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舞方雅人の趣味の世界

あるSS書きの日々

対決

「ホーリードール」の31回目です。
楽しんでいただければ幸いです。
それではどうぞ。


31、
まるで爆発でもしたかのように、鉄の扉が吹き飛んだ。
紙切れのように宙を舞う鉄の扉。
「グアウッ!」
そのすぐあとから黒い影がうなり声を上げて飛び出してくる。
「ビースト!」
「動きが速いですわ。対応を間違えないで」
「言われなくても!」
青い少女がレイピアを持って黒い影に飛び掛る。
すぐさま赤い少女は杖で空中になぞり、その残像で魔法陣を形作る。
「フリーズクラッシュ!!」
空中に現れた魔法陣から強烈な冷気が噴出し、一直線に全てのものを凍らせる。
ビーストの軌跡が重なり合えば、動きを止めるには充分だ。
もし重ならなくても、それはそれで進路を制限し、ホーリードールサキのレイピアが命中しやすくなる。
ホーリード-ルアスミはそこまで読んで放ったのだった。

「闇の抱擁!」
叫び声と同時に漆黒の闇の塊がフリーズクラッシュの進路を阻み、冷気を全て吸収する。
闇による魔力の吸収だ。
「闇の女!」
扉の吹き飛んだ階段室に目をやるホーリード-ルアスミ。
“闇の抱擁”を使えるのは、闇の女をおいて他にはいないはず。
ビーストよりもまず対処するべき相手だった。

はたして階段室の入り口には、漆黒のレオタードとロンググローブを身につけ、それにニーハイブーツを履いて手には巨大な鎌を持つ闇の女が立っていた。
「やはりあなたですか。闇をまといし闇の女よ、聖なる光で浄化して差し上げます」
スッと杖を構えるホーリード-ルアスミ。

「うふふ・・・それはどうかしらね光の手駒さん。私たちは簡単に消されるほど弱い闇では無いわよ」
こちらもブラディサイズを構えるレディベータ。
おそらくブラックパンサービーストはもう一人の手駒を充分に引き付けてくれるはず。
魔法を主体とするこの女なら、それほど恐れることはない。

「闇は光の前に消え去るのみ。コロナ!」
ホーリード-ルアスミの杖が動き、レディベータの足元から火柱が立ち昇る。
だが、その動きは見切られており、レディベータの姿はすでにそこにない。
「甘いわ! 今度はこっちよ! ブラディサイズ!」
火柱を避けるための跳躍をそのままホーリード-ルアスミに向けての攻撃に転化するレディベータ。
漆黒の刃がホーリード-ルアスミの胸目がけて振り下ろされる。

「シールド!」
青白い光がホーリード-ルアスミの前に展開し、ブラディサイズを受け止める。
漆黒の刃がシールドと干渉して火花を散らし、その衝撃でレディベータは跳び退った。
「くっ」
再びブラディサイズを構えなおすその瞬間。
レディベータはまたしても床に転がって回避する。
肩口までの髪が風に舞い、その一部が切り取られた。

「ドールサキ」
「闇の女を確認。ビーストより優先浄化する」
レディベータの髪を一筋切り裂いたレイピアが青く輝く。
ブラックパンサービーストとの戦いを一時回避してホーリード-ルアスミの元へ駆けつけたのだ。

「やって・・・くれる・・・」
すばやく立ち上がり、ギリと唇を噛み締めるレディベータ。
その目は怒りに燃えている。
「気に入らないのよ、光の手駒。どうしてあんたがデスルリカ様の娘なわけ? どうして光の手駒なんかやっているわけ?」
隙をうかがっているブラックパンサービーストを背後に回らせ、自らは正面から光の手駒をにらみつける。
その目は赤い少女には向けられていない。
自分の全てを捧げる人の娘である青い少女に向けられていた。

「ドールアスミ、援護を。正面の闇の女は私が浄化する」
「わかりましたわドールサキ。存分に」
すいっと一歩下がるホーリード-ルアスミ。
力と力のぶつかり合いなら、ホーリードールサキのほうが適している。
それにしても・・・
あの闇の女は何を言っているのだろう・・・

