昨日も2000ヒットを越えました。
多くの方々に読んでもらえまして本当にうれしいです。
ありがとうございます。
今日は「ホワイトリリィ」の4回目です。
シーンの関係で少し短くなっていますが、ご了承くださいませ。
それではどうぞ。
4、
程なく了史が帰ってきた。
俺は多少気になったものの、二人を残して自室へ引き上げる。
ただ、状況を把握するためにも偵察用の蜘蛛型ロボットを放しておくのは忘れない。
カメラとマイクが付いているので、リビングの様子を知ることができるのだ。
探偵や警察あたりが欲しがるだろうな。
そんなことを考えながら、俺は自室の押入れを開けると、そこに入り込む。
すぐに押入れの床が降下して地下のアジトに俺を運んでくれるのだ。
昔よく見た特撮の秘密基地そのものだな。
俺は毎回この仕掛けを使うたびにわくわくするものを感じてしまう。
もっとも、頻繁に自室からいなくなるわけにはいかないので、これを使うことは控えるようにはしているが。
アジトに下りると、そこは首領の控え室になっている。
薄暗くひんやりした空気が心地よい。
悪の秘密組織のアジトはこうでなくてはな。
俺は黒いがっしりした鎧のようなアーマーを身につけ、鋭角的なひだをして襟の高い赤のマントを羽織り、白い髑髏のマスクを付ける。
クーライの首領『ドスグラー』の姿になるのだ。
クーライといいドスグラーといい、笑ってしまうようなネーミングだ。
だが、この陳腐さが、古い特撮の悪役を思わせて俺は結構気に入っている。
俺は鏡を見て姿を整えると、司令室に向かってドアをでる。
ほんの短い廊下を歩いていくうちに、センサーが俺の姿をキャッチして、自動的に司令室にはスモークが流される。
そして暗い照明がさらに薄暗くなり、俺が司令室のドアを開けて入ると、司令室に詰めている連中がうやうやしく俺を出迎えるという寸法だ。
バカバカしいと思うかもしれないが、これはやってみると案外気持ちのいいもので、なかなか捨てがたいものがある。
俺が司令室のドアを開けると、いつものように床にはスモークが流れ、女戦闘員たちが六人うやうやしく膝をついている。
一段高くなった首領の椅子の正面には、アジトの責任者に任命してある蜘蛛女が、これも同じように膝をついてかしこまっていた。
俺はゆっくりと彼らの前を通り過ぎ、首領の椅子に腰掛ける。
この瞬間がたまらなく気分がいい。
俺が椅子に座ると同時に暗くなっていた照明が元に戻された。
「お帰りなさいませ、ドスグラー様」
「「お帰りなさいませ、ドスグラー様」」
蜘蛛女に続いて女戦闘員たちの唱和が流れる。
「うむ、ご苦労」
俺はそう言って皆をねぎらう。
俺の世界征服の尖兵たち。
可愛い俺の部下たちだ。
俺は早速技術班を呼ぶと、ある発信機を作るよう命じる。
人間の脳に影響を与えるパルスを発信する機械で、それによってある程度人間の感情をコントロールするものだ。
もともとは人間を強制的に洗脳してしまうための装置を元にするため、感情をいじることなど造作も無い。
ただ、永続的な強制洗脳と違い、その効果をいわゆる“焼き付け”ないため、効果の持続時間が短いのが欠点でもある。
だが、それでいいのだ。
じわじわと感情をコントロールしてやることで、永続的な思考改変に持っていく。
まどろっこしいやり方だが、そこがかえって楽しみでもある。
だいたい考えてみれば、ホワイトリリィの防御システムが簡単に機械的洗脳をされることを許すはずがないのだ。
アジトの中でホワイトリリィに変身し暴れられたりすれば、せっかくのアジトを放棄することにもなりかねん。
それに場合によっては、ホワイトリリィの防御システムが百合香さんの人格そのものを破壊してしまうかもしれないのだ。
だから洗脳されるということを、少なくとも百合香さんに気付かれてはならない。
普段は忘れているところだが、人間は感情の動物だ。
ちょっとした好悪の印象も、増幅されることによってその人間に対する個々人の人間性の良し悪しにまで、発展したりするものである。
今日俺は百合香さんに・・・
いや、もう自分を偽るのはよそう。
百合香に決定的な行為をしてしまった。
まあ、膣内出しはしなかったなどというのは些細なこと。
陵辱したことには違いない。
おそらく今の百合香の中にあるのは俺への悪感情のみだろう。
それをいかにして好感情へもっていくか。
そのために百合香の感情を色々つつきまわしてやるのだ。
百合香がどう変わるのか。
それともあの防御システムがこういったものにも作用して変えることができないのか。
ある種の実験といえるだろう。
なかなかに興味深い。
発信機自体は洗脳システムの改良というか簡易化なので、作るのにそれほど問題はないはずだ。
明日中にはできるだろう。
俺は数セット作るように指示をして、後を蜘蛛女に任せ司令室を後にする。
これからが楽しみだ。
着替えて自室へ戻った俺は、とりあえずリビングの様子を確認しながら一服する。
蜘蛛型ロボットから送られたデータをパソコンで再生。
じっくり見ても仕方がないので、早送りをしながらだ。
何か話をするのなら、テーブルに向かい合うなりするだろう。
だが、俺の予想に反して、百合香は食事の支度を終えると早々に部屋へ行ってしまったらしい。
あの件には触れてはいない。
ホワイトリリィであることをばらされたくないから言うつもりは無いのか、それともベッドで二人きりになった時に言うつもりか?
