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舞方雅人の趣味の世界

あるSS書きの日々

え~っ、そうだったんだー

昨日の記事でグランドパワー誌の新刊のことを書きましたが、そのグランドパワー誌に「あら、そうだったんだ」と思うような記載がありましたので、ちょっとご紹介。

今月のグランドパワー誌は、第二記事でM3リー/グラント戦車のことを記載していたわけですが、このM3リー/グラント戦車とは第二次大戦中のアメリカ製の中戦車です。

第二次世界大戦が始まり、英仏に対するドイツの機甲師団の活躍を知ったアメリカは、自軍の装備する戦車の能力不足に気がつきました。
そこで、主砲に75ミリクラスの砲を持つ中戦車の開発を行うことにいたしましたが、その時点でのアメリカには、まだ75ミリクラスの主砲を搭載する砲塔を回すターレットリングを開発することができませんでした。

しかし、戦争は容赦なく続きます。
そのため、次善の策として、車体に直接75ミリクラスの砲を乗せて火力を確保し、砲塔には37ミリクラスの砲で我慢するというアイディアを採用することにいたします。
そうして開発されたのが、M3中戦車でした。

M3中戦車は画像を見てもわかるとおり、車体に75ミリ砲を搭載し、砲塔に37ミリ砲を搭載しています。
見るからにあんまりいい砲の搭載方法とは思えず、アメリカ自身も次の本命中戦車M4完成までのつなぎでした。
ですが、フランスでの戦いで多くの戦車を失い、今また北アフリカでのドイツ軍との戦いで戦車を多く失っている英国は、一両でも戦車が必要でした。
そこでアメリカがすぐに提供できるこのM3中戦車を購入することにいたします。
ただし、英国軍仕様にするための小規模改修は必要とされ、37ミリ砲を搭載する砲塔がイギリス軍仕様に改められました。
M3.jpg
(手前がグラント、奥がリー)

英軍はこの英軍仕様のM3をグラント、もともとのM3をリーと呼んで区別することにし、早速グラントが北アフリカの戦場に登場することになります。
今までの英軍の戦車は対戦車用に徹甲弾しか持ってない戦車か、歩兵支援用に榴弾しか撃てない戦車かの二種類に分かれておりました。
ドイツ軍のように徹甲弾も撃てるし榴弾も撃てるような戦車は持っていなかったのです。
M3グラントは、主砲の75ミリ砲で徹甲弾も撃てるし、榴弾も撃てたため、英国の戦車兵は大喜びでした。
主砲が固定されているという欠点はありましたが、充分使える戦車だと思ったのです。

ところが・・・
開発した米軍も、使用する英軍も思ってもみなかった欠点が戦場で浮上することになりました。

ちょっと長くなってしまいましたので、続きは明日に。
  1. 2010/08/31(火) 21:35:31|
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ロシア製だよ

今月のグランドパワー誌です。

GP1010.jpg
こちらが表紙。

今月の特集は、ドイツ軍の7.62センチ対戦車自走砲。
バルバロッサ作戦でソ連に侵攻したドイツ軍は、自軍の対戦車砲で撃破できないT-34やKV-1といった強力なソ連軍戦車に遭遇して愕然とするわけですが、なんとそのT-34やKV-1を撃破できる対戦車砲がソ連側から大量に捕獲できていたんですね。

それがソ連軍の7.62センチ野砲F22だったわけですが、ドイツ軍はこのF22野砲を対戦車砲PAK36として改造し、それを車両に載せて対戦車自走砲としたわけですが、今回はその特集というわけです。
いろいろと新しい情報も出ているようですね。

ほかにはM3リー/グラントの二回目や、ドイツ軍のソフトスキン(軍用乗用車や軍用トラックのような車両:装甲がない=皮膚が柔らかいということで)の写真集など。
読むのが楽しみです。

今日はこんなところで。
それではまた。
  1. 2010/08/30(月) 21:15:55|
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お、女戦闘員?

たまたま寄った近所のレンタルショップで、旧作一週間一本50円セールをやっていたので、久しぶりに「ジェームズ・ボンド007」シリーズのDVDを二本借りてきました。
二本で100円。
安いなぁ。

借りてきたのは「ゴールドフィンガー」と「サンダーボール作戦」の二本。
いわゆるショーン・コネリーのボンドシリーズの二本です。
早速「ゴールドフィンガー」を見ちゃいました。

ゴールドフィンガー

久しぶりに見たので、大まかなストーリーは覚えていたものの、細かい点はすっかり忘れていましたね。
それでも冒頭の方で出てくるゴールドフィンガー氏の美人秘書が全身に金粉を塗られて殺されるシーンは、有名ですしインパクトありますね。
実際は皮膚呼吸ができなくなって死ぬようなことはないそうですけども。

用心棒オッド・ジョブの武器になる帽子も有名ですよね。
つばに刃が仕込んであるという設定ですが、うまくいくのかなぁ。

それよりも何よりも、見ていて「おおっ!!」って身を乗り出したのが、ゴールドフィンガー氏の悪事に加担する女性パイロットプッシー・ガロア率いる航空サーカスの女性パイロットたちです。
レオタードやゼンタイではありませんでしたが、それでも五人全員が躰にわりとフィットする上下黒の上着とズボンを身に着け、白いベルトを締めて白のブーツを履いていたのです。
金髪美女たちがガロアの前に整列する姿は、まさに悪の女戦闘員っぽい感じ。
思わずニヤリとしてしまいました。(笑)

もちろんストーリーとして面白かったんですが、なんかこういうニヤッとできるシーンがあったのがうれしかったですね。
それではまた。
  1. 2010/08/29(日) 20:57:46|
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機関銃分隊

今日も本の紹介です。
また結構古い本なので、手に入れづらいかもしれませんがご勘弁を。

ビルマ戦記
「闘魂 ビルマ戦記」 石井貞彦著 光文社NF文庫

元帝国陸軍伍長(終戦時)であった著者の体験記です。
ビルマ占領後の英印軍の反撃と、それに対抗する帝国陸軍の苦闘が中心となります。

著者の石井氏は、一度除隊になったあとまた再召集を受けた方でして、昭和17年からビルマに進出していたといいますから、すでに当時27歳ぐらいだったと思います。
(生年が大正5年とのことなので)

石井氏は、陸軍第五十五師団第百十二連隊の重機関銃隊に所属する上等兵だった時点から著述はスタートしますが、機関銃隊所属の方の手記というのはあんまり読んだことがなかったので、これは新鮮でした。

本の前半はまだ日本軍が優勢だった時期のこともあり、石井氏の所属する機関銃隊も本隊とともに英印軍を攻撃していくわけですが、この攻勢時の重機関銃の使い方や、支援の仕方などがなるほどと思わせられました。

すでに石井氏は二度目の招集であり、兵士としてもベテランの部類になっていることから、重機関銃の使い方についても自分なりの考えを持っているのですが、未熟な指揮官が上についたときなどは、陣地の構築地点など実情に合わないことを言われることも多かったようで、どうして指揮官連中は現場の実情を無視してばかりいるのだろうと愚痴を言ったりもしています。

そればかりではなく、この指揮官は無能と石井氏を含む古参兵士が見切ってしまうと、ほとんど指示には従わずに独自の判断で機関銃を扱っていたようです。
このあたりは、戦場で生き残るにはどうしたらいいのかという自己保身が、軍隊としての指揮命令系統を凌駕していたということなんでしょう。

本の後半はもう後退につぐ後退の連続で、石井氏も負傷したりするわけですが、インパール作戦参加者とは異なり、かろうじてそれほど飢えずにすんだようです。
それにしても命の次に大事なのは飯盒と水筒という氏の言葉は重く、飯盒をなくしてしまうと死が一直線に迫ってくるような状況だったようです。
それでも石井氏は、タイミングのいいところで米を手に入れることができたり、水を手に入れることができたりしたのが、よかったのでしょう。

石井氏の重機関銃と一緒に行動していた部隊に、15センチ榴弾砲を扱う砲兵隊がいたのですが、当然ならば牽引車か悪くても馬匹牽引するはずのこの15センチ榴弾砲を、その砲兵隊はなんと二門も人力搬送して英印軍の包囲を抜け出てくるのです。
ジャングルの中の夜間行軍で巨大な榴弾砲を運ぶなんてむちゃくちゃだとも思いますが、この二門の榴弾砲はなんと300キロ以上も人力で運ばれ、最後に英印軍に四発の砲弾を浴びせて自壊されたそうです。
なんともすさまじい。

著者の石井氏の性格にもよるのか、また部隊がインパール作戦のような悲惨な状況よりはまだましだったせいか、本全体がそれほど重い空気を持ってませんでした。
確かに厳しい戦場の様子は捉えることができますが、読んでてつらくなるようなことはなかったです。
もし手に入れば、一読されてみてもいいのではないでしょうか。

今日はこれにて。
それではまた。
  1. 2010/08/28(土) 21:02:14|
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エチオピア戦争(3)

本国のクリスピ首相の命令により、重要地点であるアンバ・アラギまで進出したイタリア軍約二千でしたが、その行動はついにメネリク二世からの宣戦布告を呼び込んでしまい、「(第一次)エチオピア戦争」が始まりました。

メネリク二世は、イタリア軍が欧州の近代火器を駆使してくるのを知っておりましたので、火力及び兵力でイタリア軍より優位に立とうといたします。
フランスより購入していた近代火器を装備した皇帝直属の部隊約三万人を集めたメネリク二世は、アンバ・アラギのイタリア軍に襲い掛かりました。

双方が近代火器を装備している以上、戦いの趨勢を決めるのは兵力の多寡でしたが、エチオピア軍三万に対し、イタリア軍二千では勝負になりません。
この「アンバ・アラギの戦い」で、イタリア軍は約千三百ほどもの損害を受け、後退せざるを得ませんでした。

この「アンバ・アラギの戦い」での敗北は、現地のイタリア軍司令官であるエリトリア総督バラティエリ将軍にとっても衝撃でした。
しかし、彼はエチオピア軍の実力をきちんと評価していたので、この敗北を受け入れ、分散していたイタリア軍を集結させることにいたします。
そして前衛をいったん下げ、拠点であるマカラにて防備を調えようといたしました。

「アンバ・アラギの戦い」でヨーロッパの軍(イタリア軍)に勝利したメネリク二世は、余勢を駆ってイタリア軍にさらに攻めかかります。
彼はマカラに後退したイタリア軍に攻撃を仕掛けますが、さすがに拠点にこもったイタリア軍は手ごわく、なかなか落とすことができませんでした。

しかし、マカラの守備隊もメネリク二世の軍勢に包囲されてしまったことで補給が続かなくなり、ここも後退を余儀なくされてしまいます。
イタリア軍の守備隊司令官はエチオピア軍と交渉の末、武装を保持したまま後退し陣地を明け渡すこととなりました。
メネリク二世もこれを承認し、イタリア軍は堂々と陣地を明け渡して後退していきました。

バラティエリはこれによって前線拠点を失いましたが、兵力は失うことを避けることができました。
彼はほぼ全兵力に等しい兵力をアドワに集め、そこでメネリク二世を迎え撃つつもりでした。
正確な情勢判断のできる彼は、メネリク二世の軍が皇帝直属の部隊以外は寄せ集めであること、アドワまで進出してくれば補給が続かなくなることなどをわかっておりました。
そのため、アドワでしばらく防御に徹することができれば、メネリク二世の軍勢は後退せざるを得なくなり、皇帝としての威信も地に落ちるだろうと考えていたのです。

アドワに集結したイタリア軍は、本国からのわずかばかりの増援や、現地徴収兵部隊(アスカリ部隊と呼ばれました)などを含め約二万人ほどだったといわれます。
砲も新式旧式合わせて50門ほどを装備しており、この兵力でアドワに篭もれば、メネリク二世もちょっと手が出せないだろうと思われました。

一方のメネリク二世も、自軍の有利な点と不利な点は承知しておりました。
彼の下にはエチオピア各地の軍閥が応援に駆けつけ、その数はなんと約十二万にまで膨れ上がっておりました。
また、彼らの三分の二は小銃などの近代火器を持っており、砲も40門ほどを装備していたため、火力の点でも引けは取らないものでした。

しかし、この数の多さは逆に不利な点でもありました。
皇帝直属の部隊だけではなく、各地の軍閥兵力も加わっていることで、指揮統率の面で困難であるばかりか、この大人数を食わせるための補給がまず追いつかないであろうことが予想できたのです。
そのため彼は短期決戦を目指さざるを得ず、バラティエリのイタリア軍がアドワに篭もって長期戦を戦う構えであれば、なかなか苦しい状況に追い込まれかねない状態でした。

ですが、戦いの女神はメネリク二世に微笑みました。
近代装備のヨーロッパの軍勢が、アフリカの原住民ふぜいに押されて立て篭もっているなどということは、政治的な状況からイタリア本国では認められるものではありませんでした。
当時の欧州各国の情勢では、そんなことをしていたら外交的に舐められてしまいかねなかったのです。
クリスピ首相は、バラティエリに出撃を命じざるを得ませんでした。

バラティエリ将軍は、本国からの勝手な命令を最初は何とかごまかして無視しようとしておりました。
十二万の軍勢に対して、のこのこ出て行っても勝ち目は薄いでしょう。
しかし、しばらく粘っていれば相手は自滅するのです。
それがわかっているのに、出撃するのは無意味です。

しかし本国はそれを許しませんでした。
バラティエリは解任もちらつかされ(実際に解任されたという説も)、出撃を強要されました。
ついにバラティエリは本国の命令に従わざるを得なくなり、イタリア軍はエチオピア軍に向かってアドワを出撃いたします。
1896年2月29日のことでした。
(第一次)エチオピア戦争の決戦である、「アドワの戦い」が始まろうとしておりました。

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  1. 2010/08/27(金) 21:37:31|
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エチオピア戦争(2)

ウッチャリ条約によってエリトリアを手に入れたイタリア王国は、現地エリトリアの総督に「オレステ・バラティエリ」陸軍大将を任命いたしました。

バラティエリ将軍は、生まれた当時はオーストリア領だったトレントで生まれ、その後サルディニア王国の軍隊に入り、イタリア統一後はイタリア王国の軍人になるという面白い経歴の持ち主でしたが、プロイセン対オーストリアの普墺戦争に従軍し、順調に出世を遂げていきました。
1891年に陸軍大将にまで出世した彼は、エリトリア駐留軍の司令官に任命され、翌年エリトリア州が成立すると総督として統治も行うようになります。

一方そのころ、エチオピア(及びエリトリア州)の隣接地域スーダンでは、英国の後押しを受けたエジプトによる支配に対し、マフディー教徒(大雑把に言ってイスラム教の一種)が反乱を起こしており、この「マフディー戦争」の影響がエチオピア方面にまで及んできておりました。

この「マフディー戦争」によるスーダンの勢力増加と、イタリアの牽制という二重の目的があったからこそ、フランスはメネリク二世に対し近代兵器の売却を行ったといわれ、一つの事件がほかの事件に波及していったことがわかります。

この「マフディー戦争」に対処するため、エリトリア駐留のイタリア軍もバラティエリ指揮の下スーダンへと侵攻します。
エジプト軍や英国軍を苦しめていたマフディー教徒たちでしたが、バラティエリは「カッサラの戦い」でこれを打ち破り、多くのマフディー教徒が戦死するか捕虜として捕らえられることになりました。

さらにバラティエリは、エリトリアで起こった現地人の反乱も難なく鎮圧。
アドワという地方都市を制圧して、治安を安定させます。

こうして着々とエリトリアがイタリアの勢力化に置かれるばかりか、その影響力が周囲にまで及び始めてきたと見ると、エチオピア皇帝メネリク二世は、このままでは遠くない時期にエチオピア全土がイタリアの影響下に置かれることになるだろうと危惧いたしました。
ウッチャリ条約のこともあり、イタリアは信用ならないと見ていたのです。

このメネリク二世の意を汲んだのが有力軍閥の長ラス・メンゲシャでした。
彼は自分の軍勢を率いて、エリトリアのイタリア軍に敢然と挑戦したのです。

しかし、これは明らかに準備不足でした。
バラティエリはイタリア軍を指揮してメンゲシャの軍勢を迎え撃ちます。
「コアチツの戦い」でした。

この戦いで、イタリア軍はメンゲシャの軍勢を完膚なきまでに打ち破りました。
メンゲシャの軍勢はまだそれほど近代的な装備を持っていなかったので、イタリア軍の火力に抗し得なかったのです。

しかしこの勝利は、イタリアにとっては不吉の前兆となってしまいました。
近代火力を持ってすれば、アフリカ人の軍勢など鎧袖一触、あっという間に叩き伏せることができるとイタリア本国では考えてしまったのです。
マフディー教徒もエチオピアの軍閥も近代火力には歯が立ちませんでした。
この火力を持ってエチオピアに攻め込めば、エチオピア全土の植民地化もたやすいだろう。
そういう意識がイタリア側には芽生えました。

しかし、現場での空気を感じ取っていたバラティエリは、最近になってフランスから大量の武器を購入しているメネリク二世の直卒部隊の戦力は侮れないだろうと考えておりました。
彼はエチオピアに侵攻するなら戦力の増強をと本国に掛け合いましたが、フランシスコ・クリスピ首相は、現有戦力で充分と判断してしまいます。
それどころか、早くエチオピアに侵攻せよとの命令がバラティエリには出されました。

