先日は第一次世界大戦のドイツの名機「アルバトロス」をご紹介いたしましたが、今日はその「アルバトロス」に対抗した連合軍側の機体を。
大戦二年目の1915年から三年目の1916年にかけて、フランス空軍の主力戦闘機は「ニューポール」社製の「ニューポール11」及び「ニューポール17」でした。
両機とも戦闘機として悪い機体ではなかったものの、ドイツの新鋭機「アルバトロス」に対抗するにはやや力不足であり、空戦では「アルバトロス」に一歩リードを許す形となっておりました。
そんな中、彗星のごとく現れたのが、「スパッド」社の新鋭機「スパッドⅦ」(スパッドS.Ⅶとも)です。
「スパッドⅦ」は、それまで航空機レースに出場する機体の設計で名を上げていたルイ・ベシュローの設計で、レーシング機同様に強力なエンジンによる速度性能を重視した機体でした。
その設計を生かすにふさわしい「イズパノ・スイザ8Aa」という150馬力の強力エンジンにも恵まれた「スパッドⅦ」は、木製布張りの機体にしては頑丈な機体構造と合わせて高速戦闘機として完成します。
最高速度は時速200キロを超え、最高時速が160キロそこそこの「ニューポール17」とは桁違いの速度性能を見せたうえ、旋回性能も速度のわりには小回りが利くというものでした。
試験飛行で優秀な成績を見せた「スパッドⅦ」は、すぐに大量生産が命じられ、1916年9月には早くも最初の量産機が戦場に姿を現します。
その後も量産は順調に続き、1916年末まででなんと500機も生産されました。

優秀な「スパッドⅦ」はドイツの「アルバトロスD.Ⅱ」及び「アルバトロスD.Ⅲ」にも充分対抗でき、それどころか逆に圧倒するようになるのです。
しかも「スパッド」社は機体の改良も続けており、180馬力のイスパノ・スイザ8Acエンジンに変更した機体はさらに強力な戦闘機としてフランスだけではなく英国やベルギー空軍でも使用されるなど連合軍の主力戦闘機になっていくのです。
その優秀さはドイツ側も認めており、捕獲した「スパッドⅦ」をドイツ空軍でも使用するほどだったといいます。
この「スパッドⅦ」、多くの人が存じなかった機体だと思いますが、実は結構多くの人が目にしていた機体かもしれません。
かく言う私自身も、はるか昔、この機体をあるマンガで目にしていたらしいのです。
1975年連載開始といいますから、もう35年も前の作品になりますが、「なかよし」というマンガ雑誌に一人の少女の物語が掲載されました。
その少女の名はキャンディ。
そう、水木杏子原作、いがらしゆみこ作画のマンガ、「キャンディ・キャンディ」です。
この「キャンディ・キャンディ」の作中にはさまざまな登場人物がおりますが、その中に「アリステア・コーンウェル」という青年がおりました。
いろいろな発明が好きでさまざまな機械を発明するものの、いずれもがあまり役に立たないという彼でしたが、キャンディに対する思いも深く、彼女をさまざまな面でサポートしてくれた青年でした。
その彼は第一次世界大戦の勃発に心を痛め、航空機にも思い入れのあった彼はついには義勇パイロットとして第一次世界大戦に身を投じてしまいます。
パイロットとしての腕は確かだった彼は、ドイツ空軍のエースと一騎打ちを挑みますが、相手側の機銃に故障が生じているのを知ると仕切りなおしを考え表題のセリフを言ってその場を離脱しようとしました。
しかし、そのときに生じた隙を別のドイツ機に襲われ、残念ながら戦死してしまいます。
このアリステア・コーンウェルの乗っていた機体がこの「スパッドⅦ」だったらしいのです。
らしいというのは、当時妹のコミックを読んでこのシーンは印象に残ったものの、手元に残っているわけでもないので確認できないからですが、ツイッターの知り合いからどうも「スパッドⅦ」らしいと教えていただきました。
「スパッドⅦ」は最終的には6000機近くも製造された大ベストセラー戦闘機となりました。
1917年以降の連合軍の航空優勢は、この「スパッドⅦ」あってのものだったと言っても過言ではないでしょう。
「スパッド」社はのちにより強力な「スパッドⅩⅢ」を開発し前線に投入いたしますが、「スパッドⅦ」は完全に入れ代わることなく終戦(停戦)まで使い続けられました。
強力なエンジンと頑丈な機体という「スパッドⅦ」は、第一次世界大戦時の最優秀戦闘機の一つに間違いなく数えられる機体だったのです。
それではまた。
- 2011/05/28(土) 20:55:25|
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