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舞方雅人の趣味の世界

あるSS書きの日々

四月馬鹿の復活

日付が変わった。
今日は四月一日。
一年で一番私が輝ける日。
生まれ変わって初めての四月一日。
さあ、おろかな人間たちをたっぷりと馬鹿にしてやりましょうか。

私はつばの広い帽子を目深にかぶり、すその長いコートを着て夜の街へと繰り出す。
もしかしたら・・・
もしかしたら・・・
もしかしたらあの方にお会いできるかもしれない・・・
あの方が復活してくださるかもしれない・・・
そのためにも・・・
そのためにも楽しまなくちゃね。

                   ******

うふふふふ・・・
思わず笑いがこみ上げる。
男ってみんなバカばかり。
単純だからすぐだまされるのよね。
今日は大漁。
私にだまされた男たちが次々に馬鹿になってさらに仲間を増やしに町に散っていったわ。
うふふふふ・・・
あの方の復活のためにももっともっと馬鹿を増やさなきゃ・・・

「さて、次の獲物は・・・と」
私は帽子のつばの下からそっと周囲を探ってみる。
うららかな日差しの昼下がり。
昼食を終えたサラリーマンは仕事に戻り、春休み中の子供たちはまた遊びに出かけていく。
私に気を留める人などいやしないか・・・
ならば・・・
適当な家に入り込んでそこの人間をだますのも面白そうね。

そういえば、午前中にだました男の中に妻子持ちがいたいたわよね。
携帯の待ち受けを奥さんと娘の写真にしているような男だったけど、私が具合が悪くなったふりをしたらあっさりと引っかかって近くの病院に連れて行ってくれようとさえしたおろかな人間。
今度は彼の奥さんでもだましてみようかしらね。
たぶんこの近くに住んでいるはずだから・・・
私はあの男から得た知識を使って家を探しに行くことにした。

「ここのようね・・・」
私の前には一件の家。
どうやらあの男はそれなりの稼ぎだったらしい。
建て売りとはいえ一軒家に住んでいるようだ。
そういえば去年までの私もこんな家に住んでいた気がするわ。

私は帽子を目深にかぶり、コートの襟を立てて正体を知られないようにする。
もっとも、私たち馬鹿は相手の思考にある程度干渉できるので、こっちを人間と思わせるぐらいはたやすいこと。
今回はそれをちょっと強めに働かせ、素直そうな奥さんをだましてやるわ。

                   ******

「ただいまぁ」
私は無造作に玄関を開けて家に入り込む。
鍵がかかっているかと思ったけど、思った通りかかってはいなかった。
たぶんあの男の娘がもうすぐ帰ってくるからだろう。
馬鹿になってからそのあたりのことはなんとなくわかるようになっていた。
これも妖怪としての能力の一つなんだろう。
私たちはこういう能力を駆使して人間をだましていく。
そしてだまされた人間は馬鹿になっていくのだ。

「おかえりなさーい。おやつがあるから手を洗ってらっしゃい」
美人というよりもかわいいといったほうがいいような女性が私を出迎える。
私はすぐに帽子のつばの下から見上げるように女を見つめ、目と目を合わせた。
女は玄関にいる私を見て、一瞬怪訝そうな顔をしたが、目と目が合うとすぐに微笑を浮かべて私を家に招きいれた。
うふふふふ・・・
成功成功。
彼女は私を娘と思ったに違いないわ。
まったくだまされているとも知らないで・・・

私は彼女が用意してくれたお菓子を食べながら娘が帰ってくるのを待つ。
娘が帰ってくれば、きっとあの女はだまされたことに気が付くだろう。
そのときがとても楽しみ。
嘘でだますのも楽しいけど、こうして感覚をだますというのも面白いものね。

やがて玄関が開く音がする。
「ただいまぁ」
元気な女の子の声がする。
“本当の”娘が帰ってきたのだろう。
台所仕事をしていたらしい母親が首をかしげながら玄関に向かう。
うふふふ・・・
どんな顔して娘を迎えているのかしら。

「えっ? あっ? えっ?」
素っ頓狂な声を上げる母親。
不思議そうな顔をして娘とともにリビングに入ってきて、私がそこにいることに気が付いたのだ。
「あ、あの・・・あなたはいったい・・・?」
「ええっ? いやねぇ、お母さん。娘の顔を見忘れたの?」
私は帽子で顔を隠したまま意地悪く言ってやる。
「な、何を言ってるんですか! うちの娘はこの子です。あなたはいったい誰なの? 何をしに家に入ってきたの?」
「うふふふふ・・・何をしにって、あなたが私を娘だと思って家に招きいれたんじゃない」
「えっ?」
「あなたが私を何の疑念も抱かずに娘と思って家に入れたのよ」
はい、大事なことなので二度言いました。

