おかげさまで体調不良はだいぶよくなりました。
夜に一汗かいたのがよかったのかも。
とはいえ、今日も午前中は鼻グスグスだったんですけどね。
皆様にはご心配をおかけしました。
今日は箱根駅伝の復路を見ながらツイッターをやっていたんですが、そこで面白いネタが思いつきましたので、急遽超短編SSを一本仕上げてしまいました。
本来の予定にないSSでして、本来予定していたものではないのですが、まずはこの一本を投下しようと思います。
タイトルは「正月休みを増やしたい」です。
明日からもうお仕事という方も多いと思いますが、お休みがもう少しあればなぁって思っちゃいますよね。
お楽しみいただけましたら幸いです。
それではどうぞ。
正月休みを増やしたい
カレンダーがめくられる。
今日は1月3日。
明日はもう1月4日月曜日・・・
つまり、お正月休みはもう今日までなのだ。
はあ・・・
私は思わずため息をつく。
いやだ・・・
いやだいやだ・・・
いやだぁ!
仕事なんか行きたくなぁい!!
私はベッドに仰向けに倒れこむ。
うー・・・
いやだよぉ・・・
明日になるのが怖いよぉ。
会社なんてつぶれちゃえばいいのに・・・
そもそも私は仕事なんかしたくなかった。
できれば大学出てすぐにいい人と巡り会って結婚し、専業主婦になるのが夢だったのよ。
それなのに・・・
お母さんもお父さんも社会人を経験しろ、一人暮らしをやってみろって無理やり就職させられて・・・
事務仕事なんて私には無理だよぉ・・・
数字見ているとこんがらがって来るんだもん。
ミスしたら主任に怒られ、課長に怒られ・・・
やりたくないって言ってもやらされるし・・・
いやだぁ・・・
私の目から涙が出てくる。
今日で世界が終わってしまえばいいのに・・・
******
「お腹すいた・・・」
私はベッドから起きだして冷蔵庫を開ける。
「ありゃ・・・」
私はがっくりとうなだれる。
冷蔵庫の食材はほぼ空。
昨日までで使い切ってしまっていたんだっけ。
「あーあ・・・買い物行かなくちゃ・・・」
仕方ないので私は出かける支度をする。
家の中でくさくさしているよりはいいか・・・
そういえば近くのスーパーは開いてたっけ?
3日だからやってるよね。
スーパーなんだから元旦から開いていたっていいよね。
何食べようかな。
フードコートで何か食べるのもいいかな。
さすがにまだ正月なので人通りは少ない。
閑散とした通りを私はスーパーへ向かう。
「女、正月休みをもっと欲しいと思わぬか?」
「そりゃ欲しいに決まっているわよ」
私は背後からかけられた言葉に無意識に返事していた。
「えっ?」
私が思わず振り返ると、そこにはなんと、がっしりとした体格で全身が黒い毛むくじゃらの巨大なゴリラがマントを羽織って立っていた。
「ひあっ!」
私は思わず後ずさる。
「恐れることはない。女、もう一度問う。正月休みを増やしたいか?」
ゴリラは完璧な日本語でそう訊いてくる。
ああ、そうか。
これはきっと着ぐるみなんだわ。
きっと中には人間が入っているんでしょう。
見た目はまったくの直立したゴリラだけど、最近の着ぐるみは出来がいいというし・・・
それにしても何なのこいつ?
変な人?
正月早々こんな格好で外出してるの?
あ・・・
そうか今年は申年だっけ。
だからゴリラかー。
私は何だか納得した。
「どうなのだ? 正月休みがもっと欲しくはないのか?」
ゴリラが再び訊いてくる。
欲しくはないのかですって?
欲しいに決まっているじゃない!
「欲しいわ。欲しいわよ。会社なんて行きたくない。なくなってしまえばいいのに」
そうよ。
会社なんてなくなってしまえばいい。
「ふふふふふ・・・いいだろう。お前はわが組織に入る資格がありそうだ」
「え?」
組織?
入る?
もしかして変な宗教かなんかの勧誘だったの?
私が戸惑っていると、ゴリラは背中のマントを一振りする。
その瞬間、私はめまいがして意識が遠くなった・・・
******
「ん・・・」
あれ?
私はどうしたんだっけ?
