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舞方雅人の趣味の世界

あるSS書きの日々

ママと遊ぼう (2)

ブログ5000日達成記念SS、「ママと遊ぼう」の二回目です。

受付のお姉さんから、なかば押し付けられるようにレンタルのセンチューラスーツを渡されてしまった聖香ママ。
彼女はいったいどうなってしまうのだろうか? (笑)

それではどうぞ。


                   ******

「それじゃ行ってきまーす。帰ってきたらお願いだからね」
「もう・・・さっさと行きなさい!」
私は龍介を追い立てるように学校に送り出す。
はあ・・・やれやれ・・・
あの子ったらもう完全に私が遊びに付き合ってくれるものと思っているんだから・・・
とはいえ、今日こそは“戦隊ヒーローになろう”に行かなくても済みそうではあるわね。
六百円使わなくて済むわぁ。

昨夜はもう龍介は大はしゃぎだった。
家に帰ってきたらさっそくあのドラゴンブルーのスーツに着替え、ずっと着たまま過ごしていたのだ。
食事の時もヘルメットのまま食べようとして私に怒られる始末。
寝るときもそのまま寝ようとしたものだから、それは借りものなんだからと言ってパジャマに着替えさせるのに苦労したわぁ。
きっと今日も学校から帰ってきたらすぐにドラゴンブルーのスーツに着替えるんでしょう。
そして私にもあの黒いセンチューラとやらのスーツを着て戦ってほしいというに決まっているわ。
はあ・・・
困ったものねぇ・・・
こっちは子供じゃないんだから、あんなスーツを着てヒーローごっこって言われてもねぇ・・・

とりあえず私は、龍介がいない間に掃除や洗濯を済ませようかと立ち上がる。
それらが一通り終わると、だいたいお昼近くになるのよね。
そしてお昼を済ませて一息ついたら、もう龍介が帰ってくる時間というわけ。
主婦もこれでなかなか忙しいのよね。

そういえば、このスーツって洗濯とかしなくてもいいのかしら?
私は龍介の部屋で洗濯物の出し忘れがないかどうか確認しながら、ベッドの脇の紙袋に目を止める。
二つの紙袋の片方にはドラゴンブルーの青いスーツが、もう片方には悪の組織ジャドーマの女戦闘員センチューラのスーツが入っている。
昨日も一旦は広げてみたけど、頭からつま先までをピッタリ覆うような全身タイツみたいになっていて、その上からベルトやブーツなどを組み合わせるようになっているようだ。
モニターの中に映し出されていたセンチューやセンチューラたちは、それこそ躰のラインが露わになるような姿だったから、着たらきっと私もそんな感じになるのだろう。
うう・・・そんなの無理に決まってる。
絶対に着るなんて無理よ・・・

とりあえず龍介には自分だけで我慢してもらわなくちゃ。
このスーツを着るぐらいなら、たとえ六百円払ってもあそこに連れて行く方がマシよね。
そしてこのスーツも返却して・・・
返却して・・・
返却・・・かあ・・・
でも、まあ、返却する前に一度くらいは・・・
私は紙袋から黒いセンチューラのスーツを取り出してみる。
このスーツの手触りはとてもいい。
たぶんラバーではなくナイロンだと思うけど、すごくすべすべで感触がいいのよね。
どうしよう・・・
なんだか着てみたくなっちゃった・・・
着てみようか・・・
一度も着てみもせずに返却するのもなんだかよね・・・
今なら誰もいないんだし・・・
一度だけ・・・

私はなんだかドキドキしながらスーツと残りのベルトなどが入った紙袋を持って部屋に戻る。
そしてベッドの上にスーツを広げていく。
白いシーツの上の真っ黒なスーツがとても目を惹きつける。
なんだかますます着てみたくなっちゃうわ。

私は紙袋に一緒に入っていた使用上の注意書きに目を通す。
ええと、この度は当アミューズメント施設“戦隊ヒーローになろう”のスーツレンタルをご利用いただきましてありがとうございます、着用の前にこの注意書きをお読みいただきますようお願いいたします・・・と。
このスーツは、邪悪結社ジャドーマの女性型戦闘員センチューラを模したスーツとなっております、このスーツを着用していただきますことで、戦隊ヒーロー側のスーツのゴーグルにも映像が映し出されるようになっております、か・・・
やっぱりこのスーツを着ることで、ドラゴンブルーのゴーグルに私の映像が出てくるってわけなのね。
スーツの能力を充分に生かすため、着用時には何も身に着けない状態での着用をお願いしますって、裸で着ろってことなの?
下着とか着ていたら下着の線とかが出てしまうってことなのかしら・・・

私は窓にカーテンを広げ、外から見えないようにしたところで着ているものを脱いでいく。
なんだか変な気分だわ。
何やってんのかしらね、私。
そう思いながらも、私は服をすべて脱ぎ捨て、下着も脱いで裸になる。
そしてドキドキしながらスーツを手に取り、背中の開口部を確認すると、そこから足を入れていく。
「ヒャッ!」
思わず声が出てしまう。
なんて気持ちいいの?
足がするっと滑るような感じでスーツの中に入っていく。
そしてすぐにキュッと締まるような感じで密着してくるのだ。
パンストやタイツなんかとは全然違う密着感。
まるで肌と一体化するみたい・・・
それがなんとも気持ちがいい。

