1930年代、ドイツではアドルフ・ヒトラーが政権を取り、ドイツの首相となりました。
ヒトラーは、政権の公約として国民誰もが手に入れやすい“国民車”を開発するという構想を掲げておりましたが、その国民車構想をフェルディナント・ポルシェ博士と推し進め、完成させたのが「フォルクスワーゲン・タイプ1」でした。
いうまでもなく「フォルクスワーゲン」とは、国民車という意味であり、タイプ1は皆様もご存知のあの“ビートル”の愛称で知られる丸っこい自動車でした。
1938年、ドイツ陸軍は手軽な軍用自動車として、フォルクスワーゲン・タイプ1をベースにした小型軍用車の開発を命じます。
重量を抑え、オープントップで大量生産が容易な車両と言う要求に基づき、ポルシェ設計局はシンプルで生産性の高い小型自動車を開発します。
それが、「フォルクスワーゲン・タイプ62」でした。
タイプ62はすぐに陸軍の試験に回され、その結果いくつかの改良を経て「フォルクスワーゲン・タイプ82」として正式に採用されます。

このフォルクスワーゲン・タイプ82は、バケットシートを持つことからバケットシート車と呼ばれ、いつしかバケツ車と呼ばれるようになりました。
このバケツ車というのをドイツ語で表したのが「キューベルワーゲン」です。
もっとも、これにはいくつかの異説もあり、ボディが鉄板のプレス加工でバケツのように作られるからだとか、バケツのようにいろいろなものを入れることができ身近であるからとかという説もあります。
ともあれ、フォルクスワーゲン・タイプ82は、キューベルワーゲンと呼ばれ、ドイツ軍には無くてはならない小型軍用車両となりました。
量産開始が1940年なので、ポーランド戦や西方電撃戦には姿を見せませんが、以後の東部戦線やアフリカ戦線では縦横無尽に走り回る姿があちこちで見られるようになりました。
エンジンに空冷エンジンを備えているために冷却水の心配がなく、凍結や熱暑でも問題無く走れるので非常に使い勝手のよい車両であり、重量も1トンを切るほどの軽さなので、少々のことなら人間の手で押し出すことも簡単でした。
よく戦争映画などでも見かけられ、ドイツ軍版ジープのような扱いをされているので、ジープのイメージが強いせいか四輪駆動と思われがちなのですが、ベースとなったフォルクスワーゲン・タイプ1と同様にリアエンジン・リアドライブなので、四輪駆動ではありません。
ですが、車体の軽さとエンジンが後ろにあることで後輪が地面をしっかりと掴むことができたため、走破性はよかったようです。
1945年の終戦までに約52000両が作られ、まさにドイツ軍を代表する軍用車両でありました。
連絡や捜索、日常の足として、戦場を走り回ったキューベルワーゲン。
ドイツ兵には付き物の車両として、今後も長く語られる車両かもしれませんね。
それではまた。
- 2009/10/25(日) 20:58:08|
- 趣味
-
| トラックバック:0
-
| コメント:2