今日は久しぶりにミリタリーネタを一つ。
第二次世界大戦中盤、アメリカはドイツ本土や日本本土への戦略爆撃をおこなえる長距離大型爆撃機B-29の開発が順調に進む中で、その護衛に当たる長距離戦闘機の開発を考えておりました。
P-38ライトニング、P-47サンダーボルト、P-51マスタングなどは、いずれも当時としては長距離の航続力を持つ優秀な戦闘機ではありましたが、B-29の長距離爆撃の行程を考えると、さらなる長距離航続能力を持つ優秀な戦闘機が望まれたのです。
しかし、長距離戦闘機は現行の機種でさえ一人しか乗っていないパイロットに負担を強いるため、さらなる長距離戦闘機を単座で作るのは無理があると見られました。
そこでパイロットの交代ができる複座の戦闘機が求められ、各社に要求が出されます。
P-51マスタングという優秀な戦闘機を開発して一躍名を上げていたノースアメリカン社は、この要求に対して実に奇抜なアイディアで、新型戦闘機を短期間のうちに作り上げることが可能であると軍に提示します。
つまり、二機のP-51を左右にくっつけて、双胴双発複座の戦闘機にしてしまおうというのです。
すでにあるP-51がベースになるため、一から開発する必要がなく短時間で開発が可能であるというのがメリットでした。
米軍はこのアイディアを受け入れ、ノースアメリカン社に試作を命じます。
運動性能を上げるためのP-51の軽量型P-51Fが機体のベースに選ばれ、主翼と水平尾翼でつながる形で左右に二機をくっつけるもので、エンジンやコクピットの位置は単座型と変わりないものでした。
まさに並んで飛んでいたら、いつの間にかくっついてしまったという感じです。
とはいえ、バランスを取るための胴体部分の延長や、プロペラを左右で逆回転させてトルクを打ち消すために左側エンジンには逆回転用ギアが取り付けられたり、重量が二機分になったことでの脚部の強化など、P-51と共通する部分は意外と少なくなったといいます。
完成した試作機はXP-82という番号が与えられ、優秀な成績を収めることができました。
無理やり二機をつなぎ合わせたような外観にもかかわらず、P-51に劣らない空戦性能も発揮したといいます。
そのため、米軍はP-82ツインマスタングとして正式に500機の発注を行ないました。
しかし、残念ながらツインマスタングは登場が遅すぎました。
20機ほどが完成した時点で太平洋での対日戦も終わってしまい、第二次世界大戦ではついに実戦に参加することはありませんでした。
そのため残りの発注はキャンセルとなってしまいます。
ところがツインマスタングはこれで終わりませんでした。
完成した機体がニューヨーク-ハワイ間を無着陸で飛行するなど、予想以上に高性能であることがわかり、米軍は長距離戦闘機型と夜間戦闘機型を改めて生産させました。
最終的な生産数は、約250機ほどだったといわれます。
戦後の呼称変更でP-82からF-82となったツインマスタングは、折から始まった朝鮮戦争に投入され、空対空戦闘や対地攻撃に投入されました。
ジェット化の進んだ朝鮮戦争ではありましたが、ツインマスタングはその中でレシプロ機の最後の輝きを見せるほど優秀な機体だったのです。
優秀な機体を二機つないでしまうなど、一歩間違えれば凡作になりかねないと思いますが、このツインマスタングは二機つないでも優秀だったという珍しい機体だったのではないでしょうか。
それだけノースアメリカン社の設計陣が優秀だったということなのかもしれませんね。
それではまた。
- 2010/03/25(木) 21:23:28|
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