私はもう片方の足もスーツに通すと、そのままたくし上げるようにして腰まで上げる。
次にスーツを胸のあたりまで持ち上げるようにして、右手をスーツの袖へと通していく。
袖の先端は手袋状になっていて、私はそこに指先を入れていく。
指先まですべて入ったところでスーツが右腕に密着しピッタリと一体化するので、同じように左手もスーツの中へと入れていく。
両手を通したら今度は頭。
スーツの上半身全体を頭からかぶるような感じで頭を入れる。
センチューラには目を出す覗き穴がないから、目を開けても真っ黒なスーツの裏地が見えるだけ。
でも、口元は開いているのよね。
だから、全身が真っ黒なのに、口元だけが肌色と赤い唇が見えるのが、とても異質な生き物を思わせていたんだっけ。
頭がスーツに収まると、背中の開口部が閉じてスーツが全身に密着する。
首も腰回りも胸の形もすべてがぴったりとスーツに包まれるのだ。
そしてだんだんと目も見えてくる。
目の部分はスーツで覆われているはずなのに、周囲の光景が見えるのだ。
へー。
最近の技術ってすごいのねぇ。
こんなすごいスーツを貸し出しちゃってもいいのかしら?

スーツを着終わった私は、ブーツを履いて手袋を嵌めていく。
このブーツも手袋も黒一色で、私は口元以外すべて黒に包まれる。
最後にジャドーマの悪魔の顔のような紋章の付いたベルトを腰に巻いて出来上がり。
うん。
これで私も邪悪結社ジャドーマの女性型戦闘員センチューラの一員ね。

私はそのまま姿見の前に立つ。
鏡の中には、全身が真っ黒のピッタリした衣装に覆われた女が一人映っている。
頭部は水滴のようにやや頂部がとがった形をしており、目も鼻も耳も覆われているけど、口元だけが露出して、私のピンク色の唇が笑みを浮かべていた。
不思議なことに目が完全にスーツの布地に覆われているのに、全くそれを感じない。
こうやって鏡に映った自分の姿を見ることができるのだ。
お尻も胸もピッタリとスーツに覆われているのに、それがかえって裸であるかのように躰の線をあらわにしている。
とても恥ずかしいはずなのに、ちっとも恥ずかしさを感じない。
それどころか、むしろ見せつけたくなるぐらい誇らしさを感じてくる。
腰にはジャドーマの紋章が付いたベルトがアクセントとして全体を引き締めている。
この紋章を見ているだけで、ジャドーマに従いたくなってくる感じ。
そう・・・
私は邪悪結社ジャドーマの女戦闘員センチューラ。
偉大なる首領様の忠実なるしもべ。
なーんちゃって。
ドラゴンブルー龍介と戦隊ごっこをするんだから、ちゃんと役になりきらなくちゃね。

私は姿見の前で両手を頭の上に伸ばし、手のひらを合わせて腕を頭の脇にピッタリと付ける。
こうすることで頭と腕が一体化したようになり、一匹の線虫に見えるというわけ。
なんといっても私たちセンチューラは線虫の戦闘員なのだから。
これこそが私たちにふさわしいポーズなのよ。
そしてそのまま私は腰をくねらせる。
うねうねと動く線虫だ。
なんだか気持ちいい。
もっともっとうねらなくちゃ。
「クネクーネー!」
私は思わず声を出す。
途端に全身にゾクゾクするような快感が走る。
モニターに映し出されていたセンチューやセンチューラたちもこうして声を発していたわ。
なんて気持ちがいいの・・・
最高だわ。
「クネクーネー! クネクーネクネクーネー!」
私は我を忘れて躰をくねらせ続けていた。

いっけない・・・
いったい私はどれだけの間腰をくねらせていたのだろう?
全然疲れもしなかったし、まだまだくねらせていられるのは間違いないけど、気が付くともうお昼。
午前中は結局何にもしなかったことに・・・
まあ、いいか・・・
掃除も洗濯もしなければ死ぬというものでもなし。
こうしてセンチューラとなって腰をくねらせている方が楽しいわ。
なんと言っても気持ちがいいしね。
龍介がドラゴンブルーのスーツを着たがるのもわかるわぁ。

「うふふ・・・」
私はもう一度姿見に映る自分の姿を確認する。
全身真っ黒の女が笑みを浮かべているわ。
偉大なる邪悪結社ジャドーマの女戦闘員センチューラ。
こうしていると首領様の声が聞こえてくるみたい。
はい・・・
私は女戦闘員センチューラです。
何なりとご命令を。
すっと片膝をついてひざまずく。
ああ・・・
役になりきるっていいわねぇ。
どうせもう少ししたら龍介が帰ってくるし。
それならいちいちこのスーツを脱ぐのも面倒だし、この姿のままでいましょうか。
この躰・・・とても素敵・・・
ずっと着ていたいかも・・・

掃除や洗濯をしなかったことでお腹が減っていないということもあったけど、結局お昼は甘めのコーヒーを飲むだけで済ませてしまった。
口元が開いているからこういう時は便利ね。
ドラゴンブルーのようなヘルメットタイプのスーツなら外さなきゃならなくて不便よね。
本物のセンチューラたちが何を食べているのかは知らないけど、口があるからには何か食べているんでしょうね。
さて・・・
もうそろそろ龍介が・・・

「ただいまー」
うふふふ・・・
来た来た・・・
正義のヒーローのご帰還だわ。
しっかり出迎えてあげなくちゃね。

「龍くんおかえりー。クネクーネー!」
私が玄関まで出迎えて両手を上にあげ腰をくねらせると、龍介の目がまん丸くなる。
「マ、ママ?」
「ブッブーッ! 残念でしたー。それは龍くんが学校へ行くまでの私。今の私は邪悪結社ジャドーマの女戦闘員センチューラなのよぉ。クネクーネー!」
私はここぞとばかりに腰をくねらせる。
あーん・・・
センチューラになるのって気持ちいい・・・

「うっわー! うれしいー! ママあのスーツを着てくれたんだね? ありがとう」
「あん、もう・・・言ったでしょ。私はママじゃなくセンチューラよぉ。早く手を洗ってうがいしてバトルスーツに着替えて私と戦いにいらっしゃい。クネクーネー!」
ああ・・・ドキドキする。
いよいよドラゴンブルーとの戦いだわ。
え?
あ・・・はい・・・
わかりました・・・
まずは正義に花を持たせてあげろと・・・ですね?
偉大なる首領様・・・
クネクーネー!

