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舞方雅人の趣味の世界

あるSS書きの日々

四月馬鹿の連鎖

きょうから四月です。
四月となればあの方が・・・
と言うことで今年もお楽しみいただければと思います。


四月馬鹿の連鎖

「うーん・・・」
私は伸びをして朝の空気を胸いっぱいに吸い込む。
「はあー」
そして吸い込んだ空気をゆっくりと吐く。
気持ちいい。
今日から四月。
桜も咲いて朝の空気もやわらかく感じる。
もう少ししたら新学期も始まるし、今年から一年生の担当だわ。
いろいろと大変だとは思うけど、きっとかわいいだろうなぁ・・・

さてさてこうしちゃいられない。
学校は春休み中とはいえ、教師はいろいろと忙しい。
早く学校へ行かなくては。
今年もまた一年が始まるわ。
私は暖かな春の風を感じながら、学校と言う職場へと歩き出すのだった。

                   ******

「おはようございます」
職員室のドアを開けて中へ入る。
「おはよう」
「おはよう」
すでに出勤していた教頭先生と白川先生が挨拶を返してくれる。
まだ朝早いせいで、ほかの先生たちは来ていないみたい。
ちょっと早く来すぎたかしら。

「富村(とみむら)先生」
私が自分の席に着くと、教頭先生が呼んでくる。
「あ、はい」
私は席から立ち上がると、教頭先生のところへ行く。
「なんでしょう?」
「校長が富村先生が来たら呼んでくれと。何か用事があるようですよ」
「は、はい・・・」
校長先生が私を呼んでいる?
いったい何かしら・・・
私はすぐに校長室へと向かった。

「富村です」
『お入りなさい』
校長室のドアをノックすると、すぐに中から返事がある。
私はドアを開けて中に入り、校長先生に一礼した。
「おはようございます。お呼びとお聞きしましたので」
「富村先生」
「は、はい」
私の言葉をさえぎるように校長が私の名を呼ぶ。
いつになく厳しい表情が私を見据えている。
いったいどういうこと?

「富村先生、あなた、生徒のご両親から訴えられましたわよ」
校長先生がとんでもないことを言ってきた。
「え? 私がですか?」
私は思わず聞き返す。
いったい何のことなのか・・・
「訴え? 本当ですか?」
苦情ぐらいは何度か受けたことはあるけど、訴えるなんてそんな・・・
「ここに裁判所からの書状があります」
そういって机の上に封書を置く校長先生。
普段はやさしい母親のようだと評判の校長先生が、なんだかまったく見知らぬ人のような感じがする。
「何か心当たりは?」
「い、いいえ」
私はぶんぶんと首を振った。
先日卒業生を送ったばかりだけど、問題のある子はいなかったし、何もトラブルはなかったはず。
心当たりなんていわれても・・・

「あ、あの・・・校長先生」
「なんですか?」
「し、失礼ですけど・・・エイプリルフール・・・なんてことは・・・?」
私は恐る恐る聞いてみる。
今日は四月一日だもの。
きっとエイプリルフールに違いないわ・・・
だって・・・
まるっきり心当たりなんて・・・

「富村先生・・・」
校長がそういって私をにらみつけてくる。
無言でふざけるなと言っているのだ。
そんなこと言われても・・・
「本当に心当たりはないのですか? 本当に?」
私は必死になって考える。
訴えられるようなトラブルがあっただろうか・・・
もしかして忘れ物を何度も注意したこと?
それとも、誰かに対するいじめを見逃していた?
それとも・・・
それとも・・・
思い返せばすべてが怪しく感じてしまう。
もしかしたら西岡君と上本君のじゃれあいはいじめだったのかもしれない。
梅野さんと岡崎さんも言い争いをしていたし、高山君と横田さんを先日のテストで褒めたのはえこひいきに思われたかもしれないわ。
ああ・・・
考えれば考えるほどどれもが心当たりのようで、どれもが違うような・・・
一体私の何が悪かったの?

「あの・・・校長先生、私はいったい何を訴えられたのでしょう?」
「本当に心当たりはないのね?」
「はい」
私はこくんとうなずく。
本当に心当たりなどないのだ。
「そう・・・それはよかったわ」
校長は突然にっこり微笑むと、机の上の封書を手に取り、真っ二つに引き裂いた。
「えっ? 校長先生何を! それは裁判所からの書状では?」
私は思わず近寄っていく。

「うふ・・・うふふふ・・・うふふふふ・・・」
校長先生がニヤニヤと笑っている。
いつもとは違うなんだか不気味な笑み。
なんなの?
いったい校長先生はどうしちゃったの?

