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舞方雅人の趣味の世界

あるSS書きの日々

「儀式」 原作

3500日記念の新作と言うわけではありませんが、以前「極北興業」様が販売されていらっしゃいました写真集「儀式」の文章原作として私が書かせていただきましたSSの公開許可を頂きましたので、この機会に掲載させていただこうと思います。

「極北興業」様は残念ながら活動を終了なされてしまったようで、現在は「儀式」の写真集を新たに見ていただくことはかないませんが、SSだけでも楽しんでいただけましたらうれしいです。

新作ではありませんので、ご覧になられた方も多いかと思いますが、あらためてお読みいただければ幸いです。

それではどうぞ。


「儀式」

「ん・・・」
瑞希(みずき)はゆっくりと目を開ける。
薄暗い室内はひんやりした空気が漂っていた。
「こ、ここは?」
どうしてこんなところにいるのだろう・・・
一体自分に何があったのか・・・
瑞希はとりあえず躰を起こそうとする。
「えっ?」
思わず声に出す瑞希。
躰が動かないのだ。
なぜかわからないが首から下がピクリとも動かない。
「ど、どうして?」
あせって身を捩ろうとしてみるものの、躰はさっぱり動かない。
感覚が無いわけではなく、手足の先まで神経が通っていることはわかるのに、さっぱり動かすことができないのだ。
「い、一体・・・」
瑞希は自分の置かれた状況を思い出してみる。
確か私はみんなとカラオケに行った帰りで・・・

                   ******

瑞希は友人たちと一緒にカラオケを楽しんだあと自宅に帰るところだった。
すでに日は暮れ、あたりはもう暗い。

明日の講義のことを考えながら歩いていた瑞希の目の前に、突然コンクリートの壁が立ちふさがる。
「えっ?」
驚く瑞希をよそに、コンクリートの壁は瑞希の左右にも現れる。
まるで四角く囲った一画に、瑞希が閉じ込められたかのようだ。
「ど、どうして? さっきまでここは道だったのに」
行き止まりになったことに驚きながらも、やむを得ず引き返そうとする瑞希。

『キェーイ!』
いきなり奇声とともに一人の女性が瑞希の前に立ちふさがる。
しかもその女性は奇妙なマスクを着け、躰にぴったりした赤い全身タイツをまとっているのだ。
「な、なんですか、あなたは?」
立て続けに起こる奇妙な出来事に戸惑う瑞希。
「うふふふふ・・・キェーイ!」
笑みを浮かべてゆっくりと近づいてくる赤い全身タイツの女性。
思わず瑞希はあとずさるが、背後はコンクリートの壁で逃げ場はない。

「こ、来ないで」
壁に背中を付け、恐怖におののく瑞希。
「キェーイ! うふふふふ・・・お前は選ばれたのよ。おとなしくなさい」
赤い全身タイツの女が妖しく微笑む。
「選ばれた?」
「そうよ。一緒に来てもらうわ」
そういうと赤い全身タイツの女の手から白いクモの糸のようなものが飛び出して、瑞希の腕に絡まりつく。
「えっ? きゃあーっ!」
絡みついた糸を振りほどこうとした瑞希だったが、糸に巻きつかれたところから力が抜けていくような感じがして、瑞希は急速に意識を失っていく。
そのまま壁にもたれかかるようにして倒れこむ瑞希。
やがて漆黒の闇がその場を覆い、闇が晴れたあとには何も残ってはいなかった。

                   ******

「そうだわ・・・私、変な女の人に糸のようなものを巻きつけられて・・・」
瑞希はこれまでのことを思い出した。
躰が動かないのは、きっとあの糸のせいかもしれない。
と、言うことは自分は誘拐され、どこかに連れて来られたということになる。
「どうして私が・・・」
あの奇妙な格好の女性は瑞希が選ばれたと言っていた。
選ばれたとは一体どういうことなのだろう。
そしてここはどこなのだろう。

とにかく自分の置かれた状況を確認しようと瑞希は周囲を見回す。
薄暗く感じたのはどうやら照明の暗さだけではないらしい。
室内全体が黒系の彩色で統一されているのだ。
彼女が寝かされているベッドも天蓋付きで黒いカーテンが付いている。
壁も黒い模様で覆われ、床も黒一色だ。
椅子も黒革で作られ、テーブルに載ったテーブルクロスも黒に近い紫っぽい。
窓はあるらしいがすべて黒のカーテンで隠されていて、今が昼なのか夜なのかさえわからない。
天井には綺麗なシャンデリアが下がっているが、その明かりは弱弱しく、室内の薄暗さをかえって増しているような感じさえ受けた。
壁の一部には両開きのドアがあるが、今は堅く閉じられており、おそらく鍵がかけられているだろう。

一通り見渡すと、不思議と心が落ち着いた。
今のところ誰かに危害を加えられる様子もない。
なぜ誘拐されたのかはわからないが、もしかしたら誰かと間違われたのかもしれない。
自分が選ばれるなんて心当たりはないし、あの奇妙な衣装の女性にもまったく見覚えは無いのだ。
人違いならば、いずれそのことがわかって解放されるのではないだろうか。
瑞希はそう思った。

