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舞方雅人の趣味の世界

あるSS書きの日々

ディメンザー人ヅェズー(1)

今日は早めの更新。

大変お待たせいたしました。
220万ヒット達成記念SSを、今日から四日連続で投下させていただきます。

4月1日に「四月馬鹿」を投下して以来ですので、丸々3ヶ月間SS無しだったんですね。
本当にお待たせしてしまいまして申し訳ありませんでした。

今回のタイトルは「ディメンザー人ヅェズー」
どうかお楽しみいただければと思います。

それではどうぞ。


「ディメンザー人ヅェズー」

1、
「キシャアァァァァァァァァァ!」
断末魔の悲鳴を上げる漆黒の怪鳥。
パワードボーイのクラッシュキックを受けたのだ。
厚さ二メートルものコンクリートをぶち抜くキックの威力に、さしもの異次元獣も耐えることはできなかった。
「ああっ、ガラザール!」
カラスを巨大化させたような異次元獣ガラザールがあっけなく倒されたのをみて、思わず声を出してしまう。
空を飛べるガラザールは次元侵略にはうってつけだったし、パワードボーイにも充分対抗できると思っていたのだ。

「おのれパワードボーイ! ボクが相手だ!」
暗黒の異空間内に姿を現す声の持ち主。
それは身長など大きさ的には小学生ほどの少年のようだったが、その姿は紛れも無く人間ではない。
頭の両脇にある先が尖った耳の上からは、額のほうに向かって角が左右から生えており、金色をした目は瞳が縦に細長いトカゲのような目をしている。
肌は藤色のような淡い青紫色であり、背中からは黒いコウモリのような羽根が生えていた。
胴部を覆う皮鎧のようなものを着ており、お尻からは細長い尻尾まで生えている。
いわばその少年は、よく悪魔と呼ばれるような存在をイメージしたときに思い浮かべるであろう姿に似た形をしていたのだった。

「こい、ディメンザー人! 今日こそ決着をつけてやる!」
クラッシュキックでガラザールを倒したパワードボーイが体勢を整える。
こちらも銀色の仮面に銀色に青いラインの入ったスーツを着ているが、やはりその体格は小学生ほどの少年にすぎない。
だが、この銀色の仮面の少年こそがパワードボーイであり、異次元より突如として現れたディメンザー人による次元侵略を防ぐ正義の使者だった。

次元侵略を目論むディメンザー人の少年と、自らの住む次元を守ろうとするパワードボーイという二人の少年たちは、互いに向かい合い一触即発の態勢を取る。
はたから見れば、それはまるで二人の子供が遊んでいるかケンカをしているようにも見えるだろう。
しかし、その戦いはまさに世界の命運をかける戦いだったのだ。

にらみ合う二人の少年。
そのどちらもが相手の動きを警戒する。
だが、そこに新たな声がかけられた。
「ヴィヅズよ。お前はまだパワードボーイと戦うには力不足だ。引き上げるのだ」
新たな声をかけたのは、ディメンザー人の少年によく似たがっしりとした体格の男だった。
黒い皮鎧のようなものを着込み、筋肉を隆々とさせている偉丈夫。
少年と同様の藤色のような淡い青紫色のなめし皮のような皮膚をして、尖った耳の上からは角が生えており、背中からはコウモリのような羽根も生えている。
まさに少年がそのまま大人になったような存在であった。
「でもパパ、ガラザールが・・・」
「言うことを聞くのだ。ヴィヅズよ」
少年をにらみつけるディメンザー人の男。
ヴィヅズと呼ばれた少年は、仕方なくジャンプして後退する。

「逃げるのか、待て!」
パワードボーイは逃げ出そうとしたヴィヅズを追いかけようとする。
だが、新たに現れたディメンザー人の男の手が一閃すると、オレンジ色のリングが現れてパワードボーイの足元を切り裂いていく。
「くっ」
思わず足が止まるパワードボーイ。
「パワードボーイよ。今回もお前の勝ちだ。だがわれわれはあきらめん。この次元は必ず我らディメンザー人のものとしてくれる」
ディメンザー人の男はそういうと、異空間に次元の穴を開けて吸い込まれるように消えていく。
彼の隣に下がっていたヴィヅズと呼ばれた少年ももちろんいっしょに消えていた。
「また逃げられちゃった・・・」
周りで消滅していく異空間から通常空間に戻りながら、パワードボーイは肩を落とし残念そうにつぶやいた。

