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舞方雅人の趣味の世界

あるSS書きの日々

四月馬鹿と痩せたい思い

世間はちょっと大変な状況になっておりますが、今日は四月一日。
そう、あの日です。
今年も奴がやってまいりました。

いやぁ、苦しかったです。
ホントまじめに昨年の10回でやめようかなと思いましたぐらいです。
でもまあ、何とか今年も奴を呼び戻すことができました。( ˘ω˘)

今年は11回目。
令和最初の四月馬鹿様の話をお楽しみくださいませ。

それではどうぞ。


四月馬鹿と痩せたい思い

「はっ、はっ、はっ、はっ・・・」
トレーニングウェアに汗がじっとりと浸み込んでくる。
朝の冷涼な空気がそれを冷やし、やや肌寒さを感じさせる。
今朝からもう四月とはいえ、まだまだ朝の空気は冷たい。
まあ、だからこそ、ジョギングするにはいい気候ともいえるかもしれないけど・・・

「はあ・・・はあ・・・はあ・・・」
公園に着いて私は脚を止める。
今日も行程の半分が終わり。
ここで一息入れて、また帰り道を走るのだ。

私は首に巻いていたタオルで汗を拭く。
ふう・・・
一旦休息。
私はベンチに腰掛ける。

あと二ヶ月しかない。
それまでにあと最低3キロは落とさなくちゃ・・・
できればくびれも欲しいし、二の腕のぷにぷにも・・・
あー、憂鬱だよー!
もしかして、これが世に言うマリッジブルー?

なんてバカなこと考えてないで、帰って会社に行かなくちゃ。
ふう・・・
今日もこのあと仕事だと思うとうんざりするわ・・・

「また走るのかい?」
えっ?
立ち上がった私に背後から声がかかる。
私が振り返ると、いつの間にか私が座っていたベンチに男の人が腰かけていた。
いや・・・男の人・・・なんだと思う。
つばの広い帽子のせいで顔は隠れて見えないけど、黒いコートを羽織った躰はがっしりとしているし、何より声も低く太い声だったから。

「また走るのか、と聞いている」
「え、ええ・・・」
思わず足を止めて答えてしまう私。
なんなのこの人は?
いったい何者?
関わらないほうが良さそう。

「なぜ走る?」
さっさとこの場を立ち去ろうと思った私に、再び問いかけてくるコートの男。
「なぜ走るのか聞いているのだが」
私は立ち去ることもできず男の方を向いたまま。
なぜって・・・
そんなの・・・
「痩せたいからよ」
「痩せたい? そんなに痩せているというのにか?」
驚いたような男の声。
痩せている?
私が?

「バカ言わないで! どこが痩せているっていうの?」
思わず私は声を荒げてしまう。
だって、私は痩せてなんかいないもの。
お腹だってポッコリお腹だし、くびれはないし、二の腕だってぷよぷよだし・・・
うっ・・・
自分で考えてダメージが・・・
ともかく私は痩せたいの!

「ククク・・・そうか・・・もっと痩せたいのか・・・」
今度は笑う?
「そうよ。私はもっと痩せたいの。ほっといて!」
私は今度こそ立ち去ろうと踵を返す。
やっぱりこんな人に関わるんじゃなかった。

「待て。いいものをやろう」
背後からまた声がかかる。
「結構です」
私はきっぱりと断る。
これ以上関わってなどいられない。
「クククク・・・いいのか? 痩せられるぞ」
ピタッと私の脚が止まってしまう。
どうして・・・
どうして止まっちゃうの?

「痩せられる?」
バカバカしい。
ダイエット商品ならとっくにいろいろと試したわ。
そんなに簡単に痩せられるなら誰も苦労しないわよ。
でも、私の心と裏腹に、私は男の方を再び振り返っていた。

「ほらよ」
男が何か投げてよこす。
私はそれをキャッチして、なんなのか確認する。
お菓子?
それはよくある錠剤型のお菓子を入れた平べったいケースのようなもの。
というか、ピルケースだわ。

「何これ、いらない。どうせ痩せるサプリメントでしょ。散々試したわ」
私はピルケースを投げ返す。
「ククク・・・そういわずに試してみたらどうだ? 劇的な効果があるかもしれんぞ」
キャッチしたケースを再び投げてよこすコートの男。
「いらないって言っているでしょ。だいたいこんな怪しいもの飲めますかっての」
私はそれをキャッチして、投げ返す。
「そう言うなって」
「いらないって」
何度かキャッチボールのようなことをしてしまう。
何やってんだ、私?
もう行かなきゃ。
「騙されたと思って」
「しつこいよ!」
私はまたしても投げ返されたケースを投げようとする。
「あれ?」
ベンチにはもう誰もいない。
嘘・・・
ほんの一瞬目を離した隙に?
周囲には隠れるようなところもないのに?
嘘・・・でしょ・・・
私は手元に残ったケースを見る。
いったい・・・あの男の人は何者だったのだろう・・・

