昨日に引き続き「サイボーグ兵57号」の後編です。
それではどうぞ。
『う・・・あ・・・こ、ここは?』
俺は失っていた意識を取り戻す。
組織のアジトに連れ帰られた俺は、組織の手で意識を失わせられていたのだ。
「目が覚めたようだな、57号」
俺は声をかけられたほうを見る。
どうやら首は問題なく動かせるらしい。
気が付くと俺は、椅子に座らせられていた。
拘束具とかは一切ない。
だが、俺の躰の首から下は機能を停止させられているらしく、まったく動かすことができなかった。
「お前の躰を調べさせてもらった。その結果、どうやらお前の頭脳制御装置が衝撃で破壊されてしまっていたようだ」
“中佐”と呼ばれるグレーの軍服を着た男が鋭い目で俺を見つめていた。
サイボーグ兵団の指揮官を務めている男だ。
頭脳制御装置が働いていたときには、俺はその指揮に何のためらいもなく従っていた。
「残念ながら再度の制御装置の埋め込みは難しいらしい。お前の脳を破壊してしまう可能性のほうが高いそうだ」
中佐が残念そうに首を振る。
「組織としてはやむを得ずお前を処分することにした。制御できないサイボーグなど使えないからな」
処分・・・
やはりそうか。
俺は殺されるのか。
『だったらこんな会話をしていないで処分したらどうなんだ』
俺は半ばやけくそ気味に言ってやる。
躰が動かない以上逃げることもできない。
どうせ処分されるのに、御託を並べられても仕方がない。
「まあ、そうあわてるな。面白い趣向があるのだ。それにただ処分するだけならわざわざ追っ手を差し向けたりはしないさ」
『どういうことだ』
俺は中佐に尋ねる。
追っ手を差し向けない?
組織が脱走者を見逃すはずはないのに・・・
「クククク・・・今回お前を連れ帰ったのは、お前のどこに不調の原因があるか調べたかったからだ。まあ、予想通りだったがな」
『予想通り・・・』
「そうだ。頭脳制御装置の故障でなければ単純な動作不能になるだけだろうからな。頭脳制御装置の故障だったからこそ、お前は通常通りに動けていた。その確認をしたかったというわけだ」
不気味に笑っている中佐。
嫌いになれる顔だ。
『だから追っ手を差し向けたのか?』
「そうだ。ただ単にお前を始末するだけならば、ボタン一つ押せばいい」
『なっ?』
どういうことだ?
「お前の嵌めているベルトには爆弾が付いている。脱走者など本部の遠隔装置で爆弾を爆破すればいいだけだ」
俺は自分の腰に嵌められている組織のマークの付いたベルトに目をやった。
不気味に金属色に輝くベルトにまさかそんな仕掛けがあったとは・・・
くそっ!
俺は手のひらで踊らされていただけだったのか・・・
「さて、おしゃべりはこれぐらいにしておこう。お前にかかりきりになっているわけにもいかないからな」
『クッ、始末するならさっさと始末しろ』
「いい覚悟だが、まあそう焦るな。面白い趣向があると言っただろう」
『面白い趣向?』
いったい何のことだ?
『これを見ろ』
中佐がそう言うと、中佐の脇の壁面がスライドしガラス張りの壁が現れる。
『!』
俺は息を呑んだ。
ガラスの向こうに広がる部屋の光景を見知っていたからだ。
『サイボーグ製造プラント・・・』
「その通り。お前もここで作られたサイボーグ兵だったな」
中佐がニヤニヤと笑っている。
その手が何かのスイッチを操作する。
『いやぁっ、何なのこれ。はずして。誰か助けてぇっ!』
スピーカーから流れてきた声を聞き、俺はすぐさま席を立ち上がりたかった。
今すぐに壁の向こうに行きたかった。
今の声は紛れもなく綾子のものだったのだ。
『綾子! 綾子っ!!』
だが躰は動かない。
サイボーグの躰がこれほど自由が利かないとは・・・
くそっ!
ガラスの向こうの部屋がゆっくりと近づいてくる。
いや、違う。
俺の椅子がガラス壁に近づいたんだ。
そこにはベルトコンベア状の改造台に載せられた裸の綾子が、拘束されて寝かされていた。
『綾子! 綾子!!』
俺は必死に彼女の名を呼んだ。
だが、彼女には聞こえない。
こちらの部屋の音は伝わっていないのだ。
『彼女をどうするつもりだ? 彼女は何も知らない。彼女を家に帰してやってくれ!』
俺は中佐に願い出る。
彼女を無事に解放してくれたら、俺はどうなってもかまわない。
「ククククク・・・彼女にはこれからサイボーグ兵になってもらう。ちょうど女性をサイボーグ兵とした場合のデータがほしかったところだからな。女性であってもサイボーグ兵となれば、人間の兵士など問題にならない戦力となるだろう。彼女にはそのテストケースとなってもらう」
中佐の目がいやらしそうに綾子の裸を追っている。
『やめろ! 彼女に手を出すな! やめろ!』
俺は必死で躰を動かそうとした。
だが、どうにも躰は動いてくれない。
何とかならないのか、畜生!
「ククククク・・・お嬢さん、今からお前には我が組織のサイボーグ兵になってもらう。お前の乗っているその台がちょうど一周すれば、お前は我が組織の新たなサイボーグ兵となることだろう」
中佐がマイクに向かって話しかける。
その声はガラス壁の向こうに流れているのだろう。
『サイボーグ兵? それって何なんですか?』
不安そうな綾子の声。
きっと恐怖に怯えているに違いない。
「先日お前も見たはずだ。お前の恋人だった健一の姿を。彼こそがサイボーグ兵なのだ」
『健一さんの姿・・・そんな・・・するとやっぱりあの黒い服の人が健一さんだったの?』
綾子・・・
俺はあの手を口に当てて驚愕の表情を浮かべていた綾子の顔を思い出す。
「そうだ。そしてお前もサイボーグ兵になるのだ」
『ええっ? そんな! いやっ! いやですっ! いやぁっ!!』
綾子の叫びをよそに中佐の手がスイッチに触れる。
とたんに綾子の乗っている台がベルトコンベアの上を移動し始める。
『いやぁっ! 助けてぇ! お願い、誰かぁっ! いやぁっ! 私何にもしてないのにぃ!!』
『やめろ! やめろぉっ! 彼女をサイボーグ兵にするのはやめてくれっ!!』
綾子と俺の叫び声が冷たい部屋の中に響く。
『きゃあぁぁぁぁぁぁ』
だが、綾子の悲鳴が上がり、綾子の寝かされている台が機械の中に消えていく。
『ああ・・・』
俺は泣きたかった・・・
だが、ガスマスクのレンズから涙はこぼれてはくれなかった。
綾子の載せられた台が機械の中を進んでいく。
意識を失わせられたのか、彼女の悲鳴はもう聞こえない。
時々機械と次の機械までの間に彼女の姿が覗くことがある。
だが、その姿は機械を通る回数が増えるたびに人間ではなくなっていった。
頭髪を完全に落とされ内臓を抜き取られ、機械が埋め込まれて骨までも金属に変えられる。
全身には真っ黒な強化ラバーを吹き付けられ、皮膚がラバーに覆われる。
脳に機械を埋め込まれヘルメットがかぶせられる。
皮膚を剥ぎ取られた顔面にガスマスクのような仮面が付けられる。
背中にバックパックが付けられ、そこから伸びるパイプがわき腹に差し込まれる。
最後に右腕の外側にレーザーガンが取り付けられ、綾子の改造は終了した。
『綾子・・・』
俺は綾子が改造されていくのをただ見ていることしかできなかった。
躰さえ動けば・・・
躰さえ動けばどんなことをしてでも止めるのに・・・
「改造は終了した。起きるのだ、サイボーグ兵66号」
中佐の声に台の上からゆっくりと起き上がる綾子。
その姿は漆黒のラバーに包まれながらも、女性の流れるような柔らかいラインをまったく損ねてはいなかった。
「動作確認をし、申告せよ」
『動作確認。各部異常なし。申告します。私はサイボーグ兵66号。組織に永遠の忠誠を誓います』
右手を胸のところで水平にし、組織に忠誠を誓う綾子。
いや・・・彼女はもうサイボーグ兵66号になってしまったのか・・・
「右手の扉を抜け、こちらに来るがいい」
『了解しました』
軍隊式の整った歩き方でスライドドアを抜け部屋に入ってくる綾子。
その姿は異形となってしまったにもかかわらず美しかった。
『綾子・・・』
俺は部屋に入ってきた綾子に声をかける。
だが、彼女は俺のほうを見ることもなく中佐の前に歩み寄る。
『サイボーグ兵66号参りました』
「うむ、これよりお前に命令を与える」
『ハッ、何なりと』
まるで兵士のように直立不動で上官の命令を待つ綾子。
彼女は普通の女性だったのに・・・
「そこに座っているサイボーグ兵57号は、頭脳制御装置が故障した不良品である。よって処分することにした。お前のレーザーガンでサイボーグ兵57号の頭部を破壊しろ」
俺は絶望感に目の前が暗くなった。
こいつらはそのためにわざわざ俺を生かしておいたのか・・・
綾子に俺を殺させるために・・・
くそっ! くそっ! くそっ!!
『了解しました。不良品のサイボーグ兵57号の頭部を破壊します』
すっと俺のほうを向く綾子。
カツコツと足音を響かせて俺に近寄ってくる。
『サイボーグ兵66号、お前は綾子だ。思い出してくれ。お前は香島(かしま)綾子という名前で優しい女性なんだ。思い出してくれ!』
俺は必死で彼女に話しかける。
頼む・・・
彼女の頭脳制御装置よ、壊れてくれ!!
『一度でいい! 床か壁に頭を打ち付けてみてくれ! 頭脳制御装置を壊してくれ!』
俺は彼女がそんなことをするはずがないと思いながらも、そう言わずにはいられない。
何でもいい。
頭脳制御装置さえ壊れてくれれば・・・
「クククク・・・サイボーグ兵66号の頭脳制御装置が故障することを願っているのなら無駄なことだぞ。今回のお前の件で頭脳制御装置の耐久性は見直された。さらに頭脳制御装置が万一故障した場合、自動的に電流で脳を焼いた上ベルトの爆弾が作動するように改良されたのだ」
中佐が何か言っているが、俺にはもうどうでもいいことだ。
俺はただ綾子の名を呼び続ける。
『綾子! 綾子! 俺だ! 健一だ! 目を覚ましてくれ、綾子!!』
そのとき綾子の歩みがぴたっと止まる。
『綾子』
『香島綾子は私の以前の名前。今の私はサイボーグ兵66号。以前の名前に意味はないわ』
すっと右腕を上げ、レーザーガンを俺に向ける綾子。
そのガスマスクのような面が無表情に俺を見つめていた。
『綾子・・・』
『サイボーグ兵57号を不良品として処分します』
綾子の右腕のレーザーガンが一瞬光ったように見え、俺の意識は闇に飲み込まれていった。
END
いかがでしたでしょうか?
ちょっと救いのない話になってしまいましたが、よろしければ拍手感想などいただけましたらと思います。
今回の話は、昨日のコメントでもmaledict様が触れておられましたが、先日ふと石ノ森先生のマンガ「サイボーグ009」にでてきましたサイボーグマンというキャラクターのことを思い出しまして、あの全身をラバーに覆われたサイボーグマンの女性系がいたら魅力的なんじゃないかなと思ったのがきっかけでした。
なので、作中のサイボーグ兵はそのサイボーグマンのイメージが色濃く残っております。
まあ、細かいところは違いますけどね。
今回もお読みくださいましてありがとうございました。
また次の作品に取り掛かろうと思います。
次回もよろしくお願いいたします。
それではまた。
- 2011/02/28(月) 21:14:34|
- 怪人化・機械化系SS
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二月最後の今日と明日の二日間で、短編SSを一本投下します。
タイトルは「サイボーグ兵57号」です。
楽しんでいただければと思います。
それではどうぞ。
『・・・・・・』
俺は無言で夜の通りを走る。
以前ならとっくに息が切れて走れなくなっているに違いないはずなのに、今の俺は息一つ切らしてはいない。
体内の機械化された循環器系や呼吸器系が俺の人工筋肉の運動を強力にアシストし、俺は通常の人間ではなしえないことを平気で行えるような躰になっていたのだ。
走る速度だって、時速四十キロという自動車のような速度でもう二時間も走っている。
人間じゃありえない・・・
そう、俺はもう人間じゃない・・・
全身を真っ黒な強化ラバーの皮膜で覆われ、頭には頭部をすっぽりと覆うヘルメットのようなものをかぶせられ、顔面部分にはガスマスクのような顔全体を覆うマスクが付いている。
目はそのガスマスクのレンズとなり、鼻と口はそのガスマスクの呼吸器部分になったのだ。
内臓は機械化され、骨も筋肉も人工のものに置き換えられ人間の数倍のパワーを発揮する。
右腕の外側には小型のレーザーガンが仕込まれ、背中には動力源となる小型のバックパックが背負わせられ、そこから伸びるパイプが腰の両脇へとつながっていた。
そして腰にはご丁寧に組織の紋章の付いたベルトが嵌っている。
全身を闇に溶け込む黒に覆われた異形の姿。
これこそが今の俺の姿であり、俺はサイボーグ兵57号という化け物になっていたのだった。
最初はただの転職説明会のはずだった。
不況で勤めていた会社が倒産してしまった俺は、次の就職先を探してその説明会に顔を出したのだ。
そこでは年齢二十代以下と三十代以上に分けられ、俺は二十代以下のグループで適性検査というものを受けた。
就職先の斡旋のため適性を検査するんだということだった。
そしてその検査でさらにグループが分けられ、別室に通された俺は、そこでガスのようなものをかがされて意識を失った。
今思えば、それは俺のようなサイボーグ兵にするための素材を求めていたのだろう。
俺は気が付くとどこか工場か研究所のようなところに連れてこられていた。
そしてベルトコンベアのようなものに躰を固定され、機械の中を通されたのだ。
機械の中を通るうちに、俺の躰の中は次々と機械に置き換えられていった。
意識はやがて失われ、次に目が覚めたときには俺の躰は今のようなサイボーグになっていたのだ。
俺は何の疑問も持たなかった。
サイボーグになったことをおかしなこととは思わなかった。
俺は組織の一員であり、組織の命令に従って行動することが当たり前に思えたのだ。
今ならそれが頭脳制御装置によるものだったとわかっている。
だからその装置が故障しなかったなら、俺は今でも組織の忠実なる一員だったに違いない。
その日、俺は組織のサイボーグ兵として仲間とともに戦闘訓練を行っていた。
訓練と言っても実戦形式であり、実弾も使われる。
訓練で破壊されてしまうサイボーグ兵もいるぐらいなのだ。
だが、その訓練を行うことで肉体の制御を機械が覚え、サイボーグとしての能力を発揮できるようになる。
サイボーグ兵が一人いれば、通常の軍隊の兵士など百人単位で相手ができるのだ。
組織がサイボーグ兵を使って何をするつもりなのかはわからない。
だが、遊ばせておくために作るのではないだろう。
いずれは戦争に使われることは明白だ。
だが、俺はそんなこと疑問にも思わず、組織の命令に従うことのみを考えていた。
誤射だったのか、それとも意図的だったのかはわからない。
俺の近くに砲弾は着弾し、俺はその爆発をまともに受け取った。
強化ラバーの表皮は砲弾の破片程度では傷一つ付かないが、爆風は俺を激しくたたきつけ、俺は頭を打ってしまったのだ。
すぐに体内のチェックが自動で行われ、戦闘能力等肉体機能には問題がないことがわかった。
だが、俺はそのときから組織の命令を素直に聞けなくなっていた。
おそらく頭脳制御装置に損傷が起こったのだ。
サイボーグ兵として組織に忠実に従うよう頭脳を制御する制御装置。
それが故障してしまったことで、俺は自我を取り戻した。
そして、自分がサイボーグ兵になってしまったことに気が付いたのだ。
俺の躰はもう元には戻らない。
この躰で生きていくしかない。
いっそのこと死んでしまったほうがいいのではとも思ったが、この躰はそう簡単に死ぬことすらできはしない。
自殺などしようと思ってもできないようになっている。
だとしたら、俺は最後に決定的な場面で組織を裏切ってやろうと考えた。
組織の命令に忠実なふりをして、組織の作戦に従い、その大事な場面で作戦を失敗させてやるのだ。
もちろん俺は殺されるだろう。
だが、作戦の失敗は組織にだってダメージを与えるはずだ。
何より裏切るはずがないと思い込んでいるサイボーグ兵の裏切りは大きなダメージになるはずだ。
うまく行けばサイボーグ兵自体の製造をやめることだってありえるだろう。
そうなればもう俺のような存在は生まれなくてすむ。
俺はそれ以後も組織に忠実なサイボーグ兵であり続けた。
組織の命に従い、ほかのサイボーグ兵たちと何も変わらないふりをし続けた。
幸いサイボーグ兵はある程度の自我は持っているので、ロボットのようなふりは必要ない。
組織に逆らいさえしなければいいのだ。
だが、俺はついに組織を抜け出さざるを得なくなってしまった。
決定的な場面で裏切るという思惑は費えてしまうが、仕方がない。
綾子(あやこ)・・・
お前を死なせたくはないんだ・・・
綾子・・・
俺の愛しい人。
お前だけは・・・
お前だけは死なせたくない。
俺は走る。
夜中の道をただひたすら彼女のいる町に向かって。
彼女に危険が迫っていることを知らせなくてはならない。
組織の次の作戦は病原菌の撒布だった。
伝染性は低いものの致死性の病原菌を撒いてその効果を確かめるというもの。
その対象となった地域には綾子が住んでいるのだ。
綾子とはもう三年の付き合いになる。
結婚の約束もしていた。
だが、勤め先の倒産で落ち着くまで延期ということになっていたのだ。
落ち着くための就職先を探してこんな目に遭うなんて・・・
あれから一ヶ月が経つ。
いまさらこの姿で綾子に会うなんてできるはずがない。
だが、せめて危険を知らせて町から脱出させなくては・・・
綾子に死んでほしくない。
綾子の住むアパート。
今俺はようやくたどり着いた。
すでに深夜の時間帯。
周りには誰もいない。
俺が組織を抜け出したことはまだ気付かれていないようだ。
俺は一気に三階建てのアパートの屋根にまでジャンプし、そこから綾子の部屋のベランダに飛び降りる。
傍から見れば不審者以外の何者でもないが、この際そんなことは言っていられない。
俺はそっとベランダの窓を叩き、綾子を起こそうとする。
彼女の部屋のベッドはこの窓のそばだ。
きっとすぐに気付くはず。
『だ、誰? 誰かそこにいるの?』
中から怯えたような声がする。
当然だろう。
夜中にいきなり三階の窓を叩く者がいるのだ。
恐怖に思って当たり前である。
『綾子・・・綾子・・・俺だ。健一(けんいち)だ』
俺はかつての自分の名を告げる。
ナンバーで呼ばれることが当たり前になっていたので、忘れかけてしまっていた名前だ。
ガスマスク状になってしまった口のために、マイクを通した声のように聞こえるかもしれないが仕方がない。
『えっ? 健一さん? 健一さんなの?』
『そうだ。俺だ。健一だ』
少し綾子の声から怯えが取れたようだ。
『健一さん・・・どうして? 今までどこに?』
起き上がってカーテンを開けようとする気配がわかる。
『だめだ。開けるな』
『えっ?』
『今の俺は以前の俺じゃない。綾子の知っている健一じゃないんだ』
そう・・・今の俺の姿は見せたくない。
こんなサイボーグ兵になってしまった姿など見せられるはずがない。
『健一さん・・・何が・・・何があったの? あなたがいなくなって一ヶ月も経ったわ。一体どこで何をしていたの?』
カーテンの向こうで問いかけてくる綾子。
きっとその表情は曇っているだろう。
俺が姿を見せないのを不審に思っているに違いない。
『それについては今は答えられない。だが、君に危険が迫っているんだ。どうか俺を信じて朝になったら実家に戻ってくれ』
『実家に? どういうことなの?』
『このあたり一帯に、ある組織の手で病原菌が撒かれる。だから避難してほしいんだ』
これを言わなければおそらく彼女は避難してくれないだろう。
だが、彼女がそのことを周囲に訴えても誰も信じまい。
ここは平和の国だからな。
『病原菌? そんな・・・信じられない』
『信じてくれなくてもいい。とにかく明日からしばらく実家に避難して・・・』
俺はその先を言えなかった。
周囲にサイボーグ兵の存在を感知したからだ。
『綾子・・・俺はもう行かなくちゃならない。俺のことは忘れてくれ。避難だけはしてくれよ』
『健一さん!』
俺がベランダからジャンプして飛び上がろうと思った時と、彼女がカーテンを開けるのは一緒だった。
彼女は口に手を当てて驚きの表情で俺を見つめ、俺はその目に俺の姿が映ったのを見ながらジャンプした。
『ここにいたのか、57号』
『お前が来るとしたらここだと命じられたが、その通りだったな』
綾子のアパートから少し離れたビルの屋上。
そこにジャンプした俺を挟むように、俺の左右両側にジャンプしてくる38号と40号。
この二人はコンビを組むことが多く、連携はお手の物だ。
まずいぞ・・・これは。
『おとなしくしろ。お前を連れ帰る』
『抵抗はするな。仲間と戦いたくはない』
38号と40号がじりじりと近寄ってくる。
連れ帰られてたまるものか。
脱走した俺が生かしておかれるはずがない。
どうせならただ殺されるよりもできるだけ逃亡して、組織の手を煩わせてやるほうがいい。
もしかしたらそのことで組織のことが明るみに出るかもしれないじゃないか。
俺は二人から逃げ出そうと走り出す。
隙をうかがってジャンプして逃げるのだ。
車の通りの多い幹線道路に出れば、人目につくような真似はできまい。
『ガッ!』
突然俺の躰に衝撃が走り、躰がまったく動かなくなる。
俺の脳には各部作動不能の警告が送られてくる。
ど、どうしたことだ・・・
動力にまだ不足はきたしていなかったはず。
何が一体?
『無駄だ。逃がしはしない』
『これはサイボーグの機能を封じる電磁パルスを撃ち出す銃だ。これで撃たれればサイボーグといえども動作不能になる』
俺のそばにやってきた38号と40号が、変わった形の銃を持ち俺を見下ろしていた。
レンズの目は無表情で、彼らが俺のことをどう思っているかはまったくわからない。
くそっ!
まさかこんな銃があったなんて・・・
『安心しろ。お前を生かして連れ返れとの命令だ。このままお前を連れ帰る』
『女はどうする? こいつと接触してしまったぞ。まあ、二三日中にはこのあたり一帯にあの作戦が行われるから放っておいてもいいのかもしれんが・・・』
『待て、本部に確認する・・・』
動けない俺を前に二人が会話する。
くそ、躰さえ動けば・・・
綾子・・・逃げろ・・・
『本部からの命令だ。女を連れて来いという』
『ほう、では連れて来るとしよう』
40号がジャンプする。
くそっ、声も出せないし首も動かせない。
まったく身動きができないなんて・・・
綾子・・・
逃げてくれぇ!!
『さて、戻るとしようか57号』
俺の躰を担ぎ上げる38号。
そのままジャンプしてその場を後にする。
俺はただなすすべもなく連れて行かれるままだった。
- 2011/02/27(日) 20:06:05|
- 怪人化・機械化系SS
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昨晩は今日も6ゾロ様とVASLでのASL-SK対戦を行いました。
シナリオはS18の「BAKING BREAD」
SK#2レベルのシナリオで、スターリングラードの戦いを扱っており、個人的に好きなシナリオのひとつです。

