今日は超短編SSを一本投下します。
先ほど書き上げたばかりのピカピカの新作です。(笑)
タイトルは「あるマンガを参考にした結果」です。
ふとあのマンガのあの小道具って洗脳アイテムとして使えるよなーって思ったもので、突発的に書いてしまいました。
おそらく何のマンガの何の小道具かはすぐお判りになるかと思います。
お楽しみいただけましたら幸いです。
それではどうぞ。
あるマンガを参考にした結果
「むう・・・またしてもパワフル5(ファイブ)の連中にしてやられたか・・・これではいつまで経っても地球征服など夢のまた夢・・・なんとかせねば」
黒いフロックコートのような衣装に身を包み、三角帽をかぶった偉丈夫がため息をつく。
地球を狙うコロルス船団のダーズ船長だ。
移住に適した星を目指して宇宙をさまようコロルス船団は、この地球を目指して今や着々と進んでいる。
船団の到着までに地球を征服するのが、先遣船隊長であるダーズ船長の役目だった。
しかし、地球征服に着手したのもつかの間、彼らの前にはパワフル5という地球人の五人組が立ちはだかったのだ。
赤、青、黄、桃、緑色の五色のスーツを身にまとった男女の五人。
彼らの前には繰り出した魔獣人はことごとく敗北し、全く歯が立たない。
地球人などしょせんは下等な連中と見下していたダーズだったが、まさかここまでてこずることになるとは予想外だった。
もしこのまま船団本隊が来るまでに地球を征服できなかったとすれば、ダーズは船団長に処刑されてしまうのは間違いない。
まさに生きるか死ぬかの瀬戸際なのだ。
だが、いったいどうすればいいのか・・・
「うふふふ・・・ずいぶんとお悩みのようですわね、船長」
ダーズはその声に振り向く。
そこには丈の長い白衣を身にまとい、ややきつめの眼鏡をかけた美女が立っていた。
「ふん、ドクターマースか。何か用か?」
彼女は彼の先遣船で船医を勤めている女性だが、頭も切れるため、船の相談役も兼ねていた。
とはいえ、あくまで彼女は医師であり、戦いのスタッフではない。
「船医として船長の健康を気遣うのは当然ですわ。そのような青い顔をされているのに放ってはおけませんもの」
「青い顔は元からだ!」
ダーズが思わず言い放つ。
コロルス船団にはさまざまな人種がいるが、ダーズは青い肌のブルー人なのだ。
「ちょっとした冗談ですわ。それに苦悩なさっているのは本当でしょ?」
「確かにそうだが・・・お前の出番ではない」
「ドクターとしてはそうかもしれません。ですが・・・相談役としては・・・ある提案をお持ちしたのですが・・・」
くすっと笑うマース。
その笑みは見るものを魅了すると言ってもいいだろうが、やや冷たさを感じさせるものでもある。
「提案だと?」
ぎろりと彼女を見るダーズ。
「ええ、パワフル5を倒せばいいのでしょ?」
こともなげなその言い方に、ダーズはムカつきを覚える。
「簡単に言うが、そうやすやすとはいかんぞ。奴らのチームワークは抜群だ。それこそ一人一人のパワーを何倍にもしてしまう」
彼の言う通りなのだ。
パワフル5のそれぞれに対しては力で上回る魔獣人を何体も送り込んできた。
それこそ、一局面では圧倒したこともあったぐらいだ。
しかし、そのいずれもが彼らのチームワークに倒されたのだ。
彼女の思うように簡単に倒せる相手ではない。
「ええ。ですが、そのチームワークを崩してしまえばどうかしら? その上彼らのパワーをこちらが利用できれば・・・ふふふふ」
意味ありげに笑っているマース。
どうやら自信があるらしい。
「ふむ、それほどいうならどのような策があるのか言ってみろ」
ダーズも興味を覚える。
いったいどのような策があるというのか?