「キェーイ! どうやら目が覚めたようね」
声をかけられて瑞希は驚いた。
室内に人がいるとは思ってもいなかったのだ。
さっき周囲を見回したときには誰一人いなかったはずで、その気配さえ感じなかったのだから。

「うふふふふ・・・驚くことは無いわ。私たちにとっては造作も無いこと」
瑞希の寝かされているベッドに近づいてくる一人の女。
顔には奇妙な形をしたマスクを着け、首から下は女性らしいやわらかなラインを隠そうともしない躰にぴったりとした赤い全身タイツを身にまとっている。
胸と両腕には白いフリンジ(ひも飾り)が付いていて、腰には黒いベルトが巻かれ、両手は白い手袋状に、両足は白いソックス状になっていた。
「あなたは・・・」
瑞希はすぐに彼女が自分を捕らえた女だと気が付いた。
こんな奇妙な格好をした女性がそうそういるはずがない。

「うふふふふ・・・私はジューシャ。偉大なるゲドンにお仕えするジューシャ」
「従者?」
「ジューシャよ」
瑞希のそばに来て見下ろしている女がそういって笑みを浮かべる。
「私をどうするつもり?」
「うふふふふ・・・あなたは選ばれたのよ」
「それはさっきも聞いたわ。選ばれたってどういうこと?」
「うふふふふ・・・」
ゆっくりと瑞希に背を向けて離れていくジューシャ。
そして瑞希に向き直ると椅子に腰を下ろす。
「そう・・・あなたは選ばれたの。偉大なるゲドンにお仕えする新しいジューシャ、ネオジューシャに選ばれたのよ」

「ネオ・・・ジューシャ?」
瑞希には何のことだかさっぱりわからない。
「そう。偉大なるゲドンは古代インカの超エネルギーを手に入れて世界を支配するはずだった。だが、あの憎き仮面ライダーアマゾンがその邪魔をしたのよ」
椅子に座りそのすらりとした脚を組むジューシャ。
異様な格好でありながらもその姿は美しい。
「仮面ライダー? 都市伝説だわ」
「キェーイ! 違うわ。やつは実際の存在。その仮面ライダーアマゾンが、わが偉大なるゲドンの獣人たちをことごとく倒し、私のお仕えする十面鬼様さえ倒されてしまった」
組んだ脚を戻し、忌々しげに拳を握り締めるジューシャ。
よほど悔しい思いだったのだろう。

「だが、偉大なるゲドンは滅びてなどいない。いつの日か必ずよみがえるわ。そしてそのためには新たなジューシャが必要。偉大なるゲドンにお仕えし、その手足となって働くジューシャが必要なのよ」
スッと立ち上がり瑞希を見据えるジューシャ。
その目は獲物を射すくめるように鋭い。
「そんな・・・いや、いやです!」
首を振る瑞希。
そんなジューシャなんていうものになんかなりたいわけがない。
「キェーイ! 無駄よ。もうお前に対する儀式は始まっているの。これからお前にはマスクを授けてあげる。このマスクを着ければ、すぐに偉大なるゲドンの一員となる喜びを感じることができるようになるわ」
ジューシャはそういうと、両手を前に出してなにやら呪文を唱え始める。
「dux%:fnzkro@?$skneoalfyugnobeduakzotm*>$#」
聞きなれない言葉の詠唱が止むと、ジューシャの両手の上に闇がわだかまり、やがてその闇が新たな仮面を形作る。
それは今ジューシャが着けているものとまったく同じものだったが、色だけが黒く変わっていた。

「いやっ! いやですっ! そんなもの着けないで!」
首を振っていやいやと必死に拒絶する瑞希。
だが、躰が動かない以上それ以外の抵抗をすることは難しい。
「キェーイ! おとなしくするのよ」
ゆっくりと瑞希に近づき、その顔に黒いマスクをかぶせてしまうジューシャ。
一瞬マスクから闇が広がると、瑞希の頭に吸い込まれて消えていく。
「あああっ! いやぁっ!!」
瑞希は必死に首を振ってマスクを振り落とそうとするが、なぜかマスクは顔に密着したように離れない。
「ああ・・・取れない。取れないわぁ」
「キェーイ! 無駄よ。そのマスクはもうお前と同化したわ。すぐに偉大なるゲドンのすばらしさがわかるわ。$#*?ftnerslp@今度は両手を胸のところで水平にして重ね、再び呪文の詠唱を始めるジューシャ。
それに呼応するかのように瑞希の躰がびくびくとベッドの上で撥ね始める。
「ああっ、なにこれ? 何かが・・・何かが頭に入ってくるぅ!」
びくびくと躰を震わせる瑞希。
だが、やがてその震えが収まっていく。
それと同時に瑞希の表情が苦しそうな表情から穏やかな表情へと変わっていった。

