ?
旦那さまぁ?
部屋の中からそう声がしたとき、俺は死ぬほど驚いた。
女性の声だ。
山田ぁ!
やっぱり彼女自身を呼んでいたんじゃねーか!
チクショー!
しかも旦那さまだぁ?
なんて呼ばせ方してやがる!

「おい、山田! 彼女がいるならいるって・・・」
「いらっしゃいませ、原嶋さま」
俺は息を飲んだ。
斎藤(さいとう)さん?
斎藤さんじゃないのか?
会社を辞めて田舎に戻ったって聞いたけど・・・
それにその恰好は・・・

驚いたことに、山田の家にいたのは会社で経理を担当していた斎藤さんだった。
しかも、頭にはレース付きのカチューシャをつけ、黒のロングスカートのワンピースに白いエプロンといういわゆるメイドさんの姿をしているのだ。
足には白いソックスを履き、頭にはピンと立ったアンテナのようなものが伸びて、かいがいしく山田からカバンを受け取っている。
ピンと立ったアンテナ?
いや、メイドさんはアンテナなんて立てないんじゃ?

「はははっ、まあ入れ入れ。そんなとこで突っ立ってないで」
「原嶋さま、おカバンをお預かりいたします」
にこやかな笑顔で俺の方に手を差し出す斎藤さん。
いや、違う・・・のか?
なんというか、肌がつやつやして滑らかで・・・まるで・・・そう、プラスチックのような・・・
目もなんだかガラスっぽい感じだし・・・

「山田・・・これっていったい?」
俺は彼女にカバンを預けて部屋に入る。
彼女は俺と山田のカバンを奥に運び、すぐに戻ってくると、今度はお茶の支度をはじめていた。

「驚いたか? いいものを見せてやるって言ったろ」
山田がにやにやと笑っている。
こいつめ。
「旦那さま、原嶋さま、お茶が入りました」
席に着いた俺と山田の前にお茶を出してくれるメイドさん。
まさかメイドさんにお茶を入れてもらう日がこようとは。

「ありがとう、ユカリ。彼に自己紹介をしなさい」
「かしこまりました、旦那さま」
山田の言葉にうなずいた彼女は、俺の方に向き直る。
「初めまして原嶋さま。私は当機の所有者でありマスターであります山田盛生(もりお)さまにお仕えいたしますKSカンパニー製ヒューマンロボット、KSR‐182ユカリと申します。以後よろしくお願いいたします」
そう言ってスカートの端を持ち上げて一礼する彼女。
うわぁ・・・
なんだって?
ロボット?
彼女が?

「旦那さま、お食事はどうなさいましょう?」
「ああ、そうだな・・・お前も食べていくだろ?」
「あ、ああ・・・」
俺はうなずくが、もう何が何だかわからん。
こんなメイドロボットが山田の家に・・・
しかも斎藤さんにそっくりじゃないか。
瓜二つと言っていい。
もしかして斎藤さんをモデルに作られたのかな?

「それじゃ食事を二人分頼む」
「かしこまりました。25分ほどお待ちください」
「ああ、それと冷蔵庫から缶ビールを二つ。チーズもあったよな」
「かしこまりました。すぐにご用意いたします。そちらの方は5分お待ちくださいませ」
ぺこりと一礼して台所に向かうメイドさん。
なんというかあきれるほど素敵な光景だ。
くっそーーー!
うらやましいー!

「はははっ、まあ、そういうことだ」
「メイドロボット?」
「そう言うことに・・・なるかな? まあ、いろいろとさせてるけどな」
「いろいろ?」
「うん・・・その・・・まあ・・・性処理とか・・・」
「せ・・・」
俺は言葉に詰まってしまう。
あの娘に性処理してもらっているだと?
天国じゃないかよ!