この対戦は、本来先日終了したASL-SK201年リーグ戦の上位進出者によるプレイオフとして予定されていたシナリオなのですが、今回プレイオフは行われなかったので、単純に対戦を楽しみましょうということで対戦することになったものです。
陣営は6ゾロ様がソ連軍、私が独軍です。
時間の関係で2ターンまでしかまだ進んでいませんが、序盤はかなり独軍有利に進みました。

これが両軍の初期配置。
青い駒が独軍で、主力は盤外から侵入します。
盤上にあるもやもやっとした灰色のものは瓦礫を表しており、建物が崩壊して瓦礫だらけとなったスターリングラードの町並みを表しております。

これは昨日の終了時の様子。
ソ連軍がかなり後退し、独軍が結構進出しております。
独軍は最終的には盤上のVマークのある建物を占領しなくてはなりません。
今はソ連軍がおりませんが、だからといってそう簡単に占領もできないでしょう。
6ゾロ様は防御射撃での萎縮が多かったりダイス目が高かったりとついてなかった様子。
おかげで独軍はほぼ損害なく前進することができましたが、問題はここからです。
ソ連軍にはまだ隠匿配置の45ミリ対戦車砲があるので、この対戦車砲が炸裂すると独軍は一気に兵力を削り取られかねません。
また3ターン目の増援も徴集兵が多いとはいえ侮れません。
まさに「戦いはこれからだ!」でしょう。
次回の予定は今のところ未定ですが、近いうちに続きをやりたいと思います。
今日も6ゾロ様、次回もよろしくお願いします。
今日はこんなところで。
それではまた。
- 2011/02/26(土) 21:14:32|
- ウォーゲーム
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二月も後半に入り、プロ野球もいよいよオープン戦の時期になってまいりました。
各球団も今日でキャンプを打ち上げというチームが多いようで、北海道日本ハムも阪神もそれぞれキャンプ終了となったようです。
北海道日本ハムは、梨田監督もおっしゃるように中田選手の成長が目覚しかったように思います。
練習試合等10戦で5本のホームランというのも見事ですが、練習に対する態度や心の持ちようがずいぶん変わったみたいに思われます。
今年はレギュラーの一角を占めて活躍してくれるのではないでしょうか。
シーズンが楽しみです。
斎藤佑樹投手は無事にキャンプを怪我なく終えることができたようです。
一時腹痛なども発症したようですが、かえっていい休養になったのではと梨田監督もおっしゃっているようですし、調整はほぼ満足のいくものだったようですね。
気になるのは田中賢介選手が右手薬指を剥離骨折したというニュースです。
全治四週間とのことですが、早く治ってほしいものですね。
阪神のほうはこのところ目覚しい伸びを見せているのが高浜選手でしょうか。
ここ数年怪我に泣かされてきた高浜選手もようやく今年は順調なスタートが切れそうで、阪神内野陣の争いに加わってきそうです。
千葉ロッテも小林投手の人的保障として高浜選手に目を付けているという話もありますので、それだけ注目されているのでしょう。
外野手争いも熾烈です。
マートン選手、(肩の調子しだいですが)金本選手に次ぐ外野三人目の位置を、(藤川)俊介選手、浅井選手、外野コンバートの坂選手、そして柴田選手の四人が争う形になっており、それぞれ持ち味を出してアピールしているとのことです。
今年のセンターは誰が守ることになるのでしょうか。
明日のオープン戦は阪神はオリックスと、北海道日本ハムは千葉ロッテとそれぞれ対戦予定。
北海道日本ハムは斎藤投手が投げるかもしれないとのこと。
楽しみですね。
それではまた。
- 2011/02/25(金) 21:16:02|
- スポーツ
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先日のエチオピアでの政変以後、中東各地で反政府の運動が広がりを見せておりますが、リビアでも国家指導者カダフィ大佐の退陣を求める民衆のデモが続いているようです。
これに対しカダフィ大佐は武力で鎮圧することに決し、武装部隊を投入したとのことですが、その中にはリビア人以外の外国人兵士による傭兵もいるとのことで、彼らは同国人ではないリビア人民衆を相手に武力行使を行っているといいます。
内戦に発展することなく穏健に権力委譲ができればいいのですが、なかなかそうもいかないようですね。
と、言うことで、傭兵が使われているとのニュースからこの映画のことを思い出してしまいました。

「ワイルドギース」です。
1978年といいますからもう30年以上前の映画なのですが、当時の有名どころの俳優さんを使って傭兵を主役にした映画を作ったのです。
アフリカの某国で囚われの身となっている前大統領を救出し、現政権を打倒して資源の採掘権を得ようとする英国人富豪。
彼はそのために「ワイルドギース」と呼ばれる傭兵団を用いて救出作戦を実行させます。
「ワイルドギース」の指揮官フォークナー大佐はすでに中年の人物でしたが、参謀のレイファー、パイロットのショーン、ボウガンの使い手のピーターといった人物を中核に50人の部隊を率いてアフリカ某国に乗り込み、青酸ガスを使った奇襲で前大統領を奪取することに成功しますが・・・
派手な戦闘シーンはそう多くはありませんが、傭兵の最後の輝きという感じの彼らの行動にひきつけられました。
私はテレビで見た吹き替え版しか知りませんので、DVDは見たことがなく、もう何年も前に見たっきりなんですけどいまだに印象に残る映画のひとつです。
南アフリカ出身の白人兵士ピーターは、最初は救出対象の前大統領であるリンバニを黒人野郎と言って差別感丸出しですが、一緒に逃亡行を繰り広げる中で次第に認め合い、最後はリンバニを再び大統領にしてみせるとまで言って彼をかばって戦死します。
フォークナーの友人でもあるレイファーは一人息子エミールを残しての出発でしたが、最後は彼も銃弾に倒れ、敵の手で拷問を受けるよりはとフォークナー自ら止めを刺すことになります。
そして無事に脱出し故国に帰ったフォークナーは、遺児となったエミールを訪ね、「お父さんの話をしよう」といって二人で歩いていくのです。
もうね、このあたりは泣ける映画です。
DVDがでているみたいなのでもう一度見ようかな。
でも吹き替えは入っていないんですよねー。
テレビの吹き替えが傑作だっただけに残念。
今日はこんなところで。
それではまた。
- 2011/02/24(木) 21:12:50|
- 映画&TVなど
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1935年末、ドイツは将来的にフランスとの戦争もありえるとして、フランスが当時鋭意整備中だったマジノ要塞線に対する攻撃用の重臼砲の開発に着手しました。
臼砲(きゅうほう)とは、砲弾をまっすぐ飛ばして直撃を狙うカノン砲とは違い、短い砲身から砲弾を上方目がけて打ち上げ、落下させて着弾させるタイプの砲で、迫撃砲の大型版のような形をしているものです。
この臼砲の臼の字は餅つき用の臼ではなく、建物を作るときに使うモルタル(mortar)をこねるための臼であり、それに似た形をしているということから臼砲や迫撃砲はモーター(mortar)と呼ばれるようになりました。
初期にはこの重臼砲は80センチという大口径のものが考えられましたが、これに対し砲を開発することになったラインメタル社は口径60センチの臼砲を提案。
しかも分解して運搬し、現地で組み立てるという仕様要求も、それでは射撃体勢が整うまでに時間がかかりすぎるとして自走式の車台に搭載するよう提案しました。
このラインメタル社の提案は採用され、1938年8月に60センチ自走臼砲が開発されることになったのです。
自走と言っても60センチもの口径をもつ巨大臼砲を搭載するわけですから、ちょっとやそっとではすみません。
何しろ口径だけで言うなら日本の戦艦「大和」級の46センチ主砲よりも大口径なわけですから。
そのため重量も莫大であり、60センチ臼砲部分で64.5トン、それを搭載する車台部分が32.5トン、合わせて97トンもの重量を持つ車両になってしまいました。
しかもこれは計画値であり、実際できあがった60センチ自走臼砲はなんと120トンにも達するものとなったのです。
ちなみにドイツ軍の重戦車たる88ミリ砲搭載のティーガーⅠ型で57トンでした。
臼砲部分を載せる自走車台はガソリンエンジンで動く履帯(キャタピラ)式のもので、全長は11メートルにも達しました。
この車台は特殊なつくりになっており、射撃時の安定性を得るために履帯が上下して車体の腹の部分がぺったりと地面に接地するようになっておりました。
そうすることで射撃の反動などの衝撃を車台全体で受け止めることができたのです。
履帯の上下はエンジンによって行われ、エンジンを切ると下がりエンジンが始動すると上がるようになっていたそうですが、この機構がうまく働かなかったときのために手動クランクも備えられていたといいます。
でも、手動でなんて気が遠くなりそうですね。
車台は全体で三分割され、その中心部に臼砲が据えられました。
砲身は後ろ向きに取り付けられ、砲口が向いているほうが後ろということになります。
先に述べたとおり、重量が120トンを超えるものであったため、自走と言っても時速10キロにも満たない速度で10時間程度しか走れなかったそうです。
また、最大でも60キロほどしか航続距離がなかったとも言います。
ほとんど陣地への移動にしか使えなかったことでしょう。
となると、戦場への移動はどうするのか。
これは結局鉄道で移動するしかありませんでした。
とはいえ、これを載せることのできる貨車などありません。
ではどうしたか?
なんと、二両の貨車に吊り下げ装置を搭載して、その二両で前後から挟み込むようにして吊り下げたのです。
こうして長距離移動の問題も何とか解消されました。
こうして作られた60センチ自走臼砲は、開発推進者のカール・ベッカー将軍の名をいただいて「カール」と呼ばれるようになりました。
そして、試作一号車に引き続き、六号車までが一応量産され、最終的には七号車までの七両が生産されました。
六号車までは1941年半ばまでには完成しましたが、肝心のマジノ要塞攻略には使われることはありませんでした。
「カール」はその後の独ソ戦に投入され、特にクリミア半島のセバストポリ要塞攻略にその威力を発揮しました。
60センチの大口径臼砲から発射される砲弾は、ソ連軍のセバストポリ要塞にダメージを与え、要塞砲台をいくつか破壊したのです。
1942年、ヒトラーは「カール」の射程の短さを不服とし、長砲身化によって射程を延伸するように命じました。
そのため、「カール」は60センチ臼砲から54センチ長砲身臼砲へと砲身交換がなされることになりました。
この54センチ長砲身(あくまで60センチ臼砲に比べての長砲身)臼砲は、射程が最大で一万メートルにまで達し、60センチ臼砲の最大射程約六千六百メートルに比べれば確かに射程が長くなりました。
しかし、砲身は新たに作らねばならず、砲弾も口径が違うために互換性などないので、砲弾も作らなくてはなりません。
このため、最初から54センチ砲搭載として作られた七号車以外で、砲身を交換したのは一、四、五号車の三両のみだったといいます。