                  ******

「おはよう」
「おはようございます」
「おはよう」
出社して自分の席に着く。
ふう・・・
今日も一日が始まる。
結局あのケースは家にまで持ち帰ってしまった。
もちろん飲むつもりはみじんもない。
あんな怪しいものが飲めるわけがない。
即ゴミ箱行きだ。
公園にも帰り道にもゴミ箱がなかったから持ち帰っただけのこと。
ただ・・・それだけのこと・・・

「これ、お願いね」
「あ、はい」
渡される仕事。
処理しても処理しても回ってくる。
毎日毎日。
それでいてミスは許されない。
ふう・・・

やっとお昼。
今日も野菜サラダのみ。
ふう・・・
我慢我慢。
痩せるためには我慢あるのみ。
なんとしても痩せてウエディングドレスをきれいに着こなしてやるんだから。
彼をびっくりさせてやるんだから。
でも・・・
でも・・・
もう・・・限界かも・・・

二の腕ぷにぷに・・・
お腹もぷよぷよ・・・
くびれはナッシング・・・
痩せたいよぉ・・・
毎朝走っているのに・・・
腹筋だってやってるのに・・・
腕だって・・・
はあ・・・

「お疲れ様」
「お先にー」
「またねー」
今日も終わった・・・
お腹空いた・・・
晩御飯はしっかり食べなきゃ・・・
糖質とカロリーは抑えつつ・・・
はあ・・・

「ただいまぁ・・・」
誰もいない我が家。
あと二ヶ月でここもお別れ・・・
と行きたいところだけど、残念ながらしばらくはおあずけ。
彼の都合で新居で一緒に過ごすのはちょっと先になる。
まあ・・・いいけど・・・

「疲れたぁ・・・」
カバンを放り出し、上着を脱ぎ捨てて、ソファに横になる。
おかず・・・作らなきゃ・・・
今日は何を作る日だっけ?
あー・・・もう・・・めんどくさいなぁ・・・
痩せさえすれば・・・

「騙されたと思って・・・か・・・」
私は躰を起こして、ソファの横のごみ箱の中から、捨てたピルケースを取り出す。
「痩せる薬・・・か・・・」
怪しい薬・・・
効き目なんてあるはずがない・・・
毒かもしれない・・・
でも・・・
でも・・・

ケースを開けて中身を出す。
オレンジ色の錠剤が三粒。
たった三粒?
一回分?
それとも三回分?
説明も何もないし・・・

私はどうしちゃったんだろう。
なんでこんなものを飲もうとしているんだろう。
怪しいのに・・・
毒かもしれないのに・・・

私は台所に行き、コップに水を注いで、錠剤を全部口に入れる。
あまーい!
何これ?
やっぱり単なるお菓子じゃないの?
それに口の中で一瞬で溶けちゃったみたい。
水を飲む間もなかったわ。
あーあ・・・
もうどうにでもなれ・・・

                   ******

うーん・・・
目覚ましが鳴ってる・・・
もう朝かぁ・・・
起きてジョギングに行かなくちゃ・・・
あーあ・・・
めんどくさいなぁ・・・
でも・・・痩せなきゃ・・・

私はベッドから起き出すと、服を着替えるためにパジャマを脱ぐ。
あれ?
何か違和感を・・・
気のせいか・・・お腹周りがすっきりしているような・・・?

私は急いで姿見のところへ行く。
嘘?
これが私?
本当に?
お腹が・・・スリムになっている・・・
腰も・・・くびれている・・・
胸も・・・少しだけ大きくなったような・・・
二の腕だって・・・

えっ?
嘘でしょ?
どうなっているの?
私はほっぺたをつねってみる。
痛い・・・
夢・・・じゃないよね?
どうなっているの?

トレーニングウェアを身に着ける。
いつもより腰回りが確実にゆるい。
逆に胸元はちょっときつく感じる。
嘘じゃない。
嘘じゃないんだわ。

あの薬?
そうよ・・・
きっとあの薬のおかげ。
あの薬は本当だったんだわ。

私はいそいそと玄関を出る。
なんだか躰が軽くなったような気さえする。
あの人にお礼を言わなくちゃ。
これで何の気兼ねもなくウエディングドレスが着られる。
彼もきっと、痩せたね綺麗だよって言ってくれる。
ああ・・・
なんて嬉しいの。

「はっ、はっ、はっ、はっ」
息も弾む。
足取りも軽い。
なんだか生まれ変わったような感じ。
痩せるってこんなに素敵なことだったんだわ。

公園に到着。
ふう・・・
私は脚を止め、タオルで汗を拭く。
気持ちいい。
さて、昨日の人はいるかしら・・・

いた。
昨日と同じベンチに腰かけているわ。
つばの広い帽子も黒いコートも昨日のまま。
うふふ・・・

「おはようございます」
私は彼に声をかける。
「ん?」
疑問なのか肯定なのかわからないような返事。
顔を上げさえしない。
まあいいけど。

私は彼の隣に座る。
「昨日はありがとうございました」
「ああ・・・お前か。薬は役に立ったかい?」
「ええ・・・たぶん」
私は改めて自分の躰を見下ろしてみる。
昨日とは明らかに違う自分の躰がそこにはある。