「きゃあぁぁぁ!」
ドラゴンブルーのキックを受けた私は床に倒れ込む。
もちろん子供の蹴りの力などたいしたことないし、このスーツは本当に衝撃をやわらげてくれるみたいなので痛みなどほとんど感じない。
倒れ込むのは演技に過ぎないのだ。
でも、ドラゴンブルーは私の上に馬乗りになってポカポカと叩いてくる。
「ああん・・・もうダメ・・・やられた。やられましたぁ。クネクーネー!」
私は頭をカバーするように両手で覆い、腰をくねらせて死んだふりをする。
「やったぁっ! ジャドーマのセンチューラを退治したぞ!」
私から離れてガッツポーズをするドラゴンブルー。
うふふふ・・・
龍介ったらホント楽しそう。
でも、その喜びは今だけよ。
今回はやられてあげただけなんだから。
そのうちお返しをしてあげるんだからね。
うふふふふ・・・

「あーあ・・・負けちゃった。ドラゴンブルーは強いわね」
私は死んだふりをやめて立ち上がる。
「うん。ドラゴンブルーは無敵なのだ!」
シャキーンという感じでポーズを決める龍介。
「でも、邪悪結社ジャドーマはこの程度では終わらないわよぉ。クネクーネー!」
私も負けじと両手を上に伸ばして腰をくねらせる。
今回は首領様の命令だから負けてあげただけなんだからね。
思わずそう言いたくなる私。
あれ?
私・・・そんな命令を受けたかしら・・・
首領様なんて・・・
まあ、いいか・・・
「大丈夫! ジャドーマはドラゴンブルーとバードレッドが必ず倒す。ジャドーマの首領もやっつける」
あらあら、すっかりバードレッドとはいいコンビになったみたいね。
でも、首領様がそう簡単に倒せると思ったら大間違いよ。
いずれそれを思い知らせてやるんだから。

あー、でも面白かったわぁ。
こうしてセンチューラのスーツを着て首領様のために働くのって素敵。
もっともっとジャドーマのために働きたいわぁ。
ジャドーマのために・・・

それにしても・・・
私は立ち上がって室内を見る。
やっぱりここはちょっと狭いわよねぇ。
さっきも戸棚にぶつかりそうになったりしたし・・・
テーブルを片付けただけのリビングじゃ戦うには物足りない広さだわ。
でも・・・
うちはそんなに広い部屋なんてないし・・・
せめて家具を退かして何もない部屋を作れれば・・・
私はふとひらめく。
そうだわ。
パパの部屋を片付けちゃいましょう。
どうせまだまだ戻ってこないんだし、机や本棚をガレージなり物置なりに押し込んじゃえば・・・
うふふふ・・・
そうしましょう。
そうすれば少なくとも家具にぶつかったりする心配はなくなるわ。
うふふふふ・・・

そんなことを思いながら、結局私と龍介は晩御飯の前までお互いにスーツを着たまま過ごしてしまった。
龍介はドラゴンブルーのスーツを脱ごうとしなかったし、私もこのセンチューラのスーツを脱ぎたくなかったからだ。
晩御飯の支度をしながらも、私は時々クネクーネーと言いながら腰をくねらせ、そのたびにドラゴンブルーの龍介が、現れたなジャドーマのセンチューラと言って攻撃してくるので、私もついつい戦ってしまう。
ホント、楽しいわぁ。
もう、ずっとセンチューラのままでもいいぐらい。
クネクーネー!

                   ******

「ふう・・・これで良し・・・と」
翌朝、私は龍介を学校に送り出すと、すぐにセンチューラのスーツに着替えてしまう。
それにしても本当にこのスーツは気に入っちゃったわぁ。
なんだかこれを着てセンチューラの姿にならないと落ち着かないような気がするのよね。
なんというか、私が私じゃないような感じ。
いわば、人間の姿は仮の姿、擬態というような感じかしらね。
うふふふ・・・
やれやれ・・・
すっかり私自身が嵌っちゃっているわねぇ。
それも正義の戦隊じゃなく邪悪結社ジャドーマの側の一員として。
「クネクーネー!」
私は姿見の前で両手を頭の上に伸ばして手のひらを合わせ、腰をくねらせて声を出す。
ああん・・・
気持ちいい・・・
そうよ・・・
私はセンチューラ。
邪悪結社ジャドーマの女戦闘員センチューラよぉ。
ああん・・・
最高だわぁ。

「あら、意外と軽いものね・・・」
私は夫の部屋に入ると、机やいすや本棚を部屋の外へと運び出す。
もっと重たかったような気がしていたけど、私一人でも充分動かせるわ。
それにしてもこんなに軽かったかしら?
まあ、軽いことはいいことよね。
これならこの部屋を遊び場にするのも簡単だわ。
とりあえず机と本棚はガレージに放り込んでおいて、他の家具も適当に物置に押し込んでしまいましょう。
あの人が帰ってきたら・・・
その時はその時よ。
うふふふふ・・・