(手前が54センチ砲搭載型、奥が60センチ砲搭載型)
「カール」は相手がマジノ要塞やセバストポリ要塞のような移動できない防御拠点に対しては有効な兵器だったかも知れません。
しかし、すでに戦争は機動戦の時代になっており、そういった意味では戦場の様相にそぐわない兵器になってしまっておりました。
七両作られました「カール」も、ほとんどその能力を発揮する機会には恵まれず、かろうじてセバストポリ攻略戦で活躍できたに過ぎません。
しかし、こうした巨大砲は戦場の様相の変化など関係なく、なんとなく作ってみたい、使ってみたいと思わせるような何かがあるのかもしれませんね。
それではまた。
- 2011/02/23(水) 21:31:01|
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先日ツイッターで「甘酒飴舐めている。(゚д゚)ウマー」とつぶやいたところ、甘酒飴なんてあるの? って返ってきたので、これだよーって教えてあげた一品です。
「千歳鶴甘酒ソフトキャンディー」

札幌にある地元の酒造メーカー「日本酒造株式会社」様のブランド「千歳鶴」というお酒を造った酒かすを使用しているのが特徴だそうで、味わいはまさに甘酒です。
作っているのがまた網走の津別町にあるロマンス製菓様だそうで、まさに北海道特産なのかも。
札幌ではわりと手に入りやすいものなんですが、本州以南では売ってないのかな。
一応ググっていただければ、通信販売しているところも出てきます。
ちなみにソフトキャンディーなので形状は一定ではないということと、歯の詰め物が取れる可能性があるので、食べるときは注意してねという注意書きもあります。
アルコール分はないのでお子様が食べても大丈夫ですよ。
甘酒が好きな方には美味しいと思います。
今日はこんなところで。
それではまた。
- 2011/02/22(火) 21:34:07|
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大砲が発明されて以来、戦場を移動しようとする大砲は大砲そのものに車輪を取り付け、それを馬何頭かで牽引するというのが長い間の姿でした。
20世紀に入り内燃機関で動く車両が普及してくると、この大砲も馬ではなくトラクターのような自動車両で牽引しようということになりましたが、やはり牽引することに変わりはありませんでした。
しかし、機械化の進んだ第一次世界大戦が始まると、大砲もいちいち馬やトラクターで牽引するのではなく、車両そのものに載せて自走できるようにしてしまおうという思想がでてきます。
そこで各国で車両に載せられた大砲、いわゆる自走砲が何種類か作られることになりました。
ドイツでもこの大砲の自走化の試みは行われ、トラックに大砲を載せた自走砲が幾種類か作られました。
ですが、第一次世界大戦の終結とともに結ばれたヴェルサイユ条約によって軍備を制限されたドイツは、こうした自走砲の開発が止まってしまいます。
それでも戦勝国の目を逃れてひそかに再軍備のための研究が始まりますと、あらためて大砲は牽引式がいいのか自走式がいいのかという議論が起きてきました。
1930年代前半には、大砲は牽引式がいいという一応の結論がでるのですが、これは当時のドイツが思想的に遅れていたというわけではなく、故障が多かった当時の車両に対する信頼性の低さからであり、車両の信頼性が高まるに連れて自走砲は見直されていくことになります。
とはいえ見直されていったといっても、その研究はそれほどはかばかしいものではなく、実際に自走砲の研究が発展し始めるのは第二次世界大戦が始まる前後のことだったといいます。
第二次世界大戦が始まると、ドイツの自走砲は急速に発展を遂げていくことになりますが、装甲のないトラックやハーフトラックに砲を載せた自走砲では路外機動性に難があるため、やはり全装軌式車両に砲を載せた自走砲が望まれることになります。
となれば、すでに戦車としての能力には限界が来た旧式の戦車の車台を使って砲を載せた自走砲を製作しようというのは当然の発想でした。
その最初のものとしては、旧式となった一号戦車の車体を使って47ミリ対戦車砲を搭載した一号対戦車自走砲や、同じく一号戦車の車体に150ミリ重歩兵砲を載せた一号自走歩兵砲などがあり、いずれも自走砲として一定以上の高い評価を受けることができました。
そうなると、ドイツの歩兵師団の主力支援砲である105ミリ榴弾砲leFH18を自走化したいという要望が出てくるのもこれまた当然のことであり、このleFH18を搭載する自走砲を早期に戦力化しようという動きが生まれます。
そして、その車台に選ばれたのが、西方電撃戦や独ソ戦の開始によって戦車としての限界に達していた二号戦車でした。
二号戦車は1942年にはもう戦闘力の低さから主力戦車の地位を退いておりましたが、信頼性の高い駆動系を持っており、自走砲の車台としてはうってつけでした。
現に1942年半ばには75ミリ対戦車砲PAK40を搭載する「マーダーⅡ」として自走砲化されており、車台として使えることは証明されておりました。
ラインメタル社とアルケット社は共同でこの二号戦車の車台に105ミリ榴弾砲leFH18を自走砲用に改修したleFH18/2を搭載する自走砲の試作を行います。
マーダーⅡの場合は二号戦車の砲塔を外してそのまま対戦車砲を搭載しましたが、やはりそれでは使い勝手がよくないため、車台後部を砲の操作スペースとし、エンジン等を車台中央部に移すことにします。
そして105ミリ榴弾砲をエンジン部の上に載せることで、実にバランスの取れた車両が出来上がったのでした。
そのバランスのよさは、搭載する砲の大きさに対して結構小型の車両であるにもかかわらず、砲撃の際に車体を安定させる駐鋤などが一切必要なかったことからもうかがうことができました。
105ミリ榴弾砲の重量に耐えられるよう足回りのサスペンションなどの強化もされたこの試作車両は、leFH18/2搭載二号自走砲として正式に採用され、後に「ヴェスペ」(英語だとワスプ:蜂)と呼ばれるようになります。
そのデザインはドイツ軍の自走砲のスタンダードともいえるようなものとなり、のちには「マーダーⅢM型」や「フンメル」「ナスホルン」なども同じようなデザインを踏襲しております。
搭載砲弾数は30発とされ、さすがに単独では砲弾数が少ないために弾薬運搬車両のお供は必須でしたが、泥濘に悩まされた東部戦線ではまさに必要不可欠の支援車両だったでしょう。
「ヴェスペ」の生産は「マーダーⅡ」を生産していたFAMO社が行うことになりますが、とても使い勝手のよい優秀な自走砲であったにもかかわらず、その生産数は最初の予定数1000両に対し835両に減らされた上、実際の生産数は700両をちょっと上回ったぐらいだったといわれます。
これはドイツの生産力の低さもさることながら、FAMO社に対し牽引車である18トンハーフトラックの生産を優先するよう指示を出したのも原因といわれます。
東部戦線の悪路を考えたとき、もっと量産されてもいい自走砲だと思いますが、さまざまな事情がそれを赦さなかったのかもしれませんね。
それではまた。
(21:40 文章若干修正)
- 2011/02/21(月) 21:24:05|
- 趣味
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前回「トラップ・コレクション」を記事で紹介いたしましたが、今回も富士見文庫のコレクションシリーズをご紹介。

ファンタジーTRPGで登場するであろうさまざまな武器、防具、道具を一堂に集めた文庫本で、その名も「アイテム・コレクション」です。
いったいどれぐらいあるの? と言いたくなるほどのさまざまなアイテムがこれでもかとばかりに登場しますが、剣もショートソード、ロングソード等からバトルアックスのような斧、ロングボウのような弓といった武器に、レザーアーマーやチェインメイルのような防具、はてはメガネやランタンのような道具までと、本当に種類が豊富です。
そのさまざまなアイテムはショートショートでルーファスというキャラクターが使用する場面を見せてくれるのですが、「お、こういう使い方をしたか」というような普通じゃない使い方はしないので、ちょっと残念。
そしてこのルーファス、実は最後に「あ~、彼だったのかー」と驚くことになるのです。
残念なことに入手難なのが問題ですが、この本が出た当時はファンタジーTRPGのアイテムに対する解説本はこれぐらいしかなかったので、重宝させてもらったものでした。
今日はこんなところで。
それではまた。
- 2011/02/20(日) 21:32:08|
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首の痛いのはややよくなってきましたです。
ご心配をおかけしました。
今日は先日に引き続き、TRPG「Call of Cthulhu(コール・オブ・クトゥルフ)」の萌えシナリオをご紹介。

ホビージャパン社が最初に出した「Call of Cthulhu」日本語版ボックスタイプには、ルールブックと1920年代の資料集、それにシナリオ集が入っておりました。
このシナリオ集には入門用シナリオが三本、初級シナリオが四本入っているのですが、いくつか悪堕ちや異形化好きにとっての「萌えシナリオ」とも言うべきシナリオが入っています。
そんな中で個人的に一番の萌えシナリオが、初級シナリオの一つ「ロッホ・ファインの謎」です。
「ロッホ・ファインの謎」は、時代こそ1920年代ではありますが、舞台はいつもの合衆国ではなく英国スコットランドになってます。
探索者(プレイヤーキャラのこと)たちは、このスコットランドに現地調査に行ってそこで殺されてしまったギブソン教授のことを調べてほしいという依頼を、教授の娘のエレインから受けるなどでスコットランドに赴くことになりますが・・・
シナリオの詳しい内容はもちろんネタばれになるので書きませんが、このシナリオに探索者たちの邪魔をする側としてでてくるのが、現地のある一族です。
その一族はもちろんすでに正気度が0になってしまっている狂気の一族で、ある邪神(のようなもの)を崇拝している一族です。
彼らは同族結婚を平気で行ってはおりますが、一族を維持するためには外部からの血の導入も行わなくてはなりません。
そこで彼らは目を付けた男女を拉致し、無理やり一族に加えるのです。
目を付けられた若い男性もしくは女性は、一族に監禁され監視の下に置かれます。
そして無理やり強制的に邪神崇拝の儀式に参加させられたり、一族の風習を教え込まれていくのです。
どんなに精神の強い人でも、二十四時間強制的に一族の監視下で暮らさせられ、邪神と一族の影響を受け続けていれば、いつしか精神はゆがんで狂信的な一族の一員になってしまうというわけです。
これはもう、実に萌える設定ではありませんか。
たとえば、以前に自分が淡い恋心を寄せていた女性が、しばらく会わなかったうちに彼女自身が毛嫌いしていたはずの一族の男の妻になっていて、怪しげな邪神に対する崇拝をうっとりとした表情で語るようになっていたとしたら・・・
もう、たまりませんですね。(笑)
シナリオでは教授の娘のエレインが一族に狙われる形にしてもいいとされています。
もしくはプレイヤーキャラの一人が狙われる形でもOKとのこと。
しかし、TRPGのシナリオ的にはプレイヤーキャラたちがその一族のたくらみを打ち破り、危ういところでエレイン(か狙われたキャラ)を救出するというのがいいんでしょうね。
悪堕ち好きとしてはちょっと残念。
こういう一族、いずれどこかでSSのネタにするかもしれません。
そのときは、ああここからぱくったなと笑ってやってくださいませ。
今日はこんなところで。
それではまた。
- 2011/02/19(土) 20:31:08|
- TRPG系
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昨日から躰のあちこちが痛かったのですが・・・
夜中に首筋を痛めてしまったのか、首が痛くてたまりません。
さらに右肩も痛くて腕が思うように動かせず・・・
痛たたたた・・・
私は以前、医者に脊椎の神経の通るところが尋常じゃないくらい細いと言われておりまして、ちょっとしたことで首筋や背筋を痛めるよとは言われていたんですが・・・
今日はこんな短め更新ですみません。
皆様も寝違え等には充分お気をつけ下さいませー。
それではまた。
痛たたた・・・
- 2011/02/18(金) 20:55:11|
- 日常
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なんか思いつきで一本超短編を書いてしまいました。
どこかで見たような作品ですが、楽しんでいただければと思います。
『親愛なるコレット。お元気そうで何よりです』
私は燭台を机の上に置き、手紙を書き始める。
大学の後輩であり、あの事件での私の協力者であった彼女には、どんなに感謝してもとてもしきれない。
『大学卒業おめでとう。あれから半年になるのですね』
そう・・・
あの事件から半年になる。
あの忌まわしい事件。
私から妻を奪い去ったあの事件のことを思うと、私は今でも胸が苦しくなる。
奴を呼び込んでしまったのは私のミスだった。
考古学の資料として欧州から取り寄せた各種の物品。
その中にまさかあのような存在が居ようとは・・・
神ならぬ身ゆえに知りようもなかったのだとしてもだ。
最初は奇妙な死体の発見だった。
血をすべて失って死んでいる死体。
警察もその原因はわからなかった。
やがて失血死した死体の数が増え、それとともに奇妙な噂が広まっていった。
いわく・・・夜歩く不気味な男の噂。
マントを羽織ったその奇妙な男が夜歩くたびに、町には失血死した死体が転がるという。
ばかばかしい話だと思った。
20世紀になって20年以上経つというのに、そんなオカルトめいたことなどあるはずがないと思っていた。
だが、真実は違っていたのだ。
気がついたときには手遅れだった。
奴はひそかに気に入った女を手に入れ、自分の支配領域を増やしていきつつあったのだ。
私が研究で大学に夜遅くまで詰めていたころ、妻のマリアンもまた奴の手の内にされていたのだった。
私は妻を取り戻そうとして、奴の正体を知った。
奴ははるか昔の15世紀から延々と生き続け、そして犠牲者の血をすすりながら現在まで過ごしてきたのだ。
そして時折気に入った女をそばにはべらせ、気まぐれな期間だけそばに置いておく。
飽きればまた別の女を捜しに行くというわけだ。
妻はもう奴のものだった。
奴とともに哀れな犠牲者の血をすすり、奴とともに笑っていた。
私には何もできないと思っていたのだろう。
奴は自分の正体を私には見せつけたのだ。
情けない話だが、私はその場から逃げ出していた。
妻の嘲笑を背中に受けても、私は恐ろしさに耐えられなかったのだ。
だが、生き延びたとわかったとき、私の恐怖は怒りへと変わった。
奴をそのままにしては置けない。
奴は滅ぼさなくてはならない相手なのだ。
私は奴を滅ぼす方法を探した。
科学ではだめだ。
奴は科学では滅ぼせないに違いない。
むしろオカルト的な手段でなら可能かもしれない。
私はそう考え、大学の図書館で奴のことを調べまくった。
そのとき手伝ってくれたのがコレットだった。
メガネをかけた知的な雰囲気のする女性だが、メガネの奥の瞳はくりくりとして可愛く、歳相応の幼さも感じさせてくれる。
私は彼女に手伝ってもらいながら奴を退治する方法を探した。
あんまり熱心に探していたので、コレットに躰の心配をさせてしまうほどだった。
だが、私から妻を奪った奴を私はなんとしても赦せなかったのだ。
私はいつしかコレットに妻を奪われた苦しみを吐露していた。
コレットは私を慰めてくれ、奴に対する恐怖と滅ぼさねばならないという思いとを共有してくれた。
私と彼女はいわば戦友のようなものになったのだ。
そして私たちはついに奴を滅ぼす方法を見つけた。
古い文献に載っていた一つの方法。
それはやはりあまりにも科学とはかけ離れた方法だった。
まずはサンザシの木で杭を作らねばならない。
その杭をどうするのか。
奴の胸にハンマーで打ち込むのである。
このサンザシの杭を胸に打ち込むことこそ、奴を滅ぼす唯一の手段なのだ。
奴はどういうわけか日中は動かない。
だから奴の潜む屋敷に昼間乗り込んでいき、奴が動けないでいるうちにサンザシの杭を打ち込むのだ。
私はすぐに行動に移った。
『あの時のことを君は今でも覚えていますか? 私は今でも鮮明に思い出すことができます』
私はペンを走らせる。
そう・・・
あのときのことは忘れない。
ひんやりした地下室に奴は潜んでいた。
屋敷の主はとっくに干からびた死体になっていたのだろう。
奴は我が物顔でその屋敷に暮らしていたのだから。
だが、日中は奴は動けない。
私は犯罪であることを承知で屋敷の門を破り、玄関を壊して中へと侵入した。
そのとき後ろにはコレットが付いていた。
私はなんとか彼女をこれ以上巻き込まないようにしようと思った。
だが、彼女は私が一人では大変だと言い続け、ついに最後まで私に付き合うと言って譲らなかったのだ。
私は彼女の頑固さにあきれながらも、彼女を連れて行くことにしたのだった。
階段を下った奥。
ワインセラーかなんかだったのであろう地下室には、棺が四つも置かれていた。
白木の棺が三つと黒塗りの棺である。
棺は奴のベッドである。
奴は日中をこの暗い地下室にある棺のベッドで寝ているのだ。
一つの白木の棺のふたを開ける。
意外なほど簡単にふたは開いた。
そして中に横たわっていたのは・・・私の妻マリアンだった。
「あら・・・いらっしゃい、あなた。私に血を吸われに来たのかしら」
妻は目を覚ますとそう言って微笑んだ。
まるで以前の妻であるかのように。
だが、彼女の笑みを浮かべた口元には二本のとがった犬歯が見える。
彼女はもう人間ではない。
奴と同じ吸血鬼になってしまったのだ。
私は意を決してサンザシの杭を妻の胸に打ち込んだ。
目覚めたばかりで動きの鈍い妻は、あっさりと杭を打ち込まれて砕け散った。
吸血鬼は死ぬと砕け散るのだ。
骨すらも残らない。
私はただその場に泣き崩れるしかなかった。
私は自分の手で妻を殺してしまったのだから。
「先生・・・ウォーカー先生。しっかりしてください。まだやらなければならないことが・・・」
泣き崩れていた私を気付かせてくれたのがコレットだった。
彼女がいなければ、私は放心状態で夜を迎え、奴に殺されてしまっていたに違いない。
私は立ち上がると、あらためて棺のふたを開けていった。
そして奴の手で吸血鬼にされてしまった哀れな女性たちの胸に杭を打ち、その魂を解放してやった。
最後は黒塗りの棺だった。
当然これには奴が寝ているに違いない。
私は力を入れてふたを開ける。
そこにはやはり奴が寝ていた。
背の高い貴公子のような姿。
整った顔立ち。
生まれ持つ身分の高さによる威厳。
そんなものが相まって、この男を飾っている。
何も知らない者が見れば、こいつが悪魔の申し子だとは思えないだろう。
私はサンザシの杭を男の胸に当て、思い切りハンマーを振り下ろす。
肉をえぐる感触があり、杭は男の胸に突き立った。
その瞬間、男は目を見開いて悲鳴を上げる。
そして俺の顔を見て驚いたようにこう言った。
「お前か・・・何もできぬ腰抜けと思っていたものを・・・」
「妻を奪われたんだ。これぐらいのことはする」
「ククク・・・われは滅びぬぞ。何度でも蘇るさ」
「そうはさせないさ・・・」
私は再度杭を打ち込んだ。
血しぶきが飛び散って私の躰に降りかかる。
だが、私は力を緩めない。
やがて血は止まり、男の躰は崩れていった。
悪夢は終わったのだ。
そう・・・
悪夢は終わった。
あれから半年になる。
崩れた奴の躰はそのまま棺ごと墓場に埋め、それ以後復活した様子もない。
奴は完全に滅びたのだ。
私はあの後引越しし、別の町へ移った。
妻との思い出がある町には居づらかったのだ。
コレットは大学に残り、私とは別の道を歩んでいる。
卒業後は大学の司書になるらしい。
それまで若干時間があるというから、卒業祝いもかねてこの町に呼んでみようか。
もちろん旅費はこちら持ちでだ。
あの後あわただしく町を出てしまったのできちんと御礼もしていない。
これで少しでも御礼になればいいのだが。
私は今はこの町の大学で歴史学を教えている。
だが、もうあのような事件はこりごりだ。
資料を取り寄せるにしても、充分すぎるほど注意を払っているつもりだ。
最近は妻のことのショックも薄らいだのか、なんとなく女性に目が行くようになった。
自分もまだまだ若いつもりだが、最近の若い女性は本当に大胆な服を身に着けている。
胸元が開き、まるでキスしてくださいといわんばかりのようだ。
彼女たちの胸元や首筋にキスしたらどんな味がするのだろう。
きっと甘美な味がするに違いない。
そう・・・
コレットの首筋にもキスしたい。
彼女なら私とともに生きてくれそうな気がする。
さて、手紙を書き終えてしまわねば・・・
それにしても妙だ。
最近自分の署名にえらく困惑する。
Walkerと綴らなくてはならないはずなのに、どうしてもDで書き始めてしまうのだ。
そう・・・
Draculaと・・・
End
- 2011/02/17(木) 21:21:21|
- 異形・魔物化系SS
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舞方は大学時代よくTRPGを楽しみました。
当時よくプレイしたTRPGは、第一に「トラベラー」でしたが、それに匹敵するぐらいプレイしたのが「コール・オブ・クトゥルフ」でした。

