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舞方雅人の趣味の世界

あるSS書きの日々

Dで始まる署名

なんか思いつきで一本超短編を書いてしまいました。

どこかで見たような作品ですが、楽しんでいただければと思います。


『親愛なるコレット。お元気そうで何よりです』
私は燭台を机の上に置き、手紙を書き始める。
大学の後輩であり、あの事件での私の協力者であった彼女には、どんなに感謝してもとてもしきれない。

『大学卒業おめでとう。あれから半年になるのですね』
そう・・・
あの事件から半年になる。
あの忌まわしい事件。
私から妻を奪い去ったあの事件のことを思うと、私は今でも胸が苦しくなる。

奴を呼び込んでしまったのは私のミスだった。
考古学の資料として欧州から取り寄せた各種の物品。
その中にまさかあのような存在が居ようとは・・・
神ならぬ身ゆえに知りようもなかったのだとしてもだ。

最初は奇妙な死体の発見だった。
血をすべて失って死んでいる死体。
警察もその原因はわからなかった。

やがて失血死した死体の数が増え、それとともに奇妙な噂が広まっていった。
いわく・・・夜歩く不気味な男の噂。
マントを羽織ったその奇妙な男が夜歩くたびに、町には失血死した死体が転がるという。

ばかばかしい話だと思った。
20世紀になって20年以上経つというのに、そんなオカルトめいたことなどあるはずがないと思っていた。
だが、真実は違っていたのだ。

気がついたときには手遅れだった。
奴はひそかに気に入った女を手に入れ、自分の支配領域を増やしていきつつあったのだ。
私が研究で大学に夜遅くまで詰めていたころ、妻のマリアンもまた奴の手の内にされていたのだった。

私は妻を取り戻そうとして、奴の正体を知った。
奴ははるか昔の15世紀から延々と生き続け、そして犠牲者の血をすすりながら現在まで過ごしてきたのだ。
そして時折気に入った女をそばにはべらせ、気まぐれな期間だけそばに置いておく。
飽きればまた別の女を捜しに行くというわけだ。

妻はもう奴のものだった。
奴とともに哀れな犠牲者の血をすすり、奴とともに笑っていた。
私には何もできないと思っていたのだろう。
奴は自分の正体を私には見せつけたのだ。

情けない話だが、私はその場から逃げ出していた。
妻の嘲笑を背中に受けても、私は恐ろしさに耐えられなかったのだ。
だが、生き延びたとわかったとき、私の恐怖は怒りへと変わった。
奴をそのままにしては置けない。
奴は滅ぼさなくてはならない相手なのだ。

私は奴を滅ぼす方法を探した。
科学ではだめだ。
奴は科学では滅ぼせないに違いない。
むしろオカルト的な手段でなら可能かもしれない。
私はそう考え、大学の図書館で奴のことを調べまくった。

そのとき手伝ってくれたのがコレットだった。
メガネをかけた知的な雰囲気のする女性だが、メガネの奥の瞳はくりくりとして可愛く、歳相応の幼さも感じさせてくれる。
私は彼女に手伝ってもらいながら奴を退治する方法を探した。
あんまり熱心に探していたので、コレットに躰の心配をさせてしまうほどだった。
だが、私から妻を奪った奴を私はなんとしても赦せなかったのだ。

私はいつしかコレットに妻を奪われた苦しみを吐露していた。
コレットは私を慰めてくれ、奴に対する恐怖と滅ぼさねばならないという思いとを共有してくれた。
私と彼女はいわば戦友のようなものになったのだ。

そして私たちはついに奴を滅ぼす方法を見つけた。
古い文献に載っていた一つの方法。
それはやはりあまりにも科学とはかけ離れた方法だった。

まずはサンザシの木で杭を作らねばならない。
その杭をどうするのか。
奴の胸にハンマーで打ち込むのである。
このサンザシの杭を胸に打ち込むことこそ、奴を滅ぼす唯一の手段なのだ。

奴はどういうわけか日中は動かない。
だから奴の潜む屋敷に昼間乗り込んでいき、奴が動けないでいるうちにサンザシの杭を打ち込むのだ。
私はすぐに行動に移った。

『あの時のことを君は今でも覚えていますか? 私は今でも鮮明に思い出すことができます』
私はペンを走らせる。
そう・・・
あのときのことは忘れない。

ひんやりした地下室に奴は潜んでいた。
屋敷の主はとっくに干からびた死体になっていたのだろう。
奴は我が物顔でその屋敷に暮らしていたのだから。

だが、日中は奴は動けない。
私は犯罪であることを承知で屋敷の門を破り、玄関を壊して中へと侵入した。
そのとき後ろにはコレットが付いていた。

私はなんとか彼女をこれ以上巻き込まないようにしようと思った。
だが、彼女は私が一人では大変だと言い続け、ついに最後まで私に付き合うと言って譲らなかったのだ。
私は彼女の頑固さにあきれながらも、彼女を連れて行くことにしたのだった。

