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舞方雅人の趣味の世界

あるSS書きの日々

サイボーグ兵57号(2)

昨日に引き続き「サイボーグ兵57号」の後編です。

それではどうぞ。


『う・・・あ・・・こ、ここは?』
俺は失っていた意識を取り戻す。
組織のアジトに連れ帰られた俺は、組織の手で意識を失わせられていたのだ。
「目が覚めたようだな、57号」
俺は声をかけられたほうを見る。
どうやら首は問題なく動かせるらしい。
気が付くと俺は、椅子に座らせられていた。
拘束具とかは一切ない。
だが、俺の躰の首から下は機能を停止させられているらしく、まったく動かすことができなかった。

「お前の躰を調べさせてもらった。その結果、どうやらお前の頭脳制御装置が衝撃で破壊されてしまっていたようだ」
“中佐”と呼ばれるグレーの軍服を着た男が鋭い目で俺を見つめていた。
サイボーグ兵団の指揮官を務めている男だ。
頭脳制御装置が働いていたときには、俺はその指揮に何のためらいもなく従っていた。
「残念ながら再度の制御装置の埋め込みは難しいらしい。お前の脳を破壊してしまう可能性のほうが高いそうだ」
中佐が残念そうに首を振る。
「組織としてはやむを得ずお前を処分することにした。制御できないサイボーグなど使えないからな」
処分・・・
やはりそうか。
俺は殺されるのか。

『だったらこんな会話をしていないで処分したらどうなんだ』
俺は半ばやけくそ気味に言ってやる。
躰が動かない以上逃げることもできない。
どうせ処分されるのに、御託を並べられても仕方がない。

「まあ、そうあわてるな。面白い趣向があるのだ。それにただ処分するだけならわざわざ追っ手を差し向けたりはしないさ」
『どういうことだ』
俺は中佐に尋ねる。
追っ手を差し向けない?
組織が脱走者を見逃すはずはないのに・・・
「クククク・・・今回お前を連れ帰ったのは、お前のどこに不調の原因があるか調べたかったからだ。まあ、予想通りだったがな」
『予想通り・・・』
「そうだ。頭脳制御装置の故障でなければ単純な動作不能になるだけだろうからな。頭脳制御装置の故障だったからこそ、お前は通常通りに動けていた。その確認をしたかったというわけだ」
不気味に笑っている中佐。
嫌いになれる顔だ。

『だから追っ手を差し向けたのか?』
「そうだ。ただ単にお前を始末するだけならば、ボタン一つ押せばいい」
『なっ?』
どういうことだ?
「お前の嵌めているベルトには爆弾が付いている。脱走者など本部の遠隔装置で爆弾を爆破すればいいだけだ」
俺は自分の腰に嵌められている組織のマークの付いたベルトに目をやった。
不気味に金属色に輝くベルトにまさかそんな仕掛けがあったとは・・・
くそっ!
俺は手のひらで踊らされていただけだったのか・・・

「さて、おしゃべりはこれぐらいにしておこう。お前にかかりきりになっているわけにもいかないからな」
『クッ、始末するならさっさと始末しろ』
「いい覚悟だが、まあそう焦るな。面白い趣向があると言っただろう」
『面白い趣向?』
いったい何のことだ?
『これを見ろ』
中佐がそう言うと、中佐の脇の壁面がスライドしガラス張りの壁が現れる。
『!』
俺は息を呑んだ。
ガラスの向こうに広がる部屋の光景を見知っていたからだ。

『サイボーグ製造プラント・・・』
「その通り。お前もここで作られたサイボーグ兵だったな」
中佐がニヤニヤと笑っている。
その手が何かのスイッチを操作する。
『いやぁっ、何なのこれ。はずして。誰か助けてぇっ!』
スピーカーから流れてきた声を聞き、俺はすぐさま席を立ち上がりたかった。
今すぐに壁の向こうに行きたかった。
今の声は紛れもなく綾子のものだったのだ。
『綾子! 綾子っ!!』
だが躰は動かない。
サイボーグの躰がこれほど自由が利かないとは・・・
くそっ!