がらんとなった夫の部屋。
まあ、広さ的にはそれほどではないけど、家具がなくなったことで戦うにはよくなったわね。
それにしても・・・
なんというか殺風景だわ。
これじゃホントにただの空の部屋。
何かこういい物がないかしら・・・
そうね・・・
大きなジャドーマの紋章とか・・・
いいかも・・・

「クネクーネー! クネクーネー!」
私は自分の部屋に戻ると、何度も声を上げながら腰をくねらせる。
なんて気持ちいいのかしら。
もうやめられない。
ああーん・・・
なんだか頭がぼうっとしちゃう・・・
力もなんだか抜けてきちゃった・・・
私はぱたりとベッドの上に横たわる。
はあ・・・
シーツがスーツに触れるのを感じる。
もうこのスーツは私の肌同然。
私はスーツの上から胸を揉む。
ああん・・・
気持ちいいー!
おっぱい感じちゃう・・・
自然と私の手は股間へと延びていく。
スーツの上から撫でるだけなのに、躰がぴくっと反応してしまう。
ああ・・・
いつものオナニーなんかと全然違う。
スーツ全体が性感帯にでもなったみたい。
最高だわぁ。
ああ・・・
指が動く。
止まらない。
イっちゃいそう・・・
ああ・・・ん・・・
「クネクーネーーーーーー!」
私は指を動かしながらひときわ大きく声を上げていた。

「ただいまー」
「クネクーネー!」
午後になって龍介が帰ってくる。
私はもちろんセンチューラとして声を上げ腰をくねらせながら出迎える。
ああ・・・
ゾクゾクするわぁ。
今日もこれから正義との戦いが始まるのよ。
午前中のオナニーもよかったけど、こうして正義と戦うのもたまらない。
早く早くドラゴンブルーに変身してぇ。

私は家具を取り払った夫の部屋にドラゴンブルーを引き入れる。
「パパの部屋が?」
「クネクーネー! 今日からはここが戦いの場よ。ちょっと狭いけど、これなら机の角や本棚を気にしなくていいでしょ」
「うん。でもいいのかなぁ?」
「いいに決まっているわ。文句なんか言わせないわよ。クネクーネー!」
そうよ。
うだうだ文句を言ったりしたら殺してやるんだから。
正義のヒーローでもない一般の人間なんか私たちに歯向かえるはずないわ。

「クネクーネー!」
「よーし! 来い! ジャドーマのセンチューラめ!」
ファイティングポーズをとるドラゴンブルー。
行くわよー!
私たちジャドーマに歯向かう者は容赦しないわ!
「クネクーネー!」
私は声をあげながらドラゴンブルーに飛びかかっていくのだった。

「あーあ、面白かった。ありがとうママ」
「いいえぇ。どういたしまして」
私はやられたふりからゆっくりと起き上がる。
ヘルメットを外した龍介はとてもうれしそう。
そりゃあなたは勝ったんだから気持ちいいでしょうね。
でも、私はやられてあげただけなのよ。
せいぜい今のうちいい気分に浸っていなさい。
いずれ私たちがもっと力を付けたら・・・
その時は・・・
うふふふ・・・
って、あれ?
力を付けたらって・・・
誰が?

「ママ?」
龍介がどうしたのかという目で私を見ている。
いけない。
なんだかぼうっとしてしまったわ。
さて、楽しい時間はここまでね。
残念だけど、人間に擬態して買い物に出かけなきゃ。
さすがに冷蔵庫の中も残り少なくなってきたしね。
「ごめんごめん。なんだかぼうっとしたみたい。買い物に行くけど一緒に行く?」
「行く!」
私が龍介にそういうと、龍介はうれしそうにうなずいた。

買い物に行く途中、私と龍介はあの“戦隊ヒーローになろう”のある施設の前を通りがかる。
そういえば、家でスーツを着るようになったから、昨日今日とここへは来てないわねぇ。
さすがに家の中だけじゃ狭いから、今度はまたここに来ようかしら。
その時は私もジャドーマ側の一員で参加させてもらえないかしらね。
仲間たちと一緒に戦いたいわぁ。

「あ、耕太君のママだ」
龍介の声に思わず見ると、耕太君ママの由紀奈さんが何だかうつむき加減で歩いてくるのが目に入る。
どうしたのかしら?
なんだか元気がなさそうね。

「由紀奈さん」
「こんにちは」
「えっ? あっ! こ、こんにちは」
声をかけたのが私たちだと気づくと、ぎこちない笑みを見せてくる由紀奈さん。
「どうしたんです? 何かあったんですか?」
「いえ、その・・・」
彼女の視線がちらっと手にしている紙袋に行く。
あら?
もしかして彼女の持っている紙袋は・・・
センチューラのスーツが入っていたものかしら?

