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舞方雅人の趣味の世界

あるSS書きの日々

再会

先日、いつもお世話になっておりますg-than様のサイト「Kiss in the dark」が300万ヒットを達成いたしました。
おめでとうございます。

それに伴いまして、昨晩「Kiss in the dark」で、以前私がg-than様に送りましたSSに基づくカマキリ女のイラストが公開されました。

SS自体は実はもう7年ほど前に書いたものになりますが、このたびg-than様より当ブログでの公開を打診していただきましたので、お言葉に甘えましてうちのブログで公開させていただきます。

タイトルは「再会」です。
g-than様より挿絵イラストもいただきました。
お楽しみいただけましたら幸いです。


「再会」

「えっ? 柊(ひいらぎ)先輩を見かけたって?」
思わず発した私の大声にみんなの視線が集中する。
「あ・・・ご、ごめん」
私は両手を振ってみんなからの視線をそらした。
「で、それホント?」
「うん、クリスマスイブだったと思うけど街中歩いていたらさ、見かけたのよ」
ビールのグラスを持ちながら亜希子(あきこ)ちゃんはそう言った。
「それでそれで?」
「うん。声掛けようって思ったんだけどね、そのとき雄二(ゆうじ)と一緒だったしさ、それに柊先輩携帯片手に何か悩んでいるようだったから声掛けなかったのよ」
雄二というのは亜希子ちゃんの彼氏。付き合ってもう結構長いはず。

「そうなんだ・・・」
私はがっかりした。そのとき私がその場に居たら何が何でも声を掛けたのに・・・
柊先輩は私にとっては憧れの先輩。
大学に居た時から先輩は生物化学の分野では一目おかれていた。
頭が良くて美人の先輩はみんなの憧れの的だったっけ。

「柊先輩が行方不明だったなんて知らなかったしね」
そう、亜希子ちゃんは知らなかったのだ。
柊先輩が二年もの間行方知れずだったことに。
もっとも、私もそのことを知ったのはつい最近で、仕事が忙しいんだろうなとしか思っていなかった。
何度かメールや手紙を出したけど返事はもらえなかったし、何かとても重要な仕事に就くからしばらく連絡が取れなくなるって言っていたから。
でも、そうじゃなかった。
柊先輩はどこかへ姿を消してしまっていたのだ。
たまたま柊先輩のことを知っている人から連絡が取れなくなっていると聞いたので、この新年会でみんなに尋ねてみようと思ったのだ。

「お、なんだなんだ、しけたつらしているな、茅島(かやしま)」
「あ、堂崎(どうさき)君。柊先輩知っているよね?」
「あ? 柊先輩? もちろん知っているよ。メガネ美人だったよな」
そう、先輩はメガネが良く似合っていた。
「最近見かけなかった?」
「いや、最近は見ていねーな。卒業してからどこ就職したんだっけ?」
「えーと・・・確か東都生化学研究所だったはずなんだけど・・・」
そう・・・そのはずだったのよ。
「そうかぁ。やっぱすごいよな。きっといっぱい給料もらってんじゃないか?」
「それが・・・その研究所ってどこにあるの?」
「へ? 知らねえよ、俺は」
「ネットで調べてみれば?」
亜希子ちゃんの言うとおり私もネットで調べたけれど、それらしいのはあるんだけどはっきりしないのよ。
「うん、調べたけど良くわからない」
「ふうん、でも元気そうだったわよ。心配すること無いんじゃない」
「だといいんだけど・・・」
「それよりもさ、聞いて聞いて、その日雄二ったらさ・・・」
亜希子ちゃんが話題を切り替える。
私はグラスのビールを口に運んだ。

                    ******

「ちょっとすみません、この人を見かけませんでしたか?」
私は道行く人を呼び止めて柊先輩の写真を見せる。
肩まである髪が美しく、メガネが印象的な柊先輩。
きっと見ていたら記憶に残っているかもしれない。
「どうですか? 見ていませんか?」
「さあ、見ていないわね」
「そうですか・・・すみませんでした」
また空振り・・・
これでもう何人に声を掛けただろう。
柊先輩に会いたい・・・
この思いが日増しにつのる。
連絡を取りさえすれば会える。
こう思っていた人が会えないとわかるとこんなにも焦るものなのか。
「すみません、この人を・・・」
「すみません・・・」
私はむなしい作業を続けていた。

「ちょっとすみません。この人を見かけませんでしたか?」
今日も私は道行く人を呼び止める。
あれからもう五日。
昼休みと退社後に私はこうして柊先輩を探している。
柊先輩を見かけた人は誰も居ない。
クリスマスの人通りにまぎれていた一人の人を探すなんて無茶もいいところ。
でも探したい。
先輩に会いたいのよ。
「ごめんなさい・・・見て無いわね」
「いや・・・見たこと無いなぁ」
今日もまた空振りが続く・・・
いったいいつまで私はこれを・・・