ガラスの向こうの部屋がゆっくりと近づいてくる。
いや、違う。
俺の椅子がガラス壁に近づいたんだ。
そこにはベルトコンベア状の改造台に載せられた裸の綾子が、拘束されて寝かされていた。
『綾子! 綾子!!』
俺は必死に彼女の名を呼んだ。
だが、彼女には聞こえない。
こちらの部屋の音は伝わっていないのだ。
『彼女をどうするつもりだ? 彼女は何も知らない。彼女を家に帰してやってくれ!』
俺は中佐に願い出る。
彼女を無事に解放してくれたら、俺はどうなってもかまわない。

「ククククク・・・彼女にはこれからサイボーグ兵になってもらう。ちょうど女性をサイボーグ兵とした場合のデータがほしかったところだからな。女性であってもサイボーグ兵となれば、人間の兵士など問題にならない戦力となるだろう。彼女にはそのテストケースとなってもらう」
中佐の目がいやらしそうに綾子の裸を追っている。
『やめろ! 彼女に手を出すな! やめろ!』
俺は必死で躰を動かそうとした。
だが、どうにも躰は動いてくれない。
何とかならないのか、畜生!

「ククククク・・・お嬢さん、今からお前には我が組織のサイボーグ兵になってもらう。お前の乗っているその台がちょうど一周すれば、お前は我が組織の新たなサイボーグ兵となることだろう」
中佐がマイクに向かって話しかける。
その声はガラス壁の向こうに流れているのだろう。
『サイボーグ兵? それって何なんですか?』
不安そうな綾子の声。
きっと恐怖に怯えているに違いない。
「先日お前も見たはずだ。お前の恋人だった健一の姿を。彼こそがサイボーグ兵なのだ」
『健一さんの姿・・・そんな・・・するとやっぱりあの黒い服の人が健一さんだったの?』
綾子・・・
俺はあの手を口に当てて驚愕の表情を浮かべていた綾子の顔を思い出す。
「そうだ。そしてお前もサイボーグ兵になるのだ」
『ええっ? そんな! いやっ! いやですっ! いやぁっ!!』
綾子の叫びをよそに中佐の手がスイッチに触れる。
とたんに綾子の乗っている台がベルトコンベアの上を移動し始める。
『いやぁっ! 助けてぇ! お願い、誰かぁっ! いやぁっ! 私何にもしてないのにぃ!!』
『やめろ! やめろぉっ! 彼女をサイボーグ兵にするのはやめてくれっ!!』
綾子と俺の叫び声が冷たい部屋の中に響く。
『きゃあぁぁぁぁぁぁ』
だが、綾子の悲鳴が上がり、綾子の寝かされている台が機械の中に消えていく。
『ああ・・・』
俺は泣きたかった・・・
だが、ガスマスクのレンズから涙はこぼれてはくれなかった。

綾子の載せられた台が機械の中を進んでいく。
意識を失わせられたのか、彼女の悲鳴はもう聞こえない。
時々機械と次の機械までの間に彼女の姿が覗くことがある。
だが、その姿は機械を通る回数が増えるたびに人間ではなくなっていった。

頭髪を完全に落とされ内臓を抜き取られ、機械が埋め込まれて骨までも金属に変えられる。
全身には真っ黒な強化ラバーを吹き付けられ、皮膚がラバーに覆われる。
脳に機械を埋め込まれヘルメットがかぶせられる。
皮膚を剥ぎ取られた顔面にガスマスクのような仮面が付けられる。
背中にバックパックが付けられ、そこから伸びるパイプがわき腹に差し込まれる。
最後に右腕の外側にレーザーガンが取り付けられ、綾子の改造は終了した。

『綾子・・・』
俺は綾子が改造されていくのをただ見ていることしかできなかった。
躰さえ動けば・・・
躰さえ動けばどんなことをしてでも止めるのに・・・

「改造は終了した。起きるのだ、サイボーグ兵66号」
中佐の声に台の上からゆっくりと起き上がる綾子。
その姿は漆黒のラバーに包まれながらも、女性の流れるような柔らかいラインをまったく損ねてはいなかった。
「動作確認をし、申告せよ」
『動作確認。各部異常なし。申告します。私はサイボーグ兵66号。組織に永遠の忠誠を誓います』
右手を胸のところで水平にし、組織に忠誠を誓う綾子。
いや・・・彼女はもうサイボーグ兵66号になってしまったのか・・・