「いきなり声をかけちゃってごめんなさいね、なんだかずいぶんと浮かないような顔をしていたものだから」
「あ、いえ、お二人はここへ?」
由紀奈さんが“戦隊ヒーローになろう”の施設を見る。
「いいえ。今日は龍くんと買い物に行くところ。スーツをレンタルしたおかげで家で遊んでいるから、ここには来てないの。由紀奈さんも耕太君と遊んでいるんでしょ?」
「それが・・・そのことで耕太と言い合いになっちゃって・・・」
「えっ? 言い合い?」
どういうことなのだろう?
言い合いになるなんて・・・
「その・・・耕太はバードレッドのスーツを着て楽しんでいるんですけど、私にもあのスーツを着て戦ってほしいって言ってきて・・・でも、あのスーツを着るのはどうしても恥ずかしくて、着るのは・・・その・・・」
ああ、そういうこと。
羞恥心がスーツの魅力を上回ってしまっているのね。
そんなの一度あのスーツを着ればすぐに消えてしまうのに。
もったいないわぁ。
センチューラのスーツは素晴らしいわよぉ。
由紀奈さんだったらきっと素敵なセンチューラになるでしょうに。

「それで・・・いっそのことスーツを返してしまおうかなと。家にこのスーツがある限り、耕太は着ろ着ろって言ってくるでしょうから」
「ダメよ、由紀奈さん」
「えっ?」
思わず私が強く言ってしまったことで、由紀奈さんが驚いている。
でもダメ。
スーツを返してしまうなんてとんでもないわ。
ここは私がちゃんとスーツの良さを教えてあげないとね。

「由紀奈さん、そのスーツを返してしまったら、きっと耕太君はがっかりするわ。それはそれはとてもがっかりするわ」
「で、でも・・・」
「由紀奈さんは耕太君にそんながっかりさせてしまっていいの? 恥ずかしいってだけでスーツを着ないで耕太君の願いを無視して、それでいいの?」
「聖香さん・・・」
「うちの龍くんはすごく喜んでくれたわ。そりゃ、最初は私もあのスーツを着るのは恥ずかしかったけど、着てみたらそんなのは気にならなくなったし、ドラゴンブルーと戦うのはとっても楽しかったわよ」
そう・・・
最初は私だってあんな躰の線が露わになるスーツを着るのは恥ずかしかった気がするわ。
でも、今はもうそれこそがセンチューラである喜びの一つ。
ジャドーマの女戦闘員として、愚かな人間の男どもを油断させるためにも、センチューラは美しいボディラインを見せつけなくてはならないのよ。

「だから、一度着てみて。何ならうちで一緒に着ましょうよ。私も一緒に着れば二人なんだから恥ずかしくないわよ」
「え? ええ?」
「そうしましょうよ。明日、午前中にスーツを持ってうちに来て。二人で邪悪結社ジャドーマの女戦闘員になって、耕太君や龍くんを迎え撃ちましょうよ」
「うわぁ! うちで耕太君と一緒に遊べるの? それいい! お願いしますおばさん。耕太君と一緒に!」
私の言葉に思わず目を輝かせる龍介。
バードレッドと一緒に戦えるというのはドラゴンブルーにとっても喜びだろう。
「ほら、うちの子もこう言ってますし。耕太君もきっと喜びますよ。何よりママが相手をしてくれるというのは、子供にとってとてもうれしいことですから」
私はここぞとばかりに畳みかける。

私は半ば強引に由紀奈さんと約束を交わしてLINEを交換する。
由紀奈さんもどうやら断り切れなくなったようで、明日の午前中にうちに来て、スーツを一緒に着てみるということに同意してくれた。
大丈夫。
いったんあのスーツを着たら、彼女だってきっとセンチューラのすばらしさを理解するに決まっているわ。
二人で一緒にセンチューラになりましょうね。

                   ******

「うふふふふ・・・」
私はワクワクしながら由紀奈さんを待つ。
今朝は龍介も楽しみにしながら学校へ向かっていったから、きっと学校が終わったら一直線で帰ってくるわね。
私も由紀奈さんと一緒にセンチューラになれるかと思うとドキドキが止まらないわぁ。
うちの住所はちゃんと送っておいたし、わからなければすぐに連絡してと言っておいたし、近所の目印も知らせておいたからきっと大丈夫よね。
ああ・・・
早く来て欲しいわぁ。

玄関の呼び鈴が鳴る。
来た!
私は急いで玄関へと向かう。
ドアを開けると、そこにはややうつむいた由紀奈さんが立っていた。
よかった。
来てくれた。
これで私たちは二匹のセンチューラになれる。

「いらっしゃいませ。さあどうぞ」
「あ、あの、お邪魔します」
スーツの入った大きな紙袋を下げ、由紀奈さんが我が家の玄関を跨ぐ。
私は彼女をリビングに案内し、まずはコーヒーを出してもてなす。
「どうぞ」
「ありがとうございます」
私の出したコーヒーを受け取る由紀奈さん。
「今日は来てくれてよかった。龍くんもすごく楽しみにしていたし。耕太君には学校が終わったらこっちに来るようには言った?」
「ええ。耕太もすごく喜んで。学校が終わったら龍介君と待ち合わせてこちらに来るって言ってました」
ああ、なるほど。
龍介も耕太君と遊べてうれしいでしょう。
さてと・・・
由紀奈さんの気が変わらないうちに始めましょうか。
逃げられたりしたら困るしね。
うふふふふ・・・
「それなら大丈夫ね。それじゃ少し待ってて」
「あ、はい」
私はコーヒーを飲んでいる由紀奈さんをその場に残して席を立つ。
本当の私に戻る時間。
彼女にもこのすばらしさを教えてあげないと。

私は自分の部屋に戻ると、すぐに着ているものをすべて脱ぎ捨ててセンチューラのスーツを着る。
全身がぴったりと覆われていくのが気持ちいい。
顔も頭も黒いスーツに覆われ、口元だけが露わになる。
全身が覆われたら、今度はブーツを履いて手袋をつける。
これで手と足は二重に覆われることになる。
おかげで蹴ったり殴ったりしてもこちらにダメージが来ることが少なくなるのだ。
最後は紋章の付いたベルト。
これを締めると、ジャドーマの一員である喜びを感じられる。
偉大なる首領様にお仕えする集団の一員。
私は邪悪結社ジャドーマの女戦闘員センチューラなのよ。
「クネクーネー!」
私は両手を上にあげて手のひらを合わせ、腰をくねらせて声を上げる。
うふふふふ・・・