瑞希の中で何かが変わっていく。
漠然としたゲドンへの恐怖が、じょじょに崇拝へと置き換わっていく。
家族や友人たちに感じる愛情や友情も、ゲドンへの服従心へとすり替わっていく。
異質な存在だったジューシャと言う存在も、偉大な存在にお仕えするすばらしい女たちへと認識が変わっていく。
地球上にはびこる蛆虫のような人類は、ゲドンのような偉大なる存在が支配してやらなくてはだめなのだ。
そのための手足となって働くジューシャ。
なんてすばらしいのだろう。
瑞希はジューシャに選ばれたことがうれしくなってきていた。

「キェーイ! うふふふふ・・・どうやらマスクによる洗脳はうまく行ったみたいね。気分はどうかしら?」
うっとりとした表情を浮かべている瑞希のそばにかがみこむジューシャ。
「はい・・・偉大なるゲドンに加われるのはうれしいです・・・」
どこか夢を見ているような感じで答える瑞希。
もう先ほどのように必死にマスクを取ろうとはしていない。

「うふふふ・・・それでいいのよ。次はあなたの肉体を強化してあげる。下等な人間としての躰ではなく、ネオジューシャとしての躰にね」
「はい・・・お願いします・・・」
「うふふふふ・・・キェーイ!!」
ジューシャは奇声を上げて瑞希の躰に黒い布をかぶせる。
瑞希は目をつぶってそれを受け入れ、首から上だけを出していた。

「$zld?&cvy#=\@:*-dux%:fnzkro@?$skneoalfyugnobeduakzotm*>$#nhdpawqzqo・・・」
瑞希の寝ているベッドの横にひざまずき、先ほどと同じく両手を胸のところで水平にして重ね合わせて呪文の詠唱を開始するジューシャ。
「ん・・・あ・・・はぁん・・・」
やがて瑞希の顔がほてったように赤くなっていく。
瑞希の躰がじわじわと強化されているのだ。
苦しい・・・
痛痒い・・・
熱い・・・
だが、何にもまして気持ちがいい・・・

躰が変わっていくのがわかる。
皮膚が強化され、ナイロン状の強化皮膚へと置き換わっていく。
力も増して、普通の人間など片手でひねり殺せるぐらいだろう。
足の指なども一体化し強化された脚は高いところへだってジャンプできる。
自分はもう下等な人間などと言う存在ではない。
偉大なるゲドンにお仕えするにふさわしい躰となっていくのだ。
そのことが瑞希にはとてもうれしかった。

やがてジューシャの呪文の詠唱が止まる。
ゆっくりと立ち上がり、瑞希の躰にかかっていた黒い布を取り払うジューシャ。
そこには、彼女と同じような姿になった瑞希が静かに横たわっていた。

奇妙な形をしたマスク。
胸と両腕に付いた白いフリンジ(ひも飾り)。
強化された両手は黒い手袋状に変化し、両足も黒いソックス状に変わっている。
腰にはゲドンのマークの付いたベルト。
躰全体の見た目はそばに立っているジューシャと変わらないにもかかわらず、すべてにおいて新しいものへと変わっている。
一番の大きな違いは、彼女の躰のラインを余すところなく表している全身タイツ状になった皮膚の色だった。
生まれ変わった瑞希の皮膚は、鮮やかなオレンジ色だったのだ。

「うふふふふ・・・どうやら完成したようね。さあ、起きなさい。ネオジューシャ」
その言葉に瑞希は目を開ける。
いや、もはや彼女は瑞希ではなかった。
偉大なるゲドンに使える新しいジューシャ。
ネオジューシャだったのだ。

ネオジューシャはゆっくりと上半身を起こし、ベッドから起き上がる。
「キェーイ!」
そして一声奇声を発すると、両手を胸のところで水平に重ね、自らを変えてくれたジューシャにひざまずいた。

「私は偉大なるゲドンにお仕えするネオジューシャ。ゲドンに永遠の忠誠を誓います。キェーイ!」
一礼してゲドンに忠誠を誓うネオジューシャ。
その顔に先ほどまでの戸惑いはもう見られない。
「キェーイ! それでいいわ。もう身も心もネオジューシャになったようね」
「キェーイ! はい。私はネオジューシャ。もう身も心も偉大なるゲドンのものですわ。うふふふふ」
妖しく微笑むネオジューシャ。
「うふふふふ・・・これからは二人で偉大なるゲドンの復活のために働きましょう」
「もちろんですわ。どうぞ何なりとこのネオジューシャにご指示くださいませ。うふふふふ・・・」
ジューシャがネオジューシャの手をとって立ち上がらせる。
そのまま二人は寄り添うようにして抱き合い、お互いの感触を味わい合う。
偉大なるゲドンの復活のため、二人の女たちの暗躍がこれから始まるのだった・・・

END


明日は3500日記念の新作SSを投下しようと思います。
どうぞお楽しみに。

それではまた。
  1. 2015/02/15(日) 20:50:48|
  2. 女幹部・戦闘員化系SS
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Author:舞方雅人
(まいかた まさと)と読みます。
北海道に住む悪堕ち大好き親父です。
このブログは、私の好きなゲームやマンガなどの趣味や洗脳・改造・悪堕ちなどの自作SSの発表の場となっております。
どうぞ楽しんでいって下さいませ。

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