「今晩は。初めまして」
退社後に町をうろついていた私の前に現れたのは小柄な女性。
チャイナドレスにコートを羽織った姿は美人というよりも可愛い感じ。
「え? あなたは?」
「私はクイ・・・いえ、副官子(ふく かんこ)と申します」
小柄な彼女が笑みを浮かべる。
「副さん? 私に何か?」
「あなた柊由美子(ひいらぎ ゆみこ)さんを探していらっしゃるのでしょ?」
「え、ええ・・・」
この人、先輩を知っているの?
「一緒に来るなら会わせてあげるわ。どうする?」
「え? 柊先輩に会えるの? い、行きます」
私はその怪しげな申し出にうなずいていた。
「そう。じゃちょっと我慢してね」
彼女はバッグの中から何かを取り出すと私に向かって? え?
あ・・・
う・・・そ・・・

                    ******

あ・・・れ・・・
こ・・・ここは・・・どこ?
私は目を覚ました。
冷たい殺風景な部屋。
ベッドと椅子ぐらいしかない。
まるで牢獄のような部屋だわ。
私はゆっくりと上半身を起こし、ベッドから降り立った。

『目が覚めたようね』
私は驚いた。
どこからか監視されているらしい。
「わ、私をどうするつもり?」
『どうもしませんよ。あなたが会いたがっていた柊先輩に会わせてあげるだけ。うふふ・・・』
この声はあの副官子って人だわ。
いったい何者なの?
「柊先輩はどこ? それにここはどこなの?」
『今あわせてあげるわ。待ちなさい』
スピーカーからの声が終わるか終わらないうちにドアが開いて奇妙な女性が入ってきた。
まだ若い女性。私と同じくらいかしら。
でも、その姿は全く違う。
全身が驚いたことに紫色の肌。
腰回りを覆うオレンジ色のパレオ。
胸と手足は黒革のコルセットとブーツにグローブ。
本当に人間なのかしら。
「いらっしゃい。エイミー様と官子様がお待ちかねよ」
「エイミー様と官子様?」
官子というのはあの人のことだと思うけど、エイミー様って?
「質問は不要よ」
私の疑問は一瞬で封じられてしまった。
「付いて来なさい」
紫色の彼女は私に背を向けるとドアの方へ向かう。
私が付いて行かないことなどありえないよう。
でも、付いて行くしかないのも事実だわ。
ここにいても何も始まらないし、柊先輩に会えればこの状況がどういうことなのかもわかるでしょう。
私はおとなしくこの奇妙な女性の後に従った。

薄暗い廊下を歩いていく。
似たような扉をいくつか過ぎているうちに場所の感覚を失う気がする。
「ねえ、ここはどこなの?」
無駄かもしれないと思いつつも私は紫の彼女に訊いてみる。
「黙っていろ」
振り返りもせずに彼女は答えた。
やっぱり教えてはくれなかったか。
私は口をつぐんで黙って歩く。
やがて紫の彼女は扉の一つに向かい、その脇にあるパネルを操作した。
扉が開き奥の部屋の明かりが漏れてくる。
中からは機械のうなる音や話し声などが聞こえてきた。

「さあ、入りなさい」
ドアの脇に立って顎で私を促す紫の彼女。
私は仕方なくその部屋へ入っていく。
そこには正面に大きなスクリーンがあり、そのスクリーンに向かって二人の人影が立っていた。
スクリーンには金髪をポニーテールにして顔の下半分をヴェールで覆った女性と、その後ろに顔の目の部分を黒革のマスクで覆った女性が立っているのが映っていた。
『あら・・・お客様みたいですわ、エイミーさん』
スクリーンの金髪の女性が手に持った扇で私の方を指し示した。
それと同時にスクリーンの前の二人がこちらを向く。
一人は小柄な女性で、青い髪に紫がかったコルセット。
胸のところは強調するかのように黄色があしらわれ、申し訳程度の白のミニスカートとガーターストッキングをまとっている。
少し童顔の彼女は間違いなく私に声を掛けてきた副官子だわ。
もう一人は・・・
緑色の髪をポニーテールにし、ワインレッドのブラジャーとパンティ。すらりとした脚には網タイツを穿き、黒革のグローブとロングブーツを身に着けている。
少しきつめの眼差しをしたその女性は・・・

「柊先輩・・・」
私の口から思わずその言葉が漏れる。
メガネも掛けていないし、あのもの静かな雰囲気も無いけれど、スクリーンの前に立っているのは間違いなく柊先輩その人だ。
「驚いたわ・・・官子、あなたのプレゼントって彼女のことだったのね?」
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「はい、エイミー様。ちょっと細工を施して彼女にはエイミー様に会いたくなるように暗示をかけました」
柊先輩が副官子と何か話している・・・
エイミー様って?
柊先輩じゃないの?