「クネクーネー!」
リビングに入り、すぐさま声を上げて両手を上に伸ばして腰をくねらせる私。
あ・・・
由紀奈さんが目を丸くしているわ。
もう・・・
しょうがないわねぇ。
あなただってあのモニターに見入っていたじゃない。
すぐにこの姿のすばらしさに気が付くわよ。

「クネクーネー!」
私は由紀奈さんのそばに行く。
「あ、えっ? せ、聖香さんですか?」
なんだか信じられないようなものを見ている感じの由紀奈さん。
「クネクーネー! そうよぉ。でもね、この姿の時は私は邪悪結社ジャドーマの女戦闘員センチューラなのよぉ。クネクーネー!」
私は腰をくねらせながら、手でそっと由紀奈さんの顎を持ち上げ、その顔を私の顔と向き合わせる。
「ほうら・・・よくごらんなさい。私はセンチューラ。そして、あなたもセンチューラになるの」
「あ・・・」
由紀奈さんの目がとろんとなる。
うふふ・・・
思い出したようね。
そうよ・・・
あなたもセンチューラの仲間なのよぉ・・・

私は彼女の持ってきた紙袋から黒い全身タイツ状のセンチューラのスーツを取り出し、彼女の手に渡してやる。
「さあ、これを着なさい。これを着てあなたもセンチューラになるの。偉大なる首領様にお仕えする女戦闘員センチューラになるのよ。クネクーネー!」
「わ・・・私も・・・センチューラに・・・」
私はこくんとうなずく。
そして彼女を立たせ、その耳へと優しくささやく。
「さあ、裸になりなさい。すべてを脱ぎ捨て、そのスーツを着るの。あなたは生まれ変わるのよ。クネクーネー!」
「ああ・・・」
しばらく自分の手の中のスーツを見下ろしていた彼女は、やがておもむろにそのスーツをテーブルに置いて着ているものを脱ぎだした。

上着もスカートも脱ぎ、下着も脱いでいく由紀奈さん。
そのスタイルのいい躰が露わになる。
ああん・・・
素敵・・・
きっとこれなら男どもの目を引き付けて油断させるに違いない。
首領様の望む女戦闘員にふさわしいわ。
ちょっとうらやましいかも。

「あ・・・」
スーツに足を入れただけで、思わず声が漏れてしまう由紀奈さん。
でしょ?
このスーツは本当に気持ちいい。
着ていることが快感なの。
あなたもすぐにわかるわ。

「はあ・・・はあ・・・ん・・・」
吐息を漏らしながら由紀奈さんはスーツを着込んでいく。
恥ずかしいと思う気持ちはもうどこかへ飛んで行ってしまったみたい。
きっともうこのスーツ無しではいられないわね。

やがて由紀奈さんの全身はスーツに覆われ、口元だけが覗いている。
ピンク色の唇が食べちゃいたくなるぐらい。
かわいいわぁ。
そして、その唇に笑みが浮かび、手袋とブーツを身に着けていく彼女。
最後にジャドーマの紋章の付いたベルトを腰に締め、すべてが完成する。
ああ・・・
なんて素敵・・・

「クネクーネー!」
私が腰をくねらせる。
すると、彼女もおもむろに両手を上に伸ばし、手のひらを合わせて一本の線虫となり腰を振り始める。
「クネクーネー!」
やがて彼女の口からも私と同じような声が上がり、新たなセンチューラが誕生した。
「クネクーネー!」
「クネクーネー!」
私と彼女は鏡合わせのように向かい合い、お互いの腰をくねらせて声を上げる。
ああ・・・
なんて気持ちいいの・・・
仲間がいるって最高・・・
私たちはセンチューラよぉ・・・

「クネクーネー! おめでとう、由紀奈さん。これであなたも邪悪結社ジャドーマの女戦闘員センチューラね」
「クネクーネー! ありがとう聖香さん。うふふふ・・・センチューラになることがこんなに気持ちがいいことだったなんて知りませんでしたわ」
うふふふと笑みを浮かべているセンチューラ。
「でしょ? 私たちはセンチューラ。これからは首領様のために」
「ええ、私たちはセンチューラ。これからは首領様のために」
私たちはどちらからともなくお互いの躰を抱き寄せる。
「うふふふ・・・素敵よセンチューラ。クネクーネー!」
「クネクーネー! あなたも素敵よ。センチューラ」
私たちは躰を撫で合い、口づけを交わし合う。
私たちはセンチューラ同士。
こうしてお互いのつながりを確かめ合うの。
ジャドーマの一員として一つになるのよ。

私たちは冷たい床にもかかわらず横になる。
そしてお互いの躰を撫でさする。
「クネクーネー!」
「クネクーネー!」
お互いの声が甘くなる。
気持ちいい・・・
仲間に撫でてもらうことがこんなに気持ちがいいなんて。
私たちはセンチューラ。
センチューラ同士なのよぉ!
「「クネクーネーーーーー!!」」

「うふふ・・・美味しい。クネクーネー!」
私たちはひとしきり快感をむさぼりあった後、何事もなかったかのようにコーヒーを飲んでいた。
もちろんセンチューラの姿のままだ。
もうすぐ龍介も耕太君も来るだろう。
そうしたら戦いが始まるわ。
彼らを喜ばせるための偽物の戦い。
でもいずれは・・・
うふふふ・・・