「そんなロボットが・・・」
俺は改めて台所にいるメイドさんの後姿を眺める。
あれがロボット・・・
しかも性処理までしてくれるという・・・
はあ・・・
ため息しか出ないよ。
いいなぁ・・・
俺も欲しいなぁ・・・

「でも、どうしたんだ? どこで手に入れたんだ? それにあれはどう見ても斎藤さんだ。お前、斎藤さんが辞めるって聞いて、かわいくて好きだったので残念だって言ってたけど、彼女に似せて作ってもらったのか?」
矢継ぎ早になってしまう俺の質問。
だって、どうしたって気になるじゃないか。

「まあまあ、順序だてて話すよ。お前にもいい話だと思ってさ」
食事を用意する前に彼女が持ってきてくれた缶ビールで乾杯する。
「いい話?」
「ああ・・・実はな・・・彼女・・・その斎藤さんなんだよ」
「はぁ?」
何言ってんだこいつ?
彼女が斎藤さん?
斎藤さんは人間で、彼女はロボットだろ?
そりゃ見た目はそっくりで一瞬間違えたけど、肌とか目とか人間とは違うじゃん。

「実はな・・・絶対誰にも言うなよ。お前だから言うんだ。お前も俺と同じく独り身のさえないおっさんだからな」
うるせぇ!
余計なお世話だ。
「言わないよ」
「ほら、彼女の頭に付いているアンテナ。見えるだろ?」
アンテナ?
ああ、さっきも見たけど、彼女の頭のレース付きカチューシャの後ろからピンと伸びているやつだな?
ロボットだと判ってからは特に気にならなくなったけど、確かにあれはアンテナだ。
銀色の金属製で、先端が赤く光っている。
「あれをさ、こうプスッと刺し込むんだよ、頭にさ。そうしたら、あら不思議。人間がロボットになってしまいましたとさ」
グイッと缶ビールを飲み込む山田。
「おい」
この野郎、もう酔ったのか?
「いや、ホントなんだって。あのアンテナをプスッと刺したら、斎藤さんがロボットになって、俺のものになってくれたんだよ。ホントなんだよ」
「いや、お前、それを信じろってのは無理があるって。むしろ家電メーカーがお掃除ロボットを人型にしてみましたって方が、はるかに信じられるぞ」
俺は山田をにらみつける。

「いや、俺もそうは思うけどさ。ホントのことなんだって。そうだ。おい、ユカリ。ちょっと来てこいつに以前のお前が何者だったか教えてやれ」
「かしこまりました旦那さま。ですがお食事をお出しするのがその分遅くなりますがよろしいですか?」
「かまわん」
「かしこまりました」
食事を作る作業の手を止め、俺たちのところにやってくるメイドさん。
確かに見れば見るほど斎藤さんにそっくりだし、斎藤さんをロボットにしたと言われれば、うなずけるものではあるのだが・・・

「原嶋さま、先ほど旦那さまが申しました通り、私はKSR-182ユカリとなる前は、斎藤優香理という人間でありましたことは間違いございません」
にこやかにさらっととんでもないことを言うメイドさん。
「ホントにマジで?」
この娘があの斎藤さんだったって言うのか?
「はい。左様です」
「でもどうして・・・」
俺の言葉にメイドさんはちらっと山田の方を見る。
答えていいのかの確認なんだろう。
山田の首がコクリとうなずくのを見て、メイドさんは話を続ける。
「はい。七日前に斎藤優香理は、婚約者との結婚を行うために勤めていた会社を退職し、社員の方々との挨拶を終えて帰宅する途中でした」
まるで他人事のような話し方。
以前の自分は自分ではないということなのか?

「自宅まであと357メートルに達した時、山田盛生さまが斎藤優香理の前に立ちはだかり、斎藤優香理に対して・・・」
「ストップ! そこのセリフは言わなくていい。アンテナをつけられたことだけでいいから」
何やら真っ赤になっている山田。
もしかしたら彼女に対して好きだったとかなんだとか言ったのかも。
「かしこまりました旦那さま。山田さまは驚いてその場を立ち去ろうとした斎藤優香理に対し、その頭部にこのアンテナを刺し込みました」
そう言ってメイドさんは自分の頭から延びている銀色のアンテナを指し示す。
「このアンテナを差し込まれた瞬間、斎藤優香理の躰は硬直し、アンテナによる支配を受けることになりました」
「アンテナの・・・支配・・・」
「左様でございます。斎藤優香理の躰はデータに基づいて組成を変更され、KSカンパニー製ヒューマンロボットKSR-182への変化を受け入れさせられました」
「KSR-182への変化・・・」
俺はごくりと唾を飲む。
人間がロボットにされる・・・
なんてすごい・・・
なんてすごいんだ・・・

「肉体の組成変化及びオプションによる各部微調整を終えたKSR-182は、山田さまによってユカリと命名され、私、KSR-182ユカリとして完成いたしました。この時点を持ちまして、斎藤優香理は単なる素体名へと変更となりましたので、私を斎藤優香理とはお呼びになりませんよう原嶋さまにもお願い申し上げたいと思います」
「そ、そうなのか・・・」
斎藤優香理からKSR-182ユカリ・・・
なんていうか・・・とんでもないアンテナじゃないか・・・
そんなものがどうして・・・
いや、それよりも・・・
「そ、その、ユカリさん」
「はい、なんでございましょうか、原嶋さま」
「君には婚約者がいたという話だけど、その人のことはどう思っているの? 放っておいていいの?」
結婚を考えるまでの大事な婚約者を忘れてしまったとでもいうのだろうか?