「右手の扉を抜け、こちらに来るがいい」
『了解しました』
軍隊式の整った歩き方でスライドドアを抜け部屋に入ってくる綾子。
その姿は異形となってしまったにもかかわらず美しかった。

『綾子・・・』
俺は部屋に入ってきた綾子に声をかける。
だが、彼女は俺のほうを見ることもなく中佐の前に歩み寄る。
『サイボーグ兵66号参りました』
「うむ、これよりお前に命令を与える」
『ハッ、何なりと』
まるで兵士のように直立不動で上官の命令を待つ綾子。
彼女は普通の女性だったのに・・・

「そこに座っているサイボーグ兵57号は、頭脳制御装置が故障した不良品である。よって処分することにした。お前のレーザーガンでサイボーグ兵57号の頭部を破壊しろ」
俺は絶望感に目の前が暗くなった。
こいつらはそのためにわざわざ俺を生かしておいたのか・・・
綾子に俺を殺させるために・・・
くそっ! くそっ! くそっ!!

『了解しました。不良品のサイボーグ兵57号の頭部を破壊します』
すっと俺のほうを向く綾子。
カツコツと足音を響かせて俺に近寄ってくる。
『サイボーグ兵66号、お前は綾子だ。思い出してくれ。お前は香島(かしま)綾子という名前で優しい女性なんだ。思い出してくれ!』
俺は必死で彼女に話しかける。
頼む・・・
彼女の頭脳制御装置よ、壊れてくれ!!

『一度でいい! 床か壁に頭を打ち付けてみてくれ! 頭脳制御装置を壊してくれ!』
俺は彼女がそんなことをするはずがないと思いながらも、そう言わずにはいられない。
何でもいい。
頭脳制御装置さえ壊れてくれれば・・・

「クククク・・・サイボーグ兵66号の頭脳制御装置が故障することを願っているのなら無駄なことだぞ。今回のお前の件で頭脳制御装置の耐久性は見直された。さらに頭脳制御装置が万一故障した場合、自動的に電流で脳を焼いた上ベルトの爆弾が作動するように改良されたのだ」
中佐が何か言っているが、俺にはもうどうでもいいことだ。
俺はただ綾子の名を呼び続ける。
『綾子! 綾子! 俺だ! 健一だ! 目を覚ましてくれ、綾子!!』
そのとき綾子の歩みがぴたっと止まる。
『綾子』
『香島綾子は私の以前の名前。今の私はサイボーグ兵66号。以前の名前に意味はないわ』
すっと右腕を上げ、レーザーガンを俺に向ける綾子。
そのガスマスクのような面が無表情に俺を見つめていた。
『綾子・・・』
『サイボーグ兵57号を不良品として処分します』
綾子の右腕のレーザーガンが一瞬光ったように見え、俺の意識は闇に飲み込まれていった。

END


いかがでしたでしょうか?
ちょっと救いのない話になってしまいましたが、よろしければ拍手感想などいただけましたらと思います。

今回の話は、昨日のコメントでもmaledict様が触れておられましたが、先日ふと石ノ森先生のマンガ「サイボーグ009」にでてきましたサイボーグマンというキャラクターのことを思い出しまして、あの全身をラバーに覆われたサイボーグマンの女性系がいたら魅力的なんじゃないかなと思ったのがきっかけでした。

なので、作中のサイボーグ兵はそのサイボーグマンのイメージが色濃く残っております。
まあ、細かいところは違いますけどね。

今回もお読みくださいましてありがとうございました。
また次の作品に取り掛かろうと思います。
次回もよろしくお願いいたします。

それではまた。
  1. 2011/02/28(月) 21:14:34|
  2. 怪人化・機械化系SS
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Author:舞方雅人
(まいかた まさと)と読みます。
北海道に住む悪堕ち大好き親父です。
このブログは、私の好きなゲームやマンガなどの趣味や洗脳・改造・悪堕ちなどの自作SSの発表の場となっております。
どうぞ楽しんでいって下さいませ。

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