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舞方雅人の趣味の世界

あるSS書きの日々

ハンターマリカ(2)

1500日間連続更新達成記念SS「ハンターマリカ」の二回目です。
記念日に気が付いたのが遅く、短めの記念SSとなってしまいましたが、楽しんでいただけるとうれしいです。

それではどうぞ。


2、
「ん・・・」
床の固さに意識がはっきりしてくる。
ん・・・
身じろぎをしたとき、両腕が後ろ手に拘束されているのがわかった。
とりあえず目を開けて周りを見る。
ひんやりした石の床。
私は両腕と、両足首も拘束されて転がされているらしかった。
シャンデリアに点された電球があたりを薄暗く照らしている。
どうやら見覚えのあるシャンデリア。
あの屋敷のホールに違いなかった。

「うふふ・・・目が覚めたようね」
背後からの声に私は身をよじって声の主を見る。
その瞬間、私は声が出ないほどの衝撃を受けた。

「お、お母さん・・・」
そこに立っていたのは紛れも無く十年前にあの男に連れ去られたはずの母だった。
しかも、あのときからほとんど変わりない姿で立っている。
違っているのは服装。
目の前の母は、黒いドレスを身にまとい、黒い長手袋を嵌めている。
口元には笑みを浮かべ、アイシャドウを引いた目元が妖艶さを漂わせている。
唯一その目だけが赤く輝き、母がすでに人間ではないことを告げていた。

「ふふ・・・久しぶりね茉莉香(まりか)。元気そうで何よりだわ」
言葉とは裏腹に温かみも何もない口調。
それどころかこうして身動きできない私をあざ笑っているかのよう。
でも・・・
でも・・・
まさか母が眷族にされていたなんて・・・

吸血鬼は気に入った異性を眷属にすることがある。
それはそうあることではなく、たいていは血を吸って下僕にしたあと、飽きて捨てるのが一般的だ。
捨てられた下僕は手当たり次第に人間の血を吸い、いくつかの下級下僕を作ったあたりでハンターに仕留められるのが多い。
今回私が倒した相手も、そうした下僕の一人だった。

だが、眷属は違う。
眷属は吸血鬼一族ということ。
下僕とは違い、数は少ないがほぼ不死といえる寿命を持つ。
能力も高く、返り討ちにされるハンターも少なくない。
私は自己に与えられた能力から、母が眷属になっていると感じたのだ。
あいつはそこまで私の母を穢したのか・・・

死んでいると思ってた。
血を吸われて死んでいると思っていた。
もしかしたら下僕にされてしまったかもしれないが、それでもどこかでハンターに倒されていたと思ってた。
いや、そう信じたかった。
こうして生ける屍になってしまった母を、この目で見るなんて耐えられない・・・

「ユウコよ、その女がお前の娘なのか?」
あまりのことに唇を噛んでいた私の脇から、重々しい声が響いてきた。
「はい、そのとおりです。ご主人様」
スッとひざまずく母。
私は声の主の方へと眼をやった。

一段高くなった場所。
あの首を刎ねてやった下僕が居たのもあそこだった。
今そこには黒マントを羽織った初老の男が椅子に座っている。
忘れもしない。
あの時母を奪った男だ。
その左右の脇には三人の女が立っていた。
いずれも顔立ちの整った美人であり、母と同じく黒いドレスに黒い長手袋を嵌めている。
いわばお揃いのドレスで右に二人、左に一人と立っているのだ。
この男は女を四人も眷属にしているのか・・・

「下僕の一人に会いに来てみれば、直前に教会のハンターに消されたという。どんなハンターかと思ったが、まさかユウコの娘だったとはな」
悔しい・・・
こんな奴に母の名を呼び捨てにされるなんて・・・
こんな奴に・・・
こいつに父は・・・
私は手足の拘束をはずそうともがいてみる。
だが、がっちりと嵌められた拘束具は、まったく私の努力を受け付けない。

「ククク・・・無駄なことだ。その拘束はちょっとやそっとでははずれない。よくやったぞ、ユウコ。来るがいい」
「ああ・・・ありがとうございます、ご主人様」
うっとりと喜びの表情を浮かべ、立ち上がる母。
軽やかな足取りで男のもとに行ってしまう。
またしてもこの光景を見せ付けられるなんて・・・

男の元にたどり着いた母を、男がそっと抱き寄せてキスをする。
その瞬間、ほかの女たちにちょっとだけ嫉妬の表情が浮かぶ。
だが、すぐにその表情は消え、穏やかに仲間の一人を見つめていた。

「あとで可愛がってやろう。それで、娘と再会した気分はどうなのだ?」
男から少し離れて立つ母。
その射るような冷たい視線が私に向く。
「残念ですわ。私の娘ともあろう者が、教会に尻尾を振るメス犬に成り下がっているなんて」
口の中で血の味がした。
どうやら唇の一部を噛み千切ってしまったらしい。
神よ・・・
これほどの試練をお与えになられるとは・・・

「うふふ・・・ご主人様、もしよろしければ、このような教会の犬は私が始末いたしますが・・・」
「ユウコよ、でしゃばるな」
「は、はい。申し訳ありません、ご主人様」
一瞬にして顔色をなくし、母は左の女の外側に下がっていく。
どうやら母は四人の中でも末席なのかも知れない。

「シスターマリカと言ったな。ユウコの娘であり、神に仕えるハンターであれば、さぞかしその血は美味に違いあるまい。味わわせてもらうぞ」
なっ・・・
ゆっくりと立ち上がる男を見上げ、私は言葉を失った。
殺されるのは覚悟していたが、こいつは私の血を吸い穢すつもりなのだ。
何とか・・・
何とかしなくちゃ・・・