                    ******

「ただいま」
そう言って少年は玄関のドアをくぐる。
「亮太(りょうた)・・・お帰りなさい」
すぐに奥から玄関に出てくる一人の女性。
少年の姿を見ると、ほっと胸をなでおろす。
「ただいま、お母さん」
少年の顔に笑顔が浮かぶ。
やはり母が出迎えてくれるというのは、とてもうれしく胸が温かくなるものなのだ。
「よかった・・・亮太・・・無事でよかった・・・」
膝をついて玄関先で少年を抱きしめる母。
いつも無事な顔を見るまでは気が気ではないのだ。
こんなまだ小学生の少年なのに、人類のために戦わなくてはならないとは、なんという運命なのだろう。
少年の母である紗織(さおり)はそう思わずにはいられない。
「お母さん・・・」
自らも母の背中に手を回す少年。
温かい母親のぬくもりがうれしい。
しばらくそうしていたのちに、抱きしめていた少年をその肩にそっと手をかけて引き離すと、母は愛しそうにその頬をそっと撫でる。
「さあ、手を洗ってうがいして。もうすぐ晩ご飯できるからね」
「うん」
少年はちょっと名残惜しそうに母から離れると、台所へ行って手を洗うのだった。

真木原亮太(まきはら りょうた)は紗織の一人息子だ。
まだ小学校の四年生だが、正義の少年パワードボーイとして、異次元からの侵略と戦っている。
亮太が言うには、何か次元を超えた正義の意思のようなものに選ばれたらしい。
異次元人であるディメンザー人の侵略を阻止するよう指示されたのだという。
ディメンザー人の親子が繰り出してくる異次元獣を打ち破り、この次元に平和をもたらしているのが銀色の仮面の少年パワードボーイだった。

紗織がそのことを知ったとき、亮太はすでにパワードボーイとしてディメンザー人と戦っていた。
年端も行かない小学生が人類のために戦うなんてことは、紗織には耐えられるものではなかったが、パワードボーイ以外にディメンザー人に対抗できるものはいなかった。
人類の兵器はことごとく無力化され、異次元獣には歯が立たない。
紗織が反対しようとも、亮太がパワードボーイとして戦うほか無かったのである。

無論亮太もそのことは承知していたし、逆に亮太自身はパワードボーイとして戦えることがうれしかった。
父親亡き後、女手一つで亮太を育ててくれている母を何とかして守りたい。
少しでも母の役に立ちたい。
亮太は常にそう思っていたのだ。
小学生の自分にできることなど多くはない。
でも、異次元からの侵略になら、パワードボーイとして戦うことができ、母を守ることができるのだ。
誰の力でもない、自分の力で母を守ることができる。
そのことが亮太にはとても誇らしかったのだった。

「今日は亮太の大好きなハンバーグよ」
手を洗ってリビングに戻ってきた亮太の耳に、なんともうれしい言葉が届く。
思わず亮太はやったぁと声を上げていた。
バンザイをしているその姿が紗織にはほほえましい。
一刻も早く亮太がパワードボーイとして戦わなくてすむ日が来ることを、紗織は祈らずにはいられなかった。

                   ******

「グスッ・・・クスン・・・」
少年が泣いている。
「泣いていても何も変わりはしないぞ、ヴィヅズ」
少年に背を向け、父は次回の計画を考える。
パワードボーイを排除するしかない。
それはわかりきったことなのだが、異次元獣だけではなかなかパワードボーイに勝てないのだ。
何か今ひとつ決め手が欲しい。
その決め手となるようなことを見つけなくてはならないのだ。
悲しんでいる息子に声をかけてやる余裕などはなかった。

「ママ・・・」
その言葉にぴくりと耳を傾ける。
振り返ってみると、泣き疲れた少年は眠っていた。
今回の異次元獣は可愛がっていたようだから、きっと倒されたことがつらかったのだろう。
母親のぬくもりを求めるのも当たり前かもしれない。
前回の妻は早くに壊れてしまった。
その後、この世界の次元侵略を任されたために妻を作らずにいたが、やはり息子のためにも母というメスが必要かもしれない。
母がいれば息子を慰めることもできるだろう。
新たな息子は今のところは必要ないが、自分のためにもメスを手に入れることは気分的にもいいかもしれない。
手ごろなメスを見繕うことにしようか。
そう考えた彼の目に、ふと今までに集めたパワードボーイに関するデータが映り込む。
それを見た彼はにやりと口元に笑みを浮かべると、システムのスイッチを切って眠っている息子を抱え上げ、寝室へと連れて行った。