「あはぁ・・・クネクーネー!」
私の向かいではもう一人のセンチューラが気持ちよさそうに躰をくねらせている。
「うふふふ・・・もうすっかりセンチューラになったみたいね」
「クネクーネー! ええ、もちろんですわぁ。私はセンチューラ。それ以外の何者でもありませんわ。うふふふふ・・・」
「それでいいのよ。私たちはセンチューラ。これからはジャドーマのために」
「ええ、ジャドーマのために。クネクーネー!」
声を上げるのも楽しくなっちゃったみたいね。
いいわぁ。

「ただいまぁ!」
「お邪魔しまーす!」
玄関が開き、子供たちの声が聞こえてくる。
さあ、戦闘開始ね。
私たちはうなずき合うと、二人をそろって迎え撃つように立ち上がる。
何やらにこやかに話をしながら入ってくる二人。
もうすっかり仲良くなったみたいね。
いいことだわ。

「クネクーネー!」
「クネクーネー!」
私たちは両手を上に伸ばし、手のひらを合わせて一本の線虫になり、腰をくねらせて声を上げる。
隣に仲間がいるというのはうれしいわぁ。
「うわぁ! センチューラが二人も!」
「えっ? もしかしてママ?」
二人が思わず声を上げる。
特に龍介はともかく、耕太君はリアルでは初めて見るセンチューラに驚きを隠せないみたい。
「クネクーネー! 違うわぁ。私はもうあなたのママなんかじゃなく、邪悪結社ジャドーマの女戦闘員センチューラなのよぉ。クネクーネー!」
楽しそうに腰を振るもう一匹のセンチューラ。
思わず私も腰を振っちゃうわね。

「耕太くんのママもすっかりなりきってるね。ボクたちも変身しよう」
「うん。ようし!」
龍介と耕太君が顔を見合わせて力強くうなずく。
うふふふふ・・・
さっさと変身していらっしゃい。
今日はどっちが勝つのかしらね?
首領様の思し召し次第よ・・・

「ドラゴンブルー見参!」
「バードレッド見参!」
背中を合わせて決めポーズをとる二人の少年戦隊。
なかなか様になっているじゃない。
かっこいいわよ。
でもね。
こっちも今日は二匹なんだからね。
行くわよ。
「クネクーネー!」
「クネクーネー!」
私はもう一匹のセンチューラとともに彼らを攻撃する。
私たちだって普通の人間なんかは一撃で始末できるんだから。
舐めてもらっちゃ困るわ。
えーい!

「キャーッ! クネクーネー!」
「うぐっ! クネクーネー!」
私ともう一匹のセンチューラが床に倒れる。
ぴくぴくと痙攣して見せ、やがてぐったりとなる。
残念。
今回も勝ちは戦隊に譲れとのご命令。
正義なんかに負けたくはなかったけど、首領様のご命令は絶対。
こうして彼らを勝たせることに、きっと何かお考えがあるのだろう。

「やった!」
「うん。やったね!」
赤と青の少年戦士ががっちりと腕を組む。
悔しいわぁ。
本当ならこんな子供に私たちが負けるはずはないのに・・・
でも仕方ないわね。
今のうちせいぜい楽しんでおきなさい。

「あーあ、負けちゃった」
「悔しいわぁ。クネクーネー!」
口をへの字にしたもう一匹のセンチューラも起き上がる。
彼女も本当に悔しそう。
センチューラとして本気で戦いたかったのね。
でも、こればかりは仕方がないわ。

「ママもおばさんもありがとう。すごく楽しかった」
「うん。すごく楽しかった」
ヘルメットを外してにこやかに笑っている二人。
もう・・・
いずれその笑顔をめちゃくちゃにしてあげるんだからね。
「どういたしまして。私たちも楽しかったわ。ねえ、センチューラ?」
「ええ。とっても楽しかったです。明日もこちらにお邪魔してもいいですか?」
「まあ。すっかり身も心もセンチューラね。もちろん私はOKよ。君たちは?」
「もちろん!」
「うん。明日もお願いします」
二人の少年たちも笑顔でうなづく。
うふふふ・・・
すっかり嵌っているみたいね。

夕方になり、鳥飼さん親子を送り出して、私は龍介と二人だけで再び戦い合う。
だって・・・
このスーツを脱ぎたくないんですもの。
それに、こうして戦っている方が家事なんかするより楽しいしね。
きっと今頃はもう一匹のセンチューラも・・・
うふふふふ・・・

                   ******

さてと・・・
今日もしっかり戦わなくちゃね。
きっともうすぐもう一匹のセンチューラがやってくるわ。
楽しみぃ。
そのためにも・・・
私はセンチューラのスーツを出し、ジャドーマの紋章の付いたベルトを広げる。
そしてその紋章部分をデジカメで写真に撮り、大きく引き伸ばしてプリンターで印刷する。
その印刷した紋章を、今まで絵を飾ってあった額縁に入れ、部屋の壁に取り付ける。
うん、これで良し。
本物には及びもつかないけど、これでジャドーマの紋章に向かって躰をくねらせることができる。
ああ・・・
考えただけでゾクゾクするわ。
早くセンチューラにならなくちゃ。

私はいそいそとスーツを着込んでセンチューラに生まれ変わる。
ああ・・・
これこそが本当の私。
人間の姿なんてもうしてられないわぁ。

「クネクーネー!」
私は飾った紋章に向かって腰をくねらせる。
最高!
最高です!
偉大なる首領様!
私は邪悪結社ジャドーマの女戦闘員センチューラ。
どうぞ何なりとご命令を。

