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舞方雅人の趣味の世界

あるSS書きの日々

ドラキュラと呼ばれた男(6)

オスマン帝国よりの使者を生きたまま串刺し刑にするという形でワラキアの敵対を明確にしたヴラド三世に対し、オスマン帝国のスルタン・メフメト二世は討伐の軍勢を差し向けるということで怒りを明確にしました。

しかし、ヴラド三世はただオスマン帝国の軍勢が来るのを待ち受けるのではなく、自らが軍勢を率いて先にドナウ川南岸のオスマン側勢力圏に討って出ます。
そこにはオスマン軍にとってドナウ川渡河の際の拠点となる城砦があり、ヴラド三世はまずそこの攻略を行ったのです。

ワラキア軍による城砦攻撃は成功し、オスマン軍の城砦は陥落。
さらにヴラド三世は周辺のオスマン勢力圏の村々を焼き、オスマン軍の守備兵をことごとく串刺しにしていきました。
こうしてオスマン軍の機先を制したワラキア軍でしたが、メフメト二世の率いるオスマン軍主力に対してはやはりワラキア一国で対処するのは難しく、ヴラド三世はハンガリー王マーチャーシュ一世に出陣を求めます。
義理の兄であるマーチャーシュ一世は、ヴラド三世の要請に快い返事を返します。
ハンガリーにはこの時対オスマン戦のためとローマ教皇よりも資金援助が行なわれており、ヴラド三世としてはハンガリー軍の来援は期待できるはずでした。

しかし、マーチャーシュ一世はいつになっても軍を動かしませんでした。
ヴラド三世はハンガリー軍の来援をあきらめざるを得なく、ワラキア一国で強大なオスマン帝国と対抗するしかなくなります。
一説にはマーチャーシュ一世はオスマン帝国に買収されていたという話もあるといい、ヴラド三世にとっては痛恨の事態でした。

この事態にヴラド三世は腹を決め、国内の十二歳以上の男子すべてを徴兵し、兵力を増強しました。
しかし、ワラキア一国ではどうがんばっても兵力は二万足らずであり、十万以上ものオスマン帝国主力とは勝負になりません。
そこでヴラド三世は正面からの会戦はあきらめ、焦土作戦でオスマン帝国を疲弊させようと考えます。

ヴラド三世は国内の女性や幼い子供などの非戦闘員をすべて山岳地帯に非難させ、無人となった村や町を食料もろとも焼き払います。
さらには井戸にも毒を投げ込み、利用できなくしてしまいます。
ヴラド三世はなりふり構わずオスマン帝国軍を弱体化させようとしたのです。

1462年、オスマン帝国軍がメフメト二世の指揮の下、ワラキア領内に侵攻します。
その数はヴラド三世の予想したとおり十万を超える軍勢でした。
しかし、彼らはワラキアに侵攻しても何もないことに気が付きます。
当時の軍勢には補給という概念があまりありませんでした。
食料などは攻め込んだ先で現地調達が基本であり、食料が無くなれば別の場所に移動するだけだったのです。
しかし、ワラキアには徴発するべき食料がすべて焼かれてしまっておりました。
それどころか水を飲むことすらできませんでした。
オスマン軍の兵士は飢えを満たすことも渇きを癒すこともできなかったのです。

これにはさすがのオスマン軍も士気が低下していきました。
さらにヴラド三世はオスマン軍の兵士の士気を低下させるべく、彼らの侵攻路に沿ってこれまで捕らえてきたオスマン軍兵士の串刺し死体を並べていきました。
オスマン軍兵士は進むたびにそれらを目にして、ますます士気が低下していきました。

オスマン軍の動向を監視していたヴラド三世は、オスマン軍兵士の士気が低下してきたのを見計らい、今度は幾度となく夜襲を仕掛けました。
時にはスルタン・メフメト二世を直接狙っての夜襲も行われました。
これは残念なことに失敗に終わりますが、相次ぐ夜襲はオスマン軍兵士をさらにさらに士気阻喪させていきました。

疲労、飢え、乾き、そういったものが重なり、オスマン軍にはついにペストが蔓延し始めます。
それでもメフメト二世はワラキアの首都にまでたどり着きますが、そこももぬけの殻であり、周囲にはオスマン兵士の串刺し死体がいくつも立てられている有り様でした。
ことここに至ってメフメト二世はついに撤退を決断。
オスマン軍はワラキアから後退します。
二万のワラキア軍が、十万以上のオスマン軍を追い払うことに成功した瞬間でした。

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  1. 2013/11/29(金) 21:04:58|
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Author:舞方雅人
(まいかた まさと)と読みます。
北海道に住む悪堕ち大好き親父です。
このブログは、私の好きなゲームやマンガなどの趣味や洗脳・改造・悪堕ちなどの自作SSの発表の場となっております。
どうぞ楽しんでいって下さいませ。

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