私は主にキーパー(ゲームマスター)をやりまして、プレイヤーキャラにいろいろと楽しんでもらったものです。
当時「コール・オブ・クトゥルフ」はホビージャパン社から日本語版が発売され、私もそれを購入していたわけですが、アメリカを舞台にした多くのサプリメントに対し、ホビージャパン社が独自に日本を舞台にしたシナリオも出していたのです。
それがこの「黄昏の天使」でした。

「黄昏の天使」は日本を舞台にしただけではなく、時代も1920年代ではなく現代(発売当時の現代ですので1980年代)にしたのが特徴で、まさに今そこにある恐怖を楽しむためのTRPGシナリオでした。
私は当時は1920年代のアメリカを舞台にしたシナリオを主に楽しんでいたので、このサプリメントは残念ながら活用しなかったわけですが、このシナリオには当時から強くそそられるものがありました。
それは性魔術によって女性を支配するというものと、プレイヤーキャラが洗脳されるというものだったのです。
「黄昏の天使」シナリオには、プレイヤーキャラの前に立ちはだかる敵役としてG・O・T(東方薄暮騎士団)という正気度を失った秘密結社やナチの残党、旧日本軍の残党(今ではあまり考えられませんが、1980年代はまだまだ彼かが活躍する余地があったのです)などがでてきますが、その中の魔術師の一人に「炎のコロナ」というオヤジがおりまして、彼が駆使するのが性魔術でした。
「炎のコロナ」は目を合わせることで女性を催眠状態にし、その女性と性的交渉を行うことで完全に支配下としてしまうのです。
支配された女性は、普段は自分の意思で行動しておりますが、いったんコロナの精神支配を受けると、彼の分身とも言うべき状態となって彼の命じるままに行動するのです。
そのため、プレイヤーキャラクターに心から協力してた女性ノンプレイヤーキャラが、いつの間にかプレイヤーキャラの行動をコロナに伝えるスパイになっているのです。
さらにコロナは自分の忠実なしもべ兼ボディガードとして、四人の女性戦士を従えています。
プレイヤーキャラにとっては充分な脅威なのです。
風采の上がらない中年オヤジに心から忠誠を誓う女性たち。
これだけでもぞくぞくするではありませんか。
そしてシナリオが進むと、プレイヤーキャラに女性キャラがいた場合、彼女は捕らえられることになります。
その時点で多分そのまま続けるのは難しいために新キャラに交換することになるとは思いますが、とらわれた女性キャラは終盤に洗脳されて敵キャラとして登場します。
プレイヤーは苦労して彼女を救うことになるでしょうが、やむを得ず彼女を死なせてしまうと、それでまた正気度を失ってしまうというつらい展開に。
それにしてもさらわれた仲間が敵キャラにというのは、悪堕ち好きの私にはたまらない展開ですよねぇ。
もっとも、シナリオを進めていくうえで、プレイヤーはそう簡単には捕らえさせてくれないでしょうし、プレイヤーに愛着のできたキャラと新キャラとの交換を求めるのも難しい場合があるので、ノンプレイヤーキャラがさらわれてってことが多いかもしれませんけどね。
それはともかく、この「炎のコロナ」の使う性魔術。
いいなぁって思うのは私だけでしょうかね?(笑)
それではまた。
- 2011/02/16(水) 21:38:18|
- TRPG系
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今年も出ましたー。
週刊ベースボール誌の「プロ野球全選手写真名鑑2011」です。

こちらが表紙。
今年から全選手の写真がすべてカラーになるという豪華版。
12球団の選手監督コーチなど全員の顔がカラー写真で紹介されてます。
これはなんともうれしいですね。
注目の表紙ですが、今年はなんと言っても北海道日本ハムの斎藤佑樹投手でしょうか。
例年ならダルビッシュ投手が来るところでしょうが、今年は一人だけ別扱いです。
やはり注目度の違いなんでしょうねー。
阪神は藤川球児投手。
やはり今の阪神の顔は藤川球児投手ということなんでしょう。
新井選手あたりがここに出てくるようになるとまたうれしいのですが。
でも、昨年の活躍を考えるとマートン選手じゃだめだったのかなぁ。
横浜はいきなり森本稀哲選手でした。
FAで移籍した今シーズンいきなりの抜擢ですね。
横浜の中核として活躍してくれるでしょう。
ソフトバンク和田投手、楽天田中投手、広島前田健太投手あたりはもう順当というところでしょうか。
ロッテは井口選手、オリックスはT-岡田選手、西武は中島選手ですね。
中日は浅尾投手、巨人は坂本選手、ヤクルトが青木選手という12球団の顔ぶれです。
シーズンに入るといろいろ見たりするので、毎年買っておりますが、もうそんな時期になったんですねぇ。
オープン戦も今週末には始まりますし、楽しい季節になりました。
今年の優勝はどこになるのかな?
今日はこんなところで。
それではまた。
- 2011/02/15(火) 21:16:57|
- スポーツ
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タミヤニュースの502号が到着いたしましたー。
こちらが表紙。

勇ましい騎士のヘルメットと、なにやら火を吐く魔獣のような二つの紋章ですが、二つとも第二次世界大戦時のドイツ空軍の飛行中隊のマークだそうです。
メッサーかフォッケウルフあたりの尾翼にでも描かれていたんでしょうかね。
今月号では、ニュージーランドの博物館が紹介されておりました。
ワナカという町にある「輸送とおもちゃの博物館」というそうで、その名のとおり輸送機器とさまざまなおもちゃが展示されているようです。
この輸送機器の中には戦車や航空機も含まれるのか、英国のバレンタイン戦車やフランスのルノーFT戦車(こちらはレプリカ)などの戦車に、アメリカのC-47輸送機やハドソン爆撃機のような航空機も展示されているとのこと。
ただし、あまり展示状況は良くないようです。
イタリア軍装備解説は、先月に続いてM13/40戦車の後編。
この戦車は結局イタリアの主力戦車として終戦まで活躍したので、イタリア製戦車の中では知名度も高いと思うのでご存知の方も多いでしょう。
情景写真のページでは「戦後処理」ということで、1/48コマツG40ブルドーザと1/48零戦52型を使った情景作品のご紹介。
零戦もコマツのブルドーザも日本製なのに、使っているのは米国人という設定が面白いです。
この零戦52型は残骸となっているのをブルドーザで処理しているというシーンなんですが、プラモの場合はわざわざ残骸として作らなくてはならないというのもなんだか妙で面白いですね。
ほかにもいくつか面白い記事がちらほら。
毎度のことながら面白いタミヤニュースでした。
それではまた。
- 2011/02/14(月) 21:13:36|
- タミヤニュース
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今日は「札幌歴史ゲーム友の会」に行ってまいりました。
今日は7人が集まりまして、それぞれ対戦を楽しんでおりました。

鈴木様と暗黒卿様が対戦なされていた「Down In Flames - Aces High」
日米の空戦が繰り広げられていたようです。

今日も6ゾロ様とHIRO様が対戦なされていた「RoyalNavy」
英国の戦艦とイタリアの戦艦同士の殴り合いだったようです。
写真を撮り忘れましたが、このほかに今日も6ゾロ様と柿崎唯様が「UpFront」の対戦もなさっておられました。
私はというと、サッポロ辺境伯様と「The Spanish Civil War」を対戦いたしました。
1936年から1939年まで行われましたスペイン内戦のゲームです。

これが初期配置をしたところ。
水色が私の担当したファシスト中心のナショナリスト軍、緑色がサッポロ辺境伯様が担当なされました共和派のリパブリカン軍です。
このゲーム、序盤は両軍ともに支配地域を持たないユニットが中心なので、敵ユニットの脇をすり抜けていくことが可能なのですが、補給が通じないところへは進撃できないため、自然と迂回包囲はしづらくなっています。
そのため両軍ともにユニットをばら撒いての戦線構築に序盤は費やされました。

ナショナリスト軍は南北を打通させることに全力を挙げ、リパブリカン軍を国土東側に追いやることに成功します。
しかし、リパブリカン軍も着々と戦力が充実してくるため、ナショナリスト軍は大きく突破はできません。
マドリッドへの進撃も、ぎりぎりで登場してきた国際旅団に食い止められてしまいます。