                   ******

「真木原さん、今日はもうおしまい?」
その日の仕事を終え、帰り支度を整え会社を出たところで、紗織は声をかけられた。
見ると営業先から戻ってきた同僚の東間(あずま)がニヤニヤと笑っている。
東間はこのところ何かにつけて紗織に声をかけてきており、付き合って欲しいと思っているようだったので、その気のない紗織にはちょっと困る相手だった。
好青年ぽい見せかけをしているが、その笑いはどこか不気味な感じでもある。
その腹の底には何かがあるような気がして、紗織はこの男にいやなものを感じていた。

「ええ、今日はもうこれで、お先に失礼いたします」
やり過ごそうとする紗織に、東間は駆け寄ってきて追いすがる。
「だったらさ、ちょっと待っててよ。すぐに報告済ませて出てくるからさ。美味しい物を出す店に連れて行ってあげる」
「すみません。息子が待っておりますし、今日は早く帰らなくてはなりませんから」
紗織は表面上はにこやかに拒絶する。
「つれないなぁ。たまには誘わせてくださいよ。食事ぐらいいいじゃないですか。それに息子さんだってもう小学生なんでしょ? 一人で留守番ぐらいできますって」
「ごめんなさい。どなたか別の方を誘ってあげてください」
「待ちなよ。俺が誘っているんだからさぁ」
歩いていく紗織の腕を掴み取る東間。
「離してください。人を呼びますよ」
紗織は東間をにらみつける。
同僚だし揉め事にはしたくないが、これ以上黙っていると変な考えを起こされても困るのだ。
「おお、こわ。俺は単にいつもお世話になっている真木原さんに美味しいものを食べてもらいたいだけですよ。それでもだめ?」
「すみません。お断りさせていただきます」
紗織は東間が手を離したことで、頭を下げてきちんと断った。
「ふう・・・やれやれ。俺に付き合っておいたほうがいいと思うんだけどなぁ。息子さんのこと、知られたくないんでしょ?」
「えっ?」
背を向けて立ち去ろうとした紗織の足が止まる。
「俺、知っちゃったんだよね。あんたの息子のこと。マスコミとかに知られたらいろいろとやばいんじゃないの?」
いやらしい笑いを浮かべる東間。
このところ何かこの女の弱みはないかと思って調べていたのだ。
「そのことをどうして?」
紗織の顔が青ざめる。
「俺さ、あんたの息子があのパワードボーイとやらだかに変身する所をさ、見ちゃったわけ。それでどう? 食事は付き合ってくれる?」
紗織はうつむいて唇を噛んだ。

「お待たせ。さあ、行こうか」
会社を出てきた東間が紗織の腕を取る。
紗織は無言で東間に付き従った。
すでに亮太には携帯で遅くなることを知らせてある。
悔しいが、亮太がパワードボーイだと世間に知られたらどんなことになるかわからない。
マスコミは連日押しかけ、ディメンザー人に勝てるかどうか質問攻めにするだろうし、もしかしたらいろいろな検査や実験をさせられるかもしれない。
政府や自衛隊が戦いを強要するかもしれない。
一番の恐怖は、ディメンザー人が亮太そのものを狙うかもしれないのだ。
紗織は亮太をそんな危険な目に逢わせることはできなかった。

でも、ここで東間の言いなりになってしまえば、これからも関係を強要されてしまうだろう。
今日はうまく食事だけですませたとしても、明日以降はわからない。
いずれ肉体を要求されるのは火を見るよりも明らかだ。
そんなのはいやだ。
紗織はまだ夫を愛している。
亡くなってしまったとはいえ、夫以外に躰を許すなんてありえない。
どうしたらいいの?
紗織にはこの状況をどうしたらいいのかわからなかった。

「心配しなくてもいいんだよ。今日は食事だけにしてあげるからさ。まあ、そのうち俺のことしか考えられないように調教してあげるよ」
ニヤニヤと下卑た笑いを浮かべている東間。
紗織はそんな東間に心からの恐怖を感じた。
調教?
まるで人をペットか家畜のように扱う気なの?
紗織は思わずぞっとする。
今すぐにでも逃げ出したい。
でも、そうなると亮太はどうなるのか・・・
どうしたらいいのだろう。
答えは出ない。
紗織は黙ってうつむいて歩いているしかなかった。

「あれ?」
東間が思わず声を上げる。
紗織が顔を上げると、なぜか周囲が闇に包まれていた。
「な、なんだ? この道は明るい通りだったのに、何で突然暗くなるんだ?」
突然のことに周りをきょろきょろとする東間。
紗織も何が起こったのかわからず、思わず周囲を見渡した。