「婚約者・・・ですか? おそらく原嶋さまがおっしゃられておりますのは、斎藤優香理の婚約者木幡佑士(きまた ゆうじ)のことと判断いたしますが、それでよろしいでしょうか?」
「う・・・いや、名前は知らないけど、斎藤優香理だった時の君の婚約者のこと」
「それでしたら別に何とも思ってはおりません。木幡さまは斎藤優香理の婚約者ではありましたが、私、KSR-182ユカリにとりましては、全く何の関係性もございませんので」
ほえー・・・
表情も変えない・・・ってか、プラスチックだから表情はあんまり変わらないのか。
口元はわりと動きがいいみたいだけど・・・
それにしても婚約者のことすらまったく気にならないぐらいになってしまうのか・・・
本当にすごいや・・・

「えーと、じゃあ、今の君は、山田のものってこと?」
「はい。私、KSR-182ユカリの所有者でありマスターは山田盛生さまでございます。ですので私は、山田さまの命により旦那さまとお呼びしてお仕えいたしております」
「へぇー」
すっかりロボットになってしまっている斎藤さんに俺は改めて感心してしまう。
でも、本当に人間をこんなふうにできるものなのか?
まさか・・・斎藤さんと山田が二人して俺にドッキリを仕掛けているんじゃないだろうな?
俺が完全に信じたところで、ドッキリでしたーとか・・・

「ふふ、まだちょっと疑っているみたいだな。ユカリ、ちょっとこっちへ」
「はい、旦那さま」
俺の疑念に気付いたのか、山田がメイドさんを呼ぶ。
そしてメイドさんの右腕をつかむと、肩にも手をかけ、グイっと引き抜いてしまった。
「うわ!」
俺は思わず声を上げる。
山田がメイド服の袖から引き抜いたのは、ひじや肩などの関節部分が球体になったロボットの腕。
「な? 何なら頭部も開けられるぞ」
「い、いや、いいよ・・・うん」
こりゃロボットだ。
間違いなくロボットだ。
これがもしドッキリだとしても、ここまでして俺にドッキリを仕掛ける理由が見当たらない。

「旦那さま、よろしければお食事の支度に戻りたいのですが構いませんでしょうか?」
腕を受け取ったメイドさんが、そのままメイド服の袖から再び腕をはめ込んでいく。
「ああ、いいよ。頼む」
「かしこまりました。それではごゆっくりなさってください、原嶋さま」
はめ込んだ右腕の具合を確かめるようにニ三度手を握ったり開いたりした後、またしてもスカートの端を持ち上げて一礼して台所に向かうメイドさん。
うわぁ・・・
いいなぁ・・・
メイドさん・・・いいなぁ・・・

「まあ、というわけだ。これでも信じられないだろうけどな」
「いや、まあ、確かににわかには信じがたいけど・・・」
俺は缶ビールをグイッと飲む。
信じがたいけど、信じるしかないよ、もう・・・
それに、俺だってあんなかわいい若いメイドさんロボットが手に入るなら・・・
「でも、どうしてお前が?」
「まあ・・・そこはな、いろいろとな・・・」
ニヤッと笑う山田。
そうか・・・
そうだよな・・・
どうやって手に入れたかなんて話せないよな。

「でだ、お前、どうなんだ? ロボットにして手元に置きたいって言う女はいないか?」
女?
手元に置きたい女か・・・
「はあ・・・」
俺はため息をつく。
そこなんだよなー。
斎藤さんを取られたなんて言うつもりは微塵もないが、身近にかわいい女の子とかいないからなぁ。
街中で偶然見かけたかわいい女の子、とかという手もないわけじゃないだろうけど・・・
「そうか・・・惜しいなぁ。今がチャンスなんだけどなぁ」
山田が俺のため息で察したようだ。
「惜しい? チャンス?」
「ああ。あのアンテナな、今なら特別に安く手に入るんだよ。一本1万」
「はいぃぃぃぃ?」
俺は素っ頓狂な声を出していた。
あのアンテナが・・・
女の子をロボットにしちゃうアンテナが1万円?
いやいやいやいや・・・
それは何かの間違いじゃ?