1937年になると、両軍にドイツ・イタリア・ソ連などの物資援助と義勇軍が到着し始め、戦力が劇的に増強されて行きます。
序盤では1戦力や2戦力が中心だったものが、6戦力とか7戦力というユニットに変わって行くのです。
そうなると戦闘も過激になり、両軍ともに損害が増えていくことになります。
今日は時間の関係で1937年の途中で終わりとなりましたが、このあとも激しい戦闘が繰り広げられることが予想でき、いつかは最後までやりたいなと思わせられました。
サッポロ辺境伯様といずれ再戦を行うことを約束し、本日はお開きとなりました。
ルールはそれほど難しくは無いです。
でも、いろいろと部隊運用で悩まされるゲームかなと思いました。
また、イベントもチットで表されるので、とても楽しいものでした。
「札幌歴史ゲーム友の会」の皆様、今日はありがとうございました。
またよろしくお願いいたします。
それではまた。
- 2011/02/13(日) 20:32:24|
- ウォーゲーム
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昨日まで四日連続の「騎士物語」にお付き合いいただきましてありがとうございました。
今日は「スポーツ」カテゴリではありますが、「日常」カテゴリ的な話でお付き合いください。
いよいよプロ野球もキャンプで実戦形式の練習が始まってきたようですね。
北海道日本ハムは今日広島との練習試合を行ったそうで、中田翔選手が四番に座って二本の本塁打を打ったとか。
先日は斎藤投手のボールを七本スタンドインさせたということで、現状調子はよさそうです。
今日の二本の本塁打も、打ったことより二打席目の凡打を反省していたようですので、意識的にも向上しているようですね。
今年の中田選手はやってくれそうです。
くれぐれも怪我だけはしないように、気を引き締めてがんばってほしいですね。
一方阪神のほうは、久保投手との契約も無事にすみ、ようやく落ち着くかと思いましたが、FAで阪神にやってきました小林投手に対する千葉ロッテへの人的保障がクローズアップされてきましたね。
ようやく阪神側からプロテクトの28人とそれ以外の選手のリストが千葉ロッテ側に渡されたとのことで、千葉ロッテがリストの中から人的保障として選手を受け取るのか、それとも選手ではなく金銭保障になるのかが気になります。
報道によれば千葉ロッテ側は取りたい選手が三人はいるということらしいので、人的保障になる可能性も充分ありますね。
阪神ファンとしては選手が千葉ロッテに行ってしまうのは寂しいことではありますが、これも球界のルールですし、何より千葉ロッテに望まれて行くということですので、もし人的保障となった場合は快く送り出したいと思います。
とはいえ寂しいことには変わりないので、できれば金銭保障でと願ってしまうのは赦してくださいませー。
さて、私のほうは明日は「札幌歴史ゲーム友の会」です。
予定としてはサッポロ辺境伯様と「The Spanish Civil War」(GMT)を対戦することになります。
「The Spanish Civil War」は、その名のとおり1936年から1939年まで続いたスペイン内戦を扱ったゲームで、サッポロ辺境伯様がリパブリカン(人民戦線)軍を、私がナショナリスト(フランコ率いるファシスト)軍を担当する予定です。
史実ではスペインを支配した側ですので、なんとか史実どおりに勝ちを収めたいところですね。
このゲームは気になっていたゲームですので、対戦がむちゃくちゃ楽しみです。
今日はこんなところで。
それではまた。
- 2011/02/12(土) 20:48:27|
- スポーツ
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騎士物語の四回目です。
これで完結となります。
それではどうぞ。
『マスター! 距離を!』
頭上からの声にはっと我に帰る私。
こちらを認識したのか、相手が距離を詰めてきたのだ。
剣も抜かずに両手を突き出して迫ってくるアーマドール。
普通じゃない。
私は剣を構えさせ、いったん下がって距離をとる。
相手の動きを見極めなくては・・・
不用意に踏み込めば、痛い目を見ないとも限らないのだ。
「エリーヌ、相手のデータはわかる?」
私は頭上に声をかける。
アーマドールは一体一体がファクトリーによる手作りとはいえ、本当に一から手作りというのは多くない。
たいていは基礎となる形式があって、そこに騎士個々人の注文でさまざまな個性を加えるのだ。
この“エリーヌ”とて基礎となっているのはヴェフゲン公型と呼ばれるもので、外装をやや軽くして動きを高めてある。
運動力こそ最大の防御と考えていた父の仕様だ。
『外見からは一般的なドロフスキー侯型のようですが、それにしては動きが鈍いです。重装甲化されているようにも見えませんが・・・』
エリーヌの判断に私もうなずく。
目の前のアーマドールはドロフスキー侯型だ。
行方不明のクレマン家の騎士が使っていたものではないはず。
ただ、ドロフスキー侯型は価格が安いので多くの騎士が使っている。
あまりにも一般的過ぎて誰の物かなどわかるはずもないわね。
『来ます、マスター』
「まずは一撃!」
考えていても仕方が無い。
とにかく相手の動きを止めるしかないのだ。
まずは一撃を食らわせて見るしかない。
私は“エリーヌ”を踏み込ませ、剣での一撃をお見舞いする。
「なにっ?」
私は思わず声をあげる。
振り下ろしたバスタードソードが相手に与えた衝撃を感じながらも、それ以上の衝撃を私は受けたような感じがしたのだ。
相手は剣を抜き放つこともせず、私の斬撃をその腕で受け止めたのだ。
アーマドール乗りはそんなことは普通しない。
そんなことをすれば、腕の装甲はひしゃげ、中の機構が回復不能のダメージを負う事が目に見えているからだ。
戦闘の最中に腕が使えなくなるなどあってはならないし、そんなことになれば戦闘は負ける。
だから腕へのダメージは極力避けようとするのが普通だった。
だが、目の前の相手はそんなことお構い無しに右腕で私の剣を受け止めた。
剣で受け流すことも盾で受け止めることもしなかったのだ。
どうして?
“エリーヌ”のバスタードソードはがっちりと相手の右腕に食い込んでいた。
腕の装甲を叩き割り、内部機構にダメージを与えている。
どす黒い循環液がどくどくと流れ出し、右腕はもう使えなくなったはず。
どす黒い・・・?
循環液がどす黒い?
循環液は緑色のはず。
いくら汚れたってどす黒くなんか・・・
『マスター!』
「えっ? ひっ!」
私は思わず悲鳴を上げた。
“エリーヌ”のバスタードソードに傷付けられた相手の腕から、シュルシュルと黒い触手のようなものが何本も伸び始めてきたのだ。
私は思わず距離をとろうとしたが、触手がバスタードソードに絡み付いてくる。
『剣を捨ててください!』
私はバスタードソードを捨てようとした。
でも遅かった。
黒い触手は相手の腕からだけではなく、アーマドールの各関節部や装甲の継ぎ目などから無数に伸びてきたのだ。
そしてそれらが“エリーヌ”の躰にシュルシュルと巻き付いてくる。
私は“エリーヌ”を触手から何とか引き剥がそうとしたものの、全身を触手に巻き付かれた“エリーヌ”は身動きがもう取れなかった。
「動け・・・動いてぇ・・・何なのこれ?」
私は軽くパニックになる。
こんな攻撃をされたことは一度も無い。
一体どういうことなの?
『わ、私にもわかりません。データに・・・まさか・・・ノーライフドール?』
「ノーライフドール? まさか・・・あんなのはお話の中に出てくるもののはずでしょ」
私はかつて一笑に付した噂話を思い出した。
無残に打ち捨てられたアーマドールが怨念のようなものを抱き、魔物を取り込んで動き出すという噂だ。
私は首を振って否定したものの、目の前のアーマドールがもしかしたらエリーヌの言うとおりの存在かもしれないということを肌で感じていた。
このアーマドールは普通じゃない。
このアーマドールは化け物だ。
ノーライフドール。
魔物が取り憑いた生きてないアーマドール。
生きている者を無差別に襲うという呪われたアーマドール。
そんなものが実際にいるなんて・・・
「あうう・・・」
私は必死で操縦悍を操作する。
引き寄せられているのだ。
ノーライフドールが触手を使って“エリーヌ”を引っ張っている。
振りほどけない。
『マスター! 何とか振りほどいてください!』
「やっているでしょう! このっ!」
操縦悍を引こうが押そうがびくともしない。
全身に触手を絡み付かせられて身動きできないのだ。
どうしたらいいの・・・
外部視察用のスリットからはもう何も見えない。
真っ黒い触手に覆われてしまったのだ。
外がどうなっているのかもうわからない。
私は絶望感に打ちひしがれながら、必死で操縦悍を動かすだけ。
『ヒャァァァァァ・・・』
「エリーヌ? どうしたの?」
頭上の悲鳴に私は戦慄した。
いったい何が起こっているの?
「エリーヌ! エリーヌ! 返事をして!」
『ひぁぁ・・・だめぇ・・・触手がぁ・・・やめてぇ』
「何? 何が起こっているの? エリーヌ! 返事をしなさい!」
『はひゃぁ・・・吸われるぅ・・・何かが吸われてるぅ・・・はふう・・・気持ちいい・・・』
「エリーヌ! しっかりして! 何が起こっているの? エリーヌ!」
私は声を荒げてエリーヌに呼びかける。
『あはぁ・・・気持ちいいですぅ・・・触手が絡み付いて・・・ああんそこはぁ・・・はあん・・・気持ちいい・・・』
エリーヌの声がどんどん甘くなっていく。
どうしてなの?
「エリーヌ! 脱出しなさい! 早く!」
私はもう気が狂いそうだった。
とにかく“エリーヌ”を引き剥がそうと必死に操縦悍を握るけど、“エリーヌ”はあちこちをギシギシ言わせるだけでピクリとも動かない。
「エリーヌ! エリーヌ! 早く逃げて!」
『・・・・・・』
エリーヌの返事が無い?
「エリーヌ! エリーヌ!! 返事をしてぇっ!!」
私はとにかくエリーヌの名を呼び続ける。
こんな任務引き受けるんじゃなかった。
クレマン家のアーマドールもきっとこいつにやられたに違いない。
私もこんなところで朽ち果ててしまうというの?
「エリーヌ! エリーヌゥ!」
『ウフ・・・ウフフフフ・・・』
背筋がぞくっとするような笑い声。
「エリーヌ? エリーヌなの?」
『ウフフフ・・・アハハハハ・・・』
頭上から響いてくる笑い声。
いつものエリーヌの声なのに、何かが違う。
「エリーヌ! どうしたの? しっかりして!」
『アハハハハ・・・ハアァン・・・気持ちいい・・・触手が躰に絡み合って・・・ハアァン・・・』
普段のエリーヌとは思えない甘い声。
「エリーヌ! いったいどうしたの? 何があったの?」
『ウフフフフ・・・心配は不要ですわ、マスター。マスターもすぐに闇の一部になるすばらしさがわかるようになると思います』
私は上を見上げる。
「エリーヌ・・・何を言っているの?」
『ウフフフフ・・・気持ちいい・・・闇に浸るのってとても気持ちいいんですよ、マスター』
私はぞっとした。
エリーヌじゃない・・・
エリーヌの声だけどエリーヌじゃない・・・
いったい上で何があったの?
私は言いようの無い恐怖に襲われる。
「わぁぁぁぁぁ!!」
私はハッチを開けるレバーを引く。
ここにはいられない。
こんなところにはいられないわ。
でもだめだった。
いくらレバーを動かしてもハッチは開かない。
私は必死でハッチを蹴飛ばしてでも開けようとしたけど、私の蹴りぐらいでは開かないのだ。
「わぁぁぁぁ・・・」
私はただわめき散らし、ハッチをどんどんと叩きつける。
「開けてぇ! ここから出してぇ!!」
もう何がなんだかわからない。
私はただここから逃げ出したかったのだ。
『ウフフフフ・・・だめですよ、マスター』
「エリーヌ・・・お願い、開けて。私をここから出して!」
『ウフフフフ・・・それはできません。マスターは選ばれたんです。今から私と一つになり、二人で一緒にノーライフドールに生まれ変わりましょう。ウフフフフ・・・』
「いやぁっ! そんなのいやぁっ!!」
私は泣きながらハッチを叩く。
だが、厚い装甲板のハッチはびくともしなかった。
「ひあっ」
何かぬめっとしたものが首筋に当たる。
「何? 何なの?」
私は反射的に振り返った。
「ひいっ!」
思わず私は悲鳴を上げる。
操縦席の私の背後の壁面から、黒いぬめぬめとした触手のようなものが何本も伸び始めていたのだ。
「いやぁっ!」
私は必死になってハッチの開放レバーを引き、ハッチを蹴りつける。
だが、すぐに足元からも目の前のハッチからもぬめぬめした触手が伸び始め、私の脚に巻きついてきた。
「いやぁっ! いやぁっ!」
私は腰の短剣で触手に切りつける。
どす黒い粘液を撒き散らしながら触手は切れていくものの、一本一本切る端から新たな触手が生えてくる。
「いやぁっ! お願い! 誰か助けてぇ!」
叫びながら切りつける私の腕にも触手が絡まってくる。
「ああ・・・」
右腕も左腕も触手が絡まり、私は腕が動かせなくなる。
「いやぁっ! むぐっ」
思わず叫んだ瞬間、一本の触手が私の口の中に入ってきた。
「んぐっ、むぐっ」
私は何とか噛み切ろうと歯を立てたが、触手は弾力があって短剣で切るようには噛み切れない。
「んごっ?」
のどの奥に触手が張り付いて何かが吸い取られる。
手袋の隙間から入り込んだ触手が手首からも吸い取っていく。
首に巻きついてきた触手も首筋に張り付いて吸い取っていく。
ああ・・・何これ・・・
何を吸い取っているの?
やめて・・・
吸い取らないで・・・
『ウフフフフ・・・どうですかマスター? 気持ちいいでしょ?』
エリーヌの声がする。
ええ・・・
なんだかすごく気持ちいい・・・
触手が全身に絡み付いて私を抱きしめてくれているみたい・・・
まるでゆりかごの中のよう・・・
とっても気持ちいい・・・
ああ・・・気持ちいいわぁ・・・
気持ちよさに力の抜けた私の躰を、触手が包み込むように覆っていく。
私はとても安らかな気持ちになり、触手にすべてをゆだねていく。
強靭なチェインメイルを着ているはずなのに、触手はいともたやすくチェインメイルを剥ぎ取ってしまい、下着すらも脱がされる。
すっかり無防備になった私に触手は絡みつき、股間からもお尻からも入ってくる。
うねうねと私の中で蠢き、私を気持ちよくしてくれる。
「むふぅ・・・ん・・・」
のどの奥もお腹もお尻も全部が気持ちいい。
こんな気持ちいいのは生まれて初めて。
お願いだから全部・・・全部吸い取って・・・
空っぽになっていく私・・・
その代わりに触手が私を満たしてくれる・・・
吸い取られていく代わりに闇が私を満たしていく・・・
今までの記憶、意識、生命力・・・
そんなものがすべて吸い取られ、私は新たに満たされていく。
そうか・・・
これは死なんだわ・・・
私は今死者になっていくんだ・・・
気持ちいい・・・
生きているってなんて無様だったんだろう・・・
どうして命なんてくだらないものが大事だったんだろう・・・
生きているなんて馬鹿らしい。
そんなものにしがみついている愚か者どもがわずらわしい。
命がなくなることの喜びを見せ付けてやりたい。
「うふふふふ・・・」
いつの間にか口の中の触手がはずれ、私は笑っていた。
こんなに死が気持ちいいなんて。
命を捨て去ることがこんなにすばらしいことだったなんて・・・
もう私は生きるなんて無様なことはしない。
永劫の闇の中で命あるものにその愚かしさを教えてやるの。
「あはははは・・・」
楽しみだわぁ・・・
『ウフフフフ・・・いかがですかマスター? 闇の世界の住人となった気分は?』
「うふふふ・・・ええ、最高の気分だわぁ。闇の世界の一員になることがこんなにすばらしいことだったなんて思わなかった。もう私は命などというくだらないものは持たない。ノーライフドールとなって永劫の闇の世界に暮らすの。なんてすばらしいのかしら」
私の周りの触手が形を変え、私の手足と躰を包み込む。
触手と私は一体となり、私の全身が“エリーヌ”全体へと広がって行く。
私はノーライフドール。
“エリーヌ”はノーライフドールとなった私の手足。
そしてエリーヌは私と一つになったのだ。
「町へ行きましょうエリーヌ。あそこにはたくさんの生きている連中がいるわ。奴らを殺してその命をすすってやるの。きっと甘美な味がするわ。そして奴らに命を失う喜びを教えてあげましょう。私たちで闇の世界を広げるのよ。ウフフフフ・・・楽しみだわぁ」
『はい、マスター。楽しみですね。ウフフフフ・・・』
頭上から聞こえてくるエリーヌの可愛い笑い声に、私も思わず口元に笑みが浮かんでいた。
END
以上です。
いかがでしたでしょうか?
よろしければ拍手感想などいただけますとうれしいです。
それではまた。
- 2011/02/11(金) 20:54:07|
- 騎士物語
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騎士物語の三回目です。
今回はついつい世界観にのめりこんでしまったような気がします。
それではどうぞ。
「あ~、まったくぅ・・・」
王宮を出てすぐに私は内心の苛立ちを吐き出してしまう。
「マスター?」
エリーヌが驚いたように私を見る。
そうか・・・
エリーヌにはよくわかっていないんだ。
「ううん、なんでもないわ。ただちょっとうまくやられたなーって思っちゃってね」
「うまくやられた・・・ですか?」
少し考え込むような表情を見せるエリーヌ。
こういうところは普通の少女となんら変わるところがない。
本当にこの娘は作られた娘なのだろうかと考えてしまうわ。
「ええ、フォーコンブレ侯にね」
私はエリーヌを馬車に乗せ、自分も乗り込んでドアを閉めた。
「フォーコンブレ侯はタヌキオヤジよ。まんまと再度の遠征をさせられる羽目になったってこと」
「正体不明のアーマドールのことですね?」
ゴトゴトと馬車に揺られながら、私はエリーヌにうなずいた。
「どうせあのタヌキは、手柄を立てさせたいような息のかかった奴にやらせたんでしょうけど、どうも手に負えなさそうということでこっちに押し付けてきたのよ」
「押し付けて・・・ですか?」
「そう。私がうまく対処すれば前回のと合わせて少々褒美をやればいいし、もし失敗しても、目障りな女騎士などという存在がいなくなる。その上であらためて別の人を任に当てればいいってわけ」
「なるほど・・・よくわかりました」
エリーヌの表情が曇る。
やはり彼女にしてもいい気分のものではないのだろう。
「でも、ま、またエリーヌと一緒に出かけられるか。帰ったら忙しくなるわよ。よろしく頼むわね」
「はい、もちろんです。マスター」
こちらを見て微笑むエリーヌの笑顔に、私はすごく癒されるのを感じていた。
******
出立の準備はあわただしく行われた。
正体不明のアーマドールは、ヴァーゾン辺境伯の領地と国王陛下の直轄領の境目付近に出没するという。
ヴァーゾン辺境伯も国王陛下もともに相手側のアーマドールかと思い、それぞれ抗議を申し入れたところで双方に関係のない正体不明のアーマドールであることがわかったという。
ヴァーゾン辺境伯の領地は王都からは約一週間の距離。
やれやれ、遠征費がいくらかは出るとはいえ、また痛い出費だわ。
「マスター、出発の準備整いました」
先日と同様モーガブル六頭立ての台車にきちんと寝かせられた“エリーヌ”が、朝の陽の光を浴びて輝いている。
先日の戦いの跡は微塵もない。
この二日ほどで、ファクトリーの連中がきちんと手入れしてくれたのだ。
その“エリーヌ”の後ろには従者の乗る荷馬車が付き、先頭には私のための馬も用意されている。
私は荷馬車に荷物を積むと、玄関先まで見送りにでてきてくれたお爺様を抱きしめて、その両頬に行ってきますのキスをした。
「気をつけてな。ラシェル家のことなどどうでもいいから、無事に帰っておいで。死んではならんよ」
「わかってます」
お爺様のお返しのキスを受け、私は大きくうなずく。
死ぬつもりなどないけれど、騎士として見苦しいこともできない。
その覚悟を、私は改めて心に刻む。
「それでは行ってきます、お爺様」
私は見送りのみんなに手を振ると、先頭の馬にまたがってラシェル家を後にした。
街道を行く私たちの後ろには、ちょっとした隊列ができていた。
街道とは言っても、町や村との間では巡邏の目も届かない場所が結構ある。
そういった場所では盗賊や追いはぎの類が出ることもあるし、何より野生の獣や魔物がでることもあるのだ。
だから町々を交易する商人は隊商を組んで護衛を雇ったりするし、一般人は隊商に加えてもらったり、こうして騎士や軍勢の移動に付いて行ったりして安全を確保するのだ。
そういうわけで、私たちの後ろにも、幾人かの商人と一般人が付いてきているのだった。
おかげで、“エリーヌ”をつんだ台車には新婚の若妻さんが同乗している。
旦那さんとは王都で知り合ったものらしく、今回の旅は結婚の報告を旦那さんと一緒に旦那さんの両親の家にしに行くのだそうだ。
小柄でかわいい感じの女性で、エリーヌと楽しそうに話している。
まさかエリーヌがユニットドールだなどとは思ってもいないんでしょうね。
一週間ほどかけて街道沿いの宿場町を経由しながら、私たちはヴァーゾン辺境伯領との境界までやってくる。
幸い今回はさほどの問題もなく無事に来ることができた。
盗賊や追いはぎが出てくることも、魔物の類に襲われることも、アーマドールを奪おうとするような輩にも出会わずにすんだ。
ここから先はヴァーゾン辺境伯領になるので、国王陛下の騎士である私はうかつには入れない。
もっとも、今回はこのあたりに出没する正体不明のアーマドールの探索なので、ヴァーゾン辺境伯領に入り込む必要はない。
この境目の宿場町であるキロブスクの町を拠点にして動けばいいのだ。
私は早速この町を管理する町長のところへ行き、国王陛下の命令でしばらくこの町に滞在することを告げた。
町長は傍目にも大げさすぎるほどの歓迎を示してくれ、好きなだけ滞在してくださいと言ってくれた。
悪いけどお言葉に甘えさせていただくとしましょう。
町長は私に一軒の家を提供してくれた。
宿の一部屋を使わせてもらえれば充分だったのだけど、空き家になっているので自由に使ってほしいとのこと。
これも私はお言葉に甘えさせてもらった。
小ぶりだけどいい家だし、滞在するにはもってこいの家だわ。
私は早速エリーヌとともに“エリーヌ”を起動させ、慣らし運転をする。
一週間台車に寝かせきりだったけど、各部の駆動は何の問題もない。
心臓石も出発前に交換したばかりだから生き生きしているし、循環液もさらさらと静かに流れている。
これがしばらく使っていると、心臓石の動きは弱まり、循環液もドロドロに濁ってくるのだ。
そうなったらアーマドールそのものの動きも鈍くなるので、さっさと取り替えなくてはならない。
アーマドールを動かすのは大変なのよね。
******
正体不明のアーマドールが出現するまでは出番がないと思いきや、翌日から私はすぐに忙しくなった。
最初は女騎士ということで物珍しさもあったのだろうけど、それ以上に国王陛下の騎士が来たということで、いろいろな問題ごとが持ち込まれることになったのだ。
その大半は町長が裁定すればいいものだったので、私は単に国王陛下の代理としてその裁定にいわばお墨付きを与えればいいだけであったのだけど、それでも細かい揉め事まで持ち込まれてきたのには疲れてしまう。
それが終わったら今度は町の周辺の猛獣退治。
森林虎や巨大蛙などを、アーマドールを使って追い払うのだ。
蛙と言っても大きなものは人間を一飲みにしてしまうほどの大きさがある。
森に入る人間がまれに襲われたりすることがあるのだ。
こういった猛獣は町の周囲に近づかなければそれでいいので、アーマドールの巨体で脅かしてやれば当分は近づかない。
それでも寄ってくるような奴は退治しないとならないけどね。
そんなこんなでキロブスクに来て十日ほども経つと、ようやく忙しさも一段落する。
エリーヌの作ってくれた夕食を食べ、お茶を飲んでゆったりと過ごす夜。
ユニットドールの能力に家事を加えたのは誰なのかしらね。
まあ、これだもの男性騎士がユニットドールを愛でるのも無理ないわ。
可愛くてかいがいしく身の回りの世話をしてくれるんですもの。
手放すなんてできないわよね。
あわてたようなノックの音がする。
もしかして?
私はすぐに立ち上がると玄関のドアを開けた。
「何事?」
「き、騎士様! で、出た! 出ました!」
玄関先では青ざめた顔をした男が町の外を指差している。
「正体不明のアーマドールね?」
「は、はい。森にいます」
「わかったわ。すぐに行きます。あなたは町長さんにもこのことを知らせて」
私は男の人にそう言ってドアを閉め、すぐに身支度を開始する。
見るとエリーヌもエプロンを外し、白いフィットした特殊スーツに着替えていた。
「すぐに“エリーヌ”を出すわ。お願い」
「了解です、マスター」
着替え終わったエリーヌが外へと駆け出していく。
私はその間に全身を覆うチェインメイルの上に皮の胸当てと腰当てを着け、ブーツと手袋を身に着けた。
そしてヘルメットをかぶり、外へ出る。
すでに庭先では、“エリーヌ”が起動態勢に入っていた。
私はすぐに胸の操縦席に入り込み、躰を固定して操縦悍を握る。
足のペダルを踏み込むと、アーマドール“エリーヌ”は、ゆっくりと立ち上がった。
「エリーヌ、各部チェック」
『チェック終わってます。異常なし』
私の声にすぐに頭上から反応が返ってくる。
“エリーヌ”の頭部にあるドールハウスと呼ばれる制御槽におさまったエリーヌが返事をしてくれるのだ。
うん、今日も息は合っているわ。
「行くわよ」
『了解です、マスター』
私は“エリーヌ”を歩かせ始めた。
足音を響かせて大地を振るわせるアーマドール。
重量があるから仕方ないとはいえ、町中では迷惑だわね。
私は大通りを郊外に抜け、そこから森に向かうことにする。
キロブスクの町の周囲はほとんどが森。
その中を一本の街道がヴァーゾン辺境伯領まで延びているのだ。
街道の途中にできた宿場町であるキロブスクは、周囲の開拓もそれほど進んではおらず、うっそうとした森が周囲には広がっている。
そこは木こりでさえ奥までは入らない未知の森。
正体不明のアーマドールが出没するにはもってこいの場所なのだ。
樹木の間に見え隠れする一体のアーマドール。
まだ遠いせいもあって、どんなアーマドールかはわからない。
ただ、月明かりがあるのに装甲板の輝きが鈍いよう。
あまり手入れをされていないのかしら?
だとしたら山賊が手に入れたアーマドールという可能性もある。
騎士の持ち物であるアーマドールだけど、奪われてしまったアーマドールが無いわけじゃないし、そういった中の一体が売られずに使われているということだってあるだろう。
充分に使いこなせなくても、旅人や村人を威嚇するには充分すぎるのだから。
「エリーヌ、何かわかる?」
『今のところは何も・・・動きがあんまりよくないようです』
樹木の間をゆっくりと動いている相手のアーマドール。
動きが制限される森の中とはいえ、確かに動きはよくないようだ。
やはり正規の訓練を受けた騎士ではないのかも。
「近づくわ。正体を確かめる」
『了解です、マスター』
私は“エリーヌ”を街道からはずれさせ、森の中へと踏み入れさせた。
幸い満月に近い時期のおかげで、相手を見失うことはなさそう。
でも、森の中に入ってしまえば、アーマドールといえども樹木にさえぎられて視界は悪くなる。
まさかとは思うけど、待ち伏せとかには気をつけなくては。
私は樹木の間を縫うようにしながら、相手のアーマドールに近づいていく。
相手は動きが鈍く、なんだか酔っ払っているようにも見える。
いったいどんな人が乗っているのかしら・・・
『マスター』
「何?」
頭上からの声に私は答える。
『どうも様子が変です。相手から・・・その、何も感じられません』
どういうわけかわからないが、ユニットドールは人間の“気”のようなものを感じ取ることがある。
それが今回は何も感じないということなのか。
事実私も相手から気迫めいたものは何も感じない。
むしろ、何を考えているのかわからない不気味さのようなものを感じていた。
「そうね。なんというか、私も相手の気持ちが感じられない気がするわ」
『充分注意してください。何があるかわかりません』
「了解」
私は“エリーヌ”の腰からバスタードソードを抜き放つ。
樹木の間を縫うには邪魔くさいけど、戦闘には欠かせない。
それにしても・・・一体どんな奴なのだろう・・・
「えっ?」
私は驚いた。
不意に相手のアーマドールがこちらを向いたのだ。
その瞬間、私はいいようのない恐怖に襲われた。
「な、何?」
甲冑を着た騎士を模したアーマドールの頭部には、バケツを逆さにしたようなグレートヘルムがかぶせられている。
その正面には外を見るためのスリットがついていて、ユニットドールはそこから外を見るのだけど、そのスリットの奥が不気味に赤く輝いていたのだ。
まるでアーマドールに目があって、それが赤く輝いているみたいだわ。
こんなアーマドールは見たことが無い。
いったいこいつは何なの?
- 2011/02/10(木) 21:11:26|
- 騎士物語
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騎士物語の二回目です。
それではどうぞ。
「お爺様、ただいま戻りました」
午後の日差しが差し込む書斎でお爺様は本を読んでいらっしゃったが、私とエリーヌが入っていくと、顔を上げて笑みを浮かべてくれた。
「おお、クロディーヌ。お帰り。無事で何よりだ。エリーヌもご苦労であったな」
本を閉じて膝の上に置き、両手を広げて私を迎えてくれるお爺様。
「ありがとうございます、アンリ様」
エリーヌが片膝をついて一礼する。
「お爺様もお元気そうでうれしいわ」
私はお爺様に抱きつくと、その頬にそっとキスをした。
「早馬で戦いのことは聞いたよ。よくやってくれた。ラシェル家の誉れだ」
「ありがとうございます、お爺様」
私はお爺様から離れ、ほめてもらえたことに礼を言う。
お父様亡き今、ラシェル家はお爺様と私が守っていかなくてはならない。
少しでもその役に立てたのであればうれしいわ。
「土産話を聞きたいところだが、今日は疲れているだろう。旅の汚れを落として休むがいい」
「はい、そうさせていただきます。お爺様」
お爺様の配慮に感謝して私たちは部屋を出る。
もうくたくただったのだ。
「わ、私は自分でやりますからマスター」
「だめ。一緒に来なさい。いつも言っているでしょ」
私は湯浴みにエリーヌを引っ張っていく。
人の手で作られたものとはいえ、ユニットドールは人間とほとんど変わりない外見をしているのだ。
女の子は身奇麗にしておかなくちゃね。
湯船に溜められたお湯を桶に取り、私はエリーヌの躰を拭く。
エリーヌは観念したようにおとなしく、私に拭かれるがままになっていた。
それにしても・・・
本当にこれが作られたものだというのだろうか?
肌のやわらかさも温かさも人間と変わりが無い。
小ぶりの胸の膨らみも、股間の性器だって変わりが無い。
ここまで人間そっくりに作る必要があるのだろうか?
唯一といっていい違いは首筋の後ろにある三つのソケット。
ユニットドールはここにアーマドールからのケーブルをつなぎ、アーマドールの基本動作を制御する。
そのため騎士は、歩くとか腕を振り上げるなどといった基本動作を制御せずに、戦いの動作だけを行わせることができるのだ。
アーマドールとは言ってみれば騎士の着る鎧である。
その外見は騎士が儀礼のときや戦いのときなどに着る全身鎧に酷似している。
ユニットドールと操縦者が乗り込むために頭部と胸部がやや太くなっており、それに合わせて脚部も太くはなっているものの、全体を見ればまさにヘルメットをかぶり全身を鎧で覆った騎士の姿そのものなのだ。
鎧は武器の一種であるから戦いに使われ、傷ついたり壊れたりするもの。
アーマドールも同様に、戦いに使われて傷つき壊れていく。
壊れるのは仕方ないとは言うものの、精密な制御システムを作る端から壊されるのではたまらない。
せめて制御システムは取り外しが可能なようにしておき、本体が壊れても制御システムは無事であるようにしたい。
制御システムが取り外しができるとなると、今度は持ち運びが大変である。
どうせなら自力で移動ができる制御システムであるほうがいい。
と、なれば、高貴なる者が連れて歩いても見栄えのいい形であるほうがいい。
そんな考えがユニットドールをこうした人間型に導いたのだ。
そりゃ、一緒に歩くなら金属の塊なんかであるよりも、エリーヌのような人間の形をしているもののほうがいいというのはわかる。
でも、これではあまりに人間に似すぎている。
まさに魔法技術の傑作。
私自身、エリーヌを作られたものであるという認識は持ちづらく感じていた。
「はい、終わり」
私はエリーヌの髪の毛を拭いてやる。
金色の髪がとてもきれい。
うらやましいぐらいだわ。
「ありがとうございます、マスター」
エリーヌのにこやかな笑顔を見て、私は思わず抱きしめたくなってしまう。
ファクトリーの連中は、きっと騎士にこういう感情が湧くことを計算していたのだろう。
こういう保護心が湧く対象であれば、戦場でもユニットドールを確保して連れ帰ってくれるに違いないからだ。
悔しいが、その策略に私自身もハマっているというわけか・・・
「どういたしまして」
私はエリーヌに笑顔を返して風呂場から出し、自らの躰を拭き始める。
ぬるくなったお湯を含んだタオルが気持ちよかった。
******
「おはようございます、マスター」
エリーヌが部屋に入ってきて鎧戸を開ける。
とたんに窓から朝の光が差し込んできてまぶしい。
私は寝ぼけ眼をこすりながら、ベッドで上半身を起こした。
「おはよう・・・もう朝なの?」
とてもじゃないが寝たりないわ。
それにしても、久しぶりの家のベッドは気もちよかったぁ。
「もう二度目の鐘が鳴り響きました。早く支度をしないと遅れます」
エリーヌはそういうと、着替えをベッドの脇に置いてくれる。
いけない。
今日は王宮に出向いて帰還の報告をしないといけないんだわ。
私はすぐに飛び起きると、服を着替えて身支度を整え始めた。
「おはようございます、お爺様」
食卓にはすでにお爺様が着いていた。
「ああ、クロディーヌ、おはよう」
お爺様がにこやかに微笑んでくださる。
めがねの奥の細い目が、よりいっそう細くなっていた。
私はすぐに食事の用意をさせ、朝食をかき込んでいく。
国王陛下の午前中の謁見に間に合うようにしなければ。
「ん・・・げほっ」
あわててパンをのどに詰まらせる。
「こらこら。あわてて食事をするからじゃ。もう少し落ち着いて食べなさい」
お爺様が笑っている。
「は、はい、お爺様」
私はショコラを飲んで落ち着いたところでそう言う。
う~・・・
恥ずかしいざまを見せてしまったわ。
「ご馳走様でした。それではお爺様、国王陛下に帰還のご挨拶をしに行ってまいります」
食事を終えた私は、ナプキンで口をぬぐうと席を立つ。
簡単な朝食だけど、やっぱり家で食べる食事は美味しいわ。
夕べの食事といい、あとでコックのゲランに美味しかったと言ってあげなくてはね。
「くれぐれも陛下に失礼の無いようにな。クロディーヌ」
「はい、お爺様」
私はお爺様の表情が少し翳ったのを見た。
「クロディーヌ、そなたには苦労をかける。そなたの父が生きておれば・・・」
またその話。
私は黙って首を振る。
「その話は言わないでくださいお爺様。父の死はどうしようもなかったことです」
「だが、クロディーヌ、せめてそなたが男であったなら・・・王宮で惨めな思いをすることも・・・」
「お爺様、お気になさらないでください。私が女だということでいろいろ言われているのは確かです。でも、私はそんなことはなんとも思っておりませんから」
男に生まれなかったのは私の力でどうにかなることではないし、ほかにラシェル家を継ぐことができる男子がいるわけでもないのだ。
どうあれラシェル家は私が継ぐしかない。
そりゃあ、いずれは婿を迎えて子を産まなければならないのだろうけど、今はこうして気兼ねなく男のようにしているのも悪くないのだ。
少々のことは気にするまでもない。
少々のことは・・・
「マスター、そろそろ出かけましょう」
いつものように白い躰にぴったりした特殊スーツを着たエリーヌが迎えに来る。
アーマドールのユニットドールとして、騎士のそばに控えていなくてはならないのだ。
「それでは行ってまいります、お爺様」
「うむ、気をつけてな」
私はお爺様に抱きついて頬にキスをすると、エリーヌを連れて部屋を出た。
ゴトゴトと馬車が揺れる。
昨日までと違い、今日は馬車の座席に座っての移動。
窓の外では、朝のざわめきが町を彩っている。
王宮までのしばしの間、私は生き生きとした町の表情を楽しんでいた。
「ファクトリーには手配をしておきました。王宮から戻るころには、職人たちが来ていると思います」
私の向かい側に座るエリーヌの報告に、私は黙ってうなずく。
戦いで傷付いた外板や消耗品を交換し、整備を行ってもらうのだ。
おそらく二日もすれば、“エリーヌ”はまた元通りぴかぴかに磨き抜かれた姿になるだろう。
新たな戦いに備え、身だしなみを整えるのだ。
程なく馬車は王宮に到着する。
正門の左右にはまさに磨き抜かれたアーマドールが屹立し、周囲を無言で威圧している。
そばにいる衛兵も銀色に赤い飾りのついた胸当てを着け、アーマドールに勝るとも劣らない派手さで国王の権力を見せ付けていた。
私は衛兵に身分と用向きを伝え、王宮内へと馬車を進ませる。
広大な庭園を抜け、宮殿玄関で馬車を降りると、私はエリーヌとともに宮殿の中へと入っていった。
謁見の間。
そこは数多くの廷臣が国王陛下に謁見を許される場所。
私とエリーヌは、幾人かの人々が謁見を待つ控え室の中で順番を待つ。
商人や官僚、地方から来た貴族、そして私のようにユニットドールを従えた騎士が国王陛下への目通りを待っている。
そのいずれもが、エリーヌを連れた私に好奇と嫌悪の無遠慮な視線を向けていて、隣の人とひそひそ話をしているのだ。
いつもと同じこと。
もう慣れてしまった。
女だてらに騎士を名乗りアーマドールを乗りこなす存在など、男の騎士たちには耐えられるものではないのだろう。
逆に商人や貴族には物珍しい珍獣にでも見えるのか、エリーヌと私の取り合わせをいやらしい目で見るものも少なくない。
ふう・・・
慣れたとは言っても、戦場にいるほうがはるかにましだわ・・・
「騎士クロディーヌ・ラシェル殿」
名を呼ばれた私は、エリーヌを連れて謁見の間に進む。
大きな両開きの扉が開き、広い室内に通される。
がらんとした部屋は、国王陛下の権力の大きさを誇示するように窓も柱も巨大で天井も高かった。
部屋の奥の一段高くなった玉座には初老の国王陛下が座り、その周りを重臣たちが詰めている。
初老とはいえ国王陛下は精気に満ちた顔つきをしており、その威厳は周囲を圧していた。
私とエリーヌは室内の中ほどまで進み、そこで膝を折って一礼する。
国王陛下のお言葉を待ち、そして今回の遠征の結果を報告するのだ。
「クロディーヌ・ラシェルよ。よう無事で戻った。余はうれしいぞ」
重々しく響く国王陛下の声。
その力強いお言葉に、私は思わず畏怖の念を抱いてしまう。
「ありがたき幸せ。これもすべて国王陛下のご威光の賜物かと」
深々と頭を下げる私とエリーヌ。
「うむ。報告はすでに受けている。辺境の村・・・なんと言ったかな?」
「ロウォーヌでございます、陛下」
「そうであったな。ロウォーヌ村だ。ロウォーヌ村をよく我が手に収めてくれた」
耳打ちをなされたのであろう重臣の方の声が聞こえ、再度お言葉を下さる国王陛下。
「あの土地は国王陛下にこそふさわしいもの。私はただそれを証明したに過ぎません」
「うむうむ。そなたの働き見事であった。これでしばらくあのビュシエール男爵もおとなしくしておろう。愉快なことよ。わっはっはっは・・・」
国王陛下がお笑いになっている。
ビュシエール家は男爵家ではあるものの、その勢力は侮りがたいものがあるので、国王陛下も内心苦々しくお思いだったのかもしれないわ。
「クロディーヌ・ラシェルよ。褒美を取らす。好きなものを言ってみよ。地位か? 領地か?」
私は黙って首を振る。
地位も領地もほしくないわけじゃない。
でも、ラシェル家は先年のザルクエンヌ遠征で加増を受けている。
ここで更なる加増を受けては、ほかの騎士たちの嫉視を受け、ろくなことにはならない。
なので、ここは辞退するほうがいいのだ。
「国王陛下のありがたきお言葉、このクロディーヌ心より感謝いたしております。なれど、此度のことは国王陛下のご威光を知らしめるためのものであり、褒美を受けるようなことではございません。どうか私ごとき若輩者にご配慮はご無用にお願いいたします。ただ、国王陛下にはラシェル家という忠実なる臣下がいることをお気に留めていただきさえすれば、このクロディーヌ、望外の喜びでございます」
「うむ。そうか。そなたは欲がないな。わかった。今後もラシェル家の忠誠に期待するぞ」
私の返事に満足してうなずかれる国王陛下。
これで少しはラシェル家の印象を強められたはず。
私はともかく、ラシェル家は今後も続いていかなくてはならないのだ。
足元は固いほうがいい。
「陛下」
国王陛下の傍らから声が上がったとき、私はいやな予感がした。
声をかけたのはフォーコンブレ侯爵ロスタン。
国王陛下の腰ぎんちゃくといわれている男だ。
あまりいい噂は聞かない。
「何かな、ロスタン」
「クロディーヌ殿の申しよう、若年ながらなかなかお見事。このロスタンも感服つかまつりました。いかがでしょう? 此度のことはクロディーヌ殿には少々物足りなかったのではありますまいか。であるからこそ褒美には値しないとおっしゃられておられるのかと」
クッ・・・
そう来たか・・・
私は唇を噛み締める。
「ふむ・・・騎士同士の戦いは決して物足りぬとは思わなかったが・・・」
もちろん物足りないなどあるはずもない。
できればこのような遠征はそうそうあってほしくないぐらいなのだ。
「いえいえ、陛下、クロディーヌ殿であればその実力にふさわしい任務があろうというもの。いかがでしょう? 先日来辺境を騒がせておる謎のアーマドールの探索と排除をお命じになられては?」
謎のアーマドール?
いったい何のことだろう・・・
「おお、あの話か・・・ふむ・・・確かクレマン家の者が向かったはずだが、どうなったのか?」
「それが、あの者アーマドールもろとも行方が知れませぬ。おそらくは返り討ちにあったものかと・・・」
「ふむ・・・侮れぬということか」
「はい、陛下。なればこそ」
私は黙って国王陛下とフォーコンブレ侯爵の会話を聞いているしかない。
言葉をさしはさむことなどできはしないのだ。
「ふむ、どうかなクロディーヌ・ラシェルよ。そなた、この任を引き受けてはみぬか?」
「ハッ、国王陛下のご命令とあれば、このクロディーヌに否やはございません」
私は内心を抑えてこう答えるしかなかった。
「うむ、では任せるとしよう。無事に帰還したあかつきには、今度こそ褒美を取らせるぞ」
「ハッ、ありがたき幸せにございます」
「うむ。下がるがいい」
「ハハァッ」
私は国王陛下に一礼を行うと、フォーコンブレ侯爵をにらみつけるように一瞥し、エリーヌをつれて謁見の間を出る。
まったく・・・
してやられたわ・・・
- 2011/02/09(水) 21:19:03|
- 騎士物語
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本日から2000日連続更新達成と260万ヒット達成の記念としまして、SSを一本投下いたします。
タイトルは「騎士物語」です。
悪堕ちSSとしてはちょっと微妙かもしれませんが、お楽しみいただければと思います。
それではどうぞ。
「騎士物語」
ノーライフドール・・・そは命のないアーマドールのこと。
闇の中、永劫に動き続ける呪われしアーマドール。
命あるものを憎み、妬み、そして殺していく魔に取り憑かれたアーマドール。
そに魅入られしアーマドールもまた、ノーライフドールとなりにける。
その邪悪なる姿を見た者で、帰ってきた者はいまだおらず・・・
(吟遊詩人の間で伝わる詩の一節)
******
ずしんと言う衝撃がシートに伝わってくる。
“エリーヌ”の持つバスタードソードが相手のブロードソードを受け止めたのだ。
思わず操縦悍を握る手に汗がにじむ。
もし受け損なっていれば、あのブロードソードは“エリーヌ”の鎧をぶち破り、私の肉体など赤い血の染みに変えてしまっていたことだろう。
『どうしたのですか、マスター? 動きが鈍いです』
頭上からエリーヌの声がする。
クッ・・・
ここ数日乗らなかっただけで、動きに鈍さが出ているのかしら?
「ありがとうエリーヌ。助かったわ」
私は素直に感謝する。
私の反応だけでは、正直あの一撃は受け止められなかったかもしれない。
『礼は不要です、マスター。気をつけてください。次が来ます』
操縦席にいる私の正面にはスリット状の覗き穴があり、そこから相手の重厚なアーマドールが見えている。
相手は一度後退して間合いを取り、私と向き合っていた。
その剣が陽光に輝き、次の一撃を繰り出すべく伺っている。
「了解。次は油断しない」
私は唇を舐めて湿らせる。
騎士が乗り込んで操縦する巨大な自動鎧とも言うべきアーマドール同士の戦いは、一瞬の油断が命取りになるのだ。
『それでこそマスターです。おそらく次は中段からの一撃を狙ってくると思います』
「了解。中段ね」
私はエリーヌの判断に全幅の信頼を置いている。
アーマドールの頭部に位置する彼女はまさしく“エリーヌ”の頭脳。
“エリーヌ”を使う上で、彼女のサポートは欠かせない。
『王の騎士よ! おとなしく降伏するんだな。女のくせにアーマドールなどに乗って命を粗末にするものではない』
相手のアーマドールから声がする。
こちらに降伏せよと言っているのだ。
冗談ではない。
国王陛下の命なのだ。
むざむざとこの地を獲られてなるものか。
私はペダルを踏み込んだ。
すぐに私の動きに反応して、“エリーヌ”の巨体が走り出す。
相手との距離を一気に詰め、その胴を薙いでやるのだ。
『何っ?』
こちらの反応が予想外の早さだったのか、相手の対応が一瞬遅れた。
ラウンドシールドを構えてこちらの攻撃を受け流そうとするが、私の方が動きが速い。
“エリーヌ”のバスタードソードが、相手のシールドごと腕を弾き飛ばし、そのまま胴に一撃を食らわせる。
アーマドールの循環液が飛び散り、銀色の鎧がひしゃげていた。
そしてそのまま巨体が倒れこみ、納屋を一軒押しつぶす。
「そこまで! 陛下の騎士の勝ちとする」
戦いの見届け人が宣言し、戦いは終わった。
私はほっと一息を付くと、バスタードソードを鞘に収める。
見ると、倒れこんだ相手のアーマドールの胸と頭から、騎士とユニットドールが這い出してくるところだった。
「くそっ。こんなはずでは・・・お前がちゃんとしないから!」
いかにもプライドの高そうな若い騎士がユニットドールを蹴飛ばしているのを見て、私は気分が悪くなる。
どうして自分のアーマドールのユニットドールを蹴り飛ばすなんてことができるのだろう。
ユニットドールなくしてアーマドールなど動かすことはできないのに・・・
「申し訳ありません、ガストン様。申し訳ありません・・・」
地面に蹴り転がされ、踏みつけられながら必死に謝罪しているユニットドール。
人間ではないとはいえ、その外見ははかなげな少女に過ぎない。
躰にぴったりした特殊なスーツをまとい、アーマドールの頭部で動きを制御する大事なユニットなのに・・・
「そういうことは領地へ戻ってからやってくれない? 見るに耐えないわ」
私は“エリーヌ”をしゃがませて、胸のハッチを開ける。
そして操縦席から降りると、相手の騎士に向かってそう言った。
「くそっ! この俺が女に負けるだなんて・・・くそっ! くそっ!」
もう一度足でユニットドールを蹴り、こちらに一瞥をくれて去っていく相手の騎士。
よくあれで騎士が務まるもの。
男爵領の人間が嫌われるのもわかる気がするわ。
地面から起き上がった紫色の髪のユニットドールが私をチラッと見て、すぐに自分のアーマドールに戻っていく。
再起動して引き上げの準備をするのだろう。
巨大な家畜モーガブルが六頭で牽く台車がやってきて、胴部のひしゃげたアーマドールを載せて行く。
それを見ていた私の横に、“エリーヌ”を同じく台車に横たえたエリーヌがやってきた。
「お疲れ様でした、マスター」
「ありがとうエリーヌ。あなたのおかげで何とか勝てたわ」
「いいえ、マスターの実力です。おめでとうございます」
躰にぴったりした白いスーツを着た小柄な少女が、私ににこやかに微笑んでいる。
金色の髪と青い目が美しい。
騎士たちの間で、ユニットドールを愛玩する者たちがいるというのもうなずける。
「国王陛下の代理人たる見届け人として宣言する。この土地争いは国王陛下の騎士、クロディーヌ・ラシェルの勝利を持って決着となす。ビュシエール男爵家も異論はありますまいな?」
「ビュシエール男爵家の代理人たる見届け人も了承する。男爵閣下にはそのように伝えましょう」
双方の見届け人が書類にサインを交わしてお互いに渡す。
これでこの戦いは終わったのだ。
「おめでとう、ラシェル殿。国王陛下の代理として礼を言いますぞ。これでこの村の帰属は王家直轄領に組み入れられることになった。今後ますます発展していくであろう」
栄養の行き届いた血色のいい中年の男性が私の元へ来る。
私はすっと膝を折って一礼した。
相手は国王陛下の代理人。
機嫌を損ねるわけには行かない。
「ありがとうございます。これもひとえに国王陛下のご威光の賜物と存じます」
「おそらく王都に戻り次第陛下からお言葉を賜ることになるでしょう。しかと心得て置かれますよう」
「ハッ、ありがたき幸せ」
私は陛下の代理人が立ち去るまで頭を下げていた。
やがて代理人が立ち去ると、私は立ち上がってほっと一息つく。
「おめでとうございます。マスター」
後ろに控えていたエリーヌがやってくる。
「ありがとうエリーヌ。でも、王都に戻ればまた陛下のお呼び出しがあるんでしょうね」
私は思わず苦笑する。
「仕方ありません。マスターはそれだけのことをしているのですから」
エリーヌが微笑んでいる。
この笑みが作られたものであるなんて考えづらい。
ファクトリーの連中はいったい何を考えてユニットドールの形を少女を模して作ったのかしら。
「“エリーヌ”の固縛は完了しました。いつでも出発できます、マスター」
金色のショートの髪が陽光に輝く。
ぴったりした白い特殊スーツはその少女らしい躰つきをまったく隠そうともしていない。
普通ならばとても恥ずかしいだろうに、彼女はまったくそんなことは感じていないのだろう。
私ならあのスーツはとてもじゃないが着られない。
今着ているこの躰にフィットしたチェインメイルだって、アーマドールから降りたらなんとなく恥ずかしいのに。
「それじゃ、戻るとしましょう。まだ日は高いから、次の町までは充分に行けるわ」
「はい、マスター」
エリーヌがにっこりと微笑んだ。
******
日の傾いた中、町へと通じる道を馬を進ませる。
そろそろ宿場町が見えてくるころだ。
今日はそこでゆっくりできるはず。
“エリーヌ”の本格的な点検は無理でも、表面の汚れぐらいは落としてやらないとね。
先頭を行く私の背後では、ごろごろと重い地響きを立てて六頭のモーガブルが牽く台車が、アーマドールである“エリーヌ”を載せて付き従っている。
傾いた日が“エリーヌ”の白銀の装甲板を輝かせ、その脇にちょこんと腰掛けている金色の少女の髪も同時に輝かせていた。
“エリーヌ”を載せた台車のさらに後ろには、国王陛下より付けられた従者が数人、荷馬車に乗って付いてくる。
荷馬車の荷台には、彼らのほかに“エリーヌ”用の消耗品が山のように載せられていた。
巨大な魔法機械であるアーマドールは簡単には動かない。
動かすにはそれこそ大量の消耗品が必要になる。
各部を駆動させる循環液も、動くたびに補充してやらなくてはならない。
関節の部品も磨り減るのが早いので、先ほどのような戦闘をやった後は取り替えるのが望ましい。
動力源の心臓石も、一定期間ごとに取り替えなくてはならない。
アーマドールを所有するということは、本当に金がかかるのだ。
今回のような国王陛下からの命での出陣であれば一定額の支度金が出るものの、陛下の命令を賜るのは名誉であるとの思いから、たいていは自腹で不足分を補わなくてはならない。
それだけは頭が痛いことではある。
私は再度背後を振り返る。
小山のような巨獣モーガブルの背中越しに、台車に横たわった“エリーヌ”が見える。
その横の少女が歌っているのだ。
アーマドールと同名の少女。
アーマドールと一緒に作られ、一生をその制御にささげる少女。
見た目は人間となんら変わらない。
白磁のような肌はやわらかく温かみすら持っている。
青い目は澄んでいて美しく、その声は聞くものを虜にするほど綺麗。
後ろの連中もエリーヌの声に聞き惚れているようだ。
先ほどまでの無駄口が静かになっている。
私もその歌声を聴きながら、馬を進めるのだった。
******
五日後、私たちは王都カディアスへと戻ってきた。
今回の遠征はそれほど僻地というほどでもなかったが、辺境であったことに間違いはない。
王都の城門をくぐれば、そこには懐かしくなる喧騒が満ち満ちていた。
雑踏の大勢の人の体臭。
道路の隅にぶちまけられている汚物。
商店に並ぶ干し魚や干し肉の臭い。
同じ商品でも果物や野菜はまた違う香りを放っている。
それらが入り混じって、なんともいえない空気のにおいを形作る。
帰ってきた。
思わずほっとするものを感じる。
私は馬を進めながら、このけっしていいとは言えないにおいの空気を胸いっぱいに吸い込んだ。
「アーマドールだー」
「わーい」
「わーい」
子供たちが駆け寄ってくる。
ここ王都カディアスでは、アーマドールはそれほど珍しいものではない。
とはいえ、王宮内に鎮座するアーマドールを見る機会など子供たちには無いだろうし、各貴族の所有するアーマドールにしても、そうそう目にするものでもないだろう。
子供たちは物珍しそうに、ゴトゴトと重い音を立ててゆっくりと通りを進む六頭牽きの台車の周りに集まり、その上に横たわる銀白色に輝くアーマドール“エリーヌ”を、その輝きに負けぬほどに目を輝かせて見ているのだった。
「あんまり近寄ってはいけません。危ないです」
「はーい」
台車の上からエリーヌに注意され、子供たちは素直に答える。
それでも子供たちは付いてくるのをやめようとはしない。
男の子も女の子もそれぞれ、台車の上の白銀の巨人と白い服の少女に目を奪われているのだった。
私は歩みを速めるでも遅くするでもなく、子供たちが付いてくるに任せる。
追い払うなんてまねはしたくないし、かといって帰宅を遅くする気にもならない。
子供たちも飽きればすぐに去っていくに違いない。
はたして、通りを一丁も進めば子供たちは去っていった。
台車の上で寝ているだけの動かないアーマドールなどすぐに興味を失ってしまうのだ。
私は子供たちに事故が無かったことに安堵し、やがて目的地に台車を着ける。
なつかしの我が家だ。
やっと帰ってきた。
私はエリーヌに指示して“エリーヌ”を起動させる。
モーガブルの牽く台車から降ろし、格納場所に置かねばならないのだ。
私はしゃがみこんだ“エリーヌ”の腹部にあるハッチから中に入り、操縦席に座り込む。
そして再度“エリーヌ”を立ち上がらせると、外に向かってこう言った。
「皆さんご苦労様でした。今回の遠征はこれで終了です。解散してください」
国王陛下から派遣されてきた付き人たちは、一様にほっとした表情で立ち去っていく。
モーガブル六頭立ての台車もごろごろと音を立てながら去っていく。
アーマドールは戦うための武器であり、移動のための道具ではない。
そのため、長距離の移動にはこうして台車で運ぶ必要があるのだ。
私はアーマドール用に設えられた出入り口から庭に入り、その一画を占める格納場所に“エリーヌ”を座らせる。
“エリーヌ”が入ってきたことで、家の中から黒服を着たベシエールがでてきて、にこやかに私を迎えてくれた。
「お帰りなさいませ、クロディーヌお嬢様」
私はハッチを開けて“エリーヌ”から飛び降りた。
「ただいま、ベシエール。お爺様はお元気?」
「はい。このところはご気分もよろしいようです」
初老のベシエールは、父の代から仕えてくれる執事で、留守の間は屋敷のことを取り仕切ってくれている。
もっとも、うちはそれほど裕福ではないので、屋敷といっても小さなものだし、使用人もごくわずかだけどね。
「そう、それはよかったわ。外に馬と馬車が止めてあるので中に入れておいてちょうだい。私はエリーヌと一緒にお爺様に帰還の挨拶をしてくるわ」
「かしこまりました、お嬢様」
うやうやしく一礼するベシエール。
私は“エリーヌ”の動力を停止させてから降りてきたエリーヌを連れ、家の中に入っていった。
- 2011/02/08(火) 20:54:41|
- 騎士物語
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昨晩2月6日の23時半ごろ、当ブログは
260万ヒットに到達いたしました。
毎回のことではございますが、これもいつもいつも当ブログを訪れてくださいます皆様のおかげでございます。
本当にありがとうございます。
心よりお礼を申し上げます。
先月頭に2000日連続更新を迎えて以来約一ヶ月が経過してしまいました。
本来ならとっくに記念SSの一つも投下していなくてはならなかったのですが、なにぶん創作が行き詰ってなかなか進まず、投下できずにここまで来てしまいました。
そこで2000日連続更新記念と260万ヒット記念を合わせてとはなりますが、一本SSを明日より四日間連続で投下したいと思います。
悪堕ちSSとしてはちょっとビミョな作品かもしれませんが、目を通していただければうれしいです。
これからも「舞方雅人の趣味の世界」を、どうか応援よろしくお願いいたします。
それではまた。
- 2011/02/07(月) 20:45:52|
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先ほどまでNHKの大河ドラマ「江~姫たちの戦国~」を見ておりました。
今日は「本能寺の変」
豊川悦司さんの信長も今日で見納めです。
回想では時たま出てくるんでしょうけどね。
今回の「本能寺の変」はいろいろと今までの一般的な解釈とは違うものも取り入れていたようではありますが、やはり基本は通説に従ったものでした。
まあ、あんまり変なことはやれないでしょうけどね。
のっけから信長が光秀に対して京と堺の周囲が手薄になるから謀反してみるかとそそのかす。
これはお前にはやれないだろうという思いと、やるならやってみろという思いが半々ぐらいだったのかも。
そして光秀につらく当たる理由が、自分に何かあったときすべてを任せられるのは光秀しかいないからだという。
だけど、その思いは届かず、ついに光秀が謀反に及ぶ・・・
今回は豊川信長は敦盛を舞うようなシーンはありませんでしたね。
また切腹シーンもありませんでした。
そして最後に思うのが江のこと。
まあヒロインですからこれは仕方ないかもしれませんね。(笑)
それにしても、日本史上最大の謎とも言われる本能寺の変での明智光秀の裏切り。
さまざまな説がありますが、なぜ彼が裏切ったのかは、永遠の謎なんでしょうね。
今日はこんなところで。
それではまた。
- 2011/02/06(日) 21:16:10|
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今日はテレビを見ながら、先日届いたゲームジャーナル誌29号付録の「激突! バルジ突破作戦」のユニットをちぎっておりました。
そのときたまたま放映されていたのがこの映画。

