やっつけですが超短編SSを一本投下します。
ことの発端は、今朝のプリキュアを見ていた時、そういえばプリキュアとドラキュラって言葉の響きが似てるなぁって思ったことでした。
で、吸血鬼プリキュアってのも面白そうだなと思い、ツイッターでツイートしたところ、思いのほか賛同者が多かったので、これは書いてみようかなと。
ドラキュラ様を不思議な生き物代わりにしちゃいましたが、楽しんでいただけましたら幸いです。
吸血鬼プリキュラ!
「はわわー! 遅刻しちゃうー!」
まだセットも途中といった感じで髪を振り乱しながら走る少女。
もうすぐ朝礼が始まってしまう。
髪の毛などにかまっている暇はないのだ。
「もう! お母さんったら起こすのが遅いんだもん!」
少女は母親に文句を言うが、実のところはお門違いである。
彼女の母親は、今朝も数度にわたって彼女を起こしていたからだ。
つまり起きられなかった彼女の自業自得なのだが、彼女自身はそれを認めたくはない。
母親が起こしてくれなかったのが悪いのである。
「もう・・・どうして朝が来ちゃうのよー! ずっと夜だったらいいのにぃ! 私、夜だったらいくらでも起きていられるんだから!」
息を切らせながらも通学路を走り続ける少女。
その姿を上空から見ている姿があった。
「うむ、そなたのような夜に強い者こそ余が求めていた少女だドラ」
突然少女の横に奇妙なものが現れる。
「えっ? 何?」
それは黒いもこもこした丸い毛玉のようなもので、両側にはコウモリの羽のようなものが生えており、ぴょこぴょこと動いている。
おそらくはその羽の力なのだろうが、毛玉はふわふわと浮きながら、少女の横に並んでいた。
「え? えええええ? 何これ?」
驚きつつも足を止めないのは、これ以上遅刻したくないという気持ちの表れか。
しかし、彼女の眼はその浮遊する毛玉に釘付けになっていた。
「余はドラキュラドラ。吸血鬼一族の長だドラ」
「ドラキュラドラさん?」
お約束の返しを行う少女。
もっとも本人にはそのつもりはない。
「違うドラ。このドラは口癖にされてしまったのだドラ」
「ふうん・・・どこから声を出しているのかな?」
少女がよく見ると、どうやら毛玉の正面と思しきところには水平に裂け目があり、そこから牙が覗いている。
おそらくこれが口なのだろう。
「捕まえて売ったらお金になるかな?」
やや物騒なことを考える少女。
「なかなか邪悪な性格らしいドラ。まさに我がしもべにふさわしいドラ」
「しもべ?」
「そうドラ。お前は余のしもべとなり、あのバカを始末するのに頑張ってもらうドラ」
「何それ? 今学校に行くのに忙しいからヤダ」
「問答無用だドラ!」
そういうと黒い毛玉は少女の首筋のところに飛んでいくと、がぶりと噛みついた。
「あ・・・いや・・・あ・・・」
力が抜けて地面にへたり込んでしまう少女。
その間にも黒い毛玉は彼女の首筋から血を吸っていく。
「ドラ・・・キュラ・・・って・・・マジ・・・」
前のめりに倒れこみ、意識を失ってしまう少女。
「だから最初からそう言ってるドラ」
少女の首筋から離れ、ふわふわと再び飛び始める黒い毛玉。
やがて毛玉は意識を失っている少女の口元に近づくと、黒いしずくを一滴たらす。
しずくは少女の口にたれ、少女はそれを舌で舐め取った。
静かに起き上がる少女。
その口元に笑みが浮かび、瞳は真っ赤に輝いている。
「これでお前は余のしもべになったドラ」
少女の前にふわふわと飛んでくる黒い毛玉。
「はい。ドラキュラ様。私はドラキュラ様のしもべです」
少女がにっこりとほほ笑むが、その様子は先ほどとはガラッと変わっていた。
「それでいいドラ。これからは余の命令に従うドラ」
「はい、ドラキュラ様。何なりとご命令を」
こうして黒い毛玉は新たなしもべを一人手に入れたのだった。
******
「汐里(しおり)ちゃん、こんなところに呼び出してどうしたの? 今日は朝から何か変だよ」
少女の後について人気のない校舎裏にやってくるもう一人の少女。
メガネの奥の瞳がくりくりとしていて、お下げ髪がかわいい。
「そうかな? 今朝、ドラキュラ様のしもべになったからかしら・・・」
メガネの子に背を向けたままにやりと笑みを浮かべる汐里。
その口からは尖った牙が見えている。
「ドラキュラ? しもべ?」
何のことだかわからないという表情のメガネっ子。
「うふふ・・・霧華(きりか)ちゃんもすぐにわかるわ。ドラキュラ様に血を吸ってもらえばね」
くるりと振り返る汐里。
真っ赤な唇から尖った牙が見えている。
「ひっ! し、汐里ちゃん?」
「うふふふ・・・私はドラキュラ様に血を吸っていただいて、しもべになったの。霧華ちゃんもしもべになるのよ」
そう言った汐里の肩にふよふよと黒い毛玉が飛んできて、クワッと口を開ける。
「い、いやっ!」
慌てて逃げ出そうとする霧華。
だが、黒い毛玉が素早くその肩口に飛びつき、首筋に牙を突き立てる。
「あ・・・あああ・・・」
そのまま地面に崩れ落ちる霧華。
黒い毛玉はその首筋から思う存分に血を吸うと、霧華の口にも黒いしずくを一滴たらした。
******
青白い炎に包まれて崩れ落ちる人影。
「うふふふ・・・まずは一人」
「ドラキュラ様に逆らう愚か者のしもべの末路ね」
二人の少女が冷たい笑みを浮かべている。
「よくやったドラ。これでこいつがしもべを増やすことはもうないドラ」
「ありがとうございます、ドラキュラ様」
「愚か者のしもべの処理は私たちにお任せくださいませ。ドラキュラ様」
スッと黒い毛玉にひざまずく二人の少女。
学校の制服に黒いマントを羽織った姿はなかなかになまめかしい。
「余のしもべたちよ、頼んだドラ。一刻も早く我が力を取り戻すためドラ」
「「はい、ドラキュラ様」」
二人の少女たちが声をそろえる。
「さあ、今度は私たちの番ね」
「ええ、おいしい血をたっぷりと吸いたいわ」
スッと立ち上がる二人。
「それじゃ行きましょう、キュラファング」
「ええ、行きましょう、キュラティース」
二人はそれぞれをそう呼び合う。
日曜朝の少女アニメのファンだった汐里が名付けたものだったが、霧華もそれを気に入っていた。
「私たちはプリキュラ。ドラキュラ様の忠実なしもべ」
「ドラキュラ様に歯向かう愚か者は、私たちプリキュラが始末するわ」
二人はそういうと、楽しみな食事をするためにマントを広げて夜空に消えていった。
エンド
- 2017/04/16(日) 20:50:19|
- 異形・魔物化系SS
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