「クックック・・・そいつはよかった」
彼のちょっと耳障りな声もなんだか心地よく聞こえてくる。
「おかげで二の腕のぷよぷよも無くなったし、お腹もへこんだし、なにより腰がキュッと引き締まってくれたのがうれしい。本当にありがとう。まるで夢でも見ているみたいだわ。信じられない」
「クックック・・・そうだな。夢かもしれんな」
「えっ?」
「夢かもしれんって言ったのさ。クックック・・・」
彼の妙な笑い声が頭の中で反響する。
夢?
夢?
えっ? えっ? えっ?

                   ******

「えっ?」
私は顔を上げる。
「クックック・・・おはよう。いい夢は見られたかな?」
隣に座る帽子の彼。
えっ?
私はいったい?

ここは公園。
いつもの朝の風景。
あっ!
えっ?
嘘?
お腹は?
くびれは?
ええっ?
私の躰はいったい?

「どうした? 何を驚いている?」
「あっ、えっ? わ、私はいったい?」
「突然居眠りを始めたみたいだぞ。かれこれ30分ほども寝ていたか?」
「居眠り? 嘘・・・私はあなたから薬をもらって・・・それで痩せることができて・・・」
なにがなんだかわからない。
いったい何がどうなったの?

「あの薬を飲んだのか?」
「飲んだわ。おかげで理想の躰になることができて・・・あなたにお礼を言いたくて・・・」
相変わらずこちらを向こうともしない彼。
「クックック・・・残念だったな。それは夢だ」
「夢? 嘘・・・嘘でしょ?」
「嘘じゃないさ。俺はお前に夢を見せてやった。だが、それはお前が望んだ夢」
「私が・・・望んだ夢?」
あれが・・・夢?

「クックック・・・お前はあの薬をもらった時、こんな胡散臭い薬など飲むものかと思ったはず。効果だって信じていなかっただろう」
確かにそう思っていた・・・
「だが、お前はこうも思った。“騙されたと思って”飲んでみようとな。そしてお前は飲んだ」
ああ・・・その通りだわ。
「お前が本当に俺に騙されていると思っていたのなら、夢の中でもお前の躰は痩せはしなかっただろう。だが、お前は、“騙されたと思ったけど、騙されてはいなかった”と思いたかった。だから夢の中のお前は痩せたのさ」
騙されたと思い込もうとしながら、騙されていなかったと信じたかった・・・
「結局お前は俺に騙されていないと信じて、俺に騙されたのさ」
そ・・・んな・・・

「教・・・えて・・・今日は何月何日なの?」
「今日は四月一日だ。クヒャヒャヒャヒャヒャ」
彼が帽子を取る。
その下から出てきたのは、まさに歯をむき出して笑っている馬の顔。
そしてその頭には立派な鹿の角が生えている。
「あ、あなたはいったい?」
「俺か? 俺は四月馬鹿(しがつうましか)。今日からお前の主となる者さ。クヒャヒャヒャヒャ」
彼の笑い声が周囲に響く。
ああ・・・
あああ・・・

                   ******

「クフフフフフ・・・」
私は偉大なるご主人様にひざまずく。
なんて気持ちがいいのだろう。
私はもう人間なんかじゃない。
両手は先が割れた二つの蹄となり、両脚はつま先が丸い一つの蹄となる。
躰には茶色の毛が覆い、お尻には尻尾が垂れ下がる。
頭にはご主人様と同じく鹿の角が生え、顔は突き出した馬の顔となる。
私は馬鹿(うましか)。
ご主人様にお仕えする馬鹿の一匹なのよ。

「クククククク・・・これでお前も立派な馬鹿だ。今日は四月一日。お前も楽しんでくるがいい」
「はい。ご主人様」
私はご主人様に頭を下げる。
これからは、ご主人様同様に愚かな人間を騙しまくるの。
「クフフフフ・・・」
楽しみだわぁ。
私は獲物を見つけるために、朝の街中へと走り出すのだった。

END


いかがでしたでしょうか?
なんか自分でも騙したんだか騙されたんだかよくわからなくなってしまいましたが、それこそが奴の手なのかも。(笑)
ではではまた来年。(´▽`)ノ
  1. 2020/04/01(水) 21:00:00|
  2. 四月馬鹿
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Author:舞方雅人
(まいかた まさと)と読みます。
北海道に住む悪堕ち大好き親父です。
このブログは、私の好きなゲームやマンガなどの趣味や洗脳・改造・悪堕ちなどの自作SSの発表の場となっております。
どうぞ楽しんでいって下さいませ。

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