「おほほほほ・・・だまされたでしょう?」
「えっ?」
「最初は信じてなかったでしょ? でも、途中からもしかしたらと思い始めた。そして、この封筒が裁判所からの書状と信じ込んだ。違うかしら?」
た、確かにそれはそうだけど・・・
校長先生がそう言ったんだもの、信じてしまうに決まっている。
「おほほほほ・・・訴えそのものは半信半疑でも、この封書が裁判所からのものということは信じた。あなたは信じてしまったわ。おほほほほほ・・・」
「えっ?」
笑い続ける校長先生の姿が奇妙にゆがんでくる。
何?
何なの?
校長先生の頭からはずんずんと大きなねじくれた角が伸び、顔は細長く伸びて馬のようになっていく。
ええ?
「こ、校長先生?」
「おほほほほ・・・これがアタシの正体なのよぉ。アタシは去年四月馬鹿(しがつうましか)様にだまされ、雌の馬鹿(うましか)にされてしまったのぉ」
校長先生の手はひづめのようになり、黒髪も茶色のたてがみのように変化する。
まさに馬と鹿が掛け合わさったような生き物だ。
「ひぃぃぃ!」
私は目の前で校長先生が化け物に変化していくのを見て悲鳴を上げる。
でも、なぜか逃げ出したいのに足が動かない。
恐怖ですくんでしまったというよりも、なぜか足を動かせなくなっているのだ。
ど、どうして?
私は自分の足元を見る。
「えっ? ひぃぃぃぃぃぃぃぃ!!」
私は先ほどよりもさらに大きな悲鳴を上げていた。
私の足が、私の足が何か奇妙なひづめのように変わっていくのだ。
ど、どうして?
どうして私まで?
変わっていくのは足だけじゃない。
悲鳴を上げとっさに口元に当てた両手もひづめのように変わっていく。
いったいどうして?

「おほほほほ・・・あなたも馬鹿になるのよ。アタシにだまされたことであなたも雌の馬鹿になるの。おほほほほ・・・」
鹿の角が生えた馬の顔をした校長先生が笑っている。
そんな・・・
私も校長先生のようになってしまうというの?
そんなのいやぁ!

頭を押さえて首を振る私だったが、その両手にずんずんと当たってくるものがある。
え?
ま、まさか・・・
私にも角が?
「いやぁっ! いやぁっ!」
私は必死に伸びてくる角を押さえ込もうとするが、ひづめのようになった手ではうまく押さえ込めない。
そうしている間にも、角はどんどんと伸びていく。
「おほほほほ・・・無駄よ。あなたはもう馬鹿になるしかないの。安心なさい。変化が進めば、気にならなくなるわ。むしろ馬鹿になれたことを喜びに感じるようになるわよぉ」
腕組みをして私の変化を眺めている校長先生。
その姿はすっかり雌の馬鹿と化していた。

「ああ・・・いやぁ・・・助けて・・・」
私の顔がじょじょに長く馬面になっていく。
手や足に茶色い毛が生え、全身へと広がっていく。
「ああ・・・あああ・・・」
私は絶望に打ちひしがれる。
もう私は人間じゃなくなってしまうんだわ・・・
このまま私は馬鹿になって、四月馬鹿様の命令で人間どもをたぶらかしていくのね・・・
なんてことなの・・・
あら?
でも・・・なんだかそれって・・・
楽しそうじゃない?

私は思わず笑みを浮かべる。
歯がむき出しになり、思わずいななきたくなるぐらい。
アタシは何を恐れていたのだろう・・・
馬鹿であることはとても楽しいことなのに・・・
バカな人間たちをだまし、自分たち人間がいかにおろかな存在であるか見せ付けてやるの。
なんて楽しいことかしら。
早く人間たちをだましてみたいわぁ・・・

「おほほほほ・・・どうやらあなたも身も心も馬鹿に変化したみたいね?」
「はい。おかげさまでアタシも雌の馬鹿に生まれ変わることができましたわぁ」
アタシは生まれ変わった自分の姿を先輩に見てもらう。
「おほほほほ・・・やったわぁ。これでアタシも四月馬鹿様のように仲間を増やせるのね」
先輩が喜んでいるわ。
なんだかアタシもうれしくなるわね。

「ほう・・・去年は仲間を増やさなかったのか?」
「え? 四月馬鹿様・・・」
先輩が驚いた顔をしている。
私も思わず振り向くと、いつのまに入ってきたのか、立派な体格の雄の馬鹿が立っていた。
「四月馬鹿様・・・」
アタシにもすぐにわかる。
このお方こそが私たち馬鹿の王である四月馬鹿様なんだわ。
アタシはすぐにひざまずいた。
「は、はい・・・去年はタイミングが悪く、アタシが馬鹿になってすぐに日付が変わってしまったもので・・・」
先輩も偉大な王にひざまずき、うつむいて返事をしている。
「ククククク・・・そうか。それはめでたいな。お前もこれで立派な馬鹿だ」
「ありがとうございます、四月馬鹿様」
かつて校長先生だった先輩馬鹿がお声をかけてもらっている。
アタシも早くお声をかけてもらえるようになりたいな。

「ククククク・・・お前も今日一日で仲間を増やすがいい」
え?
四月馬鹿様がアタシにもお声を掛けてくださったの?
うれしい。
「はい、四月馬鹿様。がんばります」
アタシは心をこめて返事をする。
そうよ。
今日一日はまだ始まったばかり。
子供たちにたっぷりとうそを教え込み、馬鹿をいっぱい増やしてみせますわぁ。
アタシは胸を弾ませながら、四月馬鹿様に誓うのだった。

END
  1. 2016/04/01(金) 21:01:12|
  2. 四月馬鹿
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Author:舞方雅人
(まいかた まさと)と読みます。
北海道に住む悪堕ち大好き親父です。
このブログは、私の好きなゲームやマンガなどの趣味や洗脳・改造・悪堕ちなどの自作SSの発表の場となっております。
どうぞ楽しんでいって下さいませ。

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