ここは?
私はゆっくり目を開けて周囲を見る。
確か私はスーパーに食材を買いに・・・って、えええ?
私は円形の台に寝かされていた。
しかも裸で。
どうしてぇ?
私は何でこんなことになっているのぉ?
しかも私の両手も両足も固定されていてまったく身動きが取れない。
裸で台の上に貼り付け状態なんて何のバツゲームなの?
「グホッグホッグホッ」
奇妙な笑い声。
誰か来たの?
ひーっ、どうしよう?
恥ずかしいよぉ。
「グホッグホッグホッ」
現れたのはあのゴリラ。
背中にマントを羽織っているから、なんとなく威厳めいたものがあるけど、ゴリラはゴリラ。
なんかのお笑い芸人のドッキリカメラかなんかなのかしら?
「ちょ、ちょっと、これどういうことなの? 私をどうするつもりなの?」
私は恥ずかしさを隠すためにも強がってみる。
「グホッグホッグホッ、新年早々いい素材が手に入ったようだ」
私のそばに来て奇妙な笑い声を上げているゴリラ。
「そ、素材?」
「そうだ。お前は今の社会に不満を持っている。わが組織の一員にふさわしい」
「不満?」
「そうだ。お前はもっと正月休みが欲しいのだろう? 会社につぶれて欲しいのだろう? ならば今の社会を崩壊させるのが一番だ。そうは思わないか?」
「そ・・・そうかも・・・」
確かに不満はいっぱいだし、会社にはなくなって欲しいし、どうせならこんな社会はいったん壊れちゃえばいいと思うけど・・・
そんなの無理に決まってる。
「グホッグホッグホッ、無理だと思うか?」
私の考えを読み取ったかのようにゴリラが私の顔を覗き込む。
これって本当に着ぐるみなの?
本物のゴリラそっくりじゃない。
「無理ではない。わが組織は今の社会を崩壊させるのが目的なのだ」
「崩壊?」
「そうだ。今の社会が崩壊し、われわれが征服するようになfれば、正月休みなどいくらでも取れる」
「ほんと?」
何だか魅力的だけど・・・
それと、私が裸で寝ているのは関係があるのかしら?
「お前にはそのための尖兵となってもらう。わが組織の戦闘員となるのだ」
「戦闘員?」
戦闘員って最近テレビとかで言ってるテロリストのこと?
「そうだ。女戦闘員となり、わが組織のために働くのだ」
「転職しろってことですか?」
「そんなところだ。なに、すぐに終わる。グホッグホッグホッ」
奇妙な笑い声を上げながら指をパチンと鳴らすゴリラ。
すると私の周囲からさまざまな機械のアームが伸びてくる。
「うそ・・・いやっ! いやぁぁぁぁっ!」
私は恐怖のあまり悲鳴を上げて身をよじる。
だが、首筋に針を刺され、何かを流し込まれたとき、私の恐怖は一瞬で消え、動きも封じられておとなしく台の上で寝ているようになってしまった。
そこからあとはあんまりよくわからない。
躰に何かされたような気がするけど、何だか夢の中にいたような感じで心地よさだけが残っている。
頭がはっきりしたときには、私は組織の女戦闘員になっていた。
組織のために先頭に立って戦う女戦闘員だ。
今ではあのゴリラの姿をしたお方が、組織の戦闘部隊の指揮官であるゴリラー将軍様であることもわかっている。
私はゴリラー将軍様の命に従い、社会秩序を破壊するために戦うのだ。
私は組織の女戦闘員の証である黒のレオタードと網タイツに身を固め、組織のマークのついたベルトを腰に巻き、頭にはベレー帽をかぶっている。
私のほかにも十人ほどの女戦闘員がいて、みんな組織の一員であることに誇りを持って戦っている。
かつての私はなんというちっぽけな人間だったのか・・・
こうして組織の女戦闘員に生まれ変わることができ、私はとても幸せだ。
今日もまた、ゴリラー将軍様の命の下、今の社会を破壊するために出動する。
私たちには毎日が戦いなのだ。
正月休み?
そんなもの、私には必要のないものだわ。
うふふふふ・・・
エンド
- 2016/01/03(日) 21:06:56|
- 女幹部・戦闘員化系SS
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