階段を下った奥。
ワインセラーかなんかだったのであろう地下室には、棺が四つも置かれていた。
白木の棺が三つと黒塗りの棺である。
棺は奴のベッドである。
奴は日中をこの暗い地下室にある棺のベッドで寝ているのだ。

一つの白木の棺のふたを開ける。
意外なほど簡単にふたは開いた。
そして中に横たわっていたのは・・・私の妻マリアンだった。

「あら・・・いらっしゃい、あなた。私に血を吸われに来たのかしら」
妻は目を覚ますとそう言って微笑んだ。
まるで以前の妻であるかのように。
だが、彼女の笑みを浮かべた口元には二本のとがった犬歯が見える。
彼女はもう人間ではない。
奴と同じ吸血鬼になってしまったのだ。

私は意を決してサンザシの杭を妻の胸に打ち込んだ。
目覚めたばかりで動きの鈍い妻は、あっさりと杭を打ち込まれて砕け散った。
吸血鬼は死ぬと砕け散るのだ。
骨すらも残らない。
私はただその場に泣き崩れるしかなかった。
私は自分の手で妻を殺してしまったのだから。

「先生・・・ウォーカー先生。しっかりしてください。まだやらなければならないことが・・・」
泣き崩れていた私を気付かせてくれたのがコレットだった。
彼女がいなければ、私は放心状態で夜を迎え、奴に殺されてしまっていたに違いない。

私は立ち上がると、あらためて棺のふたを開けていった。
そして奴の手で吸血鬼にされてしまった哀れな女性たちの胸に杭を打ち、その魂を解放してやった。

最後は黒塗りの棺だった。
当然これには奴が寝ているに違いない。
私は力を入れてふたを開ける。
そこにはやはり奴が寝ていた。
背の高い貴公子のような姿。
整った顔立ち。
生まれ持つ身分の高さによる威厳。
そんなものが相まって、この男を飾っている。
何も知らない者が見れば、こいつが悪魔の申し子だとは思えないだろう。

私はサンザシの杭を男の胸に当て、思い切りハンマーを振り下ろす。
肉をえぐる感触があり、杭は男の胸に突き立った。
その瞬間、男は目を見開いて悲鳴を上げる。
そして俺の顔を見て驚いたようにこう言った。
「お前か・・・何もできぬ腰抜けと思っていたものを・・・」
「妻を奪われたんだ。これぐらいのことはする」
「ククク・・・われは滅びぬぞ。何度でも蘇るさ」
「そうはさせないさ・・・」
私は再度杭を打ち込んだ。
血しぶきが飛び散って私の躰に降りかかる。
だが、私は力を緩めない。
やがて血は止まり、男の躰は崩れていった。
悪夢は終わったのだ。

そう・・・
悪夢は終わった。
あれから半年になる。
崩れた奴の躰はそのまま棺ごと墓場に埋め、それ以後復活した様子もない。
奴は完全に滅びたのだ。

私はあの後引越しし、別の町へ移った。
妻との思い出がある町には居づらかったのだ。
コレットは大学に残り、私とは別の道を歩んでいる。
卒業後は大学の司書になるらしい。
それまで若干時間があるというから、卒業祝いもかねてこの町に呼んでみようか。
もちろん旅費はこちら持ちでだ。
あの後あわただしく町を出てしまったのできちんと御礼もしていない。
これで少しでも御礼になればいいのだが。

私は今はこの町の大学で歴史学を教えている。
だが、もうあのような事件はこりごりだ。
資料を取り寄せるにしても、充分すぎるほど注意を払っているつもりだ。
最近は妻のことのショックも薄らいだのか、なんとなく女性に目が行くようになった。
自分もまだまだ若いつもりだが、最近の若い女性は本当に大胆な服を身に着けている。
胸元が開き、まるでキスしてくださいといわんばかりのようだ。
彼女たちの胸元や首筋にキスしたらどんな味がするのだろう。
きっと甘美な味がするに違いない。
そう・・・
コレットの首筋にもキスしたい。
彼女なら私とともに生きてくれそうな気がする。

さて、手紙を書き終えてしまわねば・・・
それにしても妙だ。
最近自分の署名にえらく困惑する。
Walkerと綴らなくてはならないはずなのに、どうしてもDで書き始めてしまうのだ。
そう・・・
Draculaと・・・

End
  1. 2011/02/17(木) 21:21:21|
  2. 異形・魔物化系SS
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舞方雅人

Author:舞方雅人
(まいかた まさと)と読みます。
北海道に住む悪堕ち大好き親父です。
このブログは、私の好きなゲームやマンガなどの趣味や洗脳・改造・悪堕ちなどの自作SSの発表の場となっております。
どうぞ楽しんでいって下さいませ。

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