1895年12月、バラティエリはクリスピ首相の命令に従い、エチオピアへと侵攻を開始します。
とはいっても、侵攻は形だけにとどめ、前線基地であるアドワとアジグラットへの進出までに抑えるつもりでした。
しかし、クリスピ首相は重要地点であるアンバ・アラギにまで進出するよう命令。
やむなくバラティエリは、トゥゼーリ大佐率いる現地徴収兵約二千をアンバ・アラギへと向かわせます。
バラティエリはトゥゼーリ大佐に、必要なときは退却してもよいと伝えたといいますが、トゥゼーリ大佐には伝わってなかったといわれ、二千の兵は不安を抱えたままアンバ・アラギへと進出しました。

イタリア軍が重要地点であるアンバ・アラギまで進出してきたことで、ついにメネリク二世は立ち上がりました。
彼はイタリア政府に宣戦を布告し、「(第一次)エチオピア戦争」が始まります。

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  1. 2010/08/26(木) 21:18:22|
  2. エチオピア戦争
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また驚きの頂き物とリンク報告

うひゃーっとまた大声で喜びの叫び声をあげたくなるような、驚きのプレゼントをいただいてしまいました。

私がよく訪問させていただきますじんじんじ様のブログ、「じんじの落書き帳」様の管理人じんじんじ様より、なんとお手製のイラストをいただいてしまったのです。

それがこちら。
クイーン・ビー

もう、すばらしいの一言ではありませんか。
胸元の蜂の模様といい、オレンジ色のレオタードに黒の手袋とブーツ。
挑発的に見つめてくるまなざしの鋭さ。
まさに「クイーン・ビー」と化した馬先生そのものです。
言葉が出ないですねー。

実は、先日「じんじの落書き帳」様にお伺いしたとき、じんじんじ様のイラストの美麗さに思わず冗談めいて「一人回してください」とコメントに書き込んでしまったのですが、「それでは一人回しましょう」とばかりに、突然イラストを送ってくださいましたのです。
いや、もう恐縮してしまいました。
めったなことは書けませんねぇ。

すぐにお礼のメールを送りまして、ええいもうこの際だとばかりにリンクを申し出てみましたところ、これまた快く受け入れていただきまして、今回リンクさせていただくことになりました。

じんじんじ様のブログ、「じんじの落書き帳」様でございます。
(ブログ名クリックでリンク先に飛べます)

じんじんじ様は、とても素敵な女性のイラストを描かれる方でして、それはもうブログを見ていただければお判りになられると思います。
淡い色使いの中にかもし出すエロさは、たぶん皆様も感じてくださいますことでしょう。
きっと多くの方が、じんじんじ様のイラストに魅了されることと思います。

じんじんじ様、今回はとてもうれしい贈り物ならびにリンクの承諾ありがとうございました。
今後ともよろしくお願いいたします。

それではまた。
  1. 2010/08/25(水) 21:19:00|
  2. Special Thanks
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エチオピア戦争(1)

アフリカの東側、インド洋に角のように突き出した形になっている部分に、最近海賊の出没で話題になっている国ソマリアがあります。
その西側、高地になっている場所にアフリカの古くからの独立国「エチオピア」があります。
今から115年前の1895年と、75年前の1935年の二回にわたって、このエチオピアで戦争がありました。
第一次および第二次のエチオピア戦争であり、両方を含めて「エチオピア戦争」と呼ばれる戦争でした。

アフリカの東側の高地帯に位置するエチオピアは、エジプトの侵略を受けたり、逆にイエメン近くまでの広大な版図を手に入れたりと紆余曲折を繰り返しながらも、他国に制圧されることなく独立を保ち続けておりました。
そのためアフリカ最古の独立国と呼ばれ、近世の英仏の植民地化も行われずに、皇帝の支配する帝国として独自の国家運営を行うことができておりました。

しかし、国内では軍閥が力を持ち、皇帝の座を常に脅かすだけではなく、反乱による帝位簒奪も時々行われるような有様でした。
皇帝の支配する帝国といえども、国内は一枚岩ではなく、不安定な状態だったのです。

一方、アフリカでの植民地獲得競争に出遅れた国のひとつであったイタリア王国は、ようやくエチオピアの一部である紅海沿岸のエリトリア地方(現エリトリア:当時はエチオピア領)を最初は民間会社を通じて、後には軍を派遣して実力で奪い取ることに成功(エリトリア戦争:1885年)しました。

エチオピアは近代化されたイタリア軍には歯が立たず、エリトリア地方を奪われてもどうにもすることができませんでした。
で、あれば、その強力なイタリア軍の力を逆に利用しようと考えた者がおりました。
当時エチオピア帝国の一地方王国であったショア王国の王メネリク二世です。

メネリク二世は、エチオピア皇帝ヨハネス四世に敢然と挑戦し、ここにまたしてもエチオピアでの内戦が始まります。
メネリク二世はイタリア王国をうまく取り込み、エリトリアにいるイタリア軍の支援を受けることに成功。
各地でヨハネス四世の部隊を撃破していきました。

イタリア軍の支援のおかげでメネリク二世は程なくエチオピア全土を支配いたします。
そして新皇帝に即位いたしました。
1889年のことでした。

メネリク二世は、イタリアを利用することで皇帝になったことで、エリトリアのイタリア支配を認めることにいたします。
同1889年、ウッチャリ条約がイタリアとの間で結ばれ、エリトリアは正式にイタリアの植民地として認められました。
これに伴い、イタリアは引き続いてメネリク二世の政権を支援するという約束がなされました。

ですが、欧州の各国間の外交に揉まれてきていたイタリアは、一筋縄ではいきませんでした。
ウッチャリ条約は、イタリア語と現地語であるアムハラ語で書かれておりましたが、微妙に言い回しが変えられていたのです。
アムハラ語で読めば、「エチオピアは他国との外交に関してイタリアに通告しなくてはならない」という程度の意味でしたが、イタリア語では、「エチオピアは外交及び国土の防衛をイタリアにゆだねる」と読み取れる文章になっていたというのです。
つまりエチオピアはイタリアの保護国的な扱いとなり、一歩進めばもう植民地化は目の前といえるものでした。

このことに気がついたメネリク二世は、当然イタリアに抗議を行います。
しかし、イタリアはこの抗議に対して、言い回しが違うだけだと抗弁。
メネリク二世はこのイタリアの態度に怒り、じょじょに両国間は険悪な状況へと向かっていきました。

イタリアはウッチャリ条約で手に入れたエリトリアだけで満足するつもりはまったくありませんでした。
いずれはエチオピア全土の植民地化をもくろんでいたのです。
しかし、経済的な問題から、エリトリアの駐留部隊を強化するのは難しく、現地にいる約一万ほどのイタリア軍に対エチオピアの軍事行動は任されることになりました。

一方メネリク二世は、イタリアとの対決姿勢を強めていきました。
彼はイタリアのアフリカ進出を快く思わないフランスに接近します。
フランスはメネリク二世の接近に応え、近代火器をエチオピアに売却していきました。
このフランスからの武器購入により、エチオピアは急速に近代的な軍事力を装備していくことになったのです。
両国の衝突は時間の問題となって行きました。

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  1. 2010/08/24(火) 21:29:23|
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とかくこの世は不公平

今日は本の紹介。

「皇軍兵士の日常生活」 一ノ瀬俊也著 講談社現代新書
皇軍兵士の

いやぁ、タイトルから受ける印象とはまったく違う本でした。
私は平時及び戦時の兵士の兵営や戦場での暮らしぶりを取り上げた本だとばかり思っていたのですが、まったく違いました。

この本は徴兵によって集められた皇軍兵士と言う、一見公平に扱われていた印象のある存在も、その実体はまったく不公平な扱いを受けていたのだということを訴えるものです。

まず徴兵そのものが不公平であると事実。
太平洋戦争後半まで学生は徴兵猶予があったので、駆け込みで学生になるものも結構多かったそうです。

また、給与の不公平。
徴兵された兵士も、大企業の社員だったものは在職のままとされることが多く、兵役についている期間も給与が企業から支払われている兵士がいる一方で、中小企業や農民出身の兵士はそんな給与の二重取りはありえず、兵士間での不公平感があったといいます。
もっともその大企業も、戦争の長期化に伴い何とか兵役についている社員の給与をカットしようとして、国に働きかけておりました。

生きているときだけではなく、皇軍兵士は死んでからも不公平でした。
同じように戦場に出征し、同じように敵弾に斃れたにもかかわらず、実家の富裕度合いによって皇軍兵士の墓の大きさも戒名も違ったのです。

また、戦死の報告も不公平なものでした。
戦争前半の時期には、作文とはいえ勇壮な死に様を書いた戦死広報が届けられたのに比べ、戦争後半、または終戦後の戦死公報は、どこで死んだ(または死んだと思われる)的の味もそっけもないものだったといいます。

著者の一ノ瀬氏は、とにかく皇軍兵士の不公平さを見せ付けることで、最近一部で見られる戦争や徴兵が社会の格差を無くし公平化するというイメージを打破しようとしているようです。

食事に関しての不公平なども載っておりますので、一読してみてはいかがでしょうか。

今日はこれにて。
それではまた。
  1. 2010/08/23(月) 21:38:37|
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コマンド新刊到着

久しぶりにコマンドマガジンを手に入れました。

cm94.jpg
こちらが表紙。

今回は2in1ということで、陸戦作戦級の「ビルマ電撃戦」と、空戦戦略級の「フライングタイガース」の二つのゲームが入ってます。
いずれも太平洋戦争序盤の帝国陸軍の進撃を扱っているゲームなので、日本軍の活躍が見られそうです。
このところコマンドマガジンとは離れていたんですが、最近帝国陸軍ものは気になるので、今回は手に入れました。

表紙はP-40と一式戦ですね。
一見P-40が優勢に見えても、一式戦が背後につくような機動を行っている途中らしいです。

記事は今回はビルマ戦ゲームの特集で、各メーカーのビルマ戦ゲームをシステムなども含めて紹介してました。
ホビージャパン社の「日本の進撃」も入ってました。
このゲームも一度はプレイしたいものの一つです。

装甲擲弾兵のユニット紹介は三号J型。
ただ、最近の資料では従来J型長砲身と呼ばれていた60口径砲搭載型は、全部L型に分類されるとなりましたので、イラストの三号J型はL型ということになりますね。

他にも面白そうな記事がちらほら。
楽しませてもらえそうです。

今日はこんなところで。
それではまた。
  1. 2010/08/22(日) 20:36:27|
  2. ウォーゲーム
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春夏連覇

今日はスポーツの話題。

第92回の夏の全国高校野球大会の決勝戦がおこなわれましたね。
沖縄の興南高校が神奈川の東海大相模高校を13-1で破り、春夏連覇を達成です。
島袋投手はすごいですね。

東海大相模の一二三投手もすごかったですが、今日は残念な結果になってしまいました。
4回の一イニングに7点も取られるとは予想外だったことでしょう。

沖縄は興南高校の優勝で初めての夏の制覇だそうです。
おめでとうございます。

これで今年の夏も終わりましたね。
また、来年の春までお別れです。

一方、プロ野球はいよいよ山場と言うところでしょうか。
阪神タイガースは昨日今日と残念な連敗となってしまいましたけど、今日は高校生ルーキーである秋山投手がプロ初先発ということで、応援しておりました。

結果は6回を投げきったものの、4失点と言うことで残念ながら負け投手。
ですが、将来の阪神投手陣の中心になってくれればいうことなしですね。
いい投球を見せてくれました。

何とか明日は勝ってもらって三連敗は避けたいものですね。
明日勝てばまだ2ゲーム差にできますし。

日本ハムのほうは昨日今日と中田選手の活躍などで連勝。
こちらもクライマックスシリーズ進出に向かってがんばって欲しいものです。

今日はこんなところで。
それではまた。
  1. 2010/08/21(土) 20:19:18|
  2. スポーツ
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昔の夢が・・・

今日は同人誌のご紹介。

サークルさんかくエプロン様の新作、「DelusionM (デリュージョンM)」です。
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こちらが表紙。

サークルさんかくエプロン様は、商業誌でもご活躍中のメジャーどころ山文京伝氏が所属されるサークルと言うことで、毎回気になっているサークル様なのですが、今回の作品はいつもの人妻系ではなく、五人のロボットクルーの中の紅一点が罠にかかり洗脳されてしまうと言うまさに激ツボの内容とのことで、早速手に入れてしまいました。

実際内容はまさにそのとおりでして、かつてのロボットアニメーションである「コン・バトラーV」や「ボルテスV」といった五人のロボットクルーの登場する作品を髣髴とさせる世界観で、その紅一点であるヒロインみゆきが捕らえられてしまいます。
そして快楽による洗脳調教を受け、最後には悪の帝国の手先になってしまいます。

もう何もいえませんね。
シチュとしては最高の部類です。
とても楽しませていただきました。

ヒロインが堕ちるのもいいのですが、さらにそのヒロインを罠にかけるための策が堕ちた女性を使うというもので、その女性にもまた妄想が広がります。
さすが山文先生といったところでしょうか。

かつて「コン・バトラーV」のなかの一話に「衝撃! ちずるは偽物だ」と言う話がありまして、ヒロインであるちずるが捕らえられ、偽物が作られて送り返されると言う話がありましたが、子供心に偽物でなくちずる本人を洗脳して欲しいと思ったものでしたが、今回そのシチュを見事に見せてもらったような気がします。

唯一残念なのは、堕ちたみゆきに悪コスがなかったことでしょうか。
ただ、これはストーリー展開上着せるタイミングがなかっただけなので、やむを得ないことでしょう。
とはいえ、みゆきの悪コス姿を見たかったというのは正直なところです。

面白い作品でしたので、こういうストーリーが好きな方にはお薦めです。

今日はこれにて。
それではまた。
  1. 2010/08/20(金) 21:17:59|
  2. 同人系
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そこに愛はないのかな?

今日は新しいリンク先のご紹介です。

ふたばの悪堕ちスレなどでご活躍中の痴ノマナコ様のブログ、「狂人の隠れ里」様です。
(ブログ名クリックでリンク先に飛べます)

私のいつもお世話になっておりますわぶき様の「堕ち玩」様とも交流がございますようで、痴ノマナコ様もお見事な「カス子」使いでいらっしゃいます。
今回新たにブログを開設されたとのことで、この機会にとリンクをさせていただきました。

今のところは始まったばかりのようですが、まだまだこれから発展されるブログだと思いますので、ぜひぜひ皆様も足を運んでいただければと思います。
今日から新作SSも始まったようでございますので、とても楽しみです。
ブログの副題が「愛の無い悪堕ち」とはなっておりますけど、おそらくはたっぷりと痴ノマナコ様の愛のつまった見事な悪堕ちを見せていただけるのではないでしょうか。

痴ノマナコ様、これからもどうかよろしくお願いいたします。

今日はこれにて。
それではまた。
  1. 2010/08/19(木) 21:08:19|
  2. ネット関連
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クイーン・ビー(2)

今日も早めに更新。

丸五年連続更新達成&230万ヒット達成記念SS第二段の「クイーン・ビー」の後半です。
お楽しみいただければ幸いです。

それではどうぞ。


2、
「ふうん・・・なるほどね。大陸系の馬先生だから何を使うのかなって思っていたけど・・・針だったんだ」
私は驚いた。
あの薬を飲んで目を覚ますとは。
ベッドの上で少女はそのくりくりした目を私のほうへ向けていたのだ。
「あっ、これは・・・少しでもあなたが楽になるようにと・・・」
我ながら苦しい言い訳。
こんなの誰も信じるはずがない。
「うふふ・・・その針で私から犯罪教授のことを聞きだそうとしたんでしょ? そのためにぐっすり眠れるように薬も飲ませて」
薬のこともバレている?
この娘、何者?
まさか犯罪教授につながっている?

