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舞方雅人の趣味の世界

あるSS書きの日々

ある意味廃品利用

1939年9月、ドイツ軍がポーランドに侵攻したことで第二次世界大戦が始まりました。

このドイツのポーランド侵攻にまるで同調するかのように、ソ連は1939年11月にフィンランドに対して戦争を仕掛けます。
フィンランドではこの戦争を「冬戦争」と呼びましたが、当時のフィンランドは自国で兵器生産を行えるほどの工業力がなく、戦車も航空機も大砲もほとんどが諸外国からの輸入品でした。

しかも、それらはいずれも圧倒的な数を誇るソ連軍に対しごくわずかしかなく、フィンランド軍はほとんど重火器のないままソ連軍と戦わざるをえませんでした。

しかし、幸いなことにソ連軍はこの当時スターリンによる大粛清後の再建時期であり、まだまだ上級士官が少なく稚拙な戦い方しかできませんでした。
そのため大量に投入された戦車も数多くがフィンランド軍の攻撃により放棄され、そのままフィンランド軍によって鹵獲されてしまうものがいくつもありました。

ソ連軍はこの「冬戦争」にはT-34のような新型戦車はほとんど投入しなかったため、その大多数はBT-5やBT-7、T-26のような旧式戦車でしたが、鹵獲されたこれらの戦車はすぐにフィンランド軍の戦車として再利用され、フィンランド軍の強化に一役も二役も買うことになったのです。

「冬戦争」が1940年に集結したあとも、ソ連との間には緊張関係が続き、やむなくドイツに接近したフィンランドは、1941年6月の独ソ戦開始により再びソ連と戦争状態に陥ります。
これは「継続戦争」と呼ばれ、1944年まで行われることになりますが、この継続戦争中の1942年、フィンランド軍は歩兵支援用の榴弾砲を装備した突撃砲(自走砲)の開発に着手しました。

開発に着手とは言っても、やはりフィンランドには自力開発を行うだけの工業力がありません。
そこでこれまでに入手した鹵獲戦車をベースに、そこに榴弾砲を搭載しようということになりました。

ベースとして選ばれたのは、「冬戦争」ならびに「継続戦争」の序盤で大量に鹵獲されていたソ連戦車BT-7でした。
BT-7は1939年の時点でもう主力としては物足りない性能となっておりましたので、1942年の時点では攻撃力防御力ともに第一線の戦車としては使用しづらい旧式戦車でした。
そのため新型自走砲の車台として使用するにはちょうどいい戦車だったのです。

戦車が鹵獲品であれば、搭載する砲も供与品でした。
英国製のオードナンスQF4.5インチ榴弾砲が搭載砲として選ばれたのです。
この砲は口径114.3ミリの榴弾砲で、第一次世界大戦で英軍が多用した大砲でした。
英国はこの旧式大砲を24門「冬戦争」時に供与しており、フィンランドはさらにスペインから30門を購入して使用していたのです。

旧式な戦車に旧式な大砲というある意味廃品利用的な新型自走砲は、1942年9月には第一号車が完成し、部隊に送られて試験が行われました。
車体はBT-7の車体がそのまま使用され、45ミリ砲を搭載していた砲塔が撤去されて新たに巨大な箱型砲塔が組まれ、その中に114.3ミリ榴弾砲が装備されるという形状でした。
BT-42.jpg

新型自走砲は突撃砲大隊に配属され、「BT-42」という形式名を与えられ、わずか18輌ですが量産されました。
しかし、上記で述べたように廃品利用の車両でしかなく、性能は満足できるものではありませんでした。
そのため1943年にはドイツから三号突撃砲が供給され、突撃砲大隊の主力はBT-42から三号突撃砲へと変わります。

BT-42は独立戦車中隊に配属されましたが、1944年になるとドイツも敗勢となりフィンランドもまたソ連軍の攻勢にさらされるようになります。
このため独立戦車中隊もヴィープリという都市の防衛戦に投入され、実戦に参加することになりました。

ですが、本来歩兵支援用の榴弾砲を装備したBT-42は不幸なことに対戦車戦闘に駆り出されてしまい、ソ連軍の戦車と撃ち合って多くの損害を出すことになってしまいます。
生産された18輌のBT-42のうち約半数の8輌がこの戦いで失われました。

BT-42は残念ながらあまり活躍できませんでした。
しかし、本来の使用法である歩兵支援に使われていたら、そこそこの働きはできたのではないかと思います。
そうなれば、使い勝手の悪くなっていた旧式兵器の再利用としてはそれなりの評価を得ていたのではないでしょうか。
その点がちょっと残念な気がします。

それではまた。
  1. 2012/03/28(水) 21:05:00|
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Author:舞方雅人
(まいかた まさと)と読みます。
北海道に住む悪堕ち大好き親父です。
このブログは、私の好きなゲームやマンガなどの趣味や洗脳・改造・悪堕ちなどの自作SSの発表の場となっております。
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