「ふん、どうやら余分なものが混じったようだな」
どこからともなく声がして、いきなり二人の前に人影が現れる。
「ひっ!」
「ああっ!」
東間も紗織も思わず息を飲んだ。
目の前に現れたのは、ディメンザー人だったのだ。
「ディ、ディメンザー人?」
「そんな・・・」
ディメンザー人の恐ろしさは誰でも知っている。
異次元獣を使い破壊をおこなうだけではなく、人間の生命エネルギーを吸い取るために連れ去ったりもするのだ。
ディメンザー人に異次元に連れて行かれてしまった人は、二度と戻ってくることはない。
人々はそのような事態が自分に降りかからぬよう、ただ祈るだけだった。

「我が名はヴィクゥズ。そこのメスよ、真木原紗織とはお前のことだな?」
屈強そうなディメンザー人の男が射るような目で紗織を見る。
黒い皮の胸当てとパンツのようなものを穿き、藤色をした皮膚はなめし皮のように強靭そうだ。
金色に輝く目は瞳が縦に細長く、まるで爬虫類の目を思わせる。
尖った耳の上からは角が生え、背中には黒いコウモリのような羽根が広がり、先の尖った細い尻尾をぶら下げているその姿は、まさに悪魔と呼ぶにふさわしい。
その悪魔の問いに紗織は、思わずうなずいてしまっていた。

「こ、この女が目的なんだな? だ、だったら俺は関係ない。この女は好きにしていいから、俺をここから出してくれ。頼む」
東間ががたがたと震えている。
その様子に紗織はただ哀れさと情けなさを感じるだけだった。
「お前には用はない」
その言葉に一瞬安堵の表情を浮かべる東間。
だが、ディメンザー人ヴィクゥズが東間に向かって手をかざすと、その表情は苦悶の表情へと変わっていく。
「ぐ、ぐわぁぁぁぁぁ」
みるみるうちに東間の躰は分解し、塵のようになって崩れていく。
そしてヴィクゥズがかざしていた手を握ると、上を向いて自らの口の上に持っていき、絞り出すように何かのしずくを口の中にたらしていく。
「ふん・・・あまり美味くない生命エネルギーだな」
滴ったしずくをゴクリと飲み干すと、ヴィクゥズはにやりと笑った。

あのしずくは東間の命だったんだわ。
そう理解したとき、紗織はどこかホッとした自分に気が付いていた。
これでもう脅迫されることはない。
どうあれ自分と亮太はもう東間に煩わされることがなくなったのだ。
だが、今の状況はもっと悪いものに違いない。
このディメンザー人は明らかに自分を狙ってきたのだ。
無事で返してはもらえないだろうと紗織は思う。

「私をどうするつもりですか?」
うかつなことは言えない。
亮太との関係を聞かれたら、できるだけとぼけるしかない。
紗織はそう決めていた。
まずは相手の出方を見る。
名指しで来た以上、すぐに殺されるとは思わなかった。
殺されるなら有無を言わさず殺しているだろう。
先ほどの東間のように。
「おとなしくしていろ。すぐに終わる」
じろりと紗織をにらむヴィクゥズ。
爬虫類のような縦長の瞳が不気味だった。

「うっ」
急に紗織をめまいのような感覚が襲う。
何が起こったのかわからなかったが、周囲が闇から硬質な壁に囲まれたホールのような場所に変わっていた。
「ふふふ・・・お前たち三次元人には理解できないだろうな。こうして瞬時に場所を移動するというのは」
「ここは・・・ここはどこなんですか?」
「我が拠点だ。お前たちの感覚では地下ということになるかな」
「そんな・・・」
紗織は言葉を失った。
まさか一瞬にして場所を移動するなどとは思いもしなかったのだ。
パワードボーイである亮太ならばわかっていたことかもしれないが、紗織はディメンザー人についてはニュースで報道されている程度のことしか知らなかった。
おそらくディメンザー人に連れて行かれた人々も、こうして瞬間移動で連れて行かれたのだろう。
「ああ・・・亮太・・・」
もしかしたら二度と会えなくなってしまったのかもしれない息子を思い、紗織はその場に崩折れた。
  1. 2010/07/05(月) 19:49:50|
  2. ディメンザー人ヅェズー
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Author:舞方雅人
(まいかた まさと)と読みます。
北海道に住む悪堕ち大好き親父です。
このブログは、私の好きなゲームやマンガなどの趣味や洗脳・改造・悪堕ちなどの自作SSの発表の場となっております。
どうぞ楽しんでいって下さいませ。

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