忘れるとは言っていたものの、残念ながら俺は今の状態の百合香をそれほど信用することはできない。
俺はすぐに監視用の蜘蛛型ロボットを呼び戻し、睡眠薬のカートリッジをセットする。
悪いが百合香には朝までぐっすり寝てもらおう。
今は少しでも了史と二人きりの時間を作らせたくはないのだよ。
俺の手を離れた蜘蛛型ロボットは、八本の足をカサコソと動かして通気口に入り込む。
パソコンのモニターにはその様子が映し出されるのだ。
綿ぼこりの山だなぁ・・・
通気口も掃除しなければ・・・
蜘蛛型ロボットは俺が何も指図する必要もなく百合香と了史の寝室に入っていく。
ちょうどパジャマに着替え終わったところのようだ。
・・・残念・・・か・・・
俺は蜘蛛型ロボットを天井に這わせ、いつでも睡眠薬を噴霧できるように待機させる。
百合香がしゃべることは無いかもしれないが、用心に越したことは無いのだ。
それに・・・了史に百合香を抱かせたくは無い・・・
そう、それが俺の本音だ。
『すん・・・すん・・・』
ベッドに横になった百合香の肩が震えている。
泣いているのか?
蜘蛛型ロボットのマイクの感度は良好だ。
百合香のすすり泣く声が入ってきているのだ。
俺は我知らずに興奮してくる。
百合香が泣いている。
なんと可愛らしい仕草ではないか。
か弱い女性であることをさらけ出しているのだ。
今すぐにでも部屋に行って抱きしめてやりたい。
『どうして・・・どうしてお義父様・・・』
先ほどの陵辱を思い出しているようだな。
『私もうお義父様の顔をまともに見られない・・・二人きりになるのが怖い・・・』
そう言うな。
すぐに俺といる方が嬉しいと思うようにしてやる。
百合香の考えを変えてやるよ。
『了史さん・・・助けて・・・私を守って・・・了史さん・・・』
了史に助けを求めているのがどうにも癪だが、枕を抱きしめて泣いている百合香はなんと素敵な姿だろう。
ピンクのパジャマがすごくよく似合っている。
だが、今度もっと似合うものを送ってあげよう。
黒のテディあたりも君にはきっと似合うはずだ。
俺はそんなことを考えながら、百合香の姿を眺めていた。
ノックの音がする。
どうやら了史が来たらしい。
食事を終え、寝る支度も済ませてきたのだろう。
そろそろ日付も変わる頃。
俺も明日に備えなければならないが、寝ることなどできやしない。
『百合香、入るよ』
その声に百合香は跳ね起きる。
泣いていた目が赤くなっていた。
百合香は涙を拭くと、枕元に一冊の本を取り寄せる。
どういうことだ?
『どうぞ』
笑顔を浮かべ了史を迎え入れる百合香。
俺は心臓が掴まれるような思いをする。
百合香の笑顔を了史に向けさせたくない。
俺の中にどす黒い思いが渦巻く。
『ふう、食事美味しかったよ。百合香の料理は最高だ』
『クス・・・ありがとう』
『おや? どうした? 泣いていたのかい?』
さすがに了史にも百合香の目が赤いことに気が付いたようだ。
まあ、気付かねばどうかしているところだが。
『あ、これ? うふふ・・・恥ずかしい』
『どうしたんだい?』
恥ずかしそうにうつむく百合香の脇で了史はパジャマに着替え始める。
『さっきまでこの本を読んでいたのよ。そうしたら泣けちゃって・・・』
先ほど枕元に取り寄せた本を指し示す。
なるほど。
機転もよく利く。
ホワイトリリィが強敵なのも当然だな。
『そうだったのか・・・百合香は昔から悲しい話を読むとすぐ泣いていたからなぁ』
『もう、いいでしょ! 悲しかったんだから』
百合香が少し拗ねたような声を出す。
それを赤子をあやすように了史は百合香の頭を撫で、そのままベッドに横になった。
さて・・・ここから先は静かにしてもらうとしよう。
俺は蜘蛛型ロボットに仕込んだ睡眠薬を散布させる。
これで朝まで眠ってもらうのだ。
『ねえ・・・了史さん』
『うん? ふわぁ・・・』
『抱いて・・・了史さんが欲しいの』
俺は唇を噛む。
聞きたくない言葉だ。
『ふわぁ・・・すまない・・・なんかすごく眠くて・・・お休み・・・』
『了史さん・・・ああ・・・変だわ・・・私もすごく眠く・・・』
強烈な眠気を感じただろう百合香は、そのままパタリと眠りにつく。
お休み、百合香。
俺は蜘蛛型ロボットを呼び戻した。
- 2010/02/23(火) 21:14:59|
- ホワイトリリィ
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