「あなた、そこまで知って保健室に?」
「ええ、馬先生が犯罪教授のことを探っているらしいというのを知ったのでね」
躰を起こしてベッドに座る少女。
確か案西さんだったかしら。
「そう・・・そこまで知っているの。薬が効かなかったのは、それに対処する手段をとっていたということかしら」
どうやら相手が動いてきたってことね。
「ええ、スコーピオンガールに中和剤を用意させたわ。おそらく先生は漢方でくると思ったので」
口元に小さく笑いを浮かべている案西さん。
彼女はいったい・・・
「そう・・・それなら話が早いわ。あなたは犯罪教授のことを知っているんでしょ? 犯罪教授はどこにいるの?」
「犯罪教授に会いたいの? 会ってどうするつもり? 仕事でも依頼するの?」
「あなたには関係ないわ。私は犯罪教授に接触を図りたいの。私の目的は犯罪教授本人に話します」
「・・・ふうん・・・」
射るような少女の視線。
なぜか私はその視線に恐ろしさを感じた。
この娘はただの女子高生じゃない。
何か別のものだわ。

「まあ、いいわ。そんなに会いたいなら会わせてあげる」
「えっ?」
私は思わず聞き返す。
「犯罪教授に会わせてあげる。今夜9時に体育館に来なさい」
「体育館? この学校の?」
「そう。できれば一人でね」
案西さんがニヤッと笑う。
できれば・・・ということは、私が一人では来られないかもしれないのを知っている?
「ありがと、たまに保健室のベッドもいいものね」
そう言って保健室をあとにする案西さん。
私は無言でその後ろ姿を見送った。

                   ******

『それは間違いないのかね?』
電話の向こうで劉(リュー)氏の声がする。
私に仕事を依頼したあの男の声。
「おそらく間違いないと思うわ。向こうのほうから接触してきたようなところがあるし」
『ふむ・・・ならば可能性は高そうだが・・・それでどこで会うことに?』
「この学校の体育館よ。一人で来いとのことだから、私一人に任せてもらえないかしら」
私は先に一人で行く旨を持ち出した。
少しでも一人で行ける可能性があるのであれば、そうしたほうがいいと思ったのだ。
二人三人いれば、相手も警戒して会うのを拒否するかもしれないのだから。
『ふむ・・・いいだろう。体育館には一人で行きたまえ。その代わり、必ず犯罪教授を引き込むか始末するのだ。いいな』
「わかっているわ。これが終わったら芙美を帰して。そしてもう私たちには関わらないで」
望み薄なことだとはわかっているが、それでも私は言わずにはいられない。
『約束しよう。首尾よく行くことを祈っているよ。馬女士』
私は携帯電話を切る。
あの男となどこれ以上話したくはない。
こんな仕事、さっさと終えてしまいたい。
でも・・・
久しぶりに来た学校という場所は、懐かしく楽しかったな。

                   ******

夜、私は細かい仕事が残っているということで校舎に居残りさせてもらった。
高校ともなると、夜の9時ぐらいではまだ誰か彼かいたりする。
そんな中で会おうというのか。
案西さんは間違いなく夜の9時と言っていた。
今は8時45分。
そろそろ体育館に行ってみようか。
私は保健室をあとにすると、暗くなった廊下を体育館へと向かって行った。

体育館は真っ暗。
とはいえ、窓から外の明かりが差し込んでくるので闇ではない。
明かりがついていないとはいえ、うっすらと様子はうかがえるし、行動するにもそれほど不自由はしないだろう。
何より私はこういう明るさでの行動には慣れている。
少し腕が鈍っているのは心配だけど、そう引けを取ることはないはずだ。

私は入り口の扉を開けて中に入る。
しんと静まり返った体育館。
私はゆっくりとその中央まで歩いていく。
一人であることを見せつけるのだ。
さあ、でていらっしゃい、犯罪教授。

私は腕時計に目を落とす。
時刻はちょうど9時。
でも・・・
誰も現れない?

いや・・・
体育館の入り口が開く。
スカート姿の少女が一人。
私はその少女が昼間に保健室に来た案西響子であることを見て取った。
セーラー服に身を包んだまだ幼さの残る少女。
くりくりした瞳が印象的な少女。
なぜ見誤っていたのだろう。
この少女は犯罪教授の使いではない。
おそらくこの少女こそが犯罪教授に違いないわ。

「こんばんは、馬先生。約束どおり、一人で来てくださったんですね」
体育館の中央にまでやってきて、私と向かい合う案西響子。
その口元にはほほ笑みが浮かんでいる。
とても優しそうな少女にしか見えないが、おそらくそれは作られた表情なのだろう。
「一人で来てほしいということだったから」
「ありがと。まあ、外の男達は数に入れないでおきましょう」
ああ・・・やはり・・・
あの男が手配したのだろう。
私が失敗したときに備えてのこと。
これは私でもそうする。
でも、バレバレだったということね。

「それで? 馬先生は犯罪教授に会ってどうするつもりなの?」
にこやかに聞いてくる案西さん。
一応確認しておこう。
「その前に教えて欲しいの。案西さん、あなたが犯罪教授なのね?」
案西さんの笑みが一瞬消える。
だが、すぐに彼女の口元には再び笑みが戻った。
「さすがは馬先生。ご名答です。でも、たいていは私が犯罪教授だというと、信じてもらえないんですけどね」
それはそうだろう。
こんな少女が大それた計画を立てられるとは思わない。
むしろ背後にいる犯罪教授の広報担当と思うほうが自然だ。
事実私自身が彼女を犯罪教授と認識したのはここにいたってから。
昼間はそんなことまったく思わなかったのだから。

「もちろん私もいまだ半信半疑なのは否めないわ。まさかあなたが本当に犯罪教授だなんて・・・」
「証明しろって言われても難しいけど、私が犯罪教授なのは本当よ」
「わからないはずだわ。昼間とぜんぜん雰囲気が違う・・・」
「昼間は結構猫かぶっていますからね。それも五枚や十枚ぐらい」
くすっと笑う案西さん。
見る者が見ればそれはとっても魅力的な笑みだろう。
「それじゃ見抜けないのも無理はないというところかしら」
私も思わず笑ってしまう。
「でも、猫をかぶっているのは私だけじゃないでしょ? 馬先生も一枚や二枚はかぶっているみたい。先生は何が目的なんですか?」
一瞬にして眼光が鋭くなる案西さん。
やはり只者ではない。
「単刀直入に言うわ。あなたはもう自由でいることは許されない。ある組織のために働いてもらいたいの。拒否すればあなたの命は無いわ」
私の言葉にきょとんとした表情を見せる彼女。
それはそうだろう。
理解しがたいことに違いないのだから。

「うふ・・・うふふふ・・・」
突然クスクスと笑い始める彼女。
「何が可笑しいの? わかっているの? あなたは組織を敵に回しているのよ」
自分でもこんなことを言うのはおかしいと思っている。
でも、できれば彼女を殺したくはない。
彼女が逆らえば、私は彼女を殺さなくてはならないのだから。
お願い・・・
うんと言ってちょうだい。

「なーんだ。そんなことか。もっと変わったことを依頼されるのかって少しだけ期待していたのに・・・」
少しだけ悲しげな表情になる彼女。
変わったことを期待していた?
「組織のために働け? まったくそのまんまじゃない。大陸系の人が組織のために働けなんていうのは予想外の部分が何もないでしょ」
「それは・・・期待はずれですまなかったわ。でも、組織に属している私が組織のために働けって言うのは当然じゃない」
「当然なの?」
私はドキッとした。
・・・・・・違う・・・
私は彼女に組織のためになんか働いて欲しくない。
彼女は彼女のままでいるべきだわ。
でも・・・
でも私は・・・

「ねえ、馬先生。正直に言ってみて。悪いようにはしないわ。先生は組織に属してなんかいない。先生はいやいや私に会っている。そして、私をいやいや殺そうとしている。そうでしょ?」
「あなた・・・」
「どうして奴らに従っているの? 先生は奴らとは違う。空気がまるで違うわ」
「それは・・・」
なんだろう・・・
いったいこの娘は何者なの?
どうして私は彼女に何もかも打ち明けたくなっているの?
「もしかして金? 金のために殺しを請け負うようには見えないけど・・・あとは人質かしら」
「うっ・・・」
「そう・・・やっぱり人質なんだ。お子さんって所かしら」
言葉に詰まった私の表情から全てを察したのだろう。
案西さんの表情からも笑みが消えた。

「ふう・・・仕方ないか・・・」
案西さんがため息をつく。
「仕方ないって・・・組織のために働いてくれるの?」
「そんなことはしないわ。私はどこの組織にも属さない。私は私の欲望のままに生きるの。私の邪魔をするものは何者も赦さないわ」
不適に笑う彼女。
だが、その笑みがどうにもふさわしく見えてしまう。
困ったものだわ。
「そう・・・そうすると私はあなたを・・・」
「ええ、殺すしかないでしょうね」
私をにらむように見据える彼女。
私は懐から彼女のための針を取り出す。
殺したくはないけど・・・やむを得ないわ。
「ごめんなさい。あなたを殺したくはないけど、こうするしかないの」
「そう簡単に殺されるわけには行かないわ。それに、私を殺しても人質は戻ってこないわよ」
「くっ・・・」
私は息を飲む。
それはずっと私も考えていたこと。
私が彼女を殺したとしても、あの組織が芙美を帰すとは限らない。
でも・・・
「それは・・・それはわかっているわ。でも、あなたを殺さなければ芙美は確実に殺される。あの組織とはそういう連中」
「でしょうね。芙美ってことは娘さんなんだ。きっと可愛いんだろうな。馬先生に似ていれば、将来は美人間違いなしね」
「ふふ・・・ありがとう」
私は苦笑した。
芙美にもう一度会いたい。
私はどうしたらいいの?

「仕方ないわね。連中を相手にしますか」
「えっ?」
「私がさっき仕方ないって言ったのはそういう意味。連中を相手になんてしたくないけど、素敵な手駒が増えそうだからいいか」
案西さんが笑っている。
仕方ないといいながらも、その表情は楽しそうだ。
彼女はこの状況を楽しんでいるんだわ。

「コックローチレディ、聞こえる?」
いきなり携帯を取り出して電話をかける案西さん。
コックローチレディ?
ゴ、ゴキブリってこと?
私は台所の隅を走り回るあの気味悪い虫を思い出してぞっとする。
「私よ。いい、すぐに馬先生の背後で蠢いている連中の動きを探りなさい。奴らは少女を人質にしているわ。それがどこにいるかを突き止めるの。大至急よ」
「スコーピオンガール、聞こえる? マンティスウーマンとともに周囲を片付けなさい。一人も生かして返さないように。いいわね」
「ミス・スパイダー? 用意しておいた物を持ってきて。ここでやっちゃうわ。早くね」
矢継ぎ早に切ってはかけなおしを繰り返す彼女。
いったい何をしているの?
どういうことなの?

「ふう・・・これでとりあえずはいいわ。さて、馬先生」
「えっ? あなたいったい何を・・・」
私はいつの間にか毒気を抜かれたように彼女を見ていたことに気がついた。
「先生にはこれから私に仕える女怪人の一人になってもらうわ。私の手駒の一人にね」
「手駒にですって?」
私は驚いた。
彼女もまた私を利用しようというのか?
「うふふ・・・安心して。別に人質を取って無理やりなんて考えてないから。先生は心から私に仕えたいって思うようになるだけよ」
「何をするつもり? 私を思い通りにしようとしても・・・」
彼女が手のひらを突き出して私の言葉をさえぎる。
「これからよろしくね。馬先生」
「はい。響子様」
私は思わず敬愛する響子様に膝を折った。

                     ******

郊外へ向かって走る一台の車。
私は助手席に座ってタバコを燻らせる。
美味しい・・・
タバコがこんなに美味しいなんて知らなかったわ。
これもすべて響子様のおかげ。
私は響子様に選ばれた一人。
五人目の女怪人“クイーン・ビー”。
白衣を羽織った下には、響子様よりいただいたオレンジ色のレオタードを着込んでいる。
胸のところには黒く蜂の模様が染め抜かれ、背中には薄い翅もついている。
脚には太ももまでの黒いブーツを履き、手には黒いロンググローブを嵌めている。
すべては響子様よりいただいたもの。
最高の衣装だわ。
私にとってこれ以上の衣装はない。
今は脱いでいるけど、あとは太ももの上においてあるマスクをかぶれば私はクイーン・ビーとして完成する。
ブーツとグローブに仕込んだ針を使えば、どんな相手だって始末できる。
そうよ。
響子様に命令されれば誰だって始末するわ。
うふふふふ・・・

一軒の別荘。
車を止めたミス・スパイダーに続いて、私も助手席を下りる。
ここは犯罪教授のアジト。
響子様が私を待っていらっしゃる。
無事に仕事を終えたことを報告しなきゃ。

地下に下りると、タバコの煙が漂ってくる。
いい香り。
以前の私なら嫌っていた香りだわ。
どうしてタバコがいやだったのかしら。
こんなに美味しいのに。

「お母さん!」
芙美が駆け寄ってくる。
「芙美!」
私も思わず駆け寄って娘を抱きしめた。
「よかった・・・無事だったのね」
「お母さん・・・」
泣き出してしまう娘を抱きしめる私に、他の仲間達の視線が集まった。

「よかったわね、クイーン・ビー」
中央でタバコを吸っている響子様。
私の全てをささげるお方。
「ありがとうございます。響子様」
私は膝をついて一礼する。
「コックローチレディがすぐに居場所を割り出してくれたおかげよ。相手の妨害もたいしたことなかったしね」
「ありがとう、コックローチレディ」
私はゴキブリの模様を染めた茶色のレオタード姿のコックローチレディにも礼を言う。
芙美を救ってもらったのだもの、礼だけでは足りないぐらい。
「何言ってるの。私たちは仲間じゃない」
「ありがとう」
なんてうれしい。
私は仲間なんだ。
響子様にお仕えする女怪人なんだわ。
ああ・・・最高の気分よ。

「それで首尾は?」
「はい。ミス・スパイダーの力を借りて屋上から侵入。ターゲットである老虎会の幹部連中を始末してまいりました。また響子様に関するデータも破壊しましたので、外部には漏れてないかと」
「ご苦労様。コックローチレディにも探らせたけど、外へ洩れた形跡はないみたいね。まあ、洩れても構わないといえば構わないんだけど・・・」
くすっと笑う響子様。
「これでもうあなたは私のもの。これからは私のために働くの。いいわね」
「はい、もちろんです。響子様」
私は芙美を脇にどけ、改めて響子様に忠誠を誓う。
見ると、芙美もいっしょになって響子様に一礼していた。
きっとこの娘も響子様のすばらしさがわかっているんだわ。
「あなたの背中の翅からは、精神に作用する音波が出るようになっているの。それを使ってしもべを増やしなさい。文字通りのクイーン・ビーとして私に仕えるの。いいわね」
「はい、響子様。お任せくださいませ。私はかつて暗殺士の教官を勤めたこともございます。私の力でたくさんの“働き蜂”どもをご用意させていただきますわ」
「期待しているわよ。クイーン・ビー」
「はい。響子様」
私は響子様の手駒となれたことに感謝し、身も心もすべて捧げることをあらためて誓うのだった。

END


いかがでしたでしょうか?
よろしければ拍手感想などいただけますとうれしいです。
また機会がありましたら、「響子様シリーズ」でお目にかかりましょう。
それではまた。
  1. 2010/08/18(水) 20:45:55|
  2. 犯罪教授響子様
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クイーン・ビー(1)

今日は早めに更新。

お待たせいたしました。
丸五年連続更新達成記念&230万ヒット達成記念第二段SSを、今日明日で投下させていただきます。

タイトルは「クイーン・ビー」
なんと約一年半ぶりに帰ってきました「犯罪教授響子様」シリーズとなります。
お楽しみいただけますとうれしいです。

それではどうぞ。


1、
「はい、おしまいです」
私は患者さんの肩に打ち込んだ針をはずしてそのあとを消毒する。
「いやぁ、肩がずいぶん軽くなったよ。さすが馬(マー)先生のは本場大陸の鍼ですな」
患者さんが治療の終わった肩をぐるぐると回し、にこやかに肩こりが解消したことを伝えてくれる。
「あら、私は日本で開業してますから、もちろん日本の資格を得てますのよ。ですからどちらかというと日本鍼だと思いますわ」
これは本当のこと。
確かに基礎は大陸で身につけたものだけど、こうして日本で暮らすにあたって、日本で本格的に学んだことも多いのだ。
「本当ですか? いやぁ、でもそこらの鍼師とは違いますよ。実際先生にやってもらえば肩こりが一発で治りますからな」
太ったお腹を揺らして豪快に笑う患者さん。
どこぞの会社の社長さんって言う話だけど、こうして話している分には気のいいおじさんと変わらない。
「ありがとうございます。でも、鍼は気持ちの問題も大きいんですよ。お客様が私を信頼してくださっているからこそ、効果も大きいんですわ」
私はシャツを着ている患者さんにワイシャツを渡して着替えを促す。
おしゃべりもいいんだけど、次の患者さんが待っているのだ。
「そうなんですかねぇ。や、どうもありがとうございました。また寄らせてもらいますね」
「はい、ありがとうございます。」
私はにこやかに患者さんを送り出すと、次の患者さんを呼び込んだ。

「ふう・・・」
ようやく最後の患者さんを送り出したらもう八時。
遅くなってしまったわ。
芙美(フーメイ)が待っている。
早く帰らなくちゃ。
私は治療院の入り口を締めると、裏にある家に帰る。
この距離の近さだけは救いだわ。
でも、このぐらいの時間までやらないと患者さんは来てくれない。
会社帰りの方や、場合によっては残業を抜け出して来てくれる方もいる。
本当はもう少し早く閉めたいけれど、それでは食べて行くことができない。
「ふう・・・」
先ほどとは違う意味のため息が出てしまう。
日本で暮らすのは大変だわ・・・

「お帰りなさい、お母さん」
「ただいま芙美、いつも遅くなってごめんね」
玄関まで出迎えてくれた娘を私は抱きしめる。
まだ小学校3年生の娘を一人で留守番させておくのはとても忍びない。
でも、芙美は気にする様子もなくお手伝いもしてくれる。
なんてありがたいことだろう。
「待っててね、すぐにご飯の支度するからね」
「うん、芙美も手伝う」
「ありがとう。じゃ、さっさとやっちゃいましょう」
私は芙美をつれて家の中へと入っていく。
今日も一日が無事に終わった。

「はい、次の方どうぞ」
いつものように治療を終え、次の患者さんを呼ぶ。
すると、二人のグレーのスーツ姿の男性が入ってきた。
その胸に何か重そうなものが入っているのが一目でわかる。
「くっ」
私はとっさに腰を浮かすが、二人は黙って身振りで座るように促した。
「馬女士(ニュシー:女性に対する尊称)ですな。今日の診察は終わりです。われわれといっしょに来ていただきましょう」
「まさかここまで・・・お願い・・・どうか見逃して」
「そうはいきません。あなたはわれわれの一員ですからな。おとなしく来てください」
二人は鋭い眼光で私をにらみつける。
仕事に命を賭けている男達だ。
二人を相手にするのは容易ではない。
でも・・・
私はそっと針に手を伸ばす。
「おっと・・・下手な真似はしないほうが身のためですよ。お嬢さんがどうなってもいいのですか?」
私は全身に冷水を浴びた思いがした。
まさか芙美が・・・
まだ学校では?
「われわれの仲間が見張っています。いつでもお嬢さんは拉致することができますよ」
「くっ・・・」
私は唇を噛んだ。
こんな場所でひっそりと暮らしていれば見つからないと思っていたのに・・・
そこまでして私を・・・
「では、来ていただけますな? 馬女士」
「わかりました・・・」
私は従うしかなかった。