この際は何でも試してみるべきかもしれんな。
「実はこのようなものにヒントがありましたの」
マースが懐から何かを取り出す。
それは地球人たちが読むマンガと呼ばれるものだった。
「マンガ・・・だと?」
「ええ。これをご覧ください」
開いて差し出されたマンガを読むダーズ。
どうやら基本はギャグ系のマンガのようだが・・・
「これは・・・」
登場したある小道具がダーズの興味を引く。
「うふふ・・・これと同じようなものを作ってみましたわ。お試しいただけますか?」
「うむ。面白い。やってみよう」
ダーズは力強くうなづいた。
******
「グハハハハハ! おびえろ! すくめ! 我が船団の前にひれ伏すがいい!」
大きな角を頭に載せた水牛の魔獣人スイギューダが町を破壊する。
その周囲には痩せた灰色の躰をしたグレイという戦闘員たちが付き従っている。
彼らこそダーズの配下として地球征服のために働く連中なのだ。
「いいぞ。もっと暴れろ! やがてパワフル5がやってくる。その時こそ・・・」
スイギューダたちの暴れる様子をビルの屋上から見下ろすダーズ。
その手には何やら黄色いふわふわした毛玉のようなものが握られていた。
やがてオートバイの爆音とともに五人の戦士が現れる。
赤、青、黄色、桃色、緑のスーツをまとった男女。
地球を守るパワフル5だ。
彼らは暴れまわるスイギューダの前に立ちはだかると、威勢よく名乗りを上げる。
まさに地球人のヒーローと言っていいだろう。
だが・・・
今日はそうはいかんぞと、ダーズはほくそ笑んだ。
五人にとびかかるグレイたちをバッタバッタとなぎ倒すパワフル5。
グレイたちは地球人など10人相手でも問題ない強さのはずなのだが、パワフル5の前ではまるで赤子の手をひねるかのようにあしらわれる。
あのスーツの威力はすごいものだ。
多少鍛えているとはいえ、地球人の能力をこれほどまでに高めるスーツとは。
何とか分析する必要があるだろうが、これまではそのかけらさえも手に入れることはかなわなかったのだった。
グレイをあらかた倒し、スイギューダの前に集結する五人。
「よし、あとはもうお前だけだ!」
「おとなしく帰るのなら見逃してやってもいいぜ」
「さっさとごめんなさいすれば?」
魔獣人一体ならほぼ勝利は間違いない。
そういう気持ちが多少出ているのだろう。
彼らの言動にはある程度の余裕が見える。
事実スイギューダはほぼ追い詰められた格好となっていた。
「どれ、マースの策を使ってみるか」
ダーズは手にした黄色の毛玉のようなものを投げつける。
狙いはパワフル5の桃色。
五人の中で桃色だけが女性なのだ。
あのマンガではこの道具が使われていたのは女性。
それを忠実に再現したというマースの言葉を信じるならば、この道具が威力を発揮するにはやはり女性に嵌めるしかないだろう。
「グハハハハハ! 舐めるなよ! お前たちなど俺様だけで充分だ!」
スイギューダが大声で笑う。
決してハッタリではない。
だが、不利なのも間違いないだろう。
いつもならばこのままパワフル5の勝利となるところだ。
はたして今回はどうかな?
「えっ?」
パワフルピンクが声を上げる。
気が付くと黄色い毛玉のようなものが両手に貼り付いていたのだ。
「何これ?」
パワフルピンクが手に付いたものを振り払おうと両手を振る。
その瞬間、その毛玉のようなものが大きくなり、彼女の手をすっぽりと覆うくらいに膨らんだのだ。
そう、ちょうどスポーツの応援をするチアガールの持つポンポンのような黄色いふわふわしたものに。
「な?」
一瞬何が起こったのかわからないパワフルピンク。
だが、その両手から力があふれてくるのを感じる。
躰が動き出し、足を大きくあげたくなる。
両手を突き上げ、思い切り声を上げたくなる。
フレー! フレー! と言いたくなる。
応援したい!
応援したい応援したい!
応援したーーーい!
