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舞方雅人の趣味の世界

あるSS書きの日々

それにつけてもおやつは

1935年末、ドイツは将来的にフランスとの戦争もありえるとして、フランスが当時鋭意整備中だったマジノ要塞線に対する攻撃用の重臼砲の開発に着手しました。
臼砲(きゅうほう)とは、砲弾をまっすぐ飛ばして直撃を狙うカノン砲とは違い、短い砲身から砲弾を上方目がけて打ち上げ、落下させて着弾させるタイプの砲で、迫撃砲の大型版のような形をしているものです。
この臼砲の臼の字は餅つき用の臼ではなく、建物を作るときに使うモルタル(mortar)をこねるための臼であり、それに似た形をしているということから臼砲や迫撃砲はモーター(mortar)と呼ばれるようになりました。

初期にはこの重臼砲は80センチという大口径のものが考えられましたが、これに対し砲を開発することになったラインメタル社は口径60センチの臼砲を提案。
しかも分解して運搬し、現地で組み立てるという仕様要求も、それでは射撃体勢が整うまでに時間がかかりすぎるとして自走式の車台に搭載するよう提案しました。

このラインメタル社の提案は採用され、1938年8月に60センチ自走臼砲が開発されることになったのです。

自走と言っても60センチもの口径をもつ巨大臼砲を搭載するわけですから、ちょっとやそっとではすみません。
何しろ口径だけで言うなら日本の戦艦「大和」級の46センチ主砲よりも大口径なわけですから。

そのため重量も莫大であり、60センチ臼砲部分で64.5トン、それを搭載する車台部分が32.5トン、合わせて97トンもの重量を持つ車両になってしまいました。
しかもこれは計画値であり、実際できあがった60センチ自走臼砲はなんと120トンにも達するものとなったのです。
ちなみにドイツ軍の重戦車たる88ミリ砲搭載のティーガーⅠ型で57トンでした。

臼砲部分を載せる自走車台はガソリンエンジンで動く履帯(キャタピラ)式のもので、全長は11メートルにも達しました。
この車台は特殊なつくりになっており、射撃時の安定性を得るために履帯が上下して車体の腹の部分がぺったりと地面に接地するようになっておりました。
そうすることで射撃の反動などの衝撃を車台全体で受け止めることができたのです。
履帯の上下はエンジンによって行われ、エンジンを切ると下がりエンジンが始動すると上がるようになっていたそうですが、この機構がうまく働かなかったときのために手動クランクも備えられていたといいます。
でも、手動でなんて気が遠くなりそうですね。

車台は全体で三分割され、その中心部に臼砲が据えられました。
砲身は後ろ向きに取り付けられ、砲口が向いているほうが後ろということになります。

先に述べたとおり、重量が120トンを超えるものであったため、自走と言っても時速10キロにも満たない速度で10時間程度しか走れなかったそうです。
また、最大でも60キロほどしか航続距離がなかったとも言います。
ほとんど陣地への移動にしか使えなかったことでしょう。

となると、戦場への移動はどうするのか。
これは結局鉄道で移動するしかありませんでした。
とはいえ、これを載せることのできる貨車などありません。
ではどうしたか?
なんと、二両の貨車に吊り下げ装置を搭載して、その二両で前後から挟み込むようにして吊り下げたのです。
こうして長距離移動の問題も何とか解消されました。

こうして作られた60センチ自走臼砲は、開発推進者のカール・ベッカー将軍の名をいただいて「カール」と呼ばれるようになりました。
そして、試作一号車に引き続き、六号車までが一応量産され、最終的には七号車までの七両が生産されました。
六号車までは1941年半ばまでには完成しましたが、肝心のマジノ要塞攻略には使われることはありませんでした。

「カール」はその後の独ソ戦に投入され、特にクリミア半島のセバストポリ要塞攻略にその威力を発揮しました。
60センチの大口径臼砲から発射される砲弾は、ソ連軍のセバストポリ要塞にダメージを与え、要塞砲台をいくつか破壊したのです。

1942年、ヒトラーは「カール」の射程の短さを不服とし、長砲身化によって射程を延伸するように命じました。
そのため、「カール」は60センチ臼砲から54センチ長砲身臼砲へと砲身交換がなされることになりました。

この54センチ長砲身(あくまで60センチ臼砲に比べての長砲身)臼砲は、射程が最大で一万メートルにまで達し、60センチ臼砲の最大射程約六千六百メートルに比べれば確かに射程が長くなりました。
しかし、砲身は新たに作らねばならず、砲弾も口径が違うために互換性などないので、砲弾も作らなくてはなりません。
このため、最初から54センチ砲搭載として作られた七号車以外で、砲身を交換したのは一、四、五号車の三両のみだったといいます。
カール
(手前が54センチ砲搭載型、奥が60センチ砲搭載型)

「カール」は相手がマジノ要塞やセバストポリ要塞のような移動できない防御拠点に対しては有効な兵器だったかも知れません。
しかし、すでに戦争は機動戦の時代になっており、そういった意味では戦場の様相にそぐわない兵器になってしまっておりました。
七両作られました「カール」も、ほとんどその能力を発揮する機会には恵まれず、かろうじてセバストポリ攻略戦で活躍できたに過ぎません。

しかし、こうした巨大砲は戦場の様相の変化など関係なく、なんとなく作ってみたい、使ってみたいと思わせるような何かがあるのかもしれませんね。

それではまた。
  1. 2011/02/23(水) 21:31:01|
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Author:舞方雅人
(まいかた まさと)と読みます。
北海道に住む悪堕ち大好き親父です。
このブログは、私の好きなゲームやマンガなどの趣味や洗脳・改造・悪堕ちなどの自作SSの発表の場となっております。
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