                   ******

車に乗せられた私が連れてこられたのは、とある高級マンションだった。
街中の一等地にあるセキュリティ完備のすばらしいマンション。
あこがれる人も多いかもしれないが、今の私には無理やり連れてこられた牢獄に過ぎない。
エレベーターに乗せられた私は上層階の一つで下ろされる。
そしてそのうちの一室に連れて行かれた。

コンコンとノックの音が響く。
「馬女士をお連れしました」
インターホンに向かってつぶやくように言う灰色のスーツの男。
もう一人はピッタリと私の背後に立っている。
いつでも私を撃てる態勢にいるのだろう。
『入れ』
インターホンから声がして、男がドアを開ける。
「入れ」
促されるようにして私はその室内に入り込む。
床には絨毯が敷かれ、日本だというのに靴を脱ぐようにはなっていない。
そのまま入れということなのだ。
私は仕方なく足を踏み入れる。
芙美が人質となっている以上、私に選択の余地はない。

「ニイハオ、ようこそ同志馬美華(マー メイファ)」
奥の部屋、壁際に設えたデスクの向こうに座っている男が顔を上げる。
背後にはこちらをにらみつけてくる虎の旗。
男は多少やせ気味の躰をビジネススーツに収め、口元には柔和な笑みを浮かべるものの、射るような眼差しで私を見ていた。
「こんにちは。馬美華です。何か私に御用でしょうか? あいにく出張治療はおこなっていないのですが」
私はわざとに名前を日本語読みして、皮肉っぽく言ってやる。
この程度のことはしてもいいだろう。
「ふむ・・・それほど捨てたきた国は嫌いかね? 君の故郷だろう」
「私には思い入れのない故郷ですので」
机にふんぞり返って私を見上げる男に、私は嫌悪感しか抱けない。

「おい、この方は・・・」
私の背後にいた男達の一人が口を挟む。
「いい、いい、この女は私が何者かぐらいは知っているよ。なあ、馬女士」
当然ここへ私を連れてくるぐらいだもの、この男が組織の一員であることは疑いないし、背後の旗から見て老虎(ラオフー)会の幹部であることは一目瞭然。
「それで、私に何の用なのですか?」
私は彼らの会話を無視して用件を聞く。
どうせろくでもないことに決まっているけど、今の私は聞かざるを得ない。
ふう・・・
もう一度身を隠すにはどうしたらいいかしら・・・

「馬女士、君は“犯罪教授”と呼ばれる人物を知っているかね?」
「犯罪教授?」
なにかしら、そのふざけた名前は。
まるでフィクションから出てきたような名前みたい。
「そう・・・犯罪教授だ。最近あちこちで名前を聞くことが多くなっているのだが、知らないかな?」
「いいえ、聞いたことありません」
私は素直に首を振った。
犯罪教授など聞いたことがない。
「ふむ・・・最近ネットなどでは結構名が知れているのだがね。新聞にもちらほら名前が出ているようだが」
上目遣いに私を見上げてくる男。
いやらしい目つきだわ。
「あいにくネットはやりませんので」
家にパソコンはあるけど、ネットはほとんどやっていない。
治療院の会計などに使っているだけ。
たまに芙美と一緒に見ることもあるけど、犯罪がらみなど見たりしないし・・・

「まあ、いい・・・最近その犯罪教授に教えを請おうというけしからん連中が、本国内にも出始めたのだ」
「教え?」
「そう。犯罪教授は自分では何もしない。せいぜい部下を使って強盗や殺人をやるぐらいだ。むしろ奴はその知能を持って犯罪の教唆をおこなう。だからこそ犯罪教授と呼ばれるのだ」
苦々しい口調で男が言う。
どうやらその対応に苦慮しているというところか。
だが、どうして?
「奴は最近本国の富裕層からの依頼を結構受けている。他人を蹴落として這い上がってきた奴らだ。犯罪すれすれのことをやるぐらいはどうってことないのだろう。だが、それによってわれわれのビジネスに問題が起こるのはまずい」
「ビジネスに?」
「そうだ。奴らは今までわれわれが築き上げたバランスを崩しかけている。それはわれわれにとっては面白いものではない」
なるほど・・・
今まではそれぞれの組織を通して行っていたことを、犯罪教授の力を借りることで、彼らは自前で行い始めたということか・・・
組織に流れ込むはずの金が流れてこなくなるのは、組織にとっては死活問題。
何とかその影響を食い止めようというのだろう。

「そこでだ・・・君には犯罪教授と直接接触をしてもらいたい」
「直接接触?」
どういうことだろう・・・
「そうだ。犯罪教授の知能は並みじゃない。できればわれわれで確保したいが、それが無理な場合は・・・」
「無理な場合は?」
「抹殺しろ」
私はため息をついた。
私が呼び出された以上、そう言われることはわかりきっていたのに・・・
「なぜ私なのですか? 私は組織を捨てた身です。他にも暗殺を専門とする人間はたくさん・・・」
「数人送り込んださ。接触のために君以前にもな。だが・・・」
「だが?」
「誰一人帰ってこなかったよ。いずれもが行方不明だ。おそらく返り討ちに遭ったのだろう」
「まさか・・・組織のその手の人間を?」
私は驚いた。
だが、目の前の男の表情を見れば、それが嘘ではないことが理解できた。

「犯罪教授がどこの誰かはわかっているのですか?」
ターゲットがわからなくては話にならない。
だが、男は首を振る。
「確証を得るまでには至っていない。だが、少なくとも、ここにいることだけはわかった」
一枚の写真が私の前に放られる。
「女子高?」
「そうだ。君には組織の伝手を使って臨時職員として赴任してもらおう。そこにいる誰が犯罪教授なのかを確認して接触するんだ。そして場合によっては始末しろ」
私はもう一度ため息をついた。
拒否することなどできはしない。
芙美のためにも、私はここへ行くしかないのだった。

                   ******

「おはようございます、馬先生」
「おはようございます」
「おはよう、ちゃんと朝食は食べてきた? 朝食抜きはだめよ」
私は苦笑しつつ、廊下ですれ違う生徒達と朝の挨拶を交わす。
国では先生とは男の人に対する尊称であり、女性に対しては使わない。
だが、ここは日本。
どこをどう操作したのかわからないが、私はこの学校の臨時養護教諭ということで赴任した。
以前勤めていた本当の養護教諭がどうなったかは私は知らない。
あんまり知りたいとも思わない。

「いっけない、遅刻遅刻ぅ」
「廊下を走っちゃだめよ。転んで怪我しないでね」
あわてて廊下を走っていく生徒に私は注意する。
以前叩き込まれた組織の特務としての習性が、私を養護教諭として違和感無く見せてくれている。
ふう・・・
それにしても・・・
本当にこの学校に“犯罪教授”とやらはいるのだろうか。
ここにいるのは600名ほどの女子生徒たちと、60名近い教職員。
その中に犯罪教授がいるとして、それは一体誰なのか。
接触しようと探った私の前任者達は、ここにいるらしいことまで突き止めたあとで全員が行方不明になっている。
ということは、逆に考えればここにいる可能性は高いということになる。

ふう・・・
私は保健室に入り込んで扉を閉める。
養護教諭のいいところは、普段は授業などを受け持ったりしないところ。
その代わり、いろいろな細かい仕事は多いんだけど、それでも保健室で一人になれるというのはありがたい。
私はとりあえず職員名簿と生徒達の名簿に目を通す。
こんなものを見ても意味はないけど、まあ、見ないよりはマシでしょう。
それにしても・・・
芙美さえ取り戻すことができれば・・・
こんな気の進まないことをする必要もないのだけど・・・

コンコンとノックの音が響く。
「どうぞ」
私は入り口に向かってそう言った。
「失礼します」
少し青い顔をしたセーラー服の少女が入ってくる。
またも私は苦笑した。
ここは女子高。
いつもの治療院ではないのだ。
セーラー服の少女が入ってくるのは当たり前ではないか。
「どうしたの?」
「すみません。朝からちょっと具合が悪くて・・・」
私はそう言う少女を椅子に座らせて額に手を当てる。
「熱はないようね。貧血気味とかある?」
「少し・・・」
「そう・・・だったらベッドで少し寝ていきなさい。一時間目はお休みしちゃいなさい」
私は多少強引に少女を寝かせることにする。
さっさと仕事を終えて芙美を取り戻すのだ。

「これを飲むと少しは楽になると思うわ」
私は薬棚から薬ビンを一本取り出す。
そこからシロップ状の液をスプーンにとって少女に渡す。
「これは?」
「漢方薬を液状にしたものなの。貧血には効くわよ」
私はできるだけさりげなくそう言った。
幸い私が大陸系の人間であることは紹介のときに言われたので、漢方に詳しいと思われてもいるはずだ。
「ん・・・」
少女は一息でスプーンの液を飲み干す。
ごめんね。
それは貧血に効く薬ではないの。
これから私が仕事をする上で、あなたに眠ってもらいたいためのお薬なのよ。

「すう・・・すう・・・」
薬を与えて十分。
少女は深い眠りについている。
私は机のところから立ち上がると、カバンから針を取り出した。
そして眠っている少女のところへ行き、少し着ているものを緩めさせた上で数ヶ所に針を打つ。
これこそが私の仕事。
尋問と暗殺を教え込まれた私の仕事なのだ。

「ん・・・」
少女の寝息が少し乱れる。
「聞こえますか? 聞こえたら返事をしなさい」
「は・・・い・・・」
少女は眠りながらそう答える。
問題はない。
「よろしい。あなたの名前は?」
先ほど保健室の利用者名簿に名前を記入してもらったけど、これで嘘かどうかが判別できる。
私の鍼で嘘をつける人間はいない。
「の・・・野川由美香(のがわ ゆみか)です・・・」
名簿と違わない。
偽名は使っていないということ。
まあ、普通の女子高生が偽名を使うわけもないけど。
「では、由美香さん、私の質問に答えなさい」
「はい・・・」
「犯罪教授というものを知ってますか?」
「はい・・・」
「どこで知りましたか?」
「テレビで知りました・・・」
もし誰か見ていたら、普通に私たちが会話していると思うだろう。
でも、少女は眠りの中。
起きたときには記憶はない。

「その犯罪教授がこの学校にいるということは知っていましたか?」
「いいえ・・・知りません」
「あなたから見て、もしかしたら犯罪教授かもしれないと思われる人はこの学校におりますか?」
「いいえ・・・おりません」
即答か・・・
怪しい人物らしき影は見えないということか。
まあ、当然でしょうけどね。
私はその後も二三質問したあとで彼女から針をはずす。
この娘は何も知らない。
でも、これをいくつか繰り返せば、犯罪教授の影を掴むことができるかもしれない。
だが、それ以上に、犯罪教授そのものが探られていることを感じて動き出す可能性が高いだろう。
それこそが狙い。
だから、多少怪しい行動だと思われても構わない。
動いてくれたほうが対処もしやすいのだから。

「ん・・・」
少女が目を開ける。
「あら、起きた? よく寝ていたようだけど調子はどう? もうすぐ一時間目が終わるけど、戻っても平気?」
「えっ? あ、は、はい。大丈夫です。なんだかすごくすっきりしました。ありがとうございます」
気分のいい目覚めだったのだろう。
彼女はとてもいい表情をしている。
まあ、尋問後に少し針でツボを刺激してあげたのが効いたんでしょうけどね。
私は頭をペコリと下げて保健室を出て行く少女を見送った。

                   ******

「ふう・・・」
またしても私はため息をつく。
手がかりなし・・・
あれから一週間にもなるというのに、犯罪教授の影さえ見ることができない。
すでに針を使って尋問した人数は20人近い。
教職員も生徒もおこなっているが、そのいずれもがニュースやネットで犯罪教授を知っているに過ぎなかった。
それはある意味予想通りだったけど、犯罪教授側からの動きもないのだ。
もちろん私が針を使って尋問しているなどということは、そうはわからないだろう。
でも、臨時の養護教諭が何か怪しげな行動をしているというのは掴んでいるはずだ。
そうでなければ犯罪教授などとご大層な名前を名乗るには役者不足というものだろう。

できれば早く動いて欲しい。
いつまでもここで養護教諭の真似事をしているわけにはいかないわ。
芙美を早く迎えに行きたい。
毎日電話で話してはいるものの、芙美に会うことは許されない。
奴らの手の内に隔離されているのだ。
聞きわけがいいあの娘は今のところおとなしくしてくれているけど、そろそろいつもの学校に行きたいのは間違いないだろう。
一刻も早くこの仕事を終えて、芙美を迎えに行ってやらなければ・・・

「失礼します」
一人の生徒が保健室に入ってくる。
「あら、どうしたの?」
私は椅子を回して入り口のほうを向く。
入ってきたのは肩口までの茶色の髪にくりくりとした瞳の可愛らしい少女だった。
「なんだか朝から調子が悪くて・・・少し休ませてもらえませんか?」
「そう・・・顔色はそう悪くないようだけど、熱はありそう?」
私は立ち上がって女生徒のところに行く。
無言で首を振る女生徒の額に私は手を当ててみた。
「確かに熱はなさそうね。いいわ、少しベッドで寝ていきなさい」
私はいつものようにベッドを勧め、薬ビンからスプーンに薬を取った。
「これを飲むといいわ。漢方薬だけど楽になるわよ」
どうせたいした情報はつかめないだろうけど、情報収集は欠かせない。
彼女は黙って薬を飲むと、利用ノートに名前を書いてベッドに入る。
二年D組の案西響子さんか・・・
犯罪教授について何か知っているかしら・・・

すうすうと気持ち良さそうな寝息が聞こえてくる。
私は仕事をこなしながらベッドにチラッと目をやった。
あどけない寝顔。
まだまだ彼女達女子高生は幼さが残っている。
可愛いものだわ。
そろそろいいかしらね。
私はカバンから針を取り出すと、静かにベッドに近づいた。
  1. 2010/08/17(火) 20:34:15|
  2. 犯罪教授響子様
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パン工場

昨夜はF谷様とVASLによるASL-SK対戦を行いました。
VASLですと、遠く離れた方とも対戦ができるので、本当に便利ですよね。

対戦したシナリオはS18「BAKING BREAD」
オペレーション誌に掲載された追加シナリオです。
大砲がでてくるので、SK#2レベル。

このシナリオは、1942年の10月のスターリングラードでの戦いの一局面で、「第二パン工場」をめぐる独ソの戦いを模したものです。
攻撃側の独軍をF谷様が、私が守るソ連軍を担当いたしました。

S18途中
画像は第三ターンのソ連軍の増援がでてきたあたり。
マーカーを消したり隠匿状態の砲を見える状態にしてあったりします。
水色が独軍、茶色がソ連軍です。

独軍の勝利条件は、画面上部側の茶色い458ユニットが上下に並んでいる建物(パン工場)を終了までに奪うと言うもの。
ソ連軍は最後まで守りきれば勝利です。

F谷様の独軍はわりと腰をすえての撃ち合いを選択して来ました。
こちらとしてはじわじわと前進してこられるのがいやだったので、パン工場への接近が遅ければ遅いほど助かると感じておりました。
街路を挟んでの建物同士の撃ち合いでは、そうそう被害はでません。
それでも独軍の強力な火力に、ソ連軍は押されます。

10-0指揮官は特別ルールのコミッサールで、このコミッサールといっしょにいれば回復が非常にしやすくなるというものなのですが、回復させた分隊を前線に戻したあと、単独でいたのが間違いでした。
独軍に白兵戦を挑まれてしまいあっけなく除去。
守りの要ともいえるコミッサールの損失で、盤の下側は独軍に制圧されてしまいます。

ですが、射撃戦を多用していたため、独軍の接近は緩やかにならざるを得ませんでした。
最終ターン直前でもパン工場には無傷の458ユニットが陣取り、独軍をにらみつけます。
やむを得ず独軍は最終ターンに全面突撃を刊行。
多くの部隊を失いつつも、ついにパン工場に取り付き白兵戦に持ち込みます。
この白兵戦に独軍が勝てば独軍の、ソ連軍が生き残ればソ連軍の勝利と言う状況に。

最後は独軍のサイの目がふるわずにソ連軍が生き残り、ソ連軍の勝利となりました。

ぎりぎりの勝利ですけど、何とか勝つことができました。
次回もがんばるぞー。

それではまた。

PS:明日明後日の二日間で、丸五年連続更新&230万ヒット記念第二段として、久しぶりの「犯罪教授響子様」シリーズの新作を投下します。
お楽しみに。
  1. 2010/08/16(月) 21:25:15|
  2. ウォーゲーム
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65年目の終戦記念日

今日は65年前の昭和20年(1945年)に、連合軍のポツダム宣言を受諾する旨の天皇陛下よりのお言葉が、玉音放送として国民に放送された日です。

現在では終戦記念日として国民に周知されておりますが、以前にも言ったとおり、実際の終戦は降伏文書に調印した9月2日ですので、この日以後もソ連とは千島や樺太、満州等で戦いがおこなわれるわけですけれども、日本政府としてはこの玉音放送の日である8月15日をもって終戦の日としているわけですね。