007シリーズの13作目「オクトパシー」です。
ジェームズ・ボンド=ロジャー・ムーア氏の声が広川さんだったのはよかったですねー。
今は亡き広川さんの声を楽しむことができました。
ストーリー等はもうどうでもいいことですね。
ロジャー・ムーア氏も年齢から来る衰えは隠しきれないような状況でしたし、私もある意味惰性でだらだら見ていたようなところがありました。
ところがですね。
後半に入って思わず目を引かれてしまったのですよ。
謎の美女オクトパシーが出てくるあたりから、なんと首から下を真っ赤なゼンタイ状のピタスーツに身を包んだ女性たちがちらほらと出てくるではありませんか。
彼女たちはオクトパシー率いる「美女軍団」だそうで、全員がこのゼンタイコスチュームではないのですが、数人がこのピタスーツ姿でアクションを繰り広げてくれます。
まさに赤い女戦闘員。
これに腕の下に白いひも状のものを多数付ければ、「仮面ライダーアマゾン」にでてきました「赤ジューシャ」かとも思います。
おかげで後半はそこそこ楽しませていただきました。(笑)
この「美女軍団」の登場は、本作の評価を高める要因にもなったようで、英国では結構喜ばれたんだとか。
どうせなら全員ピタスーツで統一してほしかったなぁ。
以前当ブログでも
ゴールドフィンガーの記事で、プッシー・ガロアの部下たちが女戦闘員っぽいと書きましたけど、今度は赤ジューシャと007には時々ハッとさせられるものがありますね。
いや、私だけかもしれませんが。(笑)
今日はこんなところで。
それではまた。
- 2011/02/05(土) 20:38:26|
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その巨大な宇宙巡洋艦は、今まさに巨大ガス惑星の大気の中に沈もうとしているところだった。
だが、たまたま空になった燃料タンクが浮きの役目を果たし、その巡洋艦をガス惑星の重力の底へと引きずりこむ事を防いでいた。
乗組員はすべて脱出したものの、現役の宇宙巡洋艦にはまだまだつかえる装備品が多数残っているに違いない。
装備品を回収し売って儲けようという金目当ての命知らずの連中が、この巡洋艦に目を付けるのは当然のことだった。
危険を承知で、ガス惑星の大気にかろうじて浮かんでいる巨大な宇宙巡洋艦に乗り込もうとする男たち。
だが彼らは知らなかった。
この宇宙巡洋艦の破壊された部分から、アメーバのような未知の宇宙生命体が船体内に侵入していたことを・・・
こんなシチュエーションをもとに巨大な宇宙巡洋艦の艦内での個人戦闘を行うゲームが、この「アザンティ・ハイ・ライトニング」です。