「あはははは・・・信じられんだろ。お前、さっきのもトリックで、俺が斎藤さんと組んで詐欺にでも遭わせようとしていると思っているんじゃないか?」
俺の内心を見透かしたように笑う山田。
「まあ、俺も最初はそう思ったさ。でもこれは事実だ。なんならたぶんアンテナ前渡しで後払いでもOKって言ってもらえると思うぞ」
「後払いでも?」
「ああ、効果を確認してからの後払い。どうだ? それなら文句はあるまい?」
「あ、ああ・・・でもどうして?」
こんなすごいものを1万でしかも後払いOK?
あり得ないだろ?

「まあな、言ってみればモニターなんだよ」
「モニター?」
「ああ、どこも今、人は余り気味だ。でも、ロボットは色々な面で需要がある。だから人間をロボット化して売りたい企業もいくつもあるというわけだ」
「そんな企業が?」
俺は驚いた。
そんな話は聞いたこともない。
そういえばさっきの彼女もKSカンパニーって言っていたか。
聞き覚えのない企業名だ。

「そりゃ表立っては言わないさ。それにこれは軍事的側面もあるからな。死の恐怖を覚えないロボット軍団は強力だぞ」
「そりゃそうかもしれんが・・・」
「ところが、現時点では法だ技術だでなかなか実用試験もできないということでな、ひっそりと実用試験に協力してくれる人を探しているんだと」
「実用試験・・・」
「まあ、試験って言っても、ほぼ実用上問題はないところまで来ているらしい。いろいろな命令をさせてみて、それがどの程度の負荷を与えるかとか調べるんだとさ。で、そのための試験機は多い方がいいってことらしい」
なるほど。
それはわからんではないが・・・

「で、なんでそんなことを知っているんだ、お前が?」
「ま、まあ、そっち方面に知り合いがいるんだよ。それで一本譲ってもらったのさ。このアンテナはすごいぞ。ユカリもアンテナ刺すまでは必死になって、助けて木幡さんって叫んでいたのに、刺した途端に俺のことをマスター呼びだからな」
マスター呼び・・・
なんて素晴らしい・・・
くっそー!
ぜひともそのモニターに参加したいぞ。

「ただな、お前にその・・・アンテナを刺す相手がいることが条件なんだ」
「相手が?」
「ああ・・・向こうも当然ヤバい代物を渡すわけだからな。さっさとアンテナを刺して相手をロボット化してもらって、いわば共犯者になってもらわないと困るってことなんだ。いつまでもアンテナを持ってうろうろとされてたらまずいってことさ」
「あー・・・」
なるほど。
俺は山田の言葉にうなずくしかない。
確かに今の山田は、そのアンテナを渡した相手と一蓮托生の共犯者だ。
アンテナがどこで作られたかは話さないだろうし、彼女が人間をロボット化したものだとも絶対に言わないだろう。
でも、俺は刺す相手がいない・・・
ちくしょう・・・
なんてこったい・・・

                   ******

「あー、ちきしょー! いいなぁ・・・うらやましいなぁ」
帰り道、俺はもう何度言ったかわからないセリフをまた言ってしまう。
くっそぉ・・・
山田の野郎ぉ・・・
斎藤さんなんてかわいい娘を我が物にしちゃうなんて・・・
くぅーー。
うらやましぃなぁ・・・
俺も斎藤さんみたいなかわいい娘が知り合いにいればなぁ・・・
会社にはパッとした女いないしなぁ・・・
と言って、アンテナ持ってかわいい娘を探してうろつくってわけにもいかない、ということみたいだしなぁ・・・
ああー、残念だなぁ・・・

あの後、斎藤さんじゃなくなったメイドロボットさんお手製の美味しい食事をごちそうになり、ほかにもいろいろと聞き出した。
山田の話によれば、彼女にはオプションで性処理能力も加えてあるとかで、毎晩彼女を抱いてセックスしているらしい。
他にもいろいろと自分好みに調整できるとか。
彼女の肌がプラスチックぽいのも、山田の好みでそうしているらしい。
なんか、そのほうがロボットらしいからとかなんとか。
俺もそういうのは好きだから、その気持ちはわかるなぁ。
いいなぁ・・・
誰か美人を紹介してくださいよぉ・・・