この日に向けてテレビではいろいろと放送をしておりますけど、やはり年を経るごとに戦争の知識と言うか、戦争をしたことすら知られていない割合が増えているのは仕方ないのかな。
いろいろと問題もあるのかもしれないけれど、きちんと戦争のことを伝えていくことは必要なんだと思います。

今日は短いですがこんなところで。
それではまた。
  1. 2010/08/15(日) 20:06:12|
  2. 日常
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主力より多いとは

第二次世界大戦時、アメリカ軍は陸軍歩兵の主力小銃としてM1ガーランドと通称される半自動小銃を採用しました。
M1ガーランドは優秀な小銃で、陸軍兵士の主力小銃とするには充分な能力を持つ銃でしたが、残念なことに重量が4.3キロと重く、負担が大きいのが難点でした。

一方、アメリカ陸軍は機関銃チームの要員や後方地域の警備に当たる部隊、さらに下士官用の自衛火器としてある程度の威力を持つ小火器を求めておりましたが、威力的な面は充分でも、やはり重量の点でM1ガーランドを使用すると言うことはできませんでした。

とはいえ、拳銃では威力に問題があり、短機関銃では射程距離が短くまた重量もあり、なかなかこれはというものがありません。
そこで、アメリカ陸軍は新たに軽量の小銃とも言うべき小火器の試作を命じました。

この試作命令に対し、銃器メーカーのウィンチェスター社が提出した試作銃は、小動物狩猟用に開発された小型のライフル弾である.30カービン弾を使う小型ライフルとも言うべきものでした。
この小型ライフルは、優秀な成績をおさめたので早速陸軍に採用され、「M1カービン」として量産が開始されます。

カービンとは騎兵用の銃のことですが、上記のとおりM1カービンの開発経緯は騎兵用の銃ではありません。
ですが、小型銃としてカービンの名前を付けられたのでしょう。

M1カービンはM1ガーランドに比べて、全長で約20センチほど短く、重量はなんと2.5キロほどと2キロ近くも軽いのが特徴でした。
弾の口径は7.62ミリと変わらないのですが、弾薬全体の大きさは小さいため威力は弱いものでしたが、それでも拳銃弾なんかよりは圧倒的に威力が大きく、300ヤード(約270メートル)先でも充分に殺傷能力があるものでした。

M1カービンは、アメリカ陸軍の求める軽量の自衛用火器としての能力を充分に備えており、さらに近距離では小銃に劣らぬ威力を有する火器として重宝されることになりました。
また、全長の短さと軽さは、取り回しやすく使いやすいという利点を生み、近距離での戦いとなる市街戦ではとても便利であることもわかりました。
そのため大量生産がおこなわれ、一説によるとM1ガーランドよりも多い630万丁ものM1カービンが第二次大戦中に作られたと言います。
(M1ガーランドは550万丁)

M1カービンは上級将校の自衛用としても使われ、写真などではM1カービンを持ったアメリカ軍の将官もよく見ることができます。
映画やテレビでも士官や下士官が持っている銃はだいたいがこのM1カービンだったりしますので、皆様も目にしたことが多いのではないでしょうか。
M1ガーランドは弾倉が銃の中に納まってしまいますが、M1カービンは15発入りの弾倉が銃の下に突き出ているので、見分けやすいとは思います。
cl-z00001tle.jpg

M1ガーランドと比べ軽量なM1カービンは、当時の小柄な体格の日本人でも充分に使いこなすことができたらしく、鹵獲したM1カービンは日本軍でも好まれたといいます。
今でもアメリカではM1カービンの改良型や狩猟型が作られており、息の長い銃として各地で使われています。
主力の小銃よりも量産されたというのがすごいですよね。

それではまた。
  1. 2010/08/14(土) 21:33:53|
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空母ガムビアベイ

またしても最近となっては手に入りづらい本の紹介となりますが、こちらをご紹介。

ガムビアベイ
学研M文庫の「空母ガムビアベイ」です。

これは従軍記者の方が書いた本ですが、珍しいことに一隻の空母を、しかも大型の正規空母ではなく一年間で五十隻もが作られたと言うカサブランカ級護衛空母、その中の一隻である「ガムビアベイ」(日本ではわりと一般的にはガンビアベイとされてますが、本の表題に合わせました)にスポットを当てた本となってます。

多くの戦記ものは、そのときどきの艦隊戦などに焦点が当てられたりするので、個艦を取り上げると言うことは少なく、またあったとしても、その多くは戦艦や正規空母などが取り上げられてます。
なので、日本語に訳されたものでアメリカ海軍の単艦でしかも護衛空母を取り上げたこの本は、本当に珍しいものではないでしょうか。

この本には「ガムビアベイ」に乗り組んだ多くの人の名前がでています。
艦長をはじめ、機関長、航海長、飛行長、さらには各大尉中尉少尉などの士官や下士官など、そういった人たちが小さな空母である「ガムビアベイ」を戦える空母として運用しようと働いてます。

面白いエピソードが、この「ガムビアベイ」の最初の艦長であるグッドウィン大佐で、彼は新造される空母「ガムビアベイ」の予定艦長名のところにあった他人の名前を消し、自分の名前を書き込んだというのです。
もちろんすぐに元の名前に書き直されるわけですが、グッドウィン大佐は翌日もその翌々日も他人の名前を消しては自分の名前を書いていきます。
そしてついに三ヵ月後、彼の名前はもう他人の名前に書き直されることはなくなり、見事に「ガムビアベイ」の艦長職を手に入れたと言うのです。
このエピソードを読んだとき、なんというかアメリカって国はすごいなぁって気がしましたね。

ストーリーはこの後「ガムビアベイ」が訓練を経て実戦に参加していくわけですが、やがてフィリピンでの「サマール島沖海戦」へと収束していきます。
そして日本海軍の戦艦巡洋艦隊による砲撃を受け、「ガムビアベイ」は沈んでいくのです。

久しぶりに読み返したくなりました。
護衛空母というものを知る上でもいい本だと思います。
手に入れられるようであれば、手に入れてみてもいいのではないでしょうか。

それではまた。
  1. 2010/08/13(金) 21:10:49|
  2. 本&マンガなど
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重宝されたロバ

1941年6月22日。
ドイツ軍はヒトラー総統の命の下、「バルバロッサ作戦」を開始してソビエト連邦へと侵攻いたしました。

開戦当初は華々しい戦果も上げ、順調に進撃を果たしたドイツ軍でしたが、やがて秋が来ると、思わぬ敵に悩まされることになりました。
ソ連特有の泥濘です。

「スプーン一杯の雨が、バケツ一杯の泥になる」とまで言われたソ連の泥濘は、秋の雨により瞬く間にソ連の主要道路を泥の海にしてしまいました。
粘りのある泥は歩兵のブーツを抜けなくし、トラックの車輪はうずもれて回転しても進むことができません。
かろうじて動くことができたのは、履帯で動く車両のみでした。
つまり、戦車などの装甲戦闘車両か、ハーフトラックだけだったのです。

どこの軍隊とて近代戦は補給がなければ戦えません。
独軍の場合は、その補給は鉄道とトラックが主たる輸送機関でした。
しかし、泥濘はトラックを動けなくしてしまい、前線部隊には補給がほとんど届きません。
補給がなければ兵器も兵士も戦えません。
ソ連軍の危機を救ったのはこの泥濘だったとも言われるほどです。

冬になって気温が下がれば、泥濘は凍結してまた車両が走ることができるようになります。
しかし、春にはまた気温が上がって泥濘が復活。
この泥濘との戦いが独ソ戦の特徴でもありました。
お互いに泥濘期には動きが取れなかったのです。

ですが、動きが取れないといって手をこまねいているわけにはいきません。
兵士はその場にいるだけでも食料が必要ですし、兵器には弾薬や燃料が必要です。
常時補給を絶やすわけにはいかないのです。

そこで独軍は、泥濘でも行動できるハーフトラックに目をつけました。
ハーフトラックで物資を運べば、泥濘期でも物資補給が可能と考えたのです。

しかし、独軍の装備するハーフトラックは、基本的に大砲の牽引車か、歩兵を輸送する装甲ハーフトラックでした。
能力は高いのですが、量産するにはコストも時間もかかるものだったのです。

物資を運ぶためのいわばトラックにそれほどコストも手間もかけられません。
要は泥濘でも動ければいいのです。

そこで独軍は、トラックの後輪を履帯にするだけでいいと考えました。
そうすれば簡易型のハーフトラックになるので、物資輸送に使うにはちょうどいいと考えたのです。

そうして作られたのが、「マウルティア」(ロバ)でした。
マウルティアは、まさにトラックの後輪部分に履帯を取り付けただけのようなものでした。

マウルティア

独軍の軍用トラックを作っていたメーカー、オペル社、ドイツフォード社、マギルス社が、自社のトラックをベースにマウルティアを作りました。
かつて日本ではバンダイが1/48で模型を出したので、オペル社のマウルティアが有名ですが、数量的にはドイツフォード社のマウルティアが一番多く、14000両も作られました。
(オペル社は4000両、マギルス社は2500両と言われます)

マウルティアは、秋や春先の泥濘期でも今までのトラックよりはるかに問題なく行動できました。
マウルティアのおかげで、独軍はかろうじて各部隊に最低限の補給をおこなうことができました。
まさに独軍にとっては重宝されたロバだったのです。

マウルティアはその行動力を買われ、荷台に機関砲を積むなどして簡易対空自走砲として使われたりもしました。
また、後期には車体に薄い装甲板を張り、ロケット砲を搭載した自走ロケット砲としても使われました。

マウルティアは簡易的な車両ではありましたが、そのもてる力を存分に発揮した、働いた車両だったと言えるでしょう。

それではまた。
  1. 2010/08/12(木) 21:32:01|
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日本海軍唯一

日露戦争後、日本海軍においては北洋における警備の重要性を認識しておりました。
しかし、冬季において結氷するような場所で行動できる砕氷船を装備しようというまでには、なかなか至りませんでした。

しかし、大正9年(1920年)の3月から5月までの間に起こったアムール川河口の港町ニコラエフスクでの日本守備隊及び日本人居留民への襲撃事件、いわゆる「尼港事件」の際に、日本海軍が結氷したニコラエフスク港近辺で行動できる艦艇を持たなかったために救援ができなかったことから、氷海で行動できる砕氷船を建造しようという気運が沸き起こります。

そのため急遽1920年度予算の中から給油艦の建造を取りやめ、その予算を砕氷艦建造に振り分けられることになり、建造されたのが「大泊」でした。

IJN_ice_breaker_ODOMARI_in_1921.jpg

大泊は、終戦に至るまで日本海軍が保有した唯一の砕氷艦でありました。
基準排水量は2300トンほどとそれほど大きな艦ではなく、全長も60メートルほどでしたが、特徴的なのはその船体幅であり、なんと15メートルもあるというずんぐりした船型でした。

石炭ボイラーを使ったレシプロ機関を搭載し、最高速力は13ノットから14ノットほど。
砕氷能力は最大で2メートルの厚さの氷を割ることができるとされましたが、実際はそこまでの能力は無かったといわれます。

8センチ砲を一門備え、大正10年(1921年)11月に竣工。
以後は北洋での行動を一貫して行い、警備や測量、さらには輸送等さまざまに使われました。

太平洋戦争中も北洋警備に任じ、終戦近くまで中立だったソ連の船舶の臨検などを行ったりもしたといいます。

大泊は幸運なことに終戦時まで生き残り、昭和20年(1945年)9月に除籍となりました。
その後復員船としての使用や砕氷能力を生かした海上保安庁の北洋巡視船としての使用も考慮されましたが、船体や機関の傷みが激しく、再利用はされぬまま昭和24年(1949年)に解体となりました。

大泊は、たった一隻しかない日本海軍の砕氷艦として、地味ながらその任を最後まで果たしました。
おそらく大泊で得た技術的運用的なノウハウは、現在の南極観測船二代目「しらせ」にまで受け継がれているのではないでしょうか。
あまり知られていない艦艇ですが、貴重な存在の艦だったのだと思います。

それではまた。
  1. 2010/08/11(水) 21:21:21|
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カーンの逆襲

昨日は一日で北海道勢が甲子園から姿を消してしまいました。
どちらかは残ってくれないかなぁと期待していたものの、両校ともに一回戦で敗退してしまうとは・・・orz

今日は届き物が二件。
一つはこれ。

tamiyanews496.jpg
タミヤニュースの496号です。
すごいですね。
あと四冊で500号ですよ。
41年と8ヶ月ですよ。
信じられないですよねー。

今回も当然ながら模型情報がたくさん。
ラジコンで1/35のパンターとT-34/85が出るんですね。
なんと、赤外線発光システムと受光システムを搭載し、射撃戦ができるんだそうですよ。
音も出るんだそうですよ。
もうなんと言っていいやら。
すごいですねぇ。

あとはTVチャンピオンなどでも有名な山田卓司氏による新発売の「BT-7」の情景写真なども載っています。
これはタミヤ様のホームページにはカラーで載っているので、そちらを見るのもありでしょう。

巻末のカラー塗装図は、オーストラリア空軍のスピットファイアマーク8。
1945年のオランダ領東インドとのことですので、敗走する日本軍の上空を飛んでいた機体でしょうか。

もう一つはこちら。

カーンの逆襲
ヤフオクで手に入れました、ツクダホビーから出ておりましたシミュレーションゲーム、「スタートレック2 カーンの逆襲」です。
1983年発売という古ーいゲームですけど、シュリンク未開封の新品がかなりの低価格で出ていたので、手に入れちゃいました。
中身も問題なく、まっさらです。

どうやらこのゲームは、宇宙探索と戦闘艦同士の単艦戦闘の二種類ができるようになっているようです。
個人的には単艦戦闘を目当てで購入したので、宇宙艦戦闘をどう処理しているのか楽しみです。

今日はこんなところで。
それではまた。
  1. 2010/08/10(火) 21:31:57|
  2. タミヤニュース
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今日は長崎

今日は65年前に長崎に原爆が投下された日ですね。
どうしても広島に次ぐ二番目ということで、広島のほうが注目を集めてしまうような気がしますが、長崎もきちんと重視して語り継いでいかないとならないのだと思います。

また、今日はソビエト連邦が日ソ中立条約を破棄して満州への侵攻を開始した日でもあり、以後9月2日の終戦まで満州や樺太、千島列島でつらい戦いが繰り広げられることになったことも記憶にとどめる必要があるでしょう。

そんな中、今日は久しぶりに大学時代の友人たちと会ってまいりました。
わりと最近会った友人もいますが、数年ぶりという友人もいて、楽しく歓談して来ました。
みんな一様に歳を取ったものの、大学時代と変わらぬ話の盛り上がりで、酒が入らないにもかかわらず、いろいろなバカ話を楽しんでおりました。

今となっては連絡の取れぬ友人もおりますが、こうして会うことのできる友人は貴重ですよね。
本当にありがたい友人たちです。

今日は短いですがこんなところで。
それではまた。
  1. 2010/08/09(月) 21:06:43|
  2. 日常
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谷間で・・・orz

うーむ・・・
阪神四連敗ですか~。
やはり“死のロード”の影響が出てきているんですかね。
明日は移動日ですので、気持ちを切り替えて次に望んで欲しいです。

北海道日本ハムも楽天にやられてしまいましたね。
中田選手が楽天の田中投手から第八号のホームランで完封を阻止したとのことですが、このところのホームラン量産はすごいですね。
今後もがんばって欲しいものです。

さて、昨晩はGoma様との恒例VASLによるASL-SK対戦。
対戦しているシナリオは、S28「OUT OF LUCK」です。

大戦も末期の1945年4月26日、第10SS装甲師団「フルンズベルク」や第21装甲師団などの残余部隊が、ソ連軍の包囲を切り抜けて脱出しようというシナリオで、攻撃側(盤端脱出側)の独軍を私が、防御側のソ連軍をGoma様が担当しました。

独軍にはさすがに装甲師団の残余ということもあり、パンターG型が四両に、ヘッツァーが三両と装甲車両が充実しております。
歩兵も9-2指揮官を初めとする四人の指揮官に率いられた18個分隊。
ただし質はさまざまで、エリートから2線級までとばらばらです。

一方待ち構えるソ連軍は、IS-2が三両あり、これをダグイン配置してもいいようになっています。
ダグインされると、車体命中は無効になってしまいますので、なかなか撃破しづらい代わりに移動することができません。
ソ連軍としては難しいところでしょう。
他には122ミリ重砲が一門。
歩兵はエリートばかりが11個分隊と士気の面で有利です。

また、戦場となったのが湿地帯を含む軟弱地形の場所であり、丘の上と道路以外は装甲車両の通行が難しくなっており、ヘクスを動くたびにDRで11以上を出すと移動不能に陥ります。
これによって、独軍は進路が非常に制限されてしまいました。

現在のところまだ3ターン目の表がすんだところですが、独軍は早くも装甲車両を失いました。
まずパンター一両が、丘と丘の間の開豁地に侵入した時点で、DRで11を出してしまい移動不能に。
敵を一切射界に収めることができないため、ほぼ撃破されてしまったようなものとなってしまいました。

さらにはヘッツァー一両がIS-2の餌食となり、パンター一両もクリティカルヒットで撃破され、はてはもう一両のヘッツァーがATRでショックを受けてしまう始末。
残りはパンター二両にヘッツァー一両のみと、脱出に必要な33VPの確保が非常に難しくなってしまいました。

このまま済ませるわけにはいきません。
なんとしてもソ連軍の防衛線を突破しなくては・・・
続きは今のところ再来週。
次回はがんばるぞー。

それではまた。
  1. 2010/08/08(日) 20:19:08|
  2. ウォーゲーム
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今日から夏の甲子園