こちらが箱絵。
1987年にホビージャパン社からライセンス発売されたものなんですが、もともとはアメリカGDW社の作品でして、同社のTRPG「トラベラー」のサプリメント兼シミュレーションゲームとして作られたものです。
今となっては再販もされていないので手に入れることは非常に難しいかもしれません。
ゲームの舞台となるのは排水素トン数60000トン、全長400メートルにも及ぶ巨大な「アザンティ・ハイ・ライトニング」級宇宙巡洋艦です。
この宇宙船は艦内が14種類84個ものデッキで構成されていて、このゲームは一隻丸ごとその14種類のデッキがすべてマップになって入っているのです。
プレイヤーはこのデッキマップに個人を表すユニットを置いて戦闘を行っていくというもので、同社のSFゲーム「アステロイド」と同じようなものになってます。
私はこのゲームはゲームとしてはプレイしたことはないのですが、「トラベラー」に登場する宇宙巡洋艦のサプリメントとして利用したものでして、プレイヤーに艦内で行動してもらうためにマップを使ったりしたものでした。
「アザンティ・ハイ・ライトニング」級巡洋艦は、退役したあと輸送船として使われたものもあり、ゲームのシチュエーションとしても輸送されているワインを奪おうとする強盗団が乗り込んでくるといったようなものもあります。
バランスを取るのは難しいかもしれませんが、シチュエーションはかなり多く考えることができるでしょう。
まだ一度もゲームとしてはプレイしたことが無いので、いつかはゲームとしてプレイしてみたいものですね。
それではまた。
- 2011/02/04(金) 21:43:01|
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アマゾンでゲームジャーナル誌のいくつかが割り引き販売されていたのを知りまして、以前から気になっていたものの購入は躊躇していたゲームジャーナル誌の29号「激突! バルジ突破作戦」を、この機会に購入いたしました。