「でぇぇぇぇぇーい!!」
大鎌を振上げて突進するレディベータ。
呼応するかのようにホーリードールサキもレイピアをかざして飛び掛る。
キンという甲高い音が響き、細身のレイピアが巨大な鎌の刃をはじく。
だが、それはレディベータの読んでいたこと。
ブラディサイズを受け流されるままにして、左手に魔力を込めて撃ち放つ。
「きゃんっ」
腹部に衝撃を受け、思わず声を上げてしまうホーリードールサキ。
そのまま返す刃を首筋目がけて叩き込む。

しかし、今度もホーリードールサキのレイピアが刃を受け止め、反動を使って後ろに跳び退る。
一瞬正面からにらみ合う二人の少女。
わずか数日前まで仲のよかった二人の姿はそこにはない。

「グアゥッ!!」
赤い少女に飛び掛るブラックパンサービースト。
その持てる全ての力でこの少女を屠るのだ。
それが命じられたこと。
闇の命令は絶対。
先ほどまでの昂揚感を維持したまま、目の前の赤い少女を食い殺すことだけが彼女の使命だった。

援護をしなくてはなりませんのに・・・邪魔ですわ・・・
ホーリード-ルアスミはわずらわしそうに跳びかかってくるビーストに眼をやった。
肉食獣を元にしたビーストの動きはすごく俊敏。
おそらくこれまで浄化したビーストのいずれよりも動きは速い。
だけど・・・
所詮はビースト。
闇の女との戦いに比べればたやすいもの。
ホーリード-ルアスミは跳びかかってきたビーストをわずかな動きでかわしてみせる。
ビーストは単純。
闇によって心の闇を引き出された人間に過ぎない。
その思考力も極端に落ち、ほぼ本能に突き動かされているだけの文字通りの獣だ。
ならば・・・
こうして挑発するような動きを見せれば、ビーストは頭に血を上らせる。
より無駄のない動きでこちらを襲ってくるだろう。
それは非常に読みやすい動き。
ホーリード-ルアスミはそれを待っていた。

「そ、そんな・・・」
予想しなかった事態にその端麗な顔が苦悩に歪む。
滑らかな薄い膜をまとったかのような、全身を漆黒のタイツで覆った女性が、小学校近くのビルの屋上に降り立った。
ピンヒールと言ってもよいほどのハイヒールのブーツがかつんと音を立てる。
本来ならこんなところに降り立つはずではなかった。
レディベータをカバーするために、小学校の屋上に降り立つはずだったのだ。
だが、それは叶わない。
結界によってはじかれたのだ。

小学校を覆う結界はレディベータが張ったもの。
闇が張った結界を闇が通り抜けることに何も問題は無い。
光の手駒たちは無理やり力ずくで結界を切り裂いたようだけど、レディアルファが入るのにはそんなことをする必要はないのだ。
なのに結界は彼女をはじいた。
考えられる理由はただ一つ。
「光も結界を張ったのか・・・」
レディアルファは唇を噛んだ。
「ヘルアクス」
闇が渦巻いて彼女の手元に巨大な斧が現れる。
「デスルリカ様。レディベータが光の結界に捕らわれました。すぐに取り返しに行きます」
ヘルアクスを構え、小学校を覆う光の結界を破りに行くのだ。
『レディアルファ、待ちなさい! 私もすぐに行き・・・』
「ベータ、今行くわ。待っててね。てぇーーーい!!」
レディアルファは小学校目がけてジャンプした。
  1. 2009/07/11(土) 21:50:02|
  2. ホーリードール
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舞方雅人

Author:舞方雅人
(まいかた まさと)と読みます。
北海道に住む悪堕ち大好き親父です。
このブログは、私の好きなゲームやマンガなどの趣味や洗脳・改造・悪堕ちなどの自作SSの発表の場となっております。
どうぞ楽しんでいって下さいませ。

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