今日も暑いですね。
札幌は今日もまたじめじめしていやな天気です。
このあとは雷雨になりそうとのことで、早め更新。

今日から夏の「第92回全国高等学校野球選手権大会」が甲子園球場で始まりましたね。
また高校球児たちの熱戦が繰り広げられることと思います。

いつもながら開会式は入場行進をテレビ視聴。
今年は南からでしたので、わが北海道は最後と最後から二番目に。
小樽北照と旭川実業の二校が堂々と行進をおこなっておりました。

今年は抽選の結果、両校ともに大会三日目の8月9日に試合があります。
第三試合で小樽北照は長崎県代表の長崎日大と、第四試合で旭川実業は佐賀県代表の佐賀学園と対戦です。
ともに九州の両校との対戦は、かなり苦しいものとなるのではないでしょうか。
そしてもし、両校ともが初戦を突破するようなことになれば、今度は北海道勢同士の対戦というこれまたきびしい状況になります。
抽選の結果とはいえ、今年はなかなかにきびしいですね。

そして、今日から甲子園大会が始まるということは、必然的にわが応援する阪神タイガースは“死のロード”を迎えます。
途中大阪ドームでの試合がありますが、普段の本拠地ではないので、やはりロードと同じようなものでしょう。
かつてはこの死のロードで阪神は順位をずるずると落としていったりしたものでした。
ですが、近年はどうにか五割前後をキープして戻ってくることも多くなり、単純に死のロードとはいえなくなっているとは思います。

とはいえ、昨日今日と中日に痛い連敗。
巨人も広島に連敗したのでゲーム差は広がりませんでしたが、明日は何とか一矢報いてもらいたいものです。

一方、かつての大阪桐蔭の主砲としての力を見せ付けているのが、北海道日本ハムの中田翔選手です。
今日も楽天戦でホームランを打ち、これで三試合連続の第七号です。
膝の手術後、一軍に復帰して今が一番調子がいいのかもしれませんね。
このまま好調を維持して、後半の日本ハムの進撃の原動力になって欲しいと思います。

今日は野球ネタでした。
それではまた。
  1. 2010/08/07(土) 20:45:27|
  2. スポーツ
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また暑い日がやって来た

昨日は思わぬプレゼントに舞い上がっていた舞方ですが、一夜明けてあのプレゼントが夢ではなかったと知り、またにやけている舞方です。

それにしても今日は暑いですね。
札幌は午前9時で32度まで上がったそうで、今も私の机の上の寒暖計は気温34度をさしてます。

ここまで暑いと何もする気ありません。(笑)
もうグダグダに溶けてます。
ブログ更新もやめよっかなーとまで思ってしまいます。(笑)
SSを書こうにもキーボードを打つ手が動きませんねー。

そんな中、今日8月6日はあの太平洋戦争で広島に原子爆弾が投下された日です。
あの日から65年という年月が経ちました。

あの日も暑い日だったといいます。
今も各地で紛争が耐えません。
改めて戦争のおろかさを考えるにはいい日だと思います。
二度と核兵器が戦争で使われることのないよう祈りたいと思います。

それではまた。
  1. 2010/08/06(金) 21:16:35|
  2. 日常
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感激です!!

「美女仮面マリフィーヌ」を掲載し終えて、少しホッとしていた舞方ですが、今朝、とんでもないことが起きてしまいました。

なんとなんと、朝メールボックスを確認したところ、信じられないメールが届いていたのです。
悪女仮面マリフィーヌとなった悪堕ち後のマリフィーヌのイラストが、メールで送られて来ましたのです。
なんと言うことでしょう。
もう大感激で言葉も出ませんでした。

すぐに送ってくださった方と連絡を取りまして、ブログでの公開を許可していただきました。
皆様も素敵な悪女仮面マリフィーヌをいっしょにごらんくださいませ。

悪女仮面マリフィーヌ2

もう、すばらしいとしか言えませんね。
ボンデージ姿が最高です。
シガレットホルダーを手にしたポーズも素敵過ぎます。
ああ・・・ボキャブラリーが貧困で言葉がありません。

しかもしかも、描いてくださいましたのが、「草野ほうき」様でございます。
草野ほうき様は、先日コミックスの「ロロナのアトリエ~わたしのたからもの~」が発売されました、商業誌でもご活躍中のイラストレーター様でございます。
ご本人のブログはこちら→「SINIZON
(クリックでリンク先に飛べます)

草野ほうき様とは「Twitter」を通じての知り合いでしかございませんが、今回の「美女仮面マリフィーヌ」を楽しんでくださいまして、悪堕ち後のマリフィーヌを描いてみたとおっしゃっておられました。
もうとてつもなく感激で、言葉もありません。
物書きやっていてよかったぁ。

草野ほうき様、このたびは本当にありがとうございました。
まだまだつたない物書きですが、これからも精進してまいりますので、今後ともよろしくお願いいたします。

それではまた。
  1. 2010/08/05(木) 21:35:31|
  2. Special Thanks
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美女仮面マリフィーヌ(3)

三日連続の「美女仮面マリフィーヌ」も今日で最後です。
お楽しみいただけますとうれしいです。

それではどうぞ。


3、
「赦せない・・・やっぱりアクノー帝国の仕業だったのね。お父さん、お母さん、それに乃莉子まで・・・なんて卑怯なの。赦さない!!」
「あらら・・・なんだか知らないけど怒ってるんだ。で、赦さないなんて言ってどうするつもり? あたしたちとやりあおうっての? 言っとくけどあたしたちは強化されているから、男だって二三人程度じゃ勝てないよ」
ギリッとこぶしを握り締めてにらんでくる姉を、こともなげに見やる妹。
「乃莉子、あなたはアクノー帝国に洗脳されているのよ。待ってて、お姉ちゃんがすぐに助けてあげる」
「助けてなんて頼んでないし。洗脳なんてされてないし。これはあたしが自分の意思で行っていることよ。お姉ちゃんに邪魔されたくないな」
「せんぱーい、いつまでおしゃべりしているんですか? さっさと殺しちゃいましょうよ」
「あたしも賛成です。こいつ、うざい」
黒いレオタードに身を包んだ二人の少女も茉莉子に冷たい視線を投げつける。
「やれるものならやってごらんなさい! 着装!」
茉莉子は両手を上に掲げてポーズをとる。
すると、彼女の周りに光が渦巻き、彼女の衣服を分解する。
一瞬すべての衣服が消滅し、茉莉子の綺麗な姿を見せつけると、今度は光の粒子が纏わりついてマリフィーヌの衣装を形成していく。
一秒にも満たないうちに、茉莉子はドミノマスクにレオタード姿という美女仮面マリフィーヌへと変身を遂げていた。
「美女仮面マリフィーヌ! ここに参上!」
マントを翻してポーズをとるマリフィーヌ。
これは一連の儀式であり、これをおこなうことで、戦いに望む気構えを作るのだ。

「うそ・・・お姉ちゃんがマリフィーヌだったなんて・・・」
目の前で姉が変身したことに驚く乃莉子。
だが、すぐに口元に笑みが浮かぶ。
「そう・・・だったら手間が省けたわ。あたしたちの次の任務はマリフィーヌをおびき出すことだったんだから」
「えっ? おびき出す?」
意外な言葉にマリフィーヌは驚く。
「そうよ。カメラカメレオン様、マリフィーヌが現れました。すぐに来て下さい」
どことも知れぬ場所に向かって声をかける乃莉子。
「ケケケケケ・・・コマンドレディノリコよ、心配するな。俺様はずっとそばについていたぞ」
「「カメラカメレオン様」」
乃莉子の声に答えるように突然声がして、三人の少女達の顔に喜びの表情が浮かぶ。

「どこ? どこなの? 姿を見せなさい!」
突然の声に周囲を探るマリフィーヌ。
「ケケケケケ・・・あわてるなマリフィーヌ。可愛い顔が台無しだぞ」
「むっ!」
背後に気配を感じ、すばやく振り返る。
すると、部屋の壁の前に突然、緑と赤の体色をした巨大なトカゲ男が現れる。
その目は二つとも突き出たカメラのレンズのようになっており、額にはストロボがついている。
「あなたがカメラカメレオンね? 保護色で隠れていたってわけ?」
「ケケケケケ・・・そういうことだ。気配すら感じなかっただろう?」
大きく裂けた口でニヤニヤと笑っているカメラカメレオン。
「さすがに隠れるのはお手の物ってわけね。でも、こうして姿を現したからにはあなたなどマリフィーヌの敵ではないわ」
グッと両手を再び高く掲げ、ロッドを手にするマリフィーヌ。
そのロッドがくるくると回転し、腰のところでぴたっと止まる。
マリフィーヌのファイティングポーズだ。
「ケケケケケ・・・それはどうかな? もっとも俺様はお前と戦うつもりはない。お前の写真を撮りたいだけだ」
そう言って両目の突き出したレンズをきらりと輝かせる。
「えっ? 写真を? そうか・・・あの娘たちはお前に写真を撮られたことでこうなったのね? 赦さないわ。あの娘たちを元に戻しなさい!」
「ケケケケケ・・・そう喚くな。いい写真が撮れないではないか」
ニタニタと笑うカメラカメレオン。
「お黙り! どうしても撮りたければ実力で撮ってみせることね。行くわよ!」
ロッドを構えてカメラカメレオンに一撃を食らわせようとするマリフィーヌ。
だが、その一撃を繰り出すことはできなかった。

「見て、お姉ちゃん」
ガシャンという音がして、横合いから声をかけられる。
とっさにその声のほうを見るマリフィーヌ。
「はっ」
思わず息を飲む。
そこには砕いたガラスのコップの破片を首に当てる乃莉子の姿があったのだ。
「乃莉子・・・あなた・・・」
「んふふ・・・ねえ、お姉ちゃん。自殺って悪いことだよね。あたし悪いこと大好きなんだ。お姉ちゃんがそのままカメラカメレオン様と戦うなら、あたし自殺しちゃおっかな」
破片の先が首筋に当たり、そこからつうっと血が垂れる。
「乃莉子、やめて! あなたまで失ったら・・・私は・・・」
必死に止めようとするマリフィーヌ。
それはただ妹を心配する姉に他ならない。
「だったらおとなしくしてよ。いいじゃない。一枚ぐらい写真撮られたって」
「ああ・・・でも・・・」
ニヤニヤと笑っているカメラカメレオンに目をやるマリフィーヌ。
どういうことかはわからないが、写真を撮られてはいけないに違いない。
どうしたらいいの・・・

「ケケケケケ・・・いいねぇその憂いを帯びた表情。一枚いただくよ。はい、チーズ!」
カメラカメレオンの両目のレンズが焦点を合わせる。
「あっ、だめ!」
思わず両手で顔を覆うマリフィーヌ。
バシャッというシャッター音とともに、室内が明るく照らされる。
カメラカメレオンの額のストロボが光ったのだ。
「ケケケケケ・・・顔を覆ったって無駄なことさ。俺様のカメラは心を写すんだからな」
ストロボの残光が収まると、そこには顔を覆ったポーズのまま動かなくなってしまったマリフィーヌが立っていた。
「うまく行きましたね、カメラカメレオン様」
ガラスの破片を投げ捨て、カメラカメレオンに近づいていく乃莉子たち。
「よくやったぞ、コマンドレディノリコよ。お前のおかげでシャッターチャンスができた」
「ありがとうございます。カメラカメレオン様」
褒められたことでとてもうれしくなる乃莉子。
こんなことぐらいならお安い御用なのだ。

「んあー」
奇妙な音を立ててカメラカメレオンの口から写真が吐き出される。
「うん、よく撮れているよく撮れている」
その写真を手に思わず自画自賛するカメラカメレオン。
赤やオレンジに彩られた写真は、まさにマリフィーヌの正義の心を写し取ったものだ。
「ケケケケケ・・・コマンドレディノリコよ、そこにあるライターでこの写真を燃やしてしまえ」
「はい、カメラカメレオン様」
テーブルの上にあったライターを取り、受け取った写真に火をつける乃莉子。
火はあっという間に燃え広がり、マリフィーヌの正義の心を燃やしていく。
冷たい笑みを浮かべる乃莉子は、写真が真っ黒に燃え尽きると足元に落としてその燃えカスを踏みつけた。
「んふふ・・・これでマリフィーヌも悪いことが大好きな女になるわね」
「ケケケケケ・・・そういうことだな。おい、いつまで固まっている!」
乃莉子の足元でぼろぼろになった写真の燃えカスを見て取ったカメラカメレオンは、いまだショックで動けずにいたマリフィーヌの元へと歩み寄った。

「う・・・はっ、えっ?」
ピクッと躰を震わせて両腕を下ろすマリフィーヌ。
その目の焦点がじょじょに合ってくる。
「ケケケケケ・・・気分はどうかな、マリフィーヌ?」
なれなれしく声をかけてくるカメラカメレオンに、マリフィーヌはじろっときついまなざしを向ける。
だが、すぐにその口元には笑みが浮かんだ。
「ふふふ・・・悪くはないわ。なんだか解放されたような気分。いい気分と言ってもいいわね」
眼差しも柔らかくなり、妖艶さを漂わせ始めている。
「それで私に何をさせてくれるの? 楽しませてくれるんでしょうね?」
「ケケケケケ・・・それはキサーイ博士やコー・ワモテ将軍次第だな」
カメラカメレオンがマリフィーヌの変化に満足する。
「そう・・・じゃ、さっさとアジトへ案内してちょうだい。今日から私もアクノー帝国に参加するわ。悪いことがいっぱいできて面白そうだもの」
小悪魔のように微笑み舌なめずりをするマリフィーヌ。
そこに先ほどまでの正義のヒロインの面影はなかった。

                   ******

「なんと・・・これがあのマリフィーヌだというのか?」
「おうおう、とてもよく似合っておるわい。まさに悪の女といった格好じゃ」
コー・ワモテ将軍もキサーイ博士も目を丸くする。
「んふふ・・・ありがと」
そう言って二人の目の前に立っている女は、細長いシガレットホルダーに取り付けられたタバコを真っ赤に塗られた唇で吸っていく。
「ふう・・・うふふふ・・・いい気分だわぁ。前からこんな格好をしてみたかったのよね」
その声はまさに美女仮面マリフィーヌの声に間違いないものであったが、その姿はまったく違っている。
今の彼女は、蝶が羽根を広げたような形をした派手なバタフライマスクを顔につけ、紫色のアイシャドウをした目を妖しく覗かせている。
唇は塗れたように赤く、まるで熟れた果実のようだ。
躰には胸とおへそをむき出しにした黒エナメルのボンデージを身につけ、網タイツを穿いた脚には膝上までの黒エナメルのブーツが輝いている。
手にも黒エナメルのグローブを嵌め、先端の火の付いたタバコをさしたシガレットホルダーを持っていた。
背中には黒いマントが翻り、全体を引き締めている。
まさに漆黒の妖艶な美女であり、SMの女王様のような格好でもあった。
「まさかあの美女仮面マリフィーヌが、こうまで変わるとはな・・・」
コー・ワモテ将軍も目の前の姿に驚きを隠せない。
「確かにのう、結構いろいろと心の中に溜め込んでおったのではないかな? 今のマリフィーヌは美女仮面ではなく悪女仮面と言ったところじゃろうて」
キサーイ博士もマリフィーヌの変化に驚くとともに満足する。
カメラカメレオンはいい働きをしてくれたのだ。
これで恐るべき敵が頼もしい味方になったというもの。
アクノー帝国の未来も明るいというものだ。
「うふふふ・・・ふう・・・ええ、そうね。私は悪女仮面マリフィーヌ。これからは悪いことをたっぷりと楽しませてもらうわぁ」
美味しそうにタバコの煙を吐きながら、悪女仮面へと生まれ変わったマリフィーヌは妖しく微笑む。
「うむうむ・・・好きにするがいい」
「うふふ・・・アクノー帝国のあなたがたには感謝しているわ。私の心から正しい心などというわずらわしいものを取り去ってくれたんですもの。うそで塗り固めた以前の私はもういない。これからは思う存分好きなことをするの。まずはあの男を・・・うふふふふ・・・」

                   ******

「うわぁっ! な、なんなんだ、いったい?」
いきなり現れたバタフライマスクに黒エナメルのボンデージ姿の女性に壁に叩きつけられる白幡洋。
「んふふふ・・・こんばんは、あなた。愛する妻の顔をお忘れなのかしら?」
「ぐふっ!」
起き上がろうとした洋に、ハイヒールのブーツのかかとが腹に押し込まれる。
「ば、バカな・・・茉莉子なのか?」
「ええ、そうよ。あなたの妻の白幡茉莉子よ。こんな仮面をしているからわからなかった?」
バタフライマスクの下で冷たく微笑むマリフィーヌ。
「ど、どうして? いったい?」
「あなたのモラハラにはもう愛想が尽きたの。それに私はアクノー帝国のおかげで生まれ変わったわ。もうあなたのようなクズは必要ないのよ」
グッとかかとに体重をかけるマリフィーヌ。
先のとがったピンヒールが洋の腹部を圧迫する。
「ぐ、ぐあっ」
「あはははは・・・いい声で鳴くのねぇ。もっと聞かせてもらおうかしら」
「や、やめろ・・・こんなことしてタダで・・・」
「タダですまないのはそっちでしょ? わかっているの? 自分の立場が」
ぐいぐいとヒールを押し付けるマリフィーヌ。
「や、やめ・・・やめてくれ・・・頼む」
「やめてください・・・でしょ? クズは口の聞きかたも知らないのね」
「や、やめてください・・・」
ヒールの痛みに耐えかね、許しを請う洋。
だが、マリフィーヌは冷たく笑って言い放つ。
「い、や、よ。うふふふ・・・あんたもしかして私に踏まれてチンポおっ勃てているんじゃない?」
「ぐ、ぐはっ・・・そ、そんなことあるわけが・・・」
ヒールがさらに食い込んだことで、洋の躰に激痛が走る。
「まあいいわ。どの道あんたには死んでもらうの。最初は緑の紙を渡そうかとも思ったけれど、どうせなら夫のまま死んでもらって保険金もらったほうがいいものね」
悪魔のように冷酷な目で夫を見下ろしているマリフィーヌ。
「ま、茉莉子・・・お前・・・」
「安心して。最近はアクノー帝国の被害者にも保険金が出るのよ。事故や災害といっしょなの。あんた一人を殺したら変かもしれないけれど、このあたり一帯を殺せばアクノー帝国の無差別殺戮になるでしょ?」
「ば・・・バカな・・・」
真っ青になる洋。
この女は俺を殺すために近所も皆殺しにするつもりなのか?