スッと前に出るパワフルピンク。
黄色いポンポンを胸のところに構え、軽やかな足取りでスイギューダの背後に行く。
あまりの突然の行動に、ほかの四人もスイギューダさえもただ見ているだけだ。
「ピンク・・・?」
「ピンク?」
唖然としているパワフルレッドほか四人。
いや、スイギューダさえも唖然としていたのだった。
「フレー! フレー! スイギューダ!」
大きな声でポンポンを振り上げるパワフルピンク。
背筋がぞくぞくするほどの快感が走る。
一瞬にしてパワフルピンクの思考は染め上げられてしまう。
私はチアガールなのだ。
スイギューダを応援するチアガールなのだ。
これこそが私の本当の姿なのだ。
なんて気持ちがいいのだろう。
応援することがこんなの気持ちいいことだったなんて。
「フレー! フレー! スイギューダ! 頑張れ頑張れスイギューダ! 頑張れ頑張れスイギューダ!」
足を大きく蹴り上げ、両手のポンポンを振り回す。
気持ちがいい。
とっても気持ちがいい。
こんな気持ちがいいことだなんて知らなかった。
もっともっと応援したい。
「頑張れ頑張れスイギューダ! パワフル5なんてぶっ飛ばせー!」
そうよ。
パワフル5なんてぶっ飛ばしちゃえー!
「ピ、ピンク?」
「何やってんだピンク!」
「おかしくなったのか、ピンク!」
予想もしないピンクの行動に戸惑う四人。
一方スイギューダの方は妙に力が湧いてくることに気が付いていた。
なんだこれは?
応援されるということがこんなに力強いものなのか?
やれる!
これはやれるぞぉ!
「うわぁっ!」
スイギューダの頭突きに跳ね飛ばされるパワフルグリーン。
続けざまにブルーも跳ね飛ばされてしまう。
「くっ!」
素早く態勢を整えるレッド。
イエローもグリーンを助け起こす。
なんていう強烈な頭突きだ。
何度も食らえばただでは済まないだろう。
「いいぞ! いいぞ! スイギューダ! いっけー! いっけー! スイギューダ!」
目の前で仲間がダメージを負っているというのに、ピンクの気持ちは高揚していた。
自分の応援でスイギューダがパワフル5を圧倒しているのだ。
それがすごく気持ちがいい。
もっともっと応援したい。
応援してスイギューダが活躍するのを見たい。
ピンクはもうそのようにしか思えなかった。
仲間なんてどうでもいい。
「ぐわぁーっ!」
イエローが弾き飛ばされる。
「レッド! ここはもうパワフルシュートで!」
「だめだ! あの技は五人がそろわなければ!」
「ちくしょう! ピンクはどうしちまったんだ!」
口々に叫ぶパワフル5のメンバーたち。
「おそらくあのポンポンだ。あれがピンクを操っているんだ!」
「ピンク! そのポンポンを手から離せ! 正気に戻ってくれ!」
「いやよ! このポンポンは私の物! 誰にも渡さないわ! フレー! フレー! スイギューダ!」
すらりとした脚を蹴り上げて応援するピンク。
もうスイギューダの応援しか頭にない。
「ちくしょう! 五人そろわないと技の発動ができないなんて誰が考えたんだよ!」
******
「ぐふっ!」
スイギューダの角に腹を貫かれて倒れ込むブルー。
そのそばにはレッド、イエロー、グリーンも地面に横たわっていた。
「グフフフフ・・・」
倒れたブルーのヘルメットを踏み潰すスイギューダ。
終わったのだ。
あのパワフル5を倒したのだ。
自分でも信じられないが、確かに四人は足元に倒れているのだ。
「ヤッター! ヤッター! スイギューダ! 強いぞ強いぞスイギューダ! いえーーーい!」
ポンポンを振り回して喜ぶピンク。
倒されたのが仲間たちだったことなどもうどうでもいいのだ。
「グフフフフ・・・ありがとうよ。お前の応援のおかげだ」
ピンクのところに戻って礼を言うスイギューダ。
そのことがまたピンクをうれしくさせる。
自分の応援で彼が勝ったことがうれしい。
もっともっと応援したい。
これからももっと。
ピンクはもはやパワフルピンクではなかった。
コロルス船団のピンクのチアガールとなったのだ。
この結果はダーズをも充分満足させるものだった。
まさかこうもあっさりとパワフル5を倒せるとは。
これなら地球征服もはかどるだろう。
それに・・・いい手駒も手に入ったようだ。
やがてその脅威のパワーで地球人たちを恐怖のどん底に落としいれるスイギューダのそばには、黄色いポンポンを振って彼を応援するピンク色の女戦士の姿が付き従うのが見られるようになったのだった。
END
いかがでしたでしょうか?
あの道具っぽさが出ていればよいのですが。
今日はこんなところで。
それではまたー。
- 2020/01/25(土) 21:55:30|
- 女幹部・戦闘員化系SS
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