「ククク・・・怖いのか? だがすぐに気持ちよくなる。恐れることはない」
男がにたぁっと笑う。
その背後では女たちも笑っている。
過去何人ものハンターがこうして殺されたのだろう。
特に女性のハンターは嬲り殺されたに違いない。
短剣も十字架も奪われた私は、必死で抵抗するしかない。
神よ・・・私を守りたまえ・・・

「ククク・・・」
布の引き裂かれる音がして、尼僧服が破られる。
下着もろとも引き裂かれた尼僧服から、私の胸があらわになる。
「くっ・・・」
「ククク・・・後ろ手に拘束され胸を強調する形になっているとはいえ、見事なものではないか。重苦しい尼僧服にしまっておくのはもったいないだろう」
男がぺろりと舌なめずりをする。
いやらしい。
こんな男に母は奪われたというの?
なんて悔しい・・・

男の爪が再び尼僧服を切り裂く。
胸元からすそまで一直線に切り裂かれた尼僧服は、もはや私を隠してはくれない。
かろうじて下の下着だけが性器のある場所を隠していた。
「シスターにしておくにはもったいない。ここも後でたっぷりと可愛がってやろう」
私に覆いかぶさるようにして、男の指が股間を探る。
あまりのことに私は背筋がぞっとした。

「あ・・・」
それはいきなりだった。
男が不意に私の首筋に噛みついたのだ。
うかつにも意識を下半身に集中していたため、いきなり噛み付いてくるとは思わなかった。
ゴクリ・・・
音を立てて男の喉を私の血が流れていく。
急速に躰が冷えて力が抜けていく。
頭の中に靄がかかり、何がなんだかわからなくなる。
これが・・・血を吸われるということなの?

「クククク・・・これでいい。もはやお前は我のもの。抵抗は無意味だ」
男の声が頭に響く。
私の中から急速に抵抗する気持ちが消えていく。
どうして?
だめなのに・・・
こんな奴の言いなりになってはだめなのに・・・

でもだめだった。
私はもう彼に抵抗する気持ちがわいてこない。
血を吸われたことで、彼への憎しみまでが吸い出されてしまったかのようだわ・・・

「さあ、もう一度吸ってやろう。首を差し出すがいい」
「ああ・・・はい・・・」
言われるままに首筋を見せる。
どうして従ってしまうのかわからない。
でも、従いたい。
従うのが当たり前。

ツプと彼の牙が突き刺さる。
かすかな痛みが心地いい。
すうっと力と熱が抜けていく。
なんて気持ちいいんだろう・・・
血を吸われることがこんなに気持ちいいことだったなんて・・・
「ああ・・・」
思わず声が出てしまう。
気持ちいいよぉ・・・

彼の背後にいる女たち。
四人ともが私を見ている。
皆一様にうらやましそうな顔をしているわ。
うふふ・・・
見てぇ・・・
今彼に血を吸われているのは私なの。
私だけが彼のものなのよ。

彼の柔らかい唇が首筋を離れていく。
全身の熱と力を失った私は、ぐったりと彼に抱かれているだけ。
でも、気もちがいい。
もっと・・・
もっと吸ってほしい。
最後の最後の一滴までも私を飲み干してほしい。

「ククク・・・どうだ? もっと吸ってほしいか?」
「ああ・・・はい。お願いです。もっと吸ってください」
彼の問いかけに私はすぐに答えた。
もう何もいらない。
神も教会も必要ない。
ほしいのは彼だけ。
彼さえいれば何もいらないわ。

「教会のハンターといえども他愛ないものよ。シスターマリカ、我に従い我が眷族となるか?」
「はい。なります。ご主人様の眷属になりますぅ・・・」
私は無我夢中でそう答えた。
彼のそばにいられるなら、どんなことでもしてみせるわ。
「クククク・・・いい返事だ。ハンターが眷属になることは珍しいことではないが、これでまた教会にはダメージとなろう」
私は彼に抱きかかえられ、彼の部屋へと連れて行かれた。

                      ******

射るような四人の視線。
うふふ・・・
新たなる眷属に対する嫉妬というところかしらね。
せいぜいにらみつけるがいいわ。
今日からは私もご主人様の眷属。
あなたがたとは同じ立ち位置。
誰が一番ご主人様の寵愛を受けるのかしらね。
うふふふふ・・・

「お待たせいたしましたご主人様」
私は黒いドレスのすそをつまんで一礼する。
「ご主人様の眷族に加えていただきましたこととても感謝いたしております。どうか末永くよろしくお願いいたします」
「うむ。我に仕えよマリカ。こいつらとともに。お前たち仲良くするのだぞ」
「「「「はい、ご主人様」」」」
いっせいに彼のほうを向き一礼する女たち。
仲間でありライバルでもある彼女たちを私は一瞥する。
せいぜい仲良くしなくちゃ。
特に“お母さん”とはね。
私はこれからの長く退屈な生活をいかに楽しむかを想像し、思わず笑みを浮かべるのだった。

END
  1. 2009/08/27(木) 21:47:51|
  2. 異形・魔物化系SS
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Author:舞方雅人
(まいかた まさと)と読みます。
北海道に住む悪堕ち大好き親父です。
このブログは、私の好きなゲームやマンガなどの趣味や洗脳・改造・悪堕ちなどの自作SSの発表の場となっております。
どうぞ楽しんでいって下さいませ。

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