「お姉ちゃん、こっちは終わったよ」
可愛らしい声がして、三人の少女達が入ってくる。
いずれもまだ高校生ぐらいの娘だが、三人ともみな黒いレオタードを着ているのが一種異様だった。
「の、乃莉ちゃん・・・」
「お義兄さんこんばんは。もうすぐさようならだね。お姉ちゃんにちゃんと殺されてね」
可愛らしく手を振ってくる義理の妹。
だが、その表情は冷たかった。
「ご苦労様、コマンドレディノリコ。それにコマンドレディミカ、コマンドレディマナミも」
振り返って三人の少女達をねぎらうマリフィーヌ。
まさに三人の侍女を従える女王といった趣だ。
「うふふふ・・・ねえ、あなた。人を殺すのって楽しいのよ。私も最近知ったの。これからはどんどん悪いことをするわ。私は悪女仮面マリフィーヌなんですもの」
「悪女仮面・・・マリフィーヌ・・・」
「ええ、そうよ。それじゃね、あ、な、た」
スッと脚を引き、そのまま洋の顔面に向かって蹴りを入れる。
後頭部が壁に叩きつけられて血しぶきが飛ぶ。
そしてそのまま胸に向かって再度振り下ろされた脚が、洋の心臓を踏み抜いた。

「うふふふふ・・・」
絶命した洋を見下ろして満足そうに笑うマリフィーヌ。
「これで私はもう自由。あとはアクノー帝国のもとで楽しく暮らすのよ。あはははは・・・」
口元に手の甲を当てて高笑いをするマリフィーヌ。
その楽しそうな笑いが、主を失った家の中で響いていた。

END


いかがでしたでしょうか?
モラハラ旦那に束縛されている人妻ヒロインを目指したんですが、あんまりうまく機能しなかったような気もします。
次回はもう少し腕を上げたいと思います。
今回もお読みいただきましてありがとうございました。

それではまた。
  1. 2010/08/04(水) 21:15:41|
  2. 美女仮面マリフィーヌ
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美女仮面マリフィーヌ(2)

「美女仮面マリフィーヌ」の二回目です。

それではどうぞ。


2、
「ん・・・」
薄暗い中で目を覚ます乃莉子。
冷んやりした空気が頬を撫でる。
腰を床に下ろして両足は投げ出されているものの、両手は頭の上で吊るされているらしく、どうやら囚われの身であることは間違いない。

「目を覚ましたようじゃな」
ぬっと姿を表す白衣の老人。
めがね型のゴーグルをかけ、頭からはいろいろな機械が突き出して明滅しているという不気味な老人だ。
「ひっ」
思わず乃莉子は声を上げる。
「怖がらんでよい。まったく、あやつは手加減を知らん」
「ふん・・・お前が女子(おなご)がいいというからこの娘を連れてきたのだ。だいたいこんな小娘をどうするつもりだ」
老人の背後から姿を表したのは、紛れも無く自分を殴ったあの甲冑を着た男だった。
「実験するなら可愛い女子のほうがいいに決まっておろうが。もしかして将軍は男の子が好みじゃったかな?」
「バカを言うでない」
ムッとした表情を浮かべるコー・ワモテ。
どうもこの老人とはウマが合わないのかもしれない。

「で、実験とは?」
「うむ、先日言っていたカメラが完成したのでな。この娘で実験してみるのじゃ」
ニタリと笑うキサーイ博士。
その様子に乃莉子は背筋が凍りついた。
「実験って、私をどうするつもりなんですか? そもそもあなたがたは何なんですか?」
「おや、気がついてなかったのかい? 我らはアクノー帝国の一員じゃ。こちらがコー・ワモテ将軍。ワシはキサーイ博士じゃ。よろしくな」
「アクノー帝国・・・そんな」
最近ニュースでもしばしば取り上げられる謎の組織だ。
さまざまな悪事をおこなう暴力集団らしいが、警察も対応できずに苦慮しているとか。
乃莉子は言葉が出なかった。

「カメラカメレオン、略してカメラオンよ、来るがいい」
キサーイ博士が呼び出すと、突然コー・ワモテ将軍の隣に緑に赤の混じった体色のトカゲのような怪人が現れる。
「何? いつの間に」
いきなり隣に現れたことにコー・ワモテまでもが驚いていた。
「ふん、最初からいたわい。こいつはカメレオンの魔怪人じゃでな、保護色で姿を消すのは得意というわけじゃ」
「ケケケケケ・・・キサーイ博士、お呼びにより姿を現しましたが、略すのはちょっと・・・」
両目がまるで一眼レフカメラのレンズのようになっており、額の位置にはストロボが、後頭部にはファインダーまでついているカメラ型の頭部を持つカメラカメレオンが膝を折る。
「ええい、お前などカメラオンで充分じゃ。さあ、お前の力を見せてみろ。この娘から道徳心や良心を写し取ってしまうのだ」
「ケケケケケ・・・お任せあれ」
カメラカメレオンはすっくと立ち上がると、怯えて身をすくませている乃莉子のほうへと近づいた。
「ああ・・・いやぁ・・・来ないでぇ」
「ケケケケケ・・・怖がることはないよお嬢ちゃん。笑って笑ってー。はい、チーズ」
バシャッというシャッター音と同時にストロボが光り、乃莉子の姿を浮き上がらせた。
「あ・・・」
その瞬間、まるで何か衝撃を受けたかのように身動きをしなくなってしまう乃莉子。
その目は焦点を失い、呆けてしまったようにも見えた。

「む? いったいどうしたというのだ?」
「まあ、黙って見ておれと言うに」
いぶかしげにする将軍を尻目に、キサーイ博士はニヤニヤと笑っている。
「んあー」
やがて妙な声を出して、カメラカメレオンの口から一枚の写真が出てくる。
それはまるでポラロイドカメラが写真を吐き出す様子にそっくりだった。
「どれどれ、うまく写っておるかの?」
カメラカメレオンの舌が伸びて写した写真をキサーイ博士に渡す。
「ふむ、これは綺麗な写真じゃ」
満足そうにカメラカメレオンが写した写真を眺めるキサーイ博士。
その様子に思わずコー・ワモテ将軍も横から写真を覗きこむ。
「こらこら、そんなことせんでもちゃんと見せるわい」
キサーイ博士が持っていた写真を手渡すと、そこには淡いオレンジ色の綺麗な球体がいくつも浮かんでいるような写真だった。
「なんだ、これは? あの娘を写したのではないのか?」
渡された写真と呆けている娘があまりにもかけ離れていることに驚くコー・ワモテ将軍。
いったいこれは何を写した写真なのだろう。

「もちろんあの娘を写したのじゃよ。どうじゃ、その写真の綺麗なこと。あの娘はとても綺麗で正しい心を持っているようじゃて」
「綺麗で正しい心? まさか・・・」
驚いたように写真を見つめなおすコー・ワモテ将軍。
「以前言ったじゃろが。昔の人間は写真を写されると魂を抜かれると言ったものだと。その言葉にヒントをいただいたのじゃ」
「するとこれは・・・あの娘の魂だとでも言うのか?」
「正確にはあの娘の道徳心や良心といった正しい心じゃな。カメラカメレオンはそれをあの娘の中から写し取ったのじゃよ」
コー・ワモテ将軍から写真を取り戻し、不気味にほくそえむキサーイ博士。
「写し取った? するとあの娘の中は空っぽになったのか?」
「空っぽではないのう。あの娘の中にあるどす黒い汚れた邪悪な心は残っておるよ。ホンのわずかしかないようじゃがな。だが・・・」
「だが?」
「今はまだあの娘に結びついているが、ここに写っている正しい心を燃やしてしまえばどうなるかのう」
「なんと・・・」
コー・ワモテ将軍は絶句する。
写し取った正しい心を燃やしてしまうというのか。
「おそらく正しい心を失ったあの娘の中では、歯止めを失った邪悪な心が膨れ上がってあの娘の心を満たすはずじゃ。そうなればあの娘は悪いことが大好きな邪悪な娘になるじゃろうて。ククククク・・・」
笑いながらポケットから百円ライターを取り出すキサーイ博士。
そして手にした写真に火をつけようとする。
「ん・・・んっ・・・んっんっんっ・・・ん?」
だが、何度ホイールを回しても火花が散るだけで、ライターにはいっこうに火がつかない。
「むぅ・・・」
あきらめて他のライターがないか白衣のポケットを探り始めるキサーイ博士。
「ほら」
見かねて自分のライターを差し出すコー・ワモテ将軍。
「ふん、あるのならさっさと出すもんじゃ」
キサーイ博士はライターを受け取ると、そのまま火をつけて手にした写真を燃やしていく。
写真は青白い炎を上げて燃えていってしまった。

「これでいいはずじゃ。おい、小娘。しっかりするのじゃ」
燃えカスとなった写真を足元に捨て、靴で踏みにじるキサーイ博士。
燃えカスとはいえ正しい心を踏みにじるというのも気持ちがいいものだ。
「ん・・・」
ぼんやりとしていた乃莉子の目が、やがて焦点をあわせていく。
「あ・・・あれ? 私・・・いったい・・・」
正気に返ったかのようにきょろきょろと周りを見渡す乃莉子。
「意識が戻ったようじゃな。どうかな、気分は?」
「えっ? あ・・・」
キサーイ博士に声をかけられ、とたんに乃莉子の口元に歪んだ笑みが浮かぶ。
「そっか、私、アクノー帝国に捕らえられていたんだっけ・・・ねえ、逃げたりしないからこの手を解いてくれない?」
「む、よかろう」
キサーイ博士が乃莉子の戒めを解いてやる。
「ありがと。ねえ、アクノー帝国って悪いことするんでしょ? 私も仲間に入れて欲しいなぁ。なんだかすっごく悪いことがしたくなっちゃった」
両手の手首をさすりながら、乃莉子は邪悪な笑みを浮かべている。
「ほう・・・なるほど・・・」
先ほどとは雰囲気が変わった少女にコー・ワモテ将軍も驚きを隠せない。
「よいのかな? いろいろと命令に従ってもらうかも知れんぞ」
ニタニタと笑っているキサーイ博士。
実験は大成功なのだ。
もはやこの娘の心は真っ黒に染まっているに違いない。
「それぐらいは仕方ないかな。でも、まずは好きにやらせて欲しいの。すっごく殺しちゃいたいやつがいるのよ。そいつらを殺せたら、とっても気持ちいいと思うんだ」
今までの乃莉子からは考えもつかない言葉が飛び出してくる。
「ほう、誰を殺したいんじゃ?」
「クソオヤジとクソババァよ。それと学校にいけ好かない先公がいるの。もうぶっ殺してやりたいわ」
苦々しく吐き捨てる少女に、将軍と博士の二人は顔を見合わせてにやりと笑う。
「いいだろう。お前の好きにさせてやる」
「本当? やったぁ」
目を輝かせる乃莉子。
「そうじゃのう。それじゃやりやすいように、お前さんの肉体を少し強化してやるとするかな」
キサーイ博士は自慢の薬品棚に手を伸ばし、一つの薬ビンを取り出すのだった。

                   ******

「離して、お願いだから離して」
腕をがっちりと掴む夫の手を振り切って外へ飛び出そうとする茉莉子。
「だめだ。どこへ行くつもりなんだ? 当てでもあるというのかい?」
今にも玄関から出て行ってしまいそうな妻の腕を、夫は掴んで離さない。
「当ては・・・当ては・・・」
はっとしたように夫の顔を見る茉莉子。
確かに当てなどないのだ。
だが、家でじっとしているなんて耐えられるものではない。
「乃莉ちゃんなら大丈夫だ。警察に任せておけばいい。どうせボーイフレンドのところにでも行っているんだろう」
乃莉子がいなくなって今日で三日目の夜になる。
その間連絡もなく携帯もつながらない。
ボーイフレンドのところ?
そんなはずあるわけがない。
最後の学園祭に向けてがんばっていたのだ。
家出なんて考えられるわけがない。
「でも・・・あの娘が三日も連絡なしだなんて考えられない。きっと何か事件に・・・」
そう・・・
事件に巻き込まれたに違いないのだ。
それがもしアクノー帝国の仕業だったとしたら・・・
「そうだとしても茉莉子に何ができるというんだ? 君は僕のそばから離れてはいけないんだ。君は僕だけの奥さんなんだよ。家族のことなんてどうでもいいじゃないか。警察に任せておくんだ」
「そんな・・・あなた・・・本気で?」
茉莉子は愕然とする。
家族がどうでもいい存在だなんて信じられない。
「あなた・・・」
「どうしても出かけるというなら離婚だよ。それは君だっていやだろう? 君は僕無しじゃ生きていけないんだからね」
冷たく笑っている夫の顔。
茉莉子は初めて夫が恐ろしく感じていた。

「ごめんなさい、あなた」
意を決して夫の手を振り解く茉莉子。
そのまま玄関へ駆け込んで靴を履く。
「な、なんだよ! ふざけんなよ! 誰がお前を養っていると思っているんだよ! そんなに家族が大事なら家族のところへ行っちゃえよ! もう帰ってきたって二度と家には入れてやらないからな!!」
夫の罵声を背中に浴びながら外へ駆け出す茉莉子。
今までさんざん尽くしてきたつもりだったのに・・・
愛されていたと思っていたのは幻想だったのだろうか。
でも、今は一刻も早く乃莉子を見つけたい。
乃莉子さえ見つかれば、洋さんに謝って赦してもらうことができるかもしれない。
茉莉子は一度実家に戻ることにする。
父と母なら何か情報を持っているかもしれない。
それがちょっとしたことで、父と母は気がついていないだけなのかもしれないのだ。
とにかく今は一度両親に会いに行こう。
茉莉子はそう思い、やって来たバスに乗り込んだ。

               ******

「ただいま、お母さん。乃莉子のこと何かわかった?」
そう言って勢いよく玄関を開けた手がはたと止まる。
何かがおかしい。
何かが変だと研ぎ澄まされた神経が感じているのだ。
明かりはついているのに静かな室内。
玄関に誰かが出てくる様子はない。
もしかして父も母も乃莉子を探しに行っているのかもしれないが、それにしては雰囲気が変だ。
茉莉子はそっと靴を脱ぐと、ストッキングの脚でそっと床を踏みしめた。

「ひっ」
思わず小さな悲鳴を上げてしまう。
リビングに入った茉莉子は、そこで床の血溜まりの中に倒れている父の姿を見つけたのだ。
「お父さん!」
思わず駆け寄って抱え起こすが、父親はすでに事切れていた。
「お父さん・・・どうして・・・」
あまりのことにショックで言葉も出ない。
無残にも首をへし折られた挙句、胸から心臓を抉り出すという凄まじい殺し方。
尋常な殺人ではない。
「いったい誰が・・・」
茉莉子はショックで胸を押しつぶされそうになりながらも、誰がこんなことをしたのか考えていた。

「あら、お姉ちゃん帰ってきたんだ。タイミング悪ーい」
背後から聞きなれた声がする。
その声に無事でいてくれたことでホッとしたものを感じたものの、とても冷たさをにじませていることに驚きも感じていた。
「乃莉子、無事だったのね? の、乃莉子?」
父親をそっと床に横たえ、立ち上がって振り返った茉莉子の目に、普段とはまったく違う乃莉子の姿が映る。
ニヤニヤと冷たく笑っているその目元には濃い目のアイシャドウが塗られ、唇には黒い口紅が塗られている。
何より衣装も普通じゃなく、黒いレオタードを着込んだ上に赤いサッシュを腰に巻き、室内だというのに黒い膝下までのブーツを履いていたのだ。
「乃莉子・・・あなたいったい・・・お母さんは? お母さんはどこ?」
「うふふ・・・あのクソババァなら二階で死んでるよ。悲鳴上げられないように最初に喉つぶしてさ。首折って心臓抉ってやった。感謝して欲しいな。クソオヤジと一緒の死に方させてやったんだからさ」
ケラケラと笑っている乃莉子。
まるでゲームでもして楽しんだかのようだ。
「乃莉子・・・」
茉莉子はあまりのことに何も言葉が出なかった。