「ふーん・・・でもどうして彼女・・・茅島幸恵(かやしま ゆきえ)を選んだの?」
「だってエイミー様、このデータを見てください。彼女ってとっても適性が高いんですよ。きっとすばらしい改造人間になってくれます」
髪をお団子にした副官子が何かのデータを手渡している。
そのファイルを見ていた柊先輩の表情が嬉しそうになるのがなぜか私にはいやな感じがした。
「そうね・・・いいデータだわ。うふふ・・・これは改造しがいがありそうね」
改造?
改造って?
いったい先輩はどうしてしまったの?

「柊先輩・・・」
「あら、ごめんなさい。しばらくぶりだというのに挨拶も無しだったわね」
ファイルを副官子に手渡し、柊先輩は私の方にやってくる。
『いい素材が手に入ったようですわね。それではまたあとで』
「ええ、あなたに負けない戦士を作り出してご覧に入れますわよ、神彌弥さん」
柊先輩は振り返りもせずに背後のスクリーンに向かって手を振る。
カミヤと呼ばれた女性は微笑みを浮かべるとスクリーンが消えた。
「お久し振りね茅島さん。私のことを覚えていてくれたなんて嬉しいわ」
「柊先輩・・・その姿は?」
私の質問に先輩は冷ややかな笑みを浮かべる。
「うふふ・・・私はもう柊由美子では無いわ。私は秘密結社S・S・Bの科学班主任を務めるプロフェッサー・エイミーなの。よろしくね」
「プ、プロフェッサー・エイミー?」
さっきからエイミー様と呼ばれていたのはそういう・・・

「うふふ・・・嬉しいわ。茅島さんがこんなに適性が高いだなんて。私がじっくりと改造してあげるわ。うふふふ・・・」
「か、改造って? いったい?」
「うふふ・・・あなたに別の生物の遺伝子を組み込み、新たな生命体として生まれ変わらせてあげるのよ。人間を憩えた存在、改造人間としてね。おほほほ・・・」
口元に手を当てて高らかに笑う柊先輩。
いえ、もう先輩じゃない。この人はプロフェッサー・エイミーなのだ。
「い、いや! 改造なんて、いや!」
「うふふ・・・無理よそんなの。だって私が改造するって決めちゃったんだもの。観念して改造されちゃいなさい」
「いやぁっ!」
私はその場を逃げようとしたけど、いつの間にか私の背後にはあの副官子が立っていた。
「うふふ・・・逃げられないですよ」
官子は何か言葉を発する。
すると私の躰から力が抜けてしまい、私はへたり込んでしまった。
「あ・・・あれ?」
「うふふ・・・あなたには暗示がかかっているの。逃げることは出来ないのよ」
「うふふ・・・よくやったわ官子。さっそく改造手術に取り掛かりましょう。わくわくするわ。久し振りにいい素材にめぐり会えたんですもの」
「ありがとうございますエイミー様。早速準備を始めますね」
動けない私をしり目に二人はにこやかに話している。
私は絶望の中で美しくも悪魔のような柊先輩の顔を見つめていた。

「ふふふ・・・目覚めなさい、カマキリ女」
私はその言葉でまどろみから引き戻された。
ひんやりとした手術台で上半身を起こした私は自分の躰を確かめる。
緑色の外骨格に覆われた肉体はとても強靭。
両手の先の鋭い鉤は獲物を引き裂くのに都合が良い。
私は新たな肉体に喜びを感じると起き上がってエイミー様の前に跪いた。
「うふふ・・・気分ははどうかしら? カマキリ女」
「はい、とてもすばらしい肉体をいただきありがとうございます。すごくいい気分です」
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私は改造された喜びに包まれてとても気持ちよかった。
「うふふ・・・あなたはS・S・Bの新たな戦士。我が組織に忠誠を誓いなさい」
「はい、私はカマキリ女。S・S・Bにこの身も心もお捧げいたします」
私は誓いの言葉を述べ、S・S・Bの一員となれたことに幸せを感じていた。
そう、これからはエイミー様とともにこの身をS・S・Bに捧げるのだ。
私はそう決意すると力強く立ち上がった。

END
  1. 2012/04/12(木) 21:05:00|
  2. 怪人化・機械化系SS
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Author:舞方雅人
(まいかた まさと)と読みます。
北海道に住む悪堕ち大好き親父です。
このブログは、私の好きなゲームやマンガなどの趣味や洗脳・改造・悪堕ちなどの自作SSの発表の場となっております。
どうぞ楽しんでいって下さいませ。

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