玄関の呼び鈴が鳴る。
もう一匹が来たわね。
今日も楽しくなりそう。
うふふふふ・・・

「クネクーネー!」
「クネクーネー!」
私たちはすぐに壁に飾られた紋章に向かって腰をくねらせる。
あん・・・
こうなったらこの部屋をもう少しアジトっぽくしたいわね。
今度“戦隊ヒーローになろう”の受付に聞いてみようかしら。
なんかジャドーマのアジトにふさわしいものがありませんかって。

「あん・・・クネクーネー!」
「ああん・・・クネクーネー!」
私たちはどちらからともなく躰を愛撫しあう。
お互いの躰が重なり合い、両手の指がまるで本物の線虫のように絡み合う。
二人の口が重なって、舌が生き物のようにうごめいていく。
ああ・・・気持ちいい・・・
センチューラ同士で躰をこすり合わせるのは最高だわ。
それもジャドーマの紋章の下でなんて・・・
ああん・・・なんだかイッちゃいそう・・・
「クネクーネーー!」

ひとしきりお互いの躰を愛撫しあった後、私たちはリビングでヒーローたちの登場を待つ。
家事なんてする気もないし、お昼ご飯だってどうでもいい。
第一食べたいとも思わない。
それよりも首領様の命に従い、ジャドーマに敵対するものを排除したいのだ。
この世界のすべてをジャドーマのものに・・・
私たちはそのための女戦闘員センチューラなのよ。

「クネクーネーー!」
やがて戦隊ヒーローたちが現れて、バードレッドのパンチを受けた私は壁にたたきつけられる。
もちろんバードレッドにそんな力があるはずはない。
私がそう見えるように壁に背中を当てただけ。
でも、バードレッドは喜んでいる。
センチューラを倒したと喜んでいるのだ。
どうしていつまでもこいつらに喜ばせておくのかしら・・・
私たちの力なら、このような子どもたちなど一捻りにできるのに・・・
首領様のご命令だから従っているけど・・・
もっと私たちの力を見せつけてやりたいわ・・・

「クネクーネーー!」
ドラゴンブルーの一撃を受けて床に倒れるもう一匹のセンチューラ。
彼女も実に見事に演技をしている。
ドラゴンブルーの攻撃など全く効いていないのにね。
人間の力で私たちを倒せるはずがないわ。
まして子供たちの力なんかじゃ・・・
ああ・・・
思いっきり暴れたいわぁ・・・

「ようし! 今日もセンチューラを倒したぞ!」
「うん。しょせんこいつらは戦闘員だからね。ボクたちにかなうはずがないんだ」
「そうだね。どうせなら怪人と戦いたいよ」
「ボクもそう思う。戦闘員なんて弱いもん」
がっちりと腕を組むバードレッドとドラゴンブルー。
楽しそうにしているわねぇ。
忌々しいこと・・・
いずれジャドーマによって正義など滅ぼしてやるんだから。
私たちが弱いですって?
ふざけるんじゃないわよ!
私はもう一匹のセンチューラを助け起こすと、苦々しい思いで二人のヒーローをにらみつけた。

                   ******

あ・・・れ?
私はいったい?
確か私はもう寝ていたはず・・・
これは夢?
なんだかよくわからない・・・

「クネクーネー!」
「クネクーネー!」
ひんやりする夜風の中、私はもう一匹のセンチューラとともに両手を上に伸ばして腰を振る。
やっぱりとても気持ちいい。
こうして仲間と一緒にうねるのは最高だわ。

夜の闇。
街灯もわずかしかない小道。
周囲は寝静まり、歩く者もいない。
そんな中、私たちがくねくねと腰を振る。
これこそが闇の世界のすばらしさ。
私たちにふさわしい世界。
私たちはお互いの躰に触れ合うように抱き合い、お互いの躰をこすりあう。
唇同士も重なり合い、お互いの体液をむさぼりあう。
なんて甘くて美味しいのかしら・・・
私たちはセンチューラ。
邪悪結社ジャドーマの女戦闘員センチューラよ。

足音が聞こえてくる。
誰かが道を歩いてくるのだ。
どうしたらいい?
どうしたら・・・

始末しろ・・・
頭の中で声がする。
はい、首領様。
私たちを見た人間は始末します。
始末します。

「クネクーネー!」
「クネクーネー!」
私ともう一匹のセンチューラが人間に襲い掛かる。
深夜遅くまで残業をして帰ってきたサラリーマンらしい。
バカな男・・・
そのまま会社に泊まれば始末されずに済んだのに。
「わっ! な、なんだ?」
「クネクーネー!」
「クネクーネー!」
男は次の言葉を発することもできない。
私たちに始末されたからだ。
首をへし折られ、どろんとした目で宙を見ている男。
おそらく何が起こったのかもわかっていないだろう。
すぐに私たちはその場を離れる。
他に誰かに見られるわけにはいかない。
今はまだ。

よくやった・・・
お前たちにはさらなる力を与えよう・・・
目が覚めたら、我が下へ来るのだ・・・
よいな・・・
はい。
ご命令のままに。
偉大なる首領様。
「クネクーネー!」
「クネクーネー!」

続く

  1. 2019/03/26(火) 21:00:00|
  2. ママと遊ぼう
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(まいかた まさと)と読みます。
北海道に住む悪堕ち大好き親父です。
このブログは、私の好きなゲームやマンガなどの趣味や洗脳・改造・悪堕ちなどの自作SSの発表の場となっております。
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