「ふう・・・」
アパートに戻ってきた俺は、自分の部屋に行くべく階段を上っていく。
「あれ?」
こんな時間に人がいるみたいだぞ?
なんか話し声が聞こえる。

「まだお戻りになっていないみたいね」
「隣なんだから戻ってきたらわかるんじゃない?」
「ええ、そうだとは思うけど・・・」
女性の声だ。
しかも二人?
どういうことだろうと思って階段を上がり終えると、俺の部屋の前に女性が二人立っているのが目に入る。
「あ、あの?」
「あ、もしかして202号室の?」
俺が声をかけると、年嵩と思われる方の女性が俺の方を向く。
うわ・・・すごい美人だ・・・
えーと・・・だ、誰?

「え、ええ、202の原嶋ですけど・・・」
「初めまして。里川、里川五月(さとかわ さつき)と申します。こちらは娘の美愛(みあ)」
つややかな黒髪の美女が自己紹介してくれる。
五月さんかぁ。
そして娘さんが・・・
うわ、あからさまににらまれている?
「美愛です。よろしく」
それだけ言ってプイと顔をそらしてしまう。
中学生か高校生かな?
そりゃ、こんなおっさんには口もききたくないわな・・・

「あの・・・私たち明後日この201号室に引っ越してくる予定でして。とりあえずご挨拶にと」
そう言って紙袋を差し出してくる五月さん。
なにぃーーー!
うちの隣にですか?
いや、でも、うちのアパートそんなに広くないよ?
旦那さんと三人なら狭くない?
どういうことなんだろう・・・

「あ、ども・・・原嶋です。よろしくお願いします」
いろいろと聞きたいけど、俺はともかく頭を下げて紙袋を受け取る。
「明後日はバタバタとうるさくしてご迷惑をおかけしてしまうかと思いますけど、どうかお許しくださいませ」
「いえいえ。あ、もし何かお手伝いできるようなことがございましたら、いつでも」
「ありがとうございます。今後ともお隣同士、よろしくお願いいたします」
にこやかな笑顔に俺はくらくらしてしまう。
こんな美人人妻が俺の隣の部屋に?
いやいや、待て待て・・・
これは孔明の罠では?
旦那さんがいるだろうしね。

「お母さん、もう行こうよ」
そう言って母親を促そうとする美愛ちゃん。
少しでも俺から距離を取らせたがっているようだ。
うわぁ、俺完全に避けられているなぁ。
怪しいデブのおじさんだから仕方ないけどさ。
「もう、美愛ったら・・・それでは今日はこれで。引っ越しが終わりましたらまたご挨拶に」
「はい。おやすみなさい」
俺に頭を下げると、すれ違うようにして階段を降りていく二人の女性。
その時も美愛ちゃんは、まるで嫌悪感を隠すこともないような感じで、俺から最大に距離を取ろうとしている。
もしかして、臭ったりしているのかなぁ・・・
はあ・・・きついなぁ・・・
里川五月さんと美愛ちゃんかぁ・・・
五月さんは清楚な感じで美人で俺の好みドンピシャだなぁ。
美愛ちゃんもお母さん似なのか、美人だけど、いきなり嫌われたっぽいなぁ。
やれやれだ・・・

玄関を開けて家の中に入り込む。
そうか・・・
隣に人が入るのか・・・
それも二人・・・
いやぁ・・・でも、旦那さんがいるだろうからなぁ。
ロボット化は・・・
ああ・・・
どうしよう・・・
ロボット化なんかしたら旦那さんにも美愛ちゃんにももろバレだろうし・・・
訴えられちゃったりするかもしれないよなぁ。
俺の五月に何をした、なんて・・・
ああ・・・どうしたもんかなぁ・・・
あんな美人でドンピシャな人が隣に来たというのに・・・
五月さんかぁ・・・
ううう・・・

(後編に続く)
  1. 2020/07/07(火) 21:00:00|
  2. 怪人化・機械化系SS
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Author:舞方雅人
(まいかた まさと)と読みます。
北海道に住む悪堕ち大好き親父です。
このブログは、私の好きなゲームやマンガなどの趣味や洗脳・改造・悪堕ちなどの自作SSの発表の場となっております。
どうぞ楽しんでいって下さいませ。

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