1941年、ドイツは「バルバロッサ作戦」を発動し、ソビエト連邦に侵攻を開始いたしました。
このとき、ドイツ軍にはソ連がKV-1やT-34といった新型戦車(新型というほど新しくもないのですが)の情報は本当にわかっていなかったらしく、前線から送られてくるソ連新型戦車の脅威に愕然としたといいます。
何しろこの時点でのドイツ軍の主力戦車はようやく生産が軌道に乗った三号戦車であり、その42口径50ミリ主砲ではKV-1はおろかT-34の正面装甲も撃ち抜くのが困難だったのです。
幸いソ連軍の戦術が稚拙だったことやKV-1およびT-34の構造上の弱点等もあり、独ソ戦初期の独軍は快進撃を行うことができました。
しかし、早晩KV-1やT-34に対抗する手段を持たなくてはならないようになることは必須でした。
ドイツ軍は三号戦車や四号戦車の改良に取り掛かり、パンターやティーガーといった新型戦車の開発を急ピッチで進めることになりますが、いずれもある程度の時間が必要でした。
その時間を埋めるためにドイツ軍がとった手段は、捕獲したソ連軍の76.2ミリ砲を戦車としては旧式になり役に立たなくなってきていた二号戦車や38(t)戦車の車体に取り付けて、対戦車自走砲とすることでした。
ソ連軍の76.2ミリ野砲は対戦車砲としても優秀で、独ソ戦初期に大量にドイツ軍によって捕獲されており、これでT-34やKV-1に対抗することが可能でした。
一方この76.2ミリ野砲に勝るとも劣らない貫徹力を誇る対戦車砲がラインメタル社で完成します。
75ミリ対戦車砲PAK40でした。
PAK40は強力な対戦車砲で、KV-1やT-.34にも充分通用する対戦車砲でした。
ドイツ軍はやっと捕獲兵器ではなく自前の対戦車砲でソ連軍戦車に対抗できるようになったのです。
しかし、PAK40には大きな弱点がありました。
それはその貫徹力を生かすためにはがっしりとした大砲にならざるをえず、どうしても重量が重くなってしまったのです。
今までの主力対戦車砲37ミリPAK36が重量400キログラムを切っていたのに対し、PAK40は約1500キログラムと四倍近くにもなっていたのです。
当然こうなると人力での陣地転換などは難しく、牽引車が常時必要となってしまい、機動性が失われてしまいました。
そうなれば自走化が考えられるのは自然な流れでした。
ソ連侵攻の翌年、1942年になってもドイツ軍はすでに戦車としては役に立たない二号戦車をまだ生産し続けておりました。
それを知ったヒトラー総統は、この二号戦車にPAK40を載せたらどうだと提案。
これによって二号戦車にPAK40を載せた対戦車自走砲の開発が始まりました。
車台となったのは生産中の二号戦車F型でした。
この車体に砲塔の代わりに車軸を取り外した75ミリ対戦車砲PAK40を防盾ごと載せて、左右に砲手を守る装甲板を取り付けるというできるだけ簡易な方法で対戦車自走砲が作られます。
もちろん装甲でがっちり囲んでしまうと重量が過大になりすぎますので、装甲は薄いものでした。

こうして完成した対戦車自走砲は、先代の76.2ミリ砲搭載の二号戦車車台の対戦車自走砲と同じく「マルダーⅡ」と呼ばれることになりました。
マルダーⅡはその搭載するPAK40の貫徹力の大きさから、当時のソ連軍や連合軍戦車の大半を相手に撃破可能な対戦車自走砲でした。
その能力は終戦まで変わることなく、ドイツ軍にとってPAK40は主力対戦車砲として最後まで使われました。
マルダーⅡの弱点はやはり装甲の薄さでした。
一度敵に発見されてしまえば、撃破されるのは時間の問題でしかなく、生残性は低かったのです。
しかし、1942年当時のドイツ軍に取り、PAK40を装備したマルダーⅡや、76.2ミリ砲を装備した車両はまさに救世主とも言える存在であり、ソ連軍の逆襲を迎え撃つ上での頼もしい味方だったと言えるでしょう。
マルダーⅡは新規に生産したものに加え、前線から修理のために戻されてきた二号戦車を改造したりするなどして、約600輌ほどが作られたといいます。
ただ、生産は1943年には打ち切られ、同じく二号戦車の車台をベースにした「ヴェスペ」自走榴弾砲の生産に切り替えられてしまいました。
ですが、PAK40を搭載した対戦車自走砲は38(t)戦車をベースにした「マルダーⅢ」へと引き継がれ、やがて「ヘッツァー」へと発展していくのです。
そして生き残ったマルダーⅡも、前線部隊では終戦まで使われ続けたのでした。
タミヤによって早い時期にプラモになったマルダーⅡ。
先日プレイした「装甲擲弾兵」シリーズにも登場しますが、やはり防御力の弱い対戦車砲扱いになってますね。
いかにこの打たれ弱い車両で最大の戦果を上げるか。
悩ましいところかもしれません。
それではまた。
- 2012/02/16(木) 21:00:00|
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