「そ、そんな・・・わ、私は・・・」
うふふふ、うろたえてるうろたえてる。
「ママ、お客様?」
母親の隣できょとんとしている娘さん。
うふふふ・・・
結構かわいいじゃない。
「こんにちは。私はこの家の娘よ。あなたは?」
「う、嘘言わないでください! うちの娘はこの子です! 嘘言わないで!」
うふふふ、自分がだまされたことに気が付いて逆切れって所かしら。

「はい、嘘でした」
「えっ?」
母も娘も一瞬ぽかんとする。
まさかあっさり認められるとは思わなかったのかしら。
「私がこの家の娘と言うのは嘘。真っ赤な嘘。でもね」
私はニヤリと笑みを浮かべる。
「あなたは引っかかったのよ。私が娘だという嘘に見事に引っかかったわけ」
「えっ? あ・・・」
「自分の娘の顔もわからないのかしら? こんな嘘にだまされるなんてバカじゃないの?」
「な、なんですって!」
「あははははは・・・バーカバーカ! あんたはだまされたのよ、この私馬鹿にね。バーカ!」
私は帽子を脱いで顔を見せる。
「ひっ」
「きゃぁー!」
母と娘が悲鳴を上げる。

「ば、化け物!」
思わずしゃがみこんで娘を抱きかかえている母親。
「あら、失礼ね。私は化け物なんかじゃないわよ。私は妖怪馬鹿。よろしくね」
「う、馬鹿?」
「そう。そして私に見事にだまされたあなたも・・・馬鹿になるの」
「えっ?」
私の見ている前で彼女の手が変わり始める。
「えっ? な、何これ?」
茶色の毛が生えて先がひづめのように変わっていく彼女の手。
「マ、ママ?」
娘も驚いているみたい。
当然ね。
目の前で母親が変身していくんだもの。

「ああ・・・あああ・・・」
母親の顔がだんだんと変わっていく。
鼻が伸びて馬のような顔になり、頭からは鹿の角が生えていく。
着ている服はぼろぼろになって、下から茶色の毛に覆われた躰が現れる。
スリッパを履いた足もひづめのように変わっていく。
「ママ・・・ママァ・・・いやぁぁぁぁぁ!」
少女が母親の変化に目を見開いて叫び声をあげる。

「アハ・・・アハハハハ・・・」
全身を茶色の毛に覆われ馬面になった彼女が笑い始める。
「アハハハハ・・・なんて気持ちいいのかしら。最高よぉ。アハハハハ」
「マ、ママ?」
すっかり変化してしまった母親を不安そうに見ている少女。
無駄無駄。
もうあなたのお母さんは妖怪馬鹿になっちゃったのよ。

「うふふふ・・・あなたはもう妖怪馬鹿になったのよ。気分はどうかしら?」
私は新たに生まれた仲間に声をかける。
「ええ、とってもいい気分ですわぁ。早く誰かをだましたいですぅ」
まるで馬が鼻を鳴らすかのように笑う馬鹿となった彼女。
「マ、ママ・・・」
変わってしまった母親に恐る恐る少女が声をかける。
「あらぁ? ガキがいるわぁ。だましやすそうなガキねぇ。どんな嘘でだまそうかしらぁ」
まるで獲物を見つけたかのように目を細める彼女。
そこにはわが子への思慕の情などありはしない。
うふふふふ・・・
すっかり身も心も馬鹿になったようね。

「その娘はあなたに任せるわ。好きにしなさい」
「ハーイ。うふふふふ・・・」
ぺろりと舌なめずりをする彼女。
私は少女の泣き声を背にしてこの家をあとにした。

                   ******

「アハハハハ、あの娘これからどうなっちゃうのかしらね。パパもママも馬鹿になっちゃって。アハハハハ、面白かったー。次は誰をだまそうかしら」
「ククククク・・・面白いやりかただったじゃないか。他の馬鹿には思いつかないやり方だ」
背後から声がした・・・
聞き覚えの・・・ある声・・・
まさか・・・
まさか・・・
もしかして・・・
「四月馬鹿様?」
私は振り向いた。
そこには・・・
そこにはコートを着て帽子を目深にかぶった・・・
四月馬鹿様ぁ!!

「よぉ。一年ぶりだな」
「四月馬鹿様! 復活なされたんですね!」
「ククククク・・・四月馬鹿は滅びぬさ。エイプリルフールがある限り何度でもよみがえる」
にやっと笑う四月馬鹿様。
ああ・・・
四月馬鹿様・・・
お帰りなさいませ。

私は偉大なる主にひざまずいて改めて忠誠を誓う。
昨年はきちんと忠誠を誓う暇もなかった。
今年は目の前に四月馬鹿様がいらっしゃる。
私はそのことに大いなる喜びを感じていた。

END
  1. 2014/04/01(火) 21:25:07|
  2. 四月馬鹿
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舞方雅人

Author:舞方雅人
(まいかた まさと)と読みます。
北海道に住む悪堕ち大好き親父です。
このブログは、私の好きなゲームやマンガなどの趣味や洗脳・改造・悪堕ちなどの自作SSの発表の場となっております。
どうぞ楽しんでいって下さいませ。

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