こちらが表紙。
ケーニッヒティーガーにパンター、シャーマンにM3ハーフトラックと、バルジの戦いのメインキャストがそろってます。
この号の付録ゲームはタイトルどおり1944年の独軍によるアルデンヌ攻勢を扱ったもので、支援チットという独特のシステムを使ったゲームになっています。
この支援チットとは、普通のゲームではそれぞれが単独の部隊ユニットになったりダイス目修正になるような事象をチットにして部隊ユニットにくっつけてしまおうというもので、「タイガー大隊」や「突撃砲大隊」のような部隊を表すチットもあれば、「俺のけつをなめろ」や「騎士十字章」のような戦闘での損害を増減させるようなチットもあります。
こうしたチットが普通の部隊ユニットに付けられ、戦闘解決時にさまざまな効果を表します。
さらにはチットにはイベントもあり、「パットンの救援」チットのように増援を早くするものや、「恐怖の奔流」チットのように補給が通じていない連合軍ユニットを一瞬で除去してしまうようなチットすらあるのです。
こうしたチットは補給ポイントの消費によって手に入れることができるため、補給ポイントが多ければ多いほど多数のチットを手に入れることが可能です。
しかし、補給ポイントはポイント数を書かれた補給ポイントチットの中から選んでいくため、前半に大きな数字の補給ポイントのチットを使ってしまうと、後半には少ない数のチットか0ポイントのチットしか残らなくなるため、その配分にも頭を悩ませることになりそうです。
バルジ戦ゲームの常として、前半は独軍の攻勢があり後半は連合軍の反撃となるわけですが、この補給ポイントとチットのめぐり具合では、後半にも独軍の再反撃がありえるので連合軍も反撃には充分注意する必要がありそうです。
相手がどのチットを使ってくるのかがわからないのが前提なので、ソロプレイはしづらそうではありますが、一度は対戦してみたいゲームですね。
今度どなたかにお願いしてみます。
今日はこれにて。
それではまた。
- 2011/02/03(木) 21:23:06|
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2010年の10月に始まりましたVASLを使ってのASL-SKリーグ戦2010。
私の分の全八戦が先日終了いたしました。

今季の成績はー・・・五勝三敗でした。
2009年度と同じ星数でした。
ちょっと残念ですが、対戦相手も実力者ぞろいということで順当な成績という感じでしょうか。
2010年度はSK#1とSK#2からシナリオが選ばれているのですが、SK#2からのシナリオが一本しかなかったのがちょっと残念。
もっと大砲を使いたかったところですね。
このあとは上位二名によるプレイオフがあるようなのですが、やったほうがいいのかなぁ。
今回は二グループ作れなかったのだから必要ない気もするなぁ。
もちろんやるなら全力投入ですが。
ともあれとりあえずは全八戦が終了しました。
2011年シーズンがあるなら、また参加したいものだと思います。
それではまた。
- 2011/02/02(水) 21:18:45|
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今日から二月。
毎年恒例のことながら、今年もプロ野球のキャンプが始まりましたね。
今年もシーズンが始まったという感じです。
今年は一軍選手は沖縄と宮崎で12球団すべてがキャンプですね。
昔はグァムとかハワイとかアリゾナなんてところでのキャンプがあったものですが、最近はほぼ国内に統一された感じです。
宮崎県は例の新燃岳の噴火の影響が心配ですが、まずは問題なくスタートしたようです。
とはいえ、やはりちょっと心配ではありますね。
今年のキャンプはもうなんと言っても北海道日本ハム一色という感じです。
斎藤佑樹投手の一挙手一投足にすべてのマスコミの目が向けられているという感じですね。
今日もお昼にはインタビューがあったようで、注目されるのも大変だという気がします。
阪神タイガースもキャンプインしましたが、驚くのは城島選手が二軍キャンプに合流してきましたことでしょうか。
10日前後にはフリー打撃も開始するということで、かなり早い回復状態になっているようです。
ただ、あせってまたいためてしまっては元も子もないので、あまりあせらずに直してほしいものですね。
それともう一つの心配は久保投手の今期年俸がまだ決まらないということでしょうか。
12球団でまだ契約を更改していないのは久保投手だけということなので、早く契約を更改してすっきりしてほしいものだと思います。
今年も久保投手には活躍してもらわなければ困りますからね。
いよいよ始まった2011年シーズン。
今年はどこが優勝するのでしょうか。
願わくば阪神と日本ハムの日本シリーズとなれば最高なんですけどね。(笑)
今日はこれまで。
それではまた。
- 2011/02/01(火) 21:05:25|
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