「せんぱーい、こっちは終わりましたよ。人を殺すって楽しいですねぇ。あれ? その女は誰なんですか?」
乃莉子の背後に二人の少女が現れる。
二人とも乃莉子と同じようなレオタード姿をして、やはり冷たい笑みを浮かべていた。
「ああ、うちのお姉ちゃん。バカだよねー。こんなときに帰ってきちゃうなんてさ。あのモラハラ義兄に媚び売っていればいいのにさ」
ニヤニヤと笑いながら二人に言う乃莉子。
そこには姉に対する思いなど微塵もない。
「その二人は?」
茉莉子が乃莉子に背後の二人の事を訊く。
「んふふ・・・あたしの後輩だよ。二人ともやさしくておしとやかで反吐が出そうなぐらいいい人だったからさ。なんだかむちゃくちゃ気に食わなくなっちゃったから、カメラカメレオン様にお願いして二人のいい心ってやつを抜き取って燃やしちゃったの」
「いい心を抜き取って燃やした?」
どういう意味なのだろう?
カメラカメレオン?
まさか・・・
「そうだよ。そしたら二人ともいい感じに悪いことが大好きな娘になったから、キサーイ博士がこの娘たちも強化してくれたの。今のあたしたちはアクノー帝国のコマンドレディなんだよ」
「んふふ・・・せんぱーい、この人どうするんですか? もちろん始末するんですよね。だったらあたしにやらせてくれません? 隣の家ジジィとババァしかいなくてつまらなかったんです」
「ミカばかりずるいわよ。あたしもまだ殺し足りないんだからね」
乃莉子の背後にいる二人がペロッと舌なめずりをする。
茉莉子は唇を噛み締めた。
やっぱりアクノー帝国が絡んでいたのだ。
まさかこんなことになってしまうなんて・・・
  1. 2010/08/03(火) 21:05:56|
  2. 美女仮面マリフィーヌ
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美女仮面マリフィーヌ(1)

お待たせいたしました。
今日から三日連続でSSを一本投下させていただきます。

丸五年連続更新達成記念と230万ヒット達成記念としては、少々物足りない長さかもしれませんが、そこはどうかご容赦くださいませ。

今回のタイトルは、「美女仮面マリフィーヌ」です。
お楽しみいただければ幸いです。
それではどうぞ。


1、
「きゃぁー!!」
静かな夜の通りに悲鳴が響き渡る。
「グフフフフ・・・そう怖がることはない。俺様はアクノー帝国の魔怪人ファンダロス。俺様の腹にあるファンでお前を吸い込みばらばらにしてやろう」
目の前に現れた異形の化け物に思わず腰を抜かしてしまった会社帰りの女性に対し、なぜか犬の頭をしてお腹の真ん中を円形のプロペラ換気扇が回っているモンスターがそう言い放つ。
彼こそが地上侵略をたくらむアクノー帝国の放った魔怪人ファンダロスであり、その腹部のファンはいかなるものも吸い込んで切り刻んでしまう殺人ファンなのだ。

「い・・・いや・・・お願い、助けて」
這いずるようにして異形の化け物から距離をとろうとする女性。
着ているスーツは汚れ、穿いているストッキングも足を引きずったことで伝線してしまっている。
「グフフフフ・・・命乞いか? 無駄なことだ。さあ、俺様のファンに吸い込まれてしまうがいい」
ギューンと音を立て、ファンダロスの腹部にぽっかり空いた穴の中のプロペラが高速で回り始める。
「ああ・・・いやぁ」
たちまち周囲の空気が吸い込まれていき、女性もその勢いに吸い込まれそうになる。
路上の石などが吸い込まれ、プロペラに切り刻まれてチリになって行くのが女性の目にも見えていた。
「誰かぁ、助けてぇ!」
必死で叫ぶ女性。
だが、アクノー帝国の魔怪人の恐ろしさを知っている人々は、誰も外に出てこようとはしなかった。

「待ちなさい!」
そのとき別の声が夜空に響く。
「むっ? 何やつ?」
思わずファンダロスは犬の形の頭をめぐらして声の主を探す。
このアクノー帝国の魔怪人に待ったをかけるとは生意気なやつだ。
お仕置きをしてやらねばな。
ファンダロスはそう思う。

「私はここです。この犬頭!」
ファンダロスが声のするほうに頭を上げる。
すると、近くの五階建てほどの雑居ビルの屋上に、夜空を背景にして一人の人物が立っていた。
「むむ、貴様はまさか・・・」
暗くてその姿ははっきりしないが、ファンダロスの目にはその人物が女であるように映る。
やがて翳っていた月が姿を現してその人物の姿をはっきりと映し出すと、ファンダロスは自分の想像が悪いほうに当たったことを知った。
「ゲゲッ、貴様は美女仮面マリフィーヌ!」
そこに立っていたのは、仮面舞踏会などで使われる目の周りだけを隠すアイマスク、いわゆるドミノマスクを着け、ピンクに白のラインのレオタードを着て膝までのロングブーツを履き、白いマントを身につけた一人の女性だったのだ。

「私のことを知っているとは光栄だわ。だったら私の実力も知っているわよね。おとなしく自分の巣、アクノー帝国のアジトに帰りなさい!」
ドミノマスクの女性は高らかに言い放つ。
これまでも数々のアクノー帝国の魔怪人を倒してきた実績が彼女の自信の源だ。
「グフフフフ・・・巣に帰れと言われて、はいそうですかと帰る2チャンネラーがいるものか。ちょうどいい。わがファンでお前を切り刻んでやる」
ファンダロスは不適に笑うと、腹部のファンをビルの屋上に向けた。
「おろかな。その判断が過ちであることを己の身で味わうがいい」
マリフィーヌはすばやくジャンプすると、空中で一回転してファンダロスの背後に回りこむ。
「な、なにぃ?」
距離的に相当あったはずなのに、一瞬にして背後をとられたことに愕然とするファンダロス。
「やぁっ!」
背中からマリフィーヌに蹴りを入れられ、思わず前のめりに倒れこむ。

「おのれぇ・・・赦さん!」
さすがにアクノー帝国の魔怪人であるファンダロスは、すばやく立ち上がると、その鋭い爪でマリフィーヌを傷つける。
「キャッ」
豊かな胸をかすめた爪がピンクのレオタードを引き裂き、乳房に一筋血がにじむ。
「グフフフ・・・伊達に犬型の魔怪人なわけじゃねえぜ。俺様のフルネームはハウンズ・オブ・ファンダロスというんだからな」
「どこぞのクトゥルフモンスターのパクリってわけね。でも私を傷つけたことを後悔させてあげるわ。マリフィーヌロッド!」
一歩距離をとると、マリフィーヌは両手を高く掲げ、頭上に一本のロッドを作り出す。
「さあ、覚悟しなさい! 決定的な実力差というものを思い知らせてあげるわ」
ロッドを構え、ファンダロスに対峙するマリフィーヌ。
「しゃらくさい!!」
爪とキバをむき出しにして、ファンダロスはマリフィーヌに飛びかかった。

                   ******

「で、結果はこのありさまか・・・」
大型モニターの前で苦虫を噛み潰したような表情を浮かべる二人の男。
一人はまだ若く精悍な顔つきの男で、全身をメタリックのフルアーマーで覆っている。
アクノー帝国のコー・ワモテ将軍だ。
皇帝陛下より実戦指揮を任されている。
「まさかロッドをファンの間にはさみこんで放り投げてくるとは思わなんだ。意外と怪力な女子(おなご)じゃて」
白衣を着た老人はキサーイ博士。
アクノー帝国の鬼才であり、地上侵略の尖兵である魔怪人を作り出す能力に長けている。
その目はめがね型のゴーグルになっており、頭からはさまざまな機械がむき出しになって明滅していた。
「そのようなことはどうでもいい! 何だあのざまは! これこそ最高の魔怪人だと言ったではないか!」
「ええい、マリフィーヌの能力を少しだけ見誤っただけじゃ! 見ておれ、次回こそは・・・」
「そのセリフは聞き飽きたわ! このままでは我ら二人とも皇帝陛下に顔向けができんぞ」
背後の壁に作られた悪魔のレリーフに目をやるコー・ワモテ将軍。
その額に冷や汗が浮かぶ。
「わかっておる。何とかせねばのう・・・何とかせねば・・・」
キサーイ博士の額にも、同じように冷や汗が流れていた。

                   ******

「ふう・・・今回もどうにか勝てたわね。あの女の人も無事にすんだし、めでたしめでたしかな」
ファンダロスを打ち破り、わらわらと沸いてでてきた野次馬をかわすようにして身を隠したマリフィーヌは、物陰で変身を解くと、どこにでもいるごく普通の若い主婦としての姿にもどる。
アクノー帝国の野望を打ち砕く正義のヒロイン美女仮面マリフィーヌは、平凡な一主婦白幡茉莉子(しらはた まりこ)だったのだ。
「いけない、こんな時間だわ。早く帰らなくちゃ。また洋(ひろし)さんに怒られちゃう」
時計を見て急ぎ足で自宅へ向かう茉莉子。
そのエプロン姿は近所にちょっと出かけた主婦そのものだ。

「た・・・ただいま・・・」
玄関をそっと開ける。
できれば夫がまだ帰ってきていないほうがいい。
そんな思いは玄関に脱ぎ散らかされた靴を見て吹き飛んだ。
「はあ・・・」
覚悟を決めてリビングに向かう。
「どこへ行ってたんだ!」
はたしてリビングに入ったとたん、夫の怒声が響き渡った。
「ご、ごめんなさい。ちょっとお醤油を切らしちゃったものだから・・・」
茉莉子は片手に下げたコンビニの袋をそっと見せる。
「またか! 君はいつも何かを切らしているな。そんなことで主婦が勤まると思っているのか?」
「ご、ごめんなさい。今度は気をつけるから」
肩をすくめる茉莉子。
夫の洋はちょっと束縛がきついところがある。
だが、根は優しい人なので、茉莉子も我慢して聞いていた。
「謝ればいいというものじゃない。こんな時間に出歩いて何かあったらどうするつもりだ? 変質者にでも襲われてみろ! どうなるかわかるだろう!」
「ごめんなさい。でも明るい道だし・・・」
茉莉子の頬を張る音が響く。
「口答えするな! お前は俺の言うとおりにしていればいいんだ。俺が養ってやっているのを忘れるな!」
「・・・はい」
叩かれた頬を押さえ、茉莉子は口をつぐんだ。
「・・・・・・ああ、すまない。ごめんよ。痛かっただろう」
すぐに洋が茉莉子を優しく抱きしめる。
「茉莉子が悪いんだよ。僕に心配をかけるから。だから僕はちょっとお仕置きをしたんだ。わかるよね」
「ええ・・・」
茉莉子もそっと夫を抱きしめる。
少し行き過ぎのきらいはあるが、これがこの人なりの愛し方なんだと茉莉子は思っていた。
「さあ、僕はお風呂に入ってくるよ。茉莉子は美味しいものを作ってくれ。いいね」
「ええ、あなた」
茉莉子は優しく微笑むと、風呂に向かう夫の背中を見送った。

                    ******

「何をしておるのだ?」
自らの研究室に閉じこもり、なにやらごそごそとやっているキサーイ博士の元に顔を出すコー・ワモテ将軍。
「何って、次の魔怪人の研究じゃよ」
わざわざ呼びもしないのにやって来たフルアーマーのいかつい男をチラッと見やり、すぐに手元に目を戻すキサーイ博士。
「それはわかっておる。今度はどんな魔怪人にするつもりかと訊いているのだ」
ムッとした表情を浮かべるコー・ワモテ将軍。
「将軍はカメラというものをご存知かな?」
キサーイ博士が振り返ってにやりと笑う。
「む? バカにするな。カメラぐらい知っておる」
「クヒヒ・・・ではカメラにまつわる俗説は知っておるかの?」
ニタニタと笑うキサーイ博士。
何を考えているのか不気味この上ない笑みだ。
「俗説? そんなものは知らんが・・・」
「昔の人は言ったものじゃ。カメラで写真を撮られると、魂を抜かれてしまうと」
「おお、その話なら知っておるぞ。写されると早死にするとか」
ポンと手を打つコー・ワモテー将軍。
だが、ふと首をかしげる。
「それが魔怪人と何の関係があるのだ?」
「まあ、最後まで聞くのじゃ。マリフィーヌは確かに手ごわい。じゃが、あの戦い方はどうも普通では無いような気がする。なんというか、まるでストレスをすべて魔怪人にぶつけてきているかのような・・・」
「だから、それが何の関係があるのかと聞いているのだ!」
少しいらついてしまうコー・ワモテ将軍。
老人の話は要領を得ない上に長ったらしいのが困る。
「ええい、せっかちな奴め。つまりじゃ。マリフィーヌとて、心の奥底にはなにやらどす黒いものを持っているかも知れんと言うことじゃよ」
「どす黒いものだと?」
驚いたように目を見開く将軍を前にして、キサーイ博士は不気味に笑みを浮かべている。

「そうじゃ。人間というものはみな大なり小なり心の奥底には歪んだものを持っておる。普段はそれを表に出さないようにしているがな」
「うむ、確かにそうだ」
「いわば本音と建前というか、道徳心や良心などというもので自分の心に蓋をしているわけじゃな」
「うむ」
こくんとうなずくコー・ワモテ将軍。
いつしかキサーイ博士の言葉に引き込まれている。
「その蓋を取り払ってやったらどうなるかな?」
「むぅ・・・それは互いに好き勝手なことをしはじめるのではないか?」
「そうじゃ。人間どもが道徳心や良心、正義の心などを失って好き勝手な行動をする。それは我がアクノー帝国の望むところではないかの?」
「むぅ・・・確かにそうだが・・・すると貴様はマリフィーヌの正義の心を取り払おうというのか?」
キサーイ博士の言わんとすることがようやくわかるコー・ワモテ将軍。
「そのとおりじゃよ。コー・ワモテ将軍」
「だが、だがしかし、どうやって・・・」
「そこがこのカメラの出番じゃて。ケケケケケ・・・」
手元に置かれたなにやら奇妙な装置を前に、キサーイ博士は笑っていた。

                   ******

『え~? お姉ちゃんやっぱり来られないんだ。今年は最後の学園祭だから見に来て欲しかったんだけどなぁ』
電話の向こうで落胆した声がする。
茉莉子自身も残念であるがどうしようもない。
夫の洋がいい顔をしないのだ。
男女共学の高校の学園祭に行くなどといえば、烈火のごとく怒りまくるに違いない。
襲われたらどうするつもりだと怒鳴りまくってくるだろう。
洋は茉莉子が道端で男性に道を聞かれたとしても機嫌が悪くなるのだ。
それが彼なりの愛し方だと思うと、茉莉子も無碍にはできなかった。
「ごめんね。乃莉子(のりこ)がうちに遊びに来る分にはちっともかまわないんだけど、私が外に出ることには洋さんが機嫌悪くなっちゃうから」
妹が遊びに来るのは何の問題もない。
むしろ洋も可愛い義妹に会えるのが楽しみでさえある。
だが、茉莉子が外で会うのはいい顔をしないのだ。
『お義兄さんちょっと神経質すぎるよ。お姉ちゃんを束縛しすぎだと思う』
「そんなことを言わないで。洋さんは私を心配してくれているんだから」
『違うんじゃない? お義兄さんはお姉ちゃんを誰にも見せたくないだけ。自分の物が取られるのがいやなだけよ』
「乃莉子も結婚すればわかるわよ。旦那さんの愛は時にはうっとしいぐらいのほうがいいの。洋さんは私を愛してくれているわ」
『そうかなぁ・・・あーあ、最後の舞台、見て欲しかったなぁ』
「ごめんね。今度遊びにいらっしゃい。美味しいもの用意しておくから」
『うん、楽しみにしてる。じゃーね』
最後は明るい声で電話が切れる。
妹に対してはちょっと申し訳なかったが、こればかりは仕方がない。

「電話終わった? 乃莉ちゃんからかい?」
リビングでテレビを見ていた洋が立ち上がる。
「ええ、今度遊びに来るって」
「そっかー、楽しみだね。念のため見せて」
手を差し出してくる洋。
茉莉子はいつものように携帯を差し出して、夫が着信履歴を見るのを見つめていた。
「うん。間違いなく乃莉ちゃんの番号だ。他に怪しいものもないし、合格」
何が合格なのかわからないが、ホッとする茉莉子。
「茉莉子。僕は君を守りたいんだ。わかってくれるよね。君をどこのウマの骨ともつかない奴から守りたい。君を大事にしたいからこそきついことも言うかもしれない。でも、これは僕の愛なんだ」
「ええ、わかってますわ、あなた」
茉莉子は笑顔でそう答えた。

「あーあ、やっぱりお姉ちゃんは来られないか・・・お義兄さんの顔色伺い過ぎの気もするけどなぁ」
携帯を閉じて自宅への道を歩き出す乃莉子。
秋の夜は日の暮れるのも早く、周囲はすっかり暗くなっている。
学園祭に向けての練習をしていたら遅くなってしまったのだ。
「やば、早く帰らなくちゃ」
乃莉子はセーラー服のスカートを翻し、足取りを速めようとする。
「えっ?」
いきなり目の前に影が下り、金属の甲冑を着たがっしりした男が現れる。
「ふん、小娘か。まあいい」
ずしっという重い痛みが腹部を襲い、乃莉子は意識が急速に失われていくのを感じた。
それが男に殴られたものだと理解したときには、乃莉子は闇に飲み込まれていた。
  1. 2010/08/02(月) 20:40:39|
  2. 美女仮面マリフィーヌ
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(まいかた まさと)と読みます。
北海道に住む悪堕ち大好き親父です。
このブログは、私の好きなゲームやマンガなどの趣味や洗脳・改造・悪堕ちなどの自作SSの発表の場となっております。
